【極楽焦土】

『B'ASH』現行未通過×

アマヤメの独白

ノノバナ アマヤメという個体にとって、世界とは限りなく無関心を向けるモノだった。滅びても栄えても何も思わず、強いて言うなら復讐のために存続はしてほしい程度。
燃え盛る憎悪に焼かれながら、彼は怨嗟を抱えてそこを歩いていた。歩いた道に焦げた灰を遺し、それを恥じながら生きていた。昏い炎の中で、ずっと孤独に丸まっていた。そうして彼は燃え尽きるはずだった。


────眩い炎が、アマヤメの前に現れるまでは。

それは、美しい欲望だった。自らのためだと言い切りながら、優しい顔で父親から受け継いだ黒い灼熱。大事に渡された意思を抱え、自分を燃やしながら周囲を照らす。優しくて暖かくて、輝きの衰えない救済の化身。ホノスソ リンは、そんな炎を掲げていた。

落雷のような衝撃が走った。アマヤメも自分を燃料にしていたが、リンとは意味も目的も違う。リンの熱は温暖を与え、アマヤメの熱は苦痛を得る。真逆で素晴らしい炎に魅せられ、焼き尽くした愛が甦ろうとする。あの子の傍に居たい、あの子の炎を見ていたい。そんな、淡くて情けない恋心。

アマヤメは後退った。自分のように悍ましい炎が、彼の炎に近付いてはならない。あの炎は崇高なもので、復讐鬼がその光を受けては失礼だ。今までよりも距離を空けて、邪魔しないよう我慢しなければ。


……我慢? 自分が、我慢だと?
アマヤメは驚いた。弟の今後を想い、書き遺しを綴りながら目を見開く。未だ自分に、復讐以外を求める心があったのか。貴方に見惚れてしまったと書いた文字を見ているとなんだかむず痒くなり、修正テープを貼り上から憧れたと記載し直す。

この手紙は誰が見つけるだろう。見つけてもらわねば困るため、先に誰かに渡しておこうか。リーダーは駄目だ、きっと先に読んでしまう。シオカワさんも候補には挙げられない、恋人のことで忙しいだろうから。カンバラさんは重症だし、研究部の忙しさはシオカワさんと同様だろう。そも、上司に頼むのは気が引ける。レオには頼めないし、警察の手も煩わせたくない。

ならばやはり、ホノスソさんが適任だろう。彼は約束をしてくれたし、自分の炎を認めてくれた。決戦前に場所を告げるか手紙を渡し、全てが終わって落ち着いたら読んでほしいと伝えよう。それがいい。


手紙のインクを乾かしてから、茶封筒に入れる。何も書いていない封筒を懐に入れてから、切っていた端末の電源を付ける。レオに知られると問題があるため、先んじて落としていたのだ。プライベートなコトだと言えば、追求されずに済むだろう。

全てが終わったら、何処へ行こうか。多くが沈んだこの星の、どんな所で燃え尽きようか。せっかくなら、とっておきの焦土がいい。楽園のような夢の極楽。悩みながら足を進め、布越しに封筒へ触れる。この手紙が捨てられなければ嬉しいなと、鬼の子らしくないことを考えながら。