yossy
2024-07-03 19:49:11
1440文字
Public 自創作
 

ウルトラマリン

覚醒の潮騒のネタバレ有り二次創作
HO2探索者のSS、相方さんの名前も含む
前日譚と後日談の妄想

明日食うものに困っている。
家が火事で焼けてしまった。
家族が病気で助けてほしい。

ここ、第二区域では珍しくない悩み、不平不満。
食料が余っていれば分け与え、
空き家があるならそこを当て、
治療が必要なら医療班に通す。

ただ、こんな場所では限界がある。

余らなければ奪うしか無い。
空き家が無きゃ協力してくれる奴に頭を下げるしか無い。
施しようが無ければ延命が精々。

救えない者、救いきれなかった者だって沢山いた。
溢れないよう、溢さないよう、必死だった。

管理塔の役人共は頼りにならない。
飢えた孤児がいるのに大して動きやしない。
俺から全部奪ったのはいつも管理会アイツらだった。
警備隊との衝突の度に意見したが聞き入れられなかった。

沢山の人を助け、沢山の人を見捨て、
沢山の人に慕われ、沢山の人に嫌われた。

俺は、俺自身は、誰が救ってくれるのだろう。



・・・



潮の香りと漣の音を全身に浴びる。
飲み込まれそうな感覚は依然あるが、それでも陽の光を浴びて輝く青い海を眺めるのは好きだった。

あの一大騒動の後は大変だった。
地響きと壁の崩壊、精神不安等々、負傷者達の対応。
治安維持と食料の分配、区域の違った人間同士のいざこざの仲裁など、警備隊の協力はあれど暇がないほど忙しい日々だった。

数週間は前線で動き回っていたが、過労によりみんなの前でぶっ倒れ、マリ姉とレオンにしこたま怒られ、無理やり休暇を捩じ込まれた。
何処にいても手を貸そうと動いてしまうため、釣り道具なる物を渡され、今こうして海を眺めながらぼんやりと時間を浪費する。
バケツには魚が数匹。
食えるかどうかは後で調べてもらおう。


少し前までの出来事を思い出す。
いつでも思い返せる、あの1週間ほどの出来事。
どれも取り溢さずに来れた幸運。
下手したら死んでいたかもしれないし、殺していたかもしれない。
俺一人じゃ叶わない事を、全部仲間たちのおかげで成し遂げられた。
あの夢も、もう見ていない。
両親を感じられたからだろうか、少し寂しさはあるが、今はこれでいい。


鳥が頭上を飛んで、海面に向かって堕ち、魚を咥えて再び上昇した。
適当に釣り糸を垂らしても次から次へと魚が釣れ、そのうちバケツは魚で満たされる。
釣りを切り上げてアジトへと帰っていく。
多少瓦礫で舗装したものの、危険区域に変わりはない為、気配に気をつけながら道を進む。
ふと、光る物を見つけ拾い上げる。
緑の石ではなく、いくつかの宝石がずた袋の中に収められていた。
野生生物がゴロツキから持っていったのか、まぁそんな事はどうでもいい。
綺麗な青の石に魅入られ、適当にポケットに突っ込んで森を後にした。

帰宅後、反乱軍の仲間と魚を焼いて分け合った。
大喜びする仲間を横目に、レオンに話しかける。
経緯を説明しながら宝石を見せる。
「これの名前を知りたいんだが頼めるか?」
調べ事が苦手な事を知っているレオンは、ため息をつきながら渋々了承してくれた。

名前どころか簡単な説明付きで返事が返ってくる。
布で丁寧に磨き、清潔な布に包んでおく。

「リュー!」
忙しなく働く彼女を呼び止め、布ごと渡す。
倒れた事を聞いたのか、体調について聞かれるが、心臓が飛び出そうな為、話を続ける。
「これで、海描いてくれ。
きっと綺麗な青が塗れると思うから。」
布の中身を見た彼女は、海を見た時と同じ輝いた笑顔を見せてくれた。