はなおぼろ
2024-07-05 01:08:56
1944文字
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【黒キョFF】名もなき漆黒と紅き星々

 eh様作、伝説の杖で物理で殴る国一番の魔導士上と田舎から出てきた勇者壱のファンタジー話「虚哭神去」から、nittimo様が生み出し派生SS(黒剣×キョコクカムサリ)のFFになります。え、FFってこういうので良いんだっけ? FF書いたことないから分からないや……。

※方向性迷子注意

 それは紅玉が如く煌めく、紅い紅い星々ほしでした。

 星々ほしはこの世がまだ空ろである太古の昔より、神と共に存在しておりました。そして神がこの大地を、この海を、この森を、そして生きとし生ける命あるものを創りおとしていく様子を、神のいっとう側で見届けておりました。星々ほしは神と世界の行く末を見守っていくのだと、信じて疑っておりませんでした。
 しかし神は世界をすっかり創りあげた後、この大地から去ってしまいました。星々ほしを残し、たった一人で。
 それからです、星々ほしの雨が降るようになったのは。月の無い暗い暗い夜、本来ならばいっとうその身の輝きが増すそんな夜。己が姿を霞ませて、星々ほしはその身より雨を降らせました。それは去りし神を想いて哭く、涙でありました。

 星々ほしの涙が大地に零れるようになり、長い長い月日が経ちました。途方もなく長い長い年月が過ぎました。
 星々ほしはその間、多くをその紅き瞳で見てきました。しかしその全ては星々ほしをそよ風のように撫でるだけで、いつかの神と同じく星々ほしの元を去っていきます。
 それが虚しくて、哭いて泣いて嘆いて呪いて、また幾星霜もの時が過ぎていきました。

 ある日、夜の闇より暗い暗い名もなき漆黒が生まれました。
 名もなき漆黒は自由になりしその足で空へと飛び立ち、黒い黒いその身で、天に散りばめられた紅玉に覆いかぶさったのです。
 こうして紅き星々ほしは地上からその煌めきを臨むことは出来なくなりました。名もなき漆黒がひとつ残らずその身の内に星々ほしを抱え込んでしまったからです。
 また星々ほしの雨が大地に零れることもなくなりました。名もなき漆黒がその身で全て受け止めているからです。
 その代わりに、五彩に輝く双星が夜空に浮かぶようになりました。きっと名もなき漆黒が紅き星々ほしを慈しんでいる証なのでしょう。

 名もなき漆黒が紅き星々ほしのもとを去ることは、決してありません。長きに渡り独りだった星々は、漸く寄り添う存在に巡り会えたのです。
 姿は見えずとも星々ほしは、これからも多くをその紅き瞳で見ていくのでしょう。独りで虚しく寂しかったそよ風も、二人でならば。

 嬉しくて、咲いて笑いて実りて祝いて、こらから幾星霜もの時を共に過ごしていくのです。

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「ええ、何じゃそれ知らん……

 占い師のうたは、思わずそう零していた。
 酒屋の近所に住む子供たちがやってきたかと思ったら、うたにこう尋ねてきたのだ。今は見えなくなってしまったけれど、空には紅い星々ほしが煌めいているのだろう、と。
 そんな話は聞いたこともないと首を傾げれば、童話集を取り出して渡してきた。その中の一篇が、先程の物語ということだ。

 いや、やっぱり知らん。

 知らないが、紅き星々ほしと名もなき漆黒が何を指しているのかは判る。世紀の魔導士様が物理で振るう伝説の杖と、顔見知りであるヨリイチが夜中にしれっと抜いていた、なんとなく意味がありげだが最終的に意味はなさそうな滅という字が入った黒剣のことだろう。
 魔導士様が書かれた論文をきっかけに、彼らの周辺がここのところ騒がしかったのは知っているが、白杖と黒剣が童話になっていたとか本当に知らない。著者は誰だと表紙や目次に背表紙など確認してみたが、記載がなかった。名無しの権兵衛かよ。
 近所の子供たちには「占い師なのにお星さまのこと知らないの?」などと占い師であることを訝しがられたが、占い師は今見えている星で占うから問題ないと適当に言いくるめておいた。そもそもうたは亀卜を用いた占い師であり、占星術師ではない。知らんもんは知らん。あと夜空に五彩に輝く双星など浮かんでいない。え、浮かんでおらんよな?

 後日、魔導士様とヨリイチと顔を合わせる機会があった。その時にうたは童話集の話をしたのだが、二人とも「何それ知らん」という顔をしていた。
 結局あの童話の出所は分からず終いであった。魔導士様の論文に目を通した人から、徐々に内容を変えながら伝わってたものが、どこかの童話作家にインスピレーションを与えたのだろう。
 もしかしたらこの童話集に掲載されている作品だけではなく、創世の時代より在りし伝説の杖と、なんとなく意味がありげだが最終的に意味はなさそうな滅という字が入った黒剣の物語が、どこかで綴られているのかもしれない。

 今日も今日とて酒屋に入店しようとしたうたの頬を、そよ風が優しく撫でていく。
 世界のどこかで生まれた幼子たちのきゃらきゃらと笑っている声が、泣きたくなるほど切なく優しいその風に乗って、聞こえてきたような気がした。