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ふみかぜ@壁打ち
2024-07-01 14:06:25
3584文字
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【6/30無配再録】円満祝いのワンステップ【読切ドラロナ/ョン誕】
ョンくん誕生日おめでとう! そして6/30のドロオンリーありがとうございました!/6/30イベントに頒布した無料配布本の再録です/できてない読切ドラロナ前提の、ョンくん誕生日の話/CP要素は薄味/捏造色々、「よく死ぬ」より前の設定の為ツチノコ、かぼちゃはお休みとなります
『来週の月曜、退治の依頼が入ったからお前も来い。泊まりがけになるから準備しろよ』
『え?
無理だよ?』
『何でだよ』
『だって、ジョンの誕生日じゃないか』
『ロナルドくん?』
『はやくいえ』
――
退治人君とRINEでそんなやり取りをしたのが、先週の金曜日のこと。
◇
壁時計の針が真夜中の十二時を指す。日付が変わり、大事な大事な特別な一日が始まった。
「ハッピーバースデー、親愛なる私のジョン!」
「ヌー!」
私の肩の上で喜びの声を上げる愛しの使い魔を撫で、パーティーの飾りつけが終わった食堂を共に後にする。向かう先のキッチンでは型に入れておいたシフォンケーキが、ちょうどいい感じに冷めている頃だ。生地に角切りのリンゴをたっぷり混ぜ込んだケーキは間違いなく会心の出来となっているに違いない。
「今日は深夜から深夜までお祝いしよう。寝てる間も一緒に素敵な夢を見ようじゃないか!」
「ヌヌー!」
勿論、今から食べるケーキやお茶は序幕。一昼寝た夕方からがお祝いの本番だ。料理もゲームもスキンシップも、彼の望むままに何だってしようとも。もちろん、ジョンが会えるのを楽しみにしているゲストの歓待だって存分に。
「おや、ロナルド君からだ」
シフォンケーキに添えるクリームを仕上げようとするところで、そのゲストからのRINE。その内容に自然と笑みが浮かぶのを感じながら、肩の上から覗き込もうとしているジョンへ画面を見せた。
「十八時には来れるそうだ。楽しみだねぇ」
「ヌン!」
「『プレゼント、何がいいとかあるか』
……
だそうですけど、ジョンさん?」
「ヌー
……
ヌンヌ、ヌンヌヌイイヌン」
「ようし、『君のセンスにお任せするよ』と。退治人君よ、存分に頭を悩ませるがいい」
「ヌッホッホッ」
送った返信にロナルド君が頭を悩ます姿を想像しながらジョンと笑い合う。あのおかしな人間がどんな贈り物を持ってくるのか、予想が付かないのがまた楽しい。
「
――
それにしても、この間は驚かされた。まさかロナルド君がジョンの誕生日を知らなかったとは」
「ヌー」
クリームを混ぜる間、話題に上るのは先週のやりとりのこと。
「言ってなかったのだから当然なのだが
……
勝手に分かっているものだと思っていたな。知らん振りをしているのは、てっきり退治人として線引きをしているとばかり」
ジョンと使い魔契約を結んでからずっと、私から言わずともジョンの誕生日には数え切れない程のお祝いが届いている。そこには当然のように我が一族を信奉する人間からの貢ぎ物や、彼の故郷で別荘を管理するチュパカブラやアルマジロ一同のメッセージカードもあった。それでつい、私たちを知る者は、ジョンの誕生日も聞き及んでいるに違いないと無意識に思い込んでいたのである。
「あれ、ということは彼、私の誕生日も知らない?」
「ヌーヌヌ」
クリームに角が立つ様にOKサインを出したジョンがそうかも、と頷く。
「というか私もロナルド君のを知らないな
……
聞いたら教えてくれるかなぁ」
「ヌンヌ、ヌイヌヌヌーヌ?」
「ありがとうジョン。いざとなったら存分の可愛さアピールで情報を引き出してくれるかい?」
「ヌン!」
彼が城に乗り込んでから色々あってコンビを組むことになり、少しの月日が過ぎたがまだまだ知らないことばかりだ。例えば、可愛さ極まった尊き存在とはいえ吸血鬼の使い魔たるジョンの誕生日を知らなかったことを悔い、何としてでも都合を調整しようとするチョロ、情の厚さとか。新たな顔を知ることが面白くもあり、今まで知らなかったことが悔しくもある。
私のジョンを祝う為に、肩で息を切らしながら駆けつけるロナルド君の姿を想像する。退治人のプレゼント選びのお手並みを拝見するのが、今から楽しみだ。
「
――
よし」
いつもより大きめに切り分けたケーキを皿に盛りつける。余ったリンゴの一部は木の葉や花の形に飾り切りして、他の部分は昼が明けた後の料理に使用する予定だ。
「さて、クリームを添えて
……
