千聖
2024-07-07 14:14:00
4743文字
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プロポーズ


出会った時はまさかこんなことになるなんて思わなかったんだ。
だからこそ出会ったばかりの時の自分の態度が今ではとても嫌で少しトラウマだよ。

けれどそんなことがあったとしても君と付き合えたのはとても奇跡だと思った。
あんな想いを口からポロッと零れただけの告白なんて。それでも君は
「俺も、同じ気持ちだ。好きだぞ、類」
なんて返してくれたよね。あれから5年早すぎるのか遅すぎるのかなんて世間の基準は分からない。
でもこれからのワクワクを考えたら早い方がいいと思ってしまう。今度こそ最高のプロポーズにしよう。告白は演出家としては最低最悪なものだったからね。今こそ天才演出家として司くんに完璧なプロポーズをするんだ。

そのためにえむくんに少し協力してもらったのも仕方ない。頼れるところは頼らなくては。
少しずつ少しずつ外堀を埋めていったよ。
準備してる間は司くんのことを構ってあげられないから咲希くんや青柳くん、瑞希達によく遊びに連れ出して貰ったものだ。やはり持つべきものは司くんの人脈であり、コツコツ埋めた外堀でもあるだろう。でないと、いくら彼の大事な弟のような後輩だとしてもダークマターを全部食べ切るなんてことはしなかった。けれどそのおかげで好感度はかなりあげられたと思うよ。
まぁ、そんな昔の話はいいや。

「じゃあこの日はフェニックスワンダーランドで1日デートだね」
「あぁ!!新しいものも出来たらしいしやっぱりえむは凄いな!」

今のフェニックスワンダーランドの指揮権は全てえむくんに移っている。
なのでえむくん主催でどんどん遊園地はアップデートしていると言っても過言では無い。
昔からあるアトラクションを無くしたくはないが、しかしそのままというのも飽きが来てしまう。なのでこんな演出は出来ないか?と色々なプランを持ってこられてそれを可能な限り実現してみた。なんとかこの日までに全て工事が完了して良かったよ。


なんせ5年目の記念日なのだから。


1日遊園地を楽しんだ後はワンダーステージを貸切にしてもらった。えむくんは二つ返事で了承してくれたし、プロポーズするといえばステージの照明などは寧々やえむくんが手伝ってくれると言うので有難くその手を借りるとするよ。

裏方の仕事もある程度把握していたとしても司くんは基本が機械音痴だから照明のあれこれをタイミングよくセットするなんて出来なくて本当に面白いよね。君を輝かせる道具だから君自身が使える必要は無いし、そもそもその役目は僕のものだしね。

「類?もう閉園するから出口はあっちだぞ?」
「少しだけワンダーステージに行かないかい?えむくんには許可をもらっているから大丈夫だよ」
「ワンダーステージにか?まぁ、えむが良いのならなにかショーがあるのか?」
「そうだね。特別なショーを今からするんだよ」
司くんは小首をかしげながらも繋いだ手を離すことなく僕に引っ張られながら歩みを進める。

「さぁ、司くんは今日は観客だよ」
ステージ目の前の前列真ん中に座らせる。
「類のショーが見れるのか?」
「そうだよ。ちゃんと見ててね」
「もちろんだ!久しぶりだな!類が舞台に立つのは!」

僕がステージに立つとステージ上が光り輝く。
舞台の隅に用意していたロボたちも準備してこれまでの司くんとの軌跡をショーにする。
別れも、笑いも、怒りも、悲しみも、たった5年。されど5年分の軌跡はとても濃厚でそれまでの10何年間なんて全て塗り替えられるような素晴らしい5年間だった。
だから、これからの人生も僕と共に歩んで欲しい。
「司くん結婚してください」
ステージ上から降りて司くんの前に膝まづいて指輪の入ったジュエリーボックスを差し出す。
王道でベタだ。でも司くんは王道もベタも好きだからきっとこの演出は気に入る。
大丈夫だと信じているがやはり緊張がはしる。



