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雨宮水月
2024-07-01 19:06:20
1417文字
Public
FTN
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亜種聖杯戦争Romania アサシン陣営幕間
Fate Table Night アサシン陣営の幕間
よその子をお借りしています。
(2021年9月の作品)
パチ、パチッ。
火の粉が風に乗って天へ上がる。
行き先を妨げていた鍋は簡素で小さいレンガの台に乗せられ、焚き火はアイクの体温を下げないようにと高く夜空へ燃え上がる。
暖かく強い光が、彼を守ろうと必死になっている。
「さて。これだけ余りましたからね
……
朝ごはんには十分でしょう。ちょっと少なめに作ってて良かった。リンドウたちが明日の分まで食べてしまうかと
……
」
その傍らでアサシンがいそいそと片付けをしている。つい先程まで奥の湖で苦痛に悶え、身体をくの字に曲げながら声にならない叫びを上げていたのに。
苦痛、吐血の原因はわかっている。
わかっていても、二人は何もしない。
アサシンは拒まなかった。
それがアイクにはわからない。理解し難い。この狼女は何故こんなにも耐えることを、苦しむことを、すんなりと受け入れているのだろうか。
「
……
? どうしましたか、アイク」
ふわりと銀の髪が月夜に煌めいて、星が散りばめられたようなまつ毛をパチパチと弾かせて笑いかけてくる。まるで母親のように、優しい、包み込むような声色で名前を呼ぶ。愛おしそうに。
別に血が繋がっていることは否定しないが、彼女は正しくは母親ではない。
あの人は死んだのだ。誰にも代わりは出来やしない。何故無意味なことを続けるのだろうか。
いや、それらについて、彼女への疑問について、考えを巡らすことこそ時間の無駄だ。
懸念事項は多い。だからこそ、優先順位をつけて整理しながら管理していけば良いのだ。
全ては実験のために。
「シールダーと何を話した?」
抑揚のない、興味もなさそうな、ただの事実と情報を取り込み分析する機械の音。
アサシンは相変わらずのマスターに苦笑してから、丁寧に、一言一句違わずシールダーとの会話内容を伝えた。と言っても、一方的に告げられただけの言葉だ。それはコミュニケーションとは言えない。
「
……
裏切らないとは言われましたが、それこそ油断させるための囮。甘言だとわたしは判断します」
「なら、警戒しながら接することだな。
……
アンタ、仲良くしたいと思ってるんだろ」
ぴくり、と肩が小さく跳ねて一瞬だけ動きが止まる。静かに片付けていたが、ゴミ袋がガサガサと大きく音を立てた。
顔が熱くなる。図星だ。
わたしは、なんてことを考えていたのだろう。
わたしは、そんなことをしたら。
「
…………
っ、そうですね」
一宿の恩は忘れない。守り続けてくれたことも忘れない。
だから、借りを返したら。すぐにでも。
離れなければ。突き放さなければ。嫌われなければ。
───どんな形でもいい、アンタの最後は俺に見届けさせてくれ。
「仲良く
……
出来なさそうですけど」
狼は、嘘つきである。
狼は、ずる賢いものである。
飼い主はその力ない笑顔を見て、ただ一言。
「アンタの好きに行動すればいい」
嘘つきだろうがなんだろうが、どうでも良さそうに吐き捨てた。
「ヒトの世界では、約束って
……
破るものですよね?」
雲間から差し込む月光は、虚ろな目を鈍く輝かせる。無理矢理奮い立たせようとしているその光さえ、彼女は吸い込んでしまう。
「ていうか
……
狼との約束なんて、もう覚えてないか!」
全部全部、吸い込んで、口に含み、噛み砕いて、ごくりと。にっこりと。
腹の中に全部つめこんでしまった。
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