さぁ、今日はカロリー無用だよジョン。存分に召し上がれ!」
「ヌー!」
両手を広げて全身で喜びを表しながらケーキを口にするジョン。美味しいと歓声を上げる姿に私もこの上ない幸せを感じながら、今年の七月一日も素敵なものになると確信を得るのだった。
◇
「
――
何で死んでるんだよ」
「ヌー」
夜明け前に退治の仕事を片付け、仮眠を取ってから当日まで決められなかったプレゼント探しに奔走すること半日。伝えていた十八時ギリギリにどうにかドラルク城へ辿り着いた俺は、肩で息をしている呼吸が落ち着くのを待ってから、逸る気持ちを抑えてゆっくりと扉を押し開けた。
――
その先、玄関ホールから上階へ通じる階段の踊り場に、塵の山と化した吸血鬼とおろおろと歩き回るアルマジロを目にすることになるとは。全く、今回もまた呆れるような死に方をしたのだろうと思わず溜め息が出る。
だが、お陰で程よく緊張が解れた。階段を上って踊り場まで移動し、手を挙げてジョンへ声をかける。
「あー
……
よう、来たぜジョン」
「ヌッ、ヌヌッヌイ、ヌヌヌヌヌン!」
「お誕生日おめでとう。よければプレゼント貰ってくれ」
「ヌーイ!」
階段の段差に腰かけ、手提げのポリ袋から買ってきたものを取り出していく。そこで死んでる奴はその内に復活するだろう。
「まずはこれだ。シンヨコ限定、大仏くんパンチングキーホルダー」
「ヌ
……
? ヌ、ヌヌヌヌー」
「それからドーナツ一〇個セット」
「ヌー! ヌヌヌヌーヌヌヌヌヌン!」
「ははっ、どういたしまして」
お店で詰めて貰ったドーナツの箱を見せると、ジョンが一際高い喜びの鳴き声を上げる。両手を振って背伸びする姿が可愛い。行列で好奇の視線を浴びながら買いに行った甲斐があった。
「折角だし今から食べるか?」
「ヌー!」
箱を床に置いて開封すると、ジョンはヌンヌンと鼻歌を歌いながら上半身を突っ込みドーナツを一気に二個取り出し、いそいそと食べ始めた。うんうん、やっぱ最初はオールドファッションとかポンデだよな。分かるぜジョン。
「美味いか?」
「ヌン、ヌイシー!」
「そいつは良かった。
……
にしても」
未だ再生する気配を見せない塵の山を一瞥し、呆れの溜め息を吐く。
「こいつ、何でこんなに長く死んでんだよ。時間的に起きたばっかりだろ?」
二個を完食し、次のドーナツに手を付けようとしたジョンが、少し気まずそうに身振り手振りで説明しようとしてくれる。最近になって少しずつ読み解けるようになってきたマジロ語に耳を傾けてみると。
「
……
つまり、日が上り切るまで夜の準備やらゲームやらしてたせいで寝不足になり、死亡回数が完全にリセットしなかったってことか」
「ヌン」
「バカだろ」
吸血鬼ドラルクが使い魔のジョンと深い親愛で結ばれているとはいえ、はしゃぎすぎだ。
「何でそんなガバってんだ。雑魚化してから初めてのお祝いって訳じゃないんだろ?」
そーなんだけど、と困った様に首を傾げたジョンは、口元に両手を当てて内緒話をするみたいなジェスチャーをする。合わせて耳を貸すように頭を下げてみると、聞こえてきた囁き声の内容に身体が強張った。
「ヌヌヌヌヌヌヌ、ヌンヌ
……
ヌヌヌヌヌンヌ、ヌイヌイヌヌヌヌヌヌヌ、ヌヌヌヌヌ」
――
ドラルク様も、ヌンも。ロナルド君が、お祝いしてくれるのが、嬉しくて。
「
……
だから、余計にテンション上がりすぎたって、ことか?」
「ヌン!」
「マジかよ
……
」
元気よく頷いたジョンにゆっくりと上体を起こして、額を押さえる。急に頬が熱くなってきた。
このロナルド様に祝われるなんて光栄だろ、なんてメディア向けのムーブを見せる余裕もない。主人とコンビを組んでいるとはいえ吸血鬼退治人に純粋な好意を向けてくる使い魔も、己の貧弱ぶりを見誤る程に張り切った吸血鬼も。お祝いしに来た方を喜ばせてどうする。
「はー
……
よし。このままじゃジョンに悪いし、仕方ないな」
保冷バッグに入れておいた非常用の赤いパックを取り出す。復活したらまた死なないように、ジョン共々ダイニングへ運んでやるか。
◇
「復ッ活
……
! すまなかったジョン、君の誕生日だというのに私としたことが。これはデザートを追加しなくてはね」
「ヌッホッホ」
「ロナルド君も助かったよ。
……
ところで、その血液って」
「あ? あぁ、囮用の血液パックだよ。結局使わなかったけどな」
「へぇ。もしかしてだけど、その血って」
「俺の血だけど。っ、おい何死にかけてんだクソ雑魚!」
「えっ、あ、ごめん、意識なかったのが勿体なくってぇ
……
!」
「ヌヌヌヌヌヌ
……
ヌンヌイ」
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