昨日むしゃくしゃして深夜まで書いてた🛀と🦚
……破局後のブチです。多分続きは書かないと思います。
――(以下ツイ画像引用)
戦略的パートナーになった僕とレイシオはまもなくプライベートでもパートナーとなったわけだけど、当たり前ながら全て順風満帆とはいかなかった。レイシオの治療は至極まっとうで、僕にはまっとうがすぎた。僕の心の穴は僕にとってあって当然のものだったけれど、レイシオにとってはそれは深くて暗すぎて、見つめるだけで心を削るものだった。
僕はレイシオに心を削って欲しくなかった。僕と同じ心の穴を作って欲しくなかった、そのくらいなら今のままでいいと言った。レイシオはそれを認めなかった、恋人である君が心配なんだ、と言った。そう言われたらどうしようもなかった。けれど、僕らは着実に、お互いを傷つけ合ってしまうほどに親密になってしまった。
もう詳しいことは思い出したくもない。僕は怒ったり、泣いたりした。レイシオに対してぶつけるには正当ではないことも言うようになった。けれど、レイシオはそれを受け止めようとした。受け止めようとしてくれたけれど、そこにはやっぱり、「僕に幸せになってほしい」が潜んでいた。でも、幸福な僕って、本当に僕なんだろうか? 僕はレイシオが見守ってくれているだけで、そばにいるだけで、僕がただ一人だと言ってくれるだけでよかった。だから僕は彼を信じられなくなって、また彼を痛めつけて、彼も頑なに治療しようと、受け入れようとして
……。
ある日、僕は「疲れた」と言い、レイシオもぐったりと頷いた。半同居に近い状態だった彼のマンションから引き払うものはほとんどなくて、僕はそこで彼がどれほどの優しさとリソースを僕に支払ってくれたのかと思って泣いて、それに答えられない自分にも泣いた。レイシオも、疲れた表情の中に離別の苦しみと寂しさを覗かせていた。確かに僕らは愛し合っていた、今も愛し合っている。けれど僕らは元に戻れない。僕が彼の望むような存在になれたらよかったのに。あるいは、僕が僕じゃなくて、彼に心配をかけなくて済むような人間であればよかったのに。
「つまりアンタは自分の力で教授に認められるか、そのまんまの自分を好きになって欲しかったけど、石膏頭はあいにくとどっちでもなかったと」
「
……たぶん」
ブートヒルと待ち合わせる場所の候補はいくつかあって、そのうち一つがこのグランニスタ-Ⅴだ。危険極まりない地下資源に恵まれた鉱山の鉄塔の惑星は意外と食文化が豊か
……というか、労働者の層が多種多様なため無機生命体にも有機生命体にも配慮された店が多い。ウイスキーに9mm弾を入れて飲むサイボーグと常にサングラスを外さない成金男が管を巻いていてもそう珍しくはない場所なのだ。
いつもの僕はノンアルコールか、せいぜいシャンパンをグラスに一杯くらいしか頼まない。けれど今日ばかりは飲みまくりたかった。飲み放題プランに最初喜んでいたブートヒルは、僕が空にしたジョッキの数にたちまちドン引きし、あぁ今日はオレがセーブしなきゃダメな日なんだなぁという顔で未練がましくロックグラスを見下ろしていた。ブートヒル、君の最大の長所にして最大の欠点はそういうところだよ、と言いたかったけど、生憎今日の僕はそんなことを指摘するだけの親切心を持たなかった。
「
……まぁ、石膏頭の言い分も聞かねぇとわからねぇけどよ、どっかで話し合ったら解決したんじゃねぇか、それ?」
「そうかなぁ」
「アンタって人とわかり合おうって発想がねぇよな
……」
端的に僕の欠点を述べたブートヒルは、机につまみとして置いてある曳光弾(黒色火薬味)を齧った。
「そんな難しいこと考えずに付き合いたい、今の自分を認めてほしい、じゃダメだったのか?」
「
……」
「アンタが石膏頭野郎に求めてたのは、多分そういうのだろ? あの石膏頭野郎も、素直にそう言われたんなら検討はしたかもしんねぇぞ」
「
……そっか」
僕には自分自身の全てを受け入れてもらった経験がない。意見の開示というものはものすごい恐怖を伴うのだ。ブートヒルはごく例外的で、復讐とかいろいろなものを共有しているからさほどそういったプレッシャーを感じないだけなのだ。
「僕、治されたかったんじゃなくて、愛されたかったんだ
……」
僕は突っ伏した。酒が涙腺を緩めた。熱いほどの感情の昂りが突き上げてきた。僕は泣いた。
「ああっ、あーっ! あーったく!!」
ブートヒルはめんどくせえなこいつ、という声音をしつつも僕の肩を叩いた。
