頻子
2024-07-08 18:00:37
3819文字
Public KODR二次
 

人には人の、魔物に魔物のニュートちゃま(KODR)

ご都合世界線のだいたい各結婚ルートのニュートちゃま持ち寄りポートラックパーティー(コメディ)
別軸全キャラ×ニュートとやるには図々しいような気もするが
魔界倫理
ウルハムのセクハラ注意を書き忘れた 注意


 東の回廊を歩いていたベーケス2世は、曲がり角によく知ったすがたをみて立ち止まった。
 ニュートが立っている。
 けれども、ニュートではありえない。
……誰だ?」
 ベーケス2世の知っているニュートは無種族ではない。吸血鬼だ。そうしたのはほかでもない、ベーケス2世自身なのだった。ニュートと結ばれ、その首筋に噛みついたことで、ニュートは吸血鬼になった。
 ニュートの姿をした何者かは、微笑むとくるっと背を向ける。
 髪の毛がふわっと浮いたが、やはり、まっさらな首筋には噛み傷ひとつ見当たらない。念力を叩きつけてやろうと指を振るが、そのすがたを捕まえることはできなかった。
 不自然に現れた扉。ないはずの扉が浮かんでいる。
 何者かはその向こうへと去っていった。
……罠か?)
 それでも、ベーケス2世は後を追いかけることにした。
 ニュートはたしかに無種族ではあったが、ほかには記憶と違いがなかった。過去の木漏れ日のようでもあった。

☛☛☛

 まず真っ先に、場違いな喧騒が聞こえてきた。
 まぶしい。
 ゆっくりと目が慣れていった。
 扉を潜り抜けて出た先は、広い庭だった。城の中庭を整備して催しのために整えたらこのようになるだろうか。
 楽団の楽器の音が響いていた。
 テーブルがいくつも並べられ、その上には、所狭しとごちそうが乗っている。想像していたのとはまるで違う、陽気な雰囲気にベーケス2世が面食らっていると、ニュートが、……よく知っている、吸血鬼のニュートが駆け寄ってきて、ベーケス2世の腕を捕まえた。
「! ニュート」
 にっこり笑って、ニュートはフラワーホールに花を挿した。
「これは、いったい……
 パーティー会場には大量のニュートがいる。
 魔界の鎧のニュート。魔界の衣のニュート……自由なニュート。ゾンビと、人狼のニュート。それから、ベーケス2世の伴侶のニュートはチョコレートの滝に釣られて走っていき、ニュートの群れに加わった。
 きりっとしたニュート。しずしずしたニュート。優し気なニュート。どれもニュートだが、少しずつ雰囲気が違う。
「あ、ベーケス2世も来てくれたんだねー!」
「デビイか……
「やあ、久しぶり!」
「どういうことだ、これは? お前は人間界に帰ったんじゃなかったのか?」
「ああ、ごめんごめん。ちゃんと説明しないとね。今日はね。いろいろな世界のニュートを次元をまたいで連れてきたんだ」
……………………は?」
 呆然としているベーケス2世の横を、四つん這いになったニュートが這っていった。
「ぐずぐずするな、のろまがっ!」
 ウィンチがハイヒールのかかとを背中に突き刺すと、鎖を引っ張っていた。
 いったい何をどこで間違ってどうするとああなるのか? しかめっ面のウィンチとは対照的に、ニュートは輝かんばかりの笑顔だった……
「あーあ、無種族プレーンニュート様のお散歩、いいなあ……
 思わずベーケス2世はウルハムを凝視した。ニュートを散歩させたいのか、ニュートに散歩させてもらいたいのか、どっちなのかはわからない。即座に放言を聞きつけた人狼のニュートが飛んできてかぷーっとウルハムの首筋を噛んだ。
「あっ、うそうそ、うそです! 人狼のニュート様が一番可愛いですっ。だって、えへへっ……僕のだから……
 ウルハムは、ニュートにほっぺをペロッと舐められ、お返しにペロペロッとニュートの頬をなめた。
「ニュートちゃまがいーっぱい! きゃあっ! ステキですわねー!」
 ゾービナスがくるくるとその場に回っていた。
「ゾービナス、難しくてよくわかんないですけど! ニュートちゃまがいっぱいいるのって、サ ゾービナスの横で、ばかそうなニュートが照れている。
イコーですわー!」
「カスカスカスカス、カスニュート! ふんだ! あっちいけー!」
 ベーケス2世の気持ちを代弁したのは、くしくも、ばしゃんと噴水に潜って尻尾で水をかけるマーメルンの叫びだった。慌てたニュートが水の中に頭を突っ込んで何か詫びている。どぼんと水に落っこちて、吸血鬼の視界からはフェードアウトしていった。

