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タイムレスブルー エヴァーブルー !R18!
①年齢操作はるまこ中学生真琴くん大学生ナナハル
②中学生ナナハル大人真琴くん
pixiv作品まとめ3
【タイムレスブルー】
がらんどうの家の中にチャイムが鳴り響く、夕暮れ時。
来客を告げるその音は家主の耳に届こうと届くまいと関係がない。
浴室のバスタブに目一杯に張られた水の中に、恍惚と身体を浸している遙はそこから動くつもりはない様だ。
どうせ、訪問者は出迎えなくてもやってくる。
そんな遙の予想通り、ぱたぱたと廊下を歩く音がして浴室の扉に小さな影が映る。
「ハルちゃん、いるんでしょ?」
ああ、と返事をするとゆっくり扉が開いて、幼い笑顔が覗き込む。
「今日はお休みだもんね。ハルちゃん」
僅かに目じりの垂れた大きな瞳。
下がり眉のおっとりとした少女の様な顔立ち。
身体より一回り大きな学生服に身を包んだ少年はよくこうして勝手口から遙の家に上がり込んでくる。
「真琴
……
名前で呼ぶな。七瀬コーチ、だろ」
「えぇ?二人きりだし、ここはハルちゃんのお家なんだからいいでしょ?」
遙は高校生の頃から近所にあるイワトビSCでアルバイトをしている。
大学生である現在もそれは続けられていて、泳ぎの得意な遙は学生ながらコーチとして生徒を受け持っている。
真琴はその生徒の一人だ。
初めて指導したのは真琴がまだ小学生の頃。
コーチとは名ばかりで好き勝手に泳いでばかりいた遙だったが、ある日、他のコーチに勝負を持ちかけられて気まぐれでそれに応じたことがあり、その時に圧勝した遙の泳ぎを見て、真琴は猛烈に懐いてくるようになった。
猛烈に、とは言っても本来控えめな性格の真琴は、姿を盗み見ては熱視線を送る程度だったが、遙の不器用な優しさにすぐ気付いたようだ。
水を怖がる真琴が泳げる様になるまで根気よく手を引いて、徐々にタイムを更新できるように熱心に指導を続け、一年も過ぎる頃には真琴は遙にべったりだった。
偶然、二人の家が極端に近かったことも災いして
……
というべきか、遙が一人暮らしなのを知ってからは、夜や休みの日など隙あらば真琴が訪ねて来る。
水泳以外にこれといった興味も趣味もない遙は真琴にねだられるままに、時に寝食を共にし、時には一緒に遊びに出かけたりしてその成長を見守った。
真琴が中学生になった現在も二人の関係は変わっておらず、毎日の様に顔を合わせる日々が続いている。
「SC休んだのか」
「うん。だってハルちゃんいないから」
「俺がいなくてもちゃんと練習しなきゃ駄目だろ」
それとも、と浴槽の中で揺れる水面を見つめて遙は少し迷ってから言葉を続ける。
「秘密の特訓、したくて来たのか」
「え、あ、あの
……
ハルちゃんとご飯食べようかなって」
真琴は顔を真っ赤にして目を泳がせた。
もじもじと煮え切らない様子で発せられた声はあまりに小さく、遙は笑みをこらえる。
「SC休んで特訓もしないんじゃ身体が鈍る。飯は後でな」
「うん
……
」
派手な水音をたてて浴槽から立ち上がると、唇を噛みしめて頷いた真琴が何だか満足気に見えて、再び笑みをこらえた。
『秘密の特訓』とはまた使い古された陳腐な言葉だ、と思う。
しかしながらコーチと生徒の禁じられた関係には常套句でもあるか。
遙は浴室を出て着替えると、真琴を連れて寝室に向かった。
部屋に入るとすぐにベッドに腰掛けて、素っ気なく告げる。
「ほら、裸にならなきゃ特訓できないだろ」
「ん
……
」
真琴は目を逸らし、何度も瞬きしては、おずおずと制服を脱ぎ始める。
下着から靴下にいたるまで全て脱ぎ捨てて全裸になる頃には、その頬は林檎の様に赤く染まっていた。
「そこの引き出しに、いつものヤツあるから持って来い」
「はい
……
」
背後の棚からローションの入ったボトルを手に取り、裸の真琴が駆け寄ってくる。
その従順なさまに、遙の劣情はどうしようもなく刺激されてしまう。
ベッドに座る遙の膝に跨って、その首に手をまわし、小さな声で真琴が呟く。
「お願い、します
……
」
その言葉を聞いて、「よくできました」とばかりに頭を撫でてやると薄い唇に吸い付く様に口付ける。
真琴はそれだけで甘い吐息をもらし、身体を震わせた。
