Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ヒデライカ
2024-06-14 21:57:34
2238文字
Public
⚖️SS
【海ター】片割れ
診断メーカーで出た海ターのSS
ライの海八のBL本は
【題】片割れ
【帯】ひと欠片でも重なる感情はあるか
【書き出し】病人は寝てろと真面目な調子で布団に押し込まれたのが、今更常識人気取りかと癪に障った。
です
#限界オタクのBL本 #shindanmaker
shindanmaker.com/878367
病人は寝てろと真面目な調子で布団に押し込まれたのが、今更常識人気取りかと癪に障った。
しかし、押し込まれた八神はすぐに、いや海藤さんはわりと常識人なんだったと思い直して今一度起きあがろうとしていた体から力を抜いた。
海藤が松金組に入った頃から暮らしているこのアパートの一室は、八神も何度も訪れたことがある場所だ。複数人に殴られても爆発に巻き込まれても病院の世話にならなかった八神がこうして海藤の万年床に入っている理由は、なんてことはない、風邪をひいたのだ。
今朝海藤が八神探偵事務所に出勤した時には、八神はもう真っ赤な顔でソファに倒れこんでいた。変な病気だったら大変だからと、海藤は渋る八神を病院に担ぎ込んだ。結果、ただの風邪と診断されたのである。
もちろん風邪だって死に至る可能性がある病気と言えるが、処方された薬を飲んでゆっくり寝てしっかり食べれば治ると医者のお墨付きだ。
探偵事務所は職場であり八神にとっては自宅でもあったが、住めば都とは言えゆっくり寝るには向かないと判断した海藤が、仕事をしたいとごねる八神を自分の家に連れ帰って今に至る。
依頼人にうつったらどうする、その状態で変態を見つけたりチンピラに絡まれて普段通りの喧嘩ができるのか、という至極真っ当な意見を投げられてしまった八神は黙るしかなかった。
熱が高く、不調を自認すると途端に怠さが増してしまった。
「海藤さん代わりに仕事してきてよ
……
」
「バカ言え、急ぎの依頼はなかったろ。それに目を離したら動き回りそうだからな、ター坊は」
「そんな元気ないって」
「なら尚更ここを離れるわけにはいかないな」
ふっと笑う海藤に、八神は気恥ずかしくなる。二十年以上の付き合いになる兄貴分が、まるで小さな子どもの相手をしているかのような柔らかい笑みだったからだ。
思い返せば、海藤と出会ってから風邪なんて一度もひいていなかった。怪我は絶えなかったが。
「それにしてもター坊が熱出すなんて珍しいな、疲れてんのか?」
「さあね。最後に熱出したのは小学生か中学生か
……
少なくとも反抗期もまだの頃だったよ」
八神は反抗期の頃に両親を亡くしている。つまり、両親が健在だった時が最後だと明確に覚えているのだ。
父と母と息子一人、どこにでもある家庭だった。日常は時に、一瞬で色を変えてしまう。
「喉が痛くて
……
お袋がリンゴをすりおろして
……
俺は掠れた声でありがとうって言ったんだ。そしたら、いつか私がおばあちゃんになった時は隆之がこれを作ってねって
……
」
八神の瞼がとろりと落ち始める。だんだん小さくなっていく声は、海藤に聞かせているのか独り言なのか曖昧だ。
汗で張り付いた前髪を海藤が払ってやると、八神はまた口を開いた。
「おれ、もうすぐ母さんたちの歳を超しちゃうなぁ
……
」
舌足らずな物言いは、ずいぶんと幼く聞こえた。十五歳で神室町に来て、一人で生きねばと踏ん張って、それでいて魂を削っているような、どこか頼りない姿を思い出す。
自分に突っかかってきてばかりの少年を、海藤は最初こそ疎ましく思っていたが、いつの間にか放っておけない存在になっていた。
弟分で同僚で恋人にもなった今、より手放せない。
「
……
寂しいのか?」
八神の頭を撫でてやりながら海藤が問うと、八神はゆっくりと瞬きをしてから答えた。
「海藤さんに会ったばかりの時は、そうだったかも。みんな俺から目を逸らすんだ。でも海藤さんは、ずっと俺のこと見ててくれた」
あの時から好きだったのかも。
冗談なのか本気なのかわからないことを八神は言う。高熱のせいで頭が回っていないのかもしれないと海藤は思った。
「今は寂しくないってか?」
「海藤さんに会ってから
……
うーん、なんて言うのかな。なくしたものが戻ってきたみたいな
……
穴にぴったり嵌ったみたいな
……
そんな感じ」
「全然わからん」
ははっ、と八神が笑う。自分でも上手く表現できたとは思っていないのだ。言葉で言い表せるものではない。
八神の頭を撫でていた海藤の手を取り、自分の頬に添えて擦り寄る。熱で目尻を赤く染めた八神が海藤を見上げた。
「海藤さんに恋して、海藤さんが大事にしてくれて、だからもう寂しくないよってこと」
「
……
そうかよ」
「うん」
「おら、もうとっとと寝ちまえ。寝ないと治んねぇぞ」
「わかってるよ、おやすみ海藤さん」
「ああ、おやすみター坊」
程なくして八神が寝息を立て始める。手は取られたままだ。
海藤は空いた手で頭を抱え、ため息をついた。
好きだのなんだの、お互いに言うことは滅多になかった。そんな八神が、意識が朦朧としていただろうとは言え、海藤に恋をしているのだと言った。恋人になのだから当たり前と言えばそうなのだが、なんだかとても熱烈な告白を受けた気がする。
「
……
そうだ、俺はター坊が大事だ。だからお前もお前を、大事にしてくれよ」
いつも無茶をする相棒にかけられた言葉に返事はないが、海藤は穏やかな笑みでその寝顔を見守った。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内