「あれ? きみは? 検討中? それじゃあどこのニュート様ってわけでもないんだ?」
 ウルハムがふらふらしていたニュートに目線を合わせ、声をかける。さっとテーブルクロスの下に逃げそうになったのをひょいと摘まみ上げていた。
「へーえ、まだ無種族なんだね。あ! きみは男の子なんだ?」
 エンリョがないのは、ウルハムの世界ではウルハムが伴侶なのであり、ニュートはウルハムのものだからである。
 そこへすっと青年が割り込んだ。
……ちょっと。そりゃあんたの世界では、あんたは魔界王の伴侶なのかもしれませんけどっ」
……誰?」
「ここのニュートはあんたのじゃないんですから。ちょっかいかけないでくださいっ!」
「あ、ジャンタンかあ!」
 大きくなったねえ、とウルハムはにこにこして、ジャンタンと無理やり握手を交わす。そして、自分のニュートとジャンタンのニュートからパンチを食らっていた。
 その隙に、絡まれていた優柔不断ニュートはテーブルクロスの下をくぐって離れていった。
「あんたも優柔不断だからこうなるんですよっ。わかってます?」
 なぜかジャンタンのほうのニュートが平謝りしている。はぐれニュートはフランコールの方によっていって、無事に回収されたようだ。
 ジャンタンのほうのニュートからの無種族パンチはたいした威力がないが、人狼のほうはきちんと「うぐっ……」と言わせている。それを見たベーケス2世は多少溜飲を下げた。

 ベーケス2世は、なんだか全部のニュートにかまうのもバカらしくなってきた。

「ニュート様、ごきげんよう。そちらの私も、お世話になっているようで……私の姫様からもご挨拶させていただきますね」
 ドレスアップをしているニュートが、優雅をがんばっているような挨拶をした。似合わない真似を、と薄ら笑いが漏れた。フランコールにあれこれとご飯をよそっていたニュートが、にこっと笑顔を向けて、ハンカチで手を拭いて握手に来た。
「スケルナイトは、ほかのニュートちゃまに興味ありませんの?」
「ああ、こちらのニュート様は、俺にとって特別な人なんだ。別の世界のニュート様とは違う。姫様は一人しかいないからね!」
「むむっ、どこがちがうんですの?」
「よく見てごらん。瞳が違うだろう?」
「ええと」
 ウルハムはニュートとニュートを見比べた。
「具体的にどう違うんですか?」
「フッ」
(あ、バカにされた……

 フランコールのニュートは、フランコールに、段差はないか、疲れてないか、しきりに彼女を気にしている。マーメルンのニュートはなんとか機嫌を直してもらおうと熱心にマーメルンを口説いている。ゾービナスのほうは、ゾービナスを見ながらちらちら何か手元の手帳に書きつけていて、覗き見ると、ゾービナスはあの料理が好き、だとか、書いてあった。ゾービナスもゾービナスで、「え? それじゃあこの一番かっこいいニュートちゃまは……きゃーっ! わたしのニュートちゃまですわねー!」という驚きを3回やっている。
「こうしてみると、ニュートちゃまにも個体差がありますのねー!」
「それにしても、俺のニュートよ……
 吸血鬼のニュートは、チョコレートに飽きて戻ってきたが、戻ってくるなり、立っているのがつらい足が疲れたお腹が減ったあれとってよそみしないでと一気にわがままを言っていた。
「お前、ちょっと……他と比べてワガママというか……他のと比べてふにゃふにゃしてないか? ん?」
……
 ニュートはぷんっとそっぽを向くと、またどこかへ行ってしまった。
「なんだ? このニュートの差は?」
「ベーケスのニュートちゃまーっ、やーっぱりベーケスが一番好きなんですかー?」
 それでも、ニュートが、ゾービナスにはにかんで頷いているのをこっそり見てしまったので、ベーケス2世はそれ以上は何も言えなくなってしまった。

☛☛☛

「いろんなニュートちゃまが、よりどりみどり♪ ゾービナス、感激です! あれ? デビイのニュートちゃまは?」
「ああ、ぼくのニュート? ちょっとね、今、忙しくしてて、寝込んでるんだ」
「まあ!」
 ゾービナスは大きな瞳を見開いた。
「わたし、デビイのニュートちゃまも見たかったのになー! ご病気ですの? 心配ですわー」
「実はね。……ぼくたちのあいだに、子供ができたんだよー」
「きゃあー!」
 一転して、ゾービナスは甲高い声を出した。ほかの家臣たちがちらりとゾービナスとデビイを気にしたが、大したことはないだろうとそれぞれに戻る。
「よかったですわねーっ!」
「うん。ニュートったら、ずいぶんみんなと会ってなかったから、どういう感じだったか、すっかり忘れちゃってね。それで、みんなの世界を参考にさせてもらおうと思ったんだ! どの世界線のニュートも、ニュートではあるからね。これでちょっとずつ記憶が溜まったはず。これをちょっとずつもらっていけば、きちんと作り直せるってわけ」
「ええっとぉ……?」
「ああ、安心してね? そっちの世界に影響があるくらいじゃないから!」
「なら、安心ですわねー!」