小さな舌が恐る恐る遙の口の中へ伸びてくると、それを逃すまいと絡めとる。
裸の真琴の身体は熱く、服を着たままの遙の肌にじんわりと熱が伝わってきた。
「んっ
……
ぅ
…
」
鼻にかかった声をもらし、今にも溢れ出しそうな唾液を真琴がごくりと飲み干すのを感じて、遙は唇を離す。
「息継ぎ、上達したんじゃないか」
遙の言葉に真琴は恍惚とした表情で頷き、懸命に呼吸を整えている。
「今のでこっちの準備もできたみたいだな」
視線を落とし、すっかり勃ちあがってしまっている真琴の陰茎と胸の突起を指摘する。
口の中を這いずる舌、そして裸の敏感な肌と遙のシャツの摩擦が充分な刺激となったのだろう。
「これは
……
っ!ハルちゃんの服で擦れて
……
」
「服が擦れるだけでこうなるなら、もう何も着られないだろ」
くす、と笑われて真琴は今にも泣き出しそうだ。
「じゃあ次は
……
前と後ろどっちにするんだ?」
「えっと、あ
……
、後ろ、がいい」
「
……
わかった」
遙は真琴の尾てい骨の辺りにローションを絞り出し、それを塗りこむ様にそのまま下へと手を滑らせる。
真琴は液体の冷たさに小さな悲鳴を上げたが、ぬるぬると尻の間に指を何度も行き来させると、耐えきれない様子で入り口を収縮させた。
この秘密の特訓と呼ばれる行為は、すでに両手でも数え切れないほど行われていて、遙は手慣れた様子で真琴の秘部に人差し指と中指を捻じ込む。
「ぅ、あっ
……
!」
未成熟な少年の柔らかい筋肉は、こうしてローションの力を借りて入り口を少し慣らしてやるだけで充分に拡がっていく。
「挿れるぞ。ちゃんと息しろよ」
こくりと頷いた真琴の目には、見知った大人の上に自分だけ全裸で膝立ちしている状態の羞恥からか涙が一杯に浮かんでいる。
遙は遙で、細い腕が首に巻き付き、鼻先に桃色の胸の突起が主張する滑らかな肌を押し付けられて、すでに限界だった。
スウェットと下着をずらし自身を引き出す。
ふう、と真琴が息を吐いた瞬間にそれをぬるりと中に侵入させ一気に奥まで突いてやる。
その衝撃で真琴が咄嗟に息を吸い込むと、今度は勢いよく引き抜く。
奥に乱暴にぶつけられる快感と、内壁が引きずられるほどに擦られる快感。
自分の呼吸ではコントロールできない完全に支配された感覚に、真琴はひたすら翻弄されるしかなかった。
「これ、気持ちいいのがいつ来るかわからなくて良いだろ?」
「ひ
……
う、ぅ
……
っ
……
!」
その華奢な身体を上下に揺さぶられながら、ひぃひぃと情けない嬌声をあげて必死に遙にしがみいてくる。
遙は自身を奥深く差し込んだ状態で一旦腰を止めると、もはや自分の上に座り込んでしまっている真琴を少しだけ引き離した。
真琴の精液ですっかり汚れてしまっているシャツに軽い興奮を覚えつつ、ビクビクと痙攣している腹を撫でてやる。
「しっかり腹筋使えてるな。特訓の甲斐がある」
「ん
……
っ、うん
……
」
遙の動きが止まってもじわじわと下腹に拡がり続ける快感に、真琴の頭はほとんど働いていないようだが、次に発せられた言葉には瞬時に反応した。
「ご褒美に前も触ってやる」
「っ
……
!?だ、だめ
……
!」
その言葉を無視してだらだらと精液を垂れ流す真琴の陰茎を手の平で包み込むと再び腰を動かし始める。
「んぃ
……
っ!やぁ
……
っ!」
遙の腰が激しく打ち付けられる度にぱちゅ、と湿った水音が響いて真琴が大きく仰け反る。
陰茎は握りこまれているだけだが、真琴がビクビクと動くので結果的に擦られている状態の様だ。
「だめ
……
ぇっ
……
!ぼく、もう
……
っ!」
真琴は身体を前かがみにして、ぎゅうっと全身に力を入れた。
次の瞬間、腹の奥底から激しい快感が一気に湧き上がってきて、両足が突っ張るように伸びきる。
「ひぁっ、あぁ、あ
……
っ!!」
遙を飲み込んだままの秘部がドクドクと収縮を続け、最奥での射精を促し、それに答える様に遙は思いきり精を放つ。
圧倒的な解放感に顔をしかめつつ、ふと手の中の真琴の陰茎を見やると、そこはまだ勃ちあがったまま苦し気に震えていて、出さないでイったのか、と遙は射精したばかりのぼんやりした頭で理解した。
真琴の身体は回数を重ねるごとに貪欲に快感を得る方法を学んでいき、それはさながら本当の特訓のようだ。
あられもなく両足を広げきって脱力している真琴の中をまだ味わっていたくて、繋がったまま頭を撫でてやる。
