orikoriko1125
2024-07-09 09:26:49
6758文字
Public カキゼイ
 

願い星にはまだ届いていない

二年生二回目カキツバタと一年生ゼイユの七夕
全部捏造でしかないです

遂に同級生になってしまったぞ………

「嘘でしょ
ブルーベリー学園での一年生生活も無事に終わり、実家でのんびり夏休みを堪能するつもりだった。
地元の友達と遊んだり、バイトをしてお小遣いを稼ぐ、弟と山歩きしつつ色違いポケモンを探す
そのために早く課題を片付けてしまおうと手を付けたが、無いのだ。
課題のレポートのために一年間積み重ねたノートが。
「落ち着いてもう一回
手が震えてくる。まさか寮の自室に置いてきたのか。……帰宅する時の飛行機で途中まで取り掛かるつもりで最後に手荷物に入れる予定で。机の上で主を待ってるノートの記憶が蘇る。
え?ノート一冊のために?イッシュまで取りに行くの?
ぐるぐる考えながら、一週間ほど早く戻れば新学期までに間に合う算段が付く。
善は急げ、念の為にまだ学校にいる担任に連絡をする。
「いつもなら十日前には戻れるようにしてるんだけど、今年はドームのメンテナンスが押しちゃってギリギリなんだよ。え?課題用のノートを忘れた?
災難だねえ〜!まぁゼイユさんなら内容の評価は大丈夫だろうし、提出期限オーバーで評価が一つ下がるくらいかな?」
もし、もし!取りに行くならいつまでですか?」
「実家キタカミなんだよね?ノート一冊、評価一個のために?今年は最後の日が七月七日までだからそれまでに来てくれれば校内には入れるけど」
分かりました」
祖父母に相談すれば、遠く外国で働く母に聞けと言われた。
ゼイユは怖い物知らずのわがまま娘然としているが、唯一怖い人は母である。とにかく厳しくて、見た目も性格もお母さんそっくりねと言われるが性格のキツさは完全に向こうが上だ。
普段しっかりしてるのに、やらかす時が大きいよね。しかもこのタイミングなんて。』
電話越しでも伝わる声色は明らかに怒っている。
一年間の成績を伝えた時はあんなに優しかったのに
『ごめんなさい
しかし下手に言い訳せず、しおらしくすればなんとかなるのは大分理解している。
母も仕事でイッシュに行くから、お互い用事が済んだら一緒にキタカミに戻ると話がまとまり、とりあえずは何とかなった。
「ねーちゃん学校に宿題忘れたんだって?かーちゃんにめちゃくちゃ怒られた?」
アイスを齧りながらスグリがニヤニヤ煽ってきたのでふにふにのほっぺをつねる。
「うるさい!ナマイキ!」
「いはいいはい!!バカ!!」
自分に落ち度があるのは分かっているが弟に指摘されるのは腹立たしい。
あんたはこれから成績表来るんでしょ?来年うちの学校来られるくらいの成績なの?ダラダラゲームしてるのお母さんに言いつけるからね」
「おれのことは関係ないべ!」
ギャーギャー姉弟喧嘩をしていたら祖母に「いい加減にしなさい!外でやって!!」と言われ、彼女のシャンデラに庭に追いやられた。
興も削がれ大人しく並んで縁側に掛ける。
「ねーちゃんの誕生日、どーすんの?」
「帰ってきてから盛大にやるわよ、ほんの数日ズレても誤差でしょ」
今年のプレゼントはイッシュへの航空券ね、と母に言われたのを思い出してまた憂鬱になる。
「おれが代わりにケーキ食べとくな。短冊にはねーちゃんが忘れ物しませんようにって書いとくべ!」
あんたそれ以上言ったら、手ぇ出るよ?」
握った拳を見せるとスグリはさっと目を逸らした。
ゼイユのいない間に随分と生意気になったものだ。

久しぶりの学校には人の気配が全く無かった。
エントランスロビーの受け付けもおらず、なんだか悪い事をしてるような気持ちでIDカードをかざす。
最初に職員室へ向かい担任に挨拶だけした。
数人の教師がいて少し安心する。
「本当に取りに来たの?!明日の午前中までに出れば大丈夫だから」
「残ってる生徒いるんですか?」
ここに来るまで一人も会っていないが一応聞いておいた。
「カキツバタくんがいるけどほとんど見かけないのよね」
さすが生けるブルベリの主。しかしこんな広い校内で会うこともないだろう。