「喜んで!!」


顔を上げれば涙を零しながら司くんは笑顔で僕の手を両手で握る。

「素晴らしいプロポーズだなその少し照れてしまったが、その、本当に嬉しいぞ」

「ありがとう。こんな僕だけれどこれからもよろしくね」

「あぁ、ただし条件がある!野菜もきちんと食べるんだぞ!」

「この場面でそんなことをいうのかい?よよよ

「ははっ!!少しでいいんだ。でも、俺の全ての舞台を見て隣にいて、俺を看取ってくれ。勝手かもしれないが俺は類のいない世界を生きていけないからな。そこだけは約束してほしい」

「とても難しい条件だけれど善処するよ。僕も君を置いて先に逝くなんて考えられないね君は意外と寂しがりだからね」

「あぁ!そうだ!そしてそんな俺を思い出させて引きずり出したのも類だからな!責任はとってもらう!」

「フフ。さぁ、裏で手伝ってくれた2人にも報告に行こうか」
もちろんだと言わんばかりに手を握ってステージ裏へと向かった。




(司視点)
そろそろ類と付き合って5年目の記念日がくる。ちょうど1ヶ月を切ったというのに最近の類は忙しいのかあまり一緒に居られずすれ違い生活だった。
その穴を埋めようとするように、咲希や冬弥達から連絡が耐えない。
でもこれは不安な方ではなくどちらかと言えばドキドキと何かあるのではないかという気持ちが強くなってくる。

そもそも仕事で忙しい時はもっとやつれた顔をしているし、俺の事など全くもって見ていないし気を遣うこともない。
一緒に住み始めた時はそんな些細なことで何度も喧嘩したのは懐かしい思い出だ。

けれど、朝や夜にほんの少し会えた時の類の顔はむしろ溌剌としていたし、寂しい思いをさせてごめんよ。なんて言いながらやたらと気にかけていた。

誰かと出かける時は一応誰と出かけるという連絡事項をするのだが、いいね!是非とも行っておいでよ!たまにはゆっくり会うのもいいんじゃないかな?と少しだけ寂しそうな顔なのにそれでも我慢するかのように遊びに行くことを勧めてくるのだ。

「いや、類が1人になるから行くのは辞めておこう」
「え!?いやいや、僕はほら、仕事がたてこんでるからどっちにしろ司くんとはいられないし僕も司くんと一緒にデートしたいなぁって思っただけなんだ!だから1人になるくらいなら遊びに行っておいでよ!」
類はは慌てたようにそう告げたけれどその誤魔化し方もなんか怪しいなと思っていた。
けれどそれはあえて黙っておいた。類にとって今何かをしなければならない時なんだろうと。

「なぁ、記念日の予定はどうなんだ?流石にこの日まで仕事なんてことはないよな?」
「当然だよ!!何があっても司くん優先に決まってるじゃないか!!」
「それなら良かった流石にこの日に1人で過ごすのは寂しいからな
「どこか行きたいところとか、何かしたい事はあるかい?」
「いや特には最近は一緒に居られないことが多いし一緒に過ごせるだけで幸せだぞ?」
「じゃあ、久しぶりにフェニックスワンダーランドランドに行かないかい?えむくんから招待チケットを貰ったんだよ」
「それは楽しみだな!リニューアル記念のチケットか」
「じゃあこの日はフェニックスワンダーランドで1日デートだね」
「あぁ!!新しいものも出来たらしいしやっぱりえむは凄いな!」

えむも凄いし、えむと会う時間は設けられるのか一体なんの仕事をしているのやらと少し不満に思ったのは内緒である。
この5年で類に甘やかされすぎて自分という人間がかなり甘えたな腑抜けたやつになってる気がしてしょうがない。でももう、一人ぼっちで兄として振舞っていた俺は類というとびきりのパートナーを失うことの方が怖くて仕方ない。ある意味刷り込みをされたようなものだ