「ったくもうしょうがねえな、泣け! もう今日は泣け! 泣いて忘れろ! そんでちゃんとオスワルドの件調査しろ!」
「ゔゔーっ」
「そんで元気が出たら、石膏頭のとこに話しに行け! 多分石膏頭の野郎はまだアンタのこと好きだし、アンタもまだ石膏頭のこと好きだろ!?」
「ゔゔっ」
「あーもう、とりあえず今は何も考えんな! 飲め! 飲め!」
僕は飲んだ。飲みまくった結果勘定ができなくなり、怒声を上げたブートヒルに引きずられて店を出た。あとで立て替えなきゃな、と思いながら僕は意識を失った。
―― (引用終わり)
(数日後の私)
具体的な続きのあらすじとしてはね グランニスタ-Ⅴにある🔫のアジトになんとか連れて帰られて水を飲まされて酔いを醒ますんですけど、もう終電ならぬ終宇宙艇がないので明日帰ろうってことでまとまるんですよ
まあ🔫は何かここでしてくるような人間じゃないしな、と思って改めて初めて訪れたアジトを見て見ると、銃とか腕パーツとかの手入れをしてそうな作業机区画のほかに、明らかに空間が広く取られたスペースがあるんですよ
で、そこには床にぽつんとローテーブルと、人をダメにしそうなタイプのクッション、そして壁には大きめのスクリーンがかかっている。
「君って、映画を見るのかい?」
「前の住民が映画好きだったんだよ。サブスクリプションが切れてっから数琥珀.紀前の映画しか見れねぇけどな」
もう今日は酒はやめとけ。なんか見るか? とリモコンをいじる🔫。他にやることもないし、ここで携帯をいじったらアジトの位置情報が履歴に残るかもしれない。
「いいよ、君の好きなやつでいい」
「つってもなぁ、だいたい趣味のモンは見尽くしちまってるからよ。アンタ何か見たいヤツはねぇのか?」
🦚は躊躇したが、酒でだいぶ自制心が緩んでいたこともあり、ぼそっと呟く。
「アニメ
……」
「悪くねぇな」
何でもなさそうな様子でリモコンぽちぽちする🔫。
「題名は?」
そう促されたので、心の奥に引っかかっていたかつ古いサブスクリプションに確実に残っていそうなタイトルを挙げてしまう。
「
……八ムスターボーノレの騎士」
言ったとたんに死ぬほど恥ずかしくなった。大の大人になって何を言っているんだろう。
「いいじゃねぇか」
ところが、🔫は何でもなさそうに笑った。
「アンタ、💫が作ったアニメは見たか?」
「え?」
「💫が作ったアニメ映画だよ。あれは本当にラブユーって感じだ!」
🔫はアニメが気になっていると言った🦚を全く気にもしなかった。
「オレもあのアニメ映画を見るまでは偏見があったんだ。ま、オレ的には悪党どもがコテンパンにならねぇのはちっと不満だったが、それでも十分面白い。アンタの八ムスターボーノレの騎士の外伝も出てたはずだが
……こっから見れっかな」
ちょっと探してみたが、見つからない。🔫は🦚を見た。「アンタ、このサブスクリプション、適当な名義で支払い継続できねえか?」
あんまりにも自然に頼まれたので、🦚はなぜか頷いてしまった。
八ムスターボーノレの騎士は面白かった。単純で、何も考える必要がなくて、面白くて、気楽だった。
「ホントに乳離れしてねぇガキ向けって感じだったな。ま、悪くなかった」
そう言いつつも心底楽しそうだった🔫に、🦚は「君は、大人がアニメを楽しんでても気にしないんだね」と言う。
「ああ? 何言ってんだよ、現実を忘れるためのアニメだろうが」
「
……そうか」
「ま、あの映画作ってた連中の受け売りだけどよ」
「やっぱりか」
「何わかったような口利いてんだ!」
そんな口喧嘩を演じて、どちらともなく笑い合った。
アジトを去る時、🦚はさりげない素振りで聞いた。「その、サブスクリプションだけど。月額だから、いくらでも使っていいから。あと
……」
「
……君の都合さえよければ、直接こっちに来てもいいかな。その、物資の受け渡しなんかもここの方が楽そうだし」
🔫はちょっと驚いた顔をしたが、にいっと笑う。
「酒も持ってきてくれるんならいいぜ」
「いいね、そう来なくっちゃ」
久々にすっきりとした気分で宇宙艦に乗り込んだ。
というわけで忙しいときは酒場とかでだけ会うんだけど、お互い次の日予定がないとかであれば物資や暗号・符丁なしでの情報交換のために🔫のアジトに来て、ついでという名目で映画を見るようになる二人。酒と映画のサブスクは🦚持ち、つまみと場所代は🔫が用意する。