「ゼイユ、帰ったんじゃねぇの?」
「げ!!出た!!」
先ずは可哀想なノートを回収しなくてはと寮へ向かう途中、誰もいない学食でお菓子を広げているカキツバタに遭遇してしまった。
「出たってゴーストタイプじゃねーんだから」
「だってこんなとこにいると思わないじゃない
「どこにでもいるって、今なら校内全部オイラの部屋みてぇなモンだからよ!」
なるほど、Tシャツハーフパンツの部屋着スタイルなのは自室だからなのか。違うが。
課題のノート忘れて取りに来たの。最悪」
「そのためにわざわざ戻ってきたのか……。大丈夫、課題なんてやんなくても死なねーって!」
若干引いたような反応をされた。この男に引かれるなんて屈辱だ。
「死なないけどそのお陰で九月からあたしと同級生でしょ?信じらんない
ゼイユが入学した時に二回目の二年生だったカキツバタは三回目が確定している。
先輩が同級生になることなんてあるのだろうか。
「来年はゼイユ先輩って呼ぶことにするな!」
「始まる前から来年も留年する事確定してるのおかしいから!」
いつまで学校にいるつもりなのだろうか。気にしない様子で引き続きお菓子を食べ続けるカキツバタはほっといて目的を果たさなくては。
「せっかくだから夕飯一緒に食おうぜぃ!ツバっさん秘蔵のカップ麺があんのよ」
この通り学食のシェフも休みだ。そしてその事もすっかり忘れていた。
分かったありがとう

ノートは机の上に鎮座していた。念の為一ページづつ撮影して、カバンにしっかり入れた。
次年度からはノートを取ったらデータ化しておこうと誓う。
ついでに課題も進める。実家にいる時よりも集中できた。
随分時間が経っている事に気がつき、スマホを手に取るとちょうどメッセージが来た。
『飯食おう』
『向かいます』
メッセージに返信してから他にもメッセージが溜まっていた事に気がつく。今日は誕生日だ。
時差があるためイッシュでは前日だけれども。

「どれがいい?」
秘蔵というだけあって段ボールの中には色んな地域、味のカップ麺が入っていた。
焼きそばある?」
「多分ある」
せっかくなので遠慮なく選ばせて貰おう。
焼きそば好きなのか?」
「好きだけど、カップ焼きそばは焼いてないからちょっと違うと思ってるけど」
「ふは!確かに焼いてねぇ!」
差し出されたのは見たことないタイプだったが、パッケージには焼きそばの写真が載っていた。
お湯を入れてタイマーをかける。黙ってるのも何なので言ってしまうことにした。
「今日あたし、誕生日なの」
は??!誕生日?!……早く言えよ!!」
カキツバタの焦ってる顔は珍しい。誕生日に忘れ物を海外の学校まで取りに行く人間もなかなかいないだろう。
「イッシュだと明日だけど、キタカミだと今日。七月七日」
「お前それ、昼間に言えっての!今からじゃ何もできねぇって
言ったら何かしてくれたのか、さすが面倒見だけはいい先輩である。せっかくだからおねだりしておこう。
「また今度あのケーキご馳走してくれればいいから、大丈夫よ。お寿司でもいい」
去年食べさせて貰ったピカピカのいちごケーキ、シーズン外なのにあんなにいちごが美味しかったのかは分からないが、今でも夢に見る美味しさだった。
リージョンフォームの寿司も最初は面食らったが、あれはあれで美味しかったなと時折思う。
「あ〜分かった。いつでも食わせてやるから!……あんときゼイユが来てくれたお陰で、親戚中に美人の彼女ができたって広まっちまって……どうしたらいいと思う?」
……こっぴどく振られた事にして!!今すぐ!!そもそもフリだから!」
タイマーが鳴った。

