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溶けかけ。
2024-07-01 22:56:17
1642文字
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ほぼ日刊
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彼女には敵わない
水神時代に怖いから一緒に寝よう!と言ってきたフリーナと一緒に寝るヌヴィレットの話です。
オチもヤマもない。
「だ、だめだ!絶対、絶対、一緒に寝るんだからな!」
ヌヴィレットの寝巻きの裾を引っ張るフリーナ。
こんな姿を民衆に見られてしまった日には数日落ち込むことが予想出来るのに、なぜ彼女はそれがわからないのだろう、とヌヴィレットはため息をついた。
「はあ
……
よく考えてみたまえ。君と私が共寝などしたらあらぬ噂が立つことなど火を見るより明らかだ」
ヌヴィレットが呆れたようにフリーナに振り返りながら、やんわりと寝巻きの裾から手を外す。伸びてはいないようで一安心だ。
「で、でもぉ
……
」
涙目で訴えてくる少女の姿をした神はこうして、泣きついてくることが多々あった。
「フリーナ殿。私とて、休息を必要としないマシナリーではない。故に、ゆっくり休みたいという人並みの願望も持っている」
きっぱりと言い切ったヌヴィレットにフリーナは残念そうに肩を竦めた。
「
……
わかったよ。キミの貴重な睡眠時間を削ってしまって悪かったね」
とぼとぼと部屋へと戻るフリーナになんとなく悪い気もしたが、子どもではないのだから甘やかす必要もないだろう、と自身を納得させた。
数時間後。
ヌヴィレットは眠れずにいた。
ベッドの上で何度も寝返りをうってみたり、枕元に置いていた法律の本に目を通して見たものの、さっぱり眠気はやって来ない。
「はあ
……
」
理由には既に検討がついている。
寝る前にフリーナの頼みごとを断ったからだ。彼女は隠せていると思っていたのかもしれないが、彼女の心は恐怖で波立っていた。
何故かは知らない。
恐らく、ヌヴィレットが知ってはいけない、もしくは知る必要のないことであるからだ。
「まったく
……
手のかかる
……
」
ヌヴィレットは意を決して起き上がると部屋を後にした。向かうは最上階のスイートルームだ。
「ヌヴィレット
……
?」
「ごきげんよう、フリーナ殿」
部屋の扉をノックされたかと思えば、仏頂面で枕を持ったヌヴィレットが立っていた。
「え、えっと
……
?」
「失礼する」
女性の部屋に押し入ることが紳士としてあるまじき行為なのは理解しているが、彼女はこうでもしないと本音をしまい込んでしまうことも短くない付き合いで分かってきた。
そもそも、このフリーナという神は尊大に振る舞ってはいるが思慮深く、警戒心が強い
――
そして何より脆いのだ。
「どうかしたかね?」
困惑する彼女を追い越して、ベッドに横になる。横暴以外の何物でもないが、彼女にはこれがよく効く。
「はあ
……
なんでもない」
フリーナはため息をつくと諦めたように横になり、すぐさま寝入ってしまった。
寝る前なのだから当然、普段のメイクはしていない。そのためか、少し幼く見えた。
「おやすみ、フリーナ殿」
化粧に隠されていた隈を一撫でしてヌヴィレットも眠りについた。
「おはよう
……
もう起きるのかい
……
」
寝ぼけ眼が半身を起こしたヌヴィレットに向いていた。外は夜中から降り続く雨のせいで薄暗い。
「ああ。仕事をしなければならないのでな」
「ふわぁ〜
……
今日は公休日じゃないか
……
キミも休みに決まっているだろう
……
」
フリーナがヌヴィレットに腰抱きつく。
「フリーナ殿。離したまえ」
ヌヴィレットが言えば、フリーナがぐりぐりと頭を押し付けた。
「んぅ
……
上司命令だ。今日は仕事禁止だ
……
」
そのままヌヴィレットの腰に顔を埋めると二度寝を始めたフリーナに彼は白旗を上げる。しょうがなく、フリーナを腰から慎重に引き剥がすとそのまま静かにベッドに体を戻した。
ヌヴィレット本人も毛布をかけ直して隣で横になる。
すやすやと健やかな寝息を立てる神は、やはり幼子のようだ。
ヌヴィレットは心地よい雨音に耳を傾けながら目を閉じた。こんな日も悪くはないな、と思いながら。
ああ、やはり
――
彼女には敵わない。
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