適当にどちらか、もしくは両方が見たい映画を見ることもあれば、ぱっと思いつかないので適当にリモコンのスイッチを押して当たった映画を見ることもあった。ちゃんと面白い映画もあれば、そうでもない映画もあったし、お互いに意見が一致しない映画もあった。
ただ、仮に感想が一致しなくとも、「そういう考えをするやつもいるんだな」くらいでお互いに収めることができた。相手の価値観を穏やかに受容し合うというのは、🦚にとってなかなかないものだった。🦚はますます🔫に対して親近感を抱くようになった。
ある日、アクションヒーロー映画で、恋人をないがしろにして人助けに邁進したヒーローが恋人に平手打ちされるシーンが出てきた。🦚はそれをコメディとして受け取って苦笑いしたが、🔫がふと「なぁ、アンタ」と聞いた。
「ん?」
台詞を聞き逃したとか、文化的な問題で内容の一部が理解できなくて確認することは時々あったものだが、その日の🔫の質問はそのどちらでもなかった。
「アンタ、あの石膏頭とはこうやって映画見たりしたことあったのか?」
「ああ
……いや、彼には、そういう話はしたことがないんだ。彼、あんまり映画に興味なかったしね」
「マジかよ、勿体ねえな」
その時はそれだけだった。
🦚はそのとき全く気付いていなかった。元々人をダメにするクッションソファは一人掛けしかなかったはずなのに、🔫が「追加でもう一台買え」と言わなかった事実に。
そのくせ、二人で雑魚寝していたはずの🔫の家の狭いシングルベッドが、いつの間にかダブルベッドに置き換わっていることに(🔫は「壊しちまったから新しいのを買った」と言った)。
最後に、いつの間にやら一人用のクッションソファに二人がかりで背中を預けているけれど、その手と手の距離が段々と近づいてきているという事実に。
……
あの『リモコンルーレット』を提案したのは🔫の冗談だったが、相手の本心を伺い知るという意味ではなかなかの名案だった。
彼にリモコンを渡して適当にボタンを弄らせる。すると楽しくおしゃべりしたい時は面白い映画を引き当てる。そしてそういう気分ではないときは、明らかに集中力を削がれるような映画が出てきて、いずれはちびちびと舐めていた酒に酔っぱらって寝てしまう。
便利なものである。
こんな便利なやり方があったなんてなぁ
……と思いながら、肩に頭をもたせかけて眠る🦚の前髪をどけてやった。
失恋の傷が癒えてきているのなら結構だ。
ただ、一つだけ問題があった。選出される映画の中に、明らかなラブロマンスのシーンが増えてきているのだ
……。
別に、それは、まあ、悪くないと思っている。というか、イイな、と思ってしまっている。顔がきれいで、素直で、子どもアニメが好きで、オレの前でだけ無防備になるカワイ子ちゃん。うん、すごくいいな、と思う程度にはもう、ある程度機械化されたはずの頭をやられている。
故に思うのだ。
もしもこのルーレットで、本格的なラブシーンが入った映画を引き当ててしまったらどうしよう、と。
……過程をすっ飛ばして結論から言うと、今🔫の背中で縫い目をみしみし言わしているクッションソファは耐荷重量を突破し破裂するだろう。
そうなるともうこいつは買い換えていっそソファベッドとかそういうモンにしておいた方がいいのか、いやしかし二人掛けだと密着する理由がない、かといってここにベッドを持ってくるのはどう考えてもおかしい
……。
思いもよらぬ方法で相手の本心を知るすべを得てしまったことによる煩悶を押し隠す🔫を尻目に、今日も🦚は「どれにしようかな」なんて鼻歌を歌いながら目を閉じてリモコンを弄っている。アニメを好む無邪気な顔の前には、とんでもないジャックポットの大穴が口を広げて待っている。
<おわり>
それはそれとしてリモコンルーレットの著作権は自由ですので無限に書いてください
生憎と私はラブホ泊まった時にアダルトビデオの一覧画面を部屋のTVで開かされた上でリモコン渡されて「やろうぜ、ルーレット」ってにやにやしながら言われる🦚しか思いつきません
リモコンルーレット、本人に教えたら二度と使えなくなる方法っぽい(おそらく彼の運は『彼が賭けた方向に世界が動く』っていう事象改変に近いブツだと思っているので、意識さえすれば当人の希望した映画を好きに引き当てられると弊ーレイルでは解釈している)なのがおいしいんだよな
※7/30 追記
おまけの後日談ツイートです。NSFW。
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