「凄いな。子供なのにこんなセックスされてるの、真琴くらいだろうな」
感心した素直な気持ちをうっかり口にしてしまって、まずい、と焦ったが真琴の中がぎゅう、と収縮して答える。
「ちが
……
っ、これは
……
特訓だもん
……
」
「そうだな。悪かった
……
それより、真琴も出したいだろ?」
特に傷ついた様子もなかったので、自分の中で折り合いがついているのかもしれないと胸を撫でおろしつつ、手の中の小さな陰茎をゆるゆると擦ってやる。
「や
……
っ、ハルちゃんのと一緒が、いい
……
っ」
一緒に擦るの、と真琴の手が遙を制止する。
わかった、と遙は自身を引き抜き、真琴の陰茎の裏筋に擦りつける。
「ん
……
っ、僕も、触っていい
……
?」
「
……
ああ」
遙の手に小さな手が重なり、上下にせわしなく動く。
あれだけ派手にイっておいて、よくこんな体力があるものだと、その若さに半ば圧倒されていると、再びそそりたった遙の陰茎を見つめて真琴が声を震わせる。
「はるちゃんの
……
っ、すごい、ね
……
」
このエロガキ、とまたもや口が滑りそうになるのを何とかこらえた。
子供のモノと比べられ、褒められても嬉しくも何ともない。
「大人だからな」
さっさと終わらせようと、自身と真琴のモノを両手で一緒に握って擦りながら親指で先端をぐりぐりと刺激する。
「そこ
……
っ、気持ちいぃ
……
っ!あっ、うぅ
……
っ!」
真琴の中に比べれば、自分で与える刺激など大したものではないが、先程より冷静な目で見る蕩けた表情や幼い嬌声が良いオカズになっている。
「はるちゃ
……
っ、イっ
……
く
……
!また、イッちゃう
……
ぅ!」
「
……
っ」
少女の様な甘ったるい掠れた喘ぎ声が耳から脳内を犯す。
子供の身体で、まるで卑猥な動画の女優の様な台詞を吐かれて遙もたまらず一緒に達してしまった。
ふぅふぅと肩で息をする真琴に、ねぎらいの声をかけようとしばらく様子を窺う。
と、すぐにその顔はふにゃりと笑顔になって、そのまま遙の頬に口付けが落とされる。
「
……
特訓、してくれて、ありがと。ハルちゃん」
とんでもない不意打ちに一瞬で赤くなった遙をよそに、真琴はすっくと立ち上がって床に脱ぎ捨てられた制服をいそいそと回収し言い放った。
「僕、お風呂に入ってくる!ご飯一緒に食べるんだから待っててね」
部屋を後にする、制服を抱えた後ろ姿。
その太腿からは白い液体が伝っている。
細い首筋と小さな背中。
遙は大きな溜息をついて頭を抱えた。
あれではまるで
……
幼な妻、いや、古女房、通い妻?
どれも少年にふさわしい言葉ではない。
こんなことが始まってしまったのは、真琴が中学に上がってからすぐだった。
きっかけは物語の中ならばありふれた展開と呼べる、自慰がうまくできないといった類のものだ。
『アソコがおかしくて、どうしたらいいかわからない』と持ちかけられて、真琴の成長をしみじみと感じつつ、全くの他意を持たずに手伝ってやった。
いずれ全部わかる時が来るだろうし、男同士、出せないツラさもわかっていたので純粋に苦しみから解放してやろうと軽く考えてのことだ。
しかし、若い身体は快楽に弱く、真琴は何度もそれをせがむようになった。
……
犯罪に直結する異常な性癖が自分にあるとは夢にも思っていない。
昔から性的なことにそれほど関心がなく、気が向いた時に処理するくらいで何の不自由もしていなかったのに。
そのうち遙の方も、真琴の少女の様な顔立ちと、甘ったるい声、縋りついてくる柔らかな肌の感触に興奮を覚えるようになってしまった。
そもそも真琴の身長は中学生ながら160を超えていて、身体だけ見れば華奢な成人女性となんら変わらないのだから仕方ないことのようにも思える。
普段使っていない筋肉を鍛える、などという見え透いた建前で、ある時しっかり最後までしてしまってから、この行為は速く泳ぐための秘密の特訓と呼ばれるようになった。
少しでも罪悪感を減らす為に、必ず裸にするのが定番だ。
制服や、母親が買って来たであろう私服が少しでも視界に入ると、改めて自分が犯罪に手を染めているのだと気分が落ち込む。
必ず特訓のメニュー(?)を真琴に選ばせるのも重要だ。
強要しているのではない、と言い訳になる。