「そういえば七月七日って七夕だろ?」
焼いてないのに何故焼きそばの味になるのか、貰ったカップ麺は美味しかった。
「先輩も七夕、知ってるのね」
「もう先輩じゃねーのよ!天の川見て、お願いすんだろぃ?」
間違えた。ちょっと損した気分になる。
「お願いは短冊、……細長いメモに書いて笹の葉に下げるの。でもここじゃ天の川なんて見えないと思うけど」
ドームの星空は綺麗だけれども、偽物の空だ。
「エントランスは?海の上だしよ、もしかしたら見れるかもしんねぇ。笹の葉はドームにはねぇな」
高いとこならいいの?じゃあメモにお願い書いてカイリューにコアに置いてきてもらうか〜ととんでもない事を言い出したので、止めさせた。カイリューになんてことをさせるんだ。
折衷案でエントランスロビーまで星を見に行く事になった。途中で無人の売店に寄ってアイスを買う。コードがおいてあるからBP支払いはできるらしい。
「学校でも無人販売になる時あるのね。キタカミでは電子マネー使えないからお金置いていくんだけど」
治安良すぎんな〜」
いちご味のアイスを齧りながら外へ向かう。
「明日で学校閉められるんでしょ?ちゃんと実家帰るの?」
カキツバタはバニラ味。一口が大きいなと、すぐに消えてくアイスを眺める。
「仕方ねぇから帰る。おふくろこぇーし、ジジイもうるせぇし」
お母さんって何であんなに怖いんだろ」
どこの家庭も母は恐ろしい生き物のようだ。
「ゼイユに怖いって言わせるおふくろさん、ヤバいな
「はぁ?!あたしは全然優しいけど!!」
Tシャツの背中のオラチフに叫んだ。

外は涼しかった。いつもはこの時間でも人気のあるエントランスロビーも今は二人だけ。夜の海が静か過ぎて物悲しい。
「今夜曇り?星あんまり見えねぇな」
「岸に近いから明るいのかも」
カキツバタがバトルコートの真ん中に座ったので隣に並んで座る。眺めた夜空には数えられるくらいの星しかなかった。
「残念だったねぃ。とんだ誕生日になったな」
「自分のせいだし、仕方ないわよ。明日キタカミに帰れば星なんていくらでも見られるし、誕生日祝いも遅れてできるし」
いつの間にかカキツバタは寝っ転がっている。皆が土足で歩き回り、ポケモンが雨を降らしてすなあらしを起こしてるコートの上で寝るのはどうなのだろうか。
「そんなに星すげーの?」
「街灯も少ないし、真っ暗だから星しか見えないの
。すっごく綺麗!……でも余所者は立入禁止だから!」 
キタカミに興味を持たれるのは困る。特にこの男が来るなんて最悪だ。カキツバタが寝たまま、じっとこちらを見てくる。
それって余所者じゃなきゃいいんだろ?」
「当たり前でしょ、相変わらず意味分かんない事言うわね」
いつも意味の分からない事しか言わないし、意味なんてないのかもしれないなとも思った。
見られてるのが居心地悪くてもう一度空を見上げたら、急に手首を掴まれて食べかけのアイスが落ちる。
「だから、分かれって」
あたしのアイス!」
何を分かればいいのだろうか。どうしてそんなに焦れたような顔をするのか。
……いくら美人だからといってこんなに見られ続けるのは慣れない。
「分かれってなに、
「カキツバタくん!ゼイユさん!もう施錠と消灯の時間!」
校内から先生が出て叫ぶ。そういえば夜はエントランスロビーは出入り禁止だった。
掴まれていた手が外れる。
「はいはい、戻りま〜す」
カキツバタは何事も無かったように元気よく返事をして立ち上がる。
今のは何だったのか、ゼイユは落ちたアイスを眺める。
「こんな所でアイス食べて落としたら駄目でしょ」
先生が座り続けているのをみかねて、起こしてくれた。
「アイス落としたのはゼイユさんで〜す」
「ちょっ!!あんたがいきなり手を掴むから!!」
ゼイユさん、カキツバタくんとつるむのは先生は良くないと思う」
問題児扱いひでぇ〜とヘラヘラしながら、ノロノロ歩いてる背中を眺めて、ゼイユは顔も上げられないまま部屋へ戻った。