そして、類の仕事とやらも当日になれば何となく分かってしまった。

「このアトラクションはお前が考えたんだろう?」
「おや?どうしてそう思うんだい?」
「こんな斬新なことを思いつくのはお前くらいだろ!俺の目は誤魔化せないぞ!!」
「フフ。でも残念だったね。新しくリメイクされたもののアイディアは全てえむくんだよ。僕はそこに脚色しただけさ」
「むぅ。そうなのか。けど、ここの仕事をしていたから忙しかったんだな?それでデート場所も俺に体験して貰いたくてここにしたんだろう?」
「半分正解で半分違うかな」

その時の類の顔は何か覚悟を決めたような顔で、俺はそれがきっと勘違いではなく期待通りのことなのだろうと自惚れるしかなくてまだ気づいてないフリをしてやろうと顔を取り繕った。

ここは俺たちの原点だもんな

閉園のアナウンスと共に類は出口とは違う方向に足を進める。
「類?もう閉園するから出口はあっちだぞ?」
「少しだけワンダーステージに行かないかい?えむくんには許可をもらっているから大丈夫だよ」
「ワンダーステージにか?まぁ、えむが良いのならなにかショーがあるのか?」
「そうだね。特別なショーを今からするんだよ」
あぁ。俺が思っていた通りだ。
きっと、大事な大事な場所で類は俺にきっと

ワンダーステージに着くなり、
「さぁ、司くんは今日は観客だよ」
とステージ目の前の前列真ん中に座らされた。
既に顔がにやけそうだ。一体どんな演出を見せてくれるのだろうか

「類のショーが見れるのか?」
「そうだよ。ちゃんと見ててね」
「もちろんだ!久しぶりだな!類が舞台に立つのは!」

本当に久しぶりな気がした。
ここの所はずっと裏方として演出ばかりだったから。ステージ上で光を浴びた類はやはりかっこよくて今日は特に輝いて見えた。


これは俺たちの物語が。俺と類だけの軌跡だ


別れも、笑いも、怒りも、悲しみも、たった5年分でかなり更新されたな。それまでは両親にすら甘えることもできなくて、頼るって難しくて分かなくて、でも類は、類だけは諦めなかった。なんだかんだワンダショのメンバーはみんな俺の事を甘やかそうとしてきたけれどだから少しは甘えられるけど俺の全てを持って寄りかかれるのは類だけなんだ。

類に見蕩れているとステージから降りて俺の前でいわゆる求婚のポーズで指輪を差し出してくる。
そして一言。
「司くん結婚してください」
これ以上ないくらいシンプルで王道だ。
こんな最高のプロポーズなんてないだろう!
今この瞬間、この場所、きっと俺以上に幸せなやつなんていないと叫べるくらい嬉しかった。


「喜んで!!」


自分の目か涙が零れているなんてわからなかった。とにかく幸せな気持ちで胸がいっぱいで嬉しくてそれが体から溢れ出たようだった。

「素晴らしいプロポーズだなその少し照れてしまったが、その、本当に嬉しいぞ」
「ありがとう。こんな僕だけれどこれからもよろしくね」
「あぁ、ただし条件がある!野菜もきちんと食べるんだぞ!」
「この場面でそんなことをいうのかい?よよよ
「ははっ!!少しでいいんだ。でも、俺の全ての舞台を見て隣にいて、俺を看取ってくれ。勝手かもしれないが俺は類のいない世界を生きていけないからな。そこだけは約束してほしい」
「とても難しい条件だけれど善処するよ。僕も君を置いて先に逝くなんて考えられないね君は意外と寂しがりだからね」
「あぁ!そうだ!そしてそんな俺を思い出させて引きずり出したのも類だからな!責任はとってもらう!」
「フフ。さぁ、裏で手伝ってくれた2人にも報告に行こうか」


もちろんだと言わんばかりに手を握ってステージ裏へと向かった。