けーだい
2024-07-10 01:10:23
923文字
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ごちそう

初出24/5/7 お腹空いてたんよ

初めて見た時は「随分茶色い」と思った。けれどそれを食べると元気になると彼が言うものだから、慣れない鍋を前に必死で覚えたのだ。
お米の炊ける匂いがこんなに甘いということも、肉から出た脂のはじける音がこんなに賑やかだということも、私は彼に教わって初めて知った。
城やカカリコ村で暮らし続けていたらきっと知ることはなかっただろう。生きるということを支える土台のような行為を、今自分が行っている。そのことがとても、面白かった。
けれどそれ以上に、何よりも。
「あ、ケモノ肉丼だ」
嬉しそうな声に振り返る。取り込んできたばかりの衣類の入った洗濯籠を抱えて、リンクが私の手元を覗き込んでいた。
「匂いが移りますよ」
「良い匂いじゃない?」
「それはそうですけど、服につくのは困ります」
はぁい、とご機嫌な声が遠ざかっていく。あまり反省の色は見られないけれど、大人しく言うことは聞いてくれるから不問にした。
「もうできますから、置いたら食べましょう」
彼の消えていった二階に声をかけながら、どんぶりに炊けたばかりのご飯をよそう。つやつやと光り輝く白米は、湯気を立ててそれだけでも食欲をそそった。
その上に鍋から直接肉を乗せていく。ご飯が進むようにと濃い目の味付けにしてあるそれを、私の分は少し少なめに、その分彼の丼には多めに積んだ。油と肉汁の混ざったタレを回しかけて、仕上げに焼いておいたししとうを乗せる。
今回も上出来だ。
「おいしそ」
テーブルへと運んでいると、階段を下りてきたリンクが思わずと言ったように呟いた。
「本当に好きですね」
最後に箸を出して丼の前に置くと、彼は待ちきれない様子で席に着いた。私が座って箸を持つのを待っている姿はまるで待てをしている犬のようで、少しおかしい。
「いただきます」
ふたりで揃えて言う。次の瞬間、彼は大きな口で米と肉を頬張った。
眦が溶ける。膨らんだ頬に、緩んだ口元。咀嚼する顎の動きはそのままに、幸せそうに微笑む彼。
人は食事をするだけで、こんなに幸せになれるのだということも、彼に教えてもらった。
「おいしいですか」
ん、と頷く。その顔が私にとって一番のごちそうだと教えたら、彼はどんな顔をするだろうか。