ほとんど寝られなかったのは時差ボケのせいだ。決してあいつのせいではない。
日付が変わったら学園の友達から誕生日祝いのメッセージが届いた。
イッシュでは今日が誕生日。
ポップアップが新着メッセージを知らせる。
『学食集合』
「ホントなに?!訳分かんないんだけど!!」
自分だけがこんな考えさせられてるのが腹立たしい。
言ってやらなきゃ気が済まないと勇んで学食へ向かった。
「おはよーさん。……顔ヤバ、さては時差ボケで寝てねーな?」
「今日も朝から美人で眩しいね、でしょ?やり直しなさい」
「はいはい、美人のゼイユちゃんに朝ごはんな」
差し出されたのは売店に売ってるチョコレート菓子の箱。これはおやつ!と言いたい所だが、まともに食べられる物がもうほとんど無いのだろう。
スグリなら喜びそうだなと開封して一つ、カキツバタに差し出した。
「あとこれ、お願い書いてねぇから」
男子学生が持つにはかわいらしすぎる、ジラーチと星柄のメモ帳。未開封だが、これも売店にあったのだろうか。
……書いてどうするの?まさか
「カイリューにコアに置いてきて貰う!」
「バカでしょ?!信じらんない!」
いつも通りへらっと笑ってカイリューがいいって言ってっから任せろぃ!と言い張るので、折れた。
「お願いって誰かに見られてもいいんだっけ?」
「笹の葉に吊るすから皆に見られるもんなの、叶えられるお願いじゃないと駄目だからね」
公民館に置いてあった笹には『来年もA+ を評価を貰う』と書いた。そのためにノートを取りに来ないといけなかったのだ。
「ふーん……決まった!」
カキツバタがかわいいメモに『ゼイユが分かってくれますように』と書くのを眺める。何故自分が出てくるのか。
「だから何を分かれって言うの?」
「そんなの自分で考えろって!頭いいんだからよぉ〜」
さっきまでのイライラした気持ちがまた戻ってきた。そっちがそうならこっちはこうだ。
「絶対に叶えなさいよ!」
ジラーチに被らないよう、でも大きく書いた。
「読んで!」
ふっ『カキツバタが一日でも早く卒業しますように』善処しま〜す!」
こんなふざけた男に先輩と呼ばれるのはごめんだ。

テラリウムドームに入るとカキツバタはカイリューを出した。キタカミにはいない立派なドラゴンポケモンに心の中で、くだらないことさせてごめんと謝る。
「悪いけど、これコアの上に置いてきてくれねぇ?たまに先生も来るから見えなそうな所に頼む!」
返事代わりにカキツバタをぎゅうと抱きしめてメモを受け取り、飛んだ。
てか、あんたが乗っていけば良かったんじゃない?」
あっという間に小さくなる。コアが眩しくて目で追うのは難しい。
「コアの上に登るのは校則違反だろ」
……二留してるのに校則は守るの?!」
「校則違反したら学校いられねぇし」
やっぱりこの男の考えている事は分からない。
ゼイユなら進級もするし、コアの上にも乗るが
現状向かう方法がないだけだ。
あっという間にカイリューは戻ってきて、褒めてと言わんばかりにカキツバタに抱きついていた。
お礼のきのみを渡してボールへ戻る。
「時間だな」
「次会う時は新学期
「同じクラスだといいねぃ!」
「最悪すぎる一年間になるわね」
オイラにはかわいすぎるから、と残りのメモ帳を渡される。
「誕生日おめでとさん!」
取ってつけたようなお祝いとともに。
今年の誕生日プレゼント、あまりにも寂しすぎると思ったがメモ帳は意外と重宝した。


 



「コアに乗るのは校則違反なんだっけ?……怒られたら留学生だから分かんないって言えばいいか」
アオイは今、ブルーベリー学園で一番高いところにいる。海の中ではあるが。
好奇心が旺盛すぎる少女チャンピオンは大穴の最深部も雪山の登頂部も、海中の疑似太陽の上も、行けるところは全部行きたいだけなのだ。
テラリウムドーム全部見渡せる!と思ったが、あまりにも高すぎて分かりにくいねとミライドンに話かけてゆっくり歩く。
乗るのは校則違反なのに何故か色んなアイテムが落ちてるのは敢えてなのだろうか。来てよかったな、今度はスグリも誘ってみようかな怒られるかなと天井を見上げると、アイテムではない物があった。
イッカネズミを出して取ってきて貰う。自分より先に校則違反をした人がいたのかもとワクワクしながら回収した物を見た。
かわいいジラーチ柄のメモ。二枚。
見たことのある字で、知ってる名前が書いてある。
……イッカネズミに再び渡して、元に戻す。
二人の願いが叶うまでとりあえずは見て見ぬふりをすることにしよう。