ちょろ
2022-09-10 18:21:02
1296文字
Public サイマヴェ
 

小さくて危険で可愛いいきもの

CHRさん(https://twitter.com/chr_erotica)の可愛すぎるイラストに短文をつけさせていただいちゃいました🤗
ちいさい🐺にめろめろな🌪。

「動きはよくなってきましたがまだ機動があまいところがおおくて」
 膝の上で小さい生き物が一生懸命報告している。ピート〝マーヴェリック〟ミッチェル。大佐。三歳児ほどの身長にオオカミを思わせる耳と尻尾のついた、米国海軍の誇る天才アヴィエイターである。数々のミラクルを成し遂げて困難な任務から生還した彼は今、航空司令官たるボー〝サイクロン〟シンプソン中将の直属となり、教官として、選ばれたトップガン卒業生に特殊戦訓練をしている。司令官室のソファに座ったサイクロンの膝の上に座ってその報告中なのだが、今日も自在に空を飛び回り教え子たちを好き放題キルしてきたせいで眠いらしい。
 もちろん普段はこんなことにならないけれど、マーヴェリックは完全にサイクロンになついている。膝の上にすっぽり収まって安心してしまったのだろう。
「あしたは、もうすこし……
「大佐?」
 優しい声に、下がりかけていた瞼と耳がピクっと上がる。が、またすぐにそろそろと下がっていく。
「もうすこし、くうちゅうせんの……まにゅーばー…………
「マーヴェリック」
「すみません……ねむ……くて……
 コテ。
 そう音を立てそうな様子で、マーヴェリックが寝落ちた。ぺたりと耳が下がり、薄く開いたままの口から穏やかな寝息が聞こえ始める。小さな身体をピッタリとしたフライトスーツに包んだ姿でサイクロンに身体を預け切って眠る姿は大層可愛らしい。冷静沈着と評判の司令官もこれには思わず笑みをこぼした。
 ちなみに彼は可愛いなりをしているがその実、彼自身が言い張るように大変でんじゃらすな生き物でもあり、ほとんど他人に懐かないし、攻撃的な性格をしている。見た目で舐めてかかると空では容易くキルされ、地上では鋭い犬歯を持った歯に容赦なく噛みつかれる。そんな彼が安心し切って寝落ちるほど自分に懐いている、と言うのはサイクロンにとって非常に幸せを感じることだった。
 アイスマンから託された当時は怯えられた上にこちらもうまくやっていける気がしなかったのだが、今となっては遠い昔の話のようだ。
「失礼します、先程の、……?」
 ノックの音と呼びかけのあと許可を得て入ってきたウォーロックに向かい、声のボリュームを下げるようジェスチャーする。ソファに座って振り返った上官しか見えていなかった彼は言葉を切ってからそっと覗き込み、得心した。
「報告中でしたか」
「ああ。途中で眠ってしまってな」
「今日も楽しそうに飛んでいましたからな。毛布を持ってきましょうか」
「ああ、ホットミルクも頼む」
「了解しました。蜂蜜をたっぷり入れてきますよ」
「頼んだ」
 と、二人が見ている前で、マーヴェリックの口の端から唾液がこぼれ出た。
 上官二人の眦が一段と和む。
((可愛い))
 小さな生き物は時に彼らの頭痛の種にもなるが、間違いなく日常の大いなる癒しだ。取り急ぎ、とウォーロックが持ってきた毛布をかけて、サイクロンは可愛い狼に身体を貸したまま書類の確認を始める。
 マーヴェリックは雲の上に浮かんだ大きくて心地よいソファの上で眠る夢を見ていたそうだ。