梶間
2024-07-08 17:39:45
920文字
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7月8日

リンシャのお誕生日お祝いSS

探索の荷物にいつもより品質の良いドライフルーツが入っていることに気がついてリンシャは眉間の皺を深めた。
ドライフルーツは好物だ。迷宮探索のときはドライフルーツは欠かせない一品なのでリンシャにとって迷宮での食事はいつも密かな楽しみである。しかし欠かせない一品でもまだまだ中堅にようやくなれるかなれないかくらいの懐事情としては、ドライフルーツの切れ端が入ったものを買うのが精々だった。
それが今回は果物の断面が目にも楽しい随分と立派な代物になっている。
レモン、オレンジ、クランベリー、あんず、いちごとどれもリンシャ好みの酸味が効いたものばかり。
酸味のない甘味が苦手なリンシャとしては、安いドライフルーツとナッツの詰め合わせは甘いだけのものが入っていることもあるので、果物の形を保ったままのドライフルーツは確実に好きな味が選べて大層嬉しいものだった。
眉間の皺がますます深くなり、喉の奥から出てくる声は喜びのあまりに怨嗟のように低い。

「これどういうこと」

レモンを一枚手に取り、迷宮の明かりの下で裏返し光を透かして見た目の美しさを楽しむ。生の果物ほどではないが、光を反射したその姿はキラキラと光っているかのようだった。

「今日リンシャの誕生日だろ?今年は迷宮探索中に誕生日になっちゃったから、これは俺からのせめてものお祝い」

パチン、と星でも飛びそうなくらい軽やかなウインクが己がパーティのリーダーから飛んでくる。
今回の迷宮探索のための日程を組んだのはカブルーだ。
自分の誕生日に被せてきてあった日程を聞いたときは、出会ってから毎年お互いの誕生日を祝っていたというのに今年はこの仕打ちか、と内心嘆いたが身内への扱いならこんなものかと納得していたというのに。
カブルーが迷宮探索を優先したいならば、それに着いてきたリンシャとしては彼をなにより優先するしか選択肢はないと我儘な感情を出さずに努めようとしていたのに。
誕生日が迷宮探索か、と表情には出さず眉間も一切動かさずにいたところにサプライズプレゼントを贈られたリンシャは、その日一日中眉間の皺が深く刻まれたままだった。

「カブルー」
「なに?」
「プレゼント、ありがと」