真琴は本当にこれを特訓だと思っているのか、それとも快楽を得る都合の良い手段を逃すまいと騙された振りをしているのか今となってはもうわからない。
遙も同じだった。
こんなことを続けていてはいけないとやめ時を探ってはいるが、求められればつい応じてしまう。
断ると真琴は悲しそうな顔をするし、もっと速くなりたいから頼むと必死に縋りついてくるのだ。
秘密だと念を押してはいるが、他のコーチに同じようなことを求められてはたまったものではないし、真琴が自分から離れていくのが嫌だった。
もちろん自分が育てた身体に他の誰かが触れるのも。
これではどっちが支配されているのかわかったものじゃない。
……
けれど。
こんな風に目の前の少年に翻弄されていれば
……
自分の抱えている問題から目を逸らすことができる。
もしかするとそれがこの関係をやめられない一番の大きな理由なのかもしれない。
……
大学生になってから、水泳との関わり方がわからなくなった。
部の方にもほとんど顔を出していない。
SCのバイトで思う存分泳いでいればそれで満足だ、そう自分に言い聞かせて
……
。
長らく物思いに耽ってしまった。
真琴が風呂から上がる前に、食事の準備をしなければ、と遙は重い体を引きずって部屋を出た。
そんな日々が続いていたある日のことだった。
大学が終わり、疲れ果てて家路を辿る。
自宅に続く長い石段、その先に見慣れた姿があった。
最上段に、ぽつんと真琴が座っている。
ジャージ姿で傍らにスイミングバッグがある所を見るとSCの帰りだろう。
いつもと違うのは酷く落ち込んだ、傷ついたような顔をしていることだった。
「真琴、どうした」
「ハルちゃん、おかえりなさい」
それでも遙の顔を見ると、真琴の顔はパッと明るくなる。
「待ってたのか?プール上がりだから冷えるだろ。中入れ」
遙はとりあえず真琴を家の中に招き入れて、温かいココアを作ってやった。
居間のテーブルの前に座った真琴は、何か言いたげで、迷っているようだ。
「SCで何かあったのか?」
「うん、あのね
……
」
真琴の話はこうだった。
SCで他のコーチ達が遙のことを話しているのを聞いてしまった。
遙が大学の選抜大会を辞退してばかりいること。
あいつはもう駄目だ、このままこの田舎で腐っていくだろう、と笑っていた、と。
遙は一瞬で頭に血が上るのを感じた。
「ハルちゃんは、大会にもう出ないの?高校の時は
……
」
目の前の真琴から、聞き飽きた台詞が出てきたので思わず声を荒げる。
「
……
真琴には関係ないだろ。そんな話がしたいなら帰れ」
「ハルちゃん、違うの
……
っ、ごめんなさい」
初めて見た遙の怒気を帯びた表情に怯みながらも、真琴は必死に訴える。
「僕ね、わかるよ!ハルちゃんは
……
!」
言葉の続きより先に、心の水面が激しく揺らぐ。
ずっと、奥底に沈殿していたドス黒い泥のような思いがふつふつと湧き上がるように浮かんでくる。
……
わかる?
一体何が
……
?
こんな子供に俺の何がわかるっていうんだ。
あいつらに俺の何が
……
。
真琴が耳にしたような言葉は、遙にも散々届いていた。
面と向かって言う勇気はないくせに、わざと聞こえるように好き勝手喚きちらされて。
『高校の頃は大会で優勝が当たり前だったのに、大学じゃ通用しないか』
『所詮、井の中の蛙
……
まあ、ハタチすぎればってやつだろ』
そう言ってゲラゲラと笑う連中は、昔、遙に挑んで負けた奴ばかりだったが、大学での情報がSCにまで持ち込まれ拡散されてるのには、見えない大勢の悪意を感じていた。
それを思い出すと蓋をしていた気持ちが一瞬で吹きあがって、目の前の真琴にまで怒りが向いてしまう。
「この話は終わりだ。今日はもう帰れ」
真琴の言葉を遮って、居間を出ようとする。
「待って、ハルちゃん
……
!」
腕に縋りつく真琴の体温が、今は限りなく不快に感じられた。
いつもこうだ。
ひとたび水から出れば、目に見えない摩擦が乾いた肌を傷つける。
誰のものかもわからない生ぬるい視線。
……
息がうまくできない。
「離せ
……
酷いことされないうちに帰れよ」
「お願い、ハルちゃん、聞いて
……
!」
目に涙を浮かべて真っ直ぐ見つめてくる真琴の顔は相変わらず天使の様で脳が混乱する。
何度も、俺に犯されてるくせに。
身体を重ねれば、こんな子供でも自分はパートナーの理解者だと錯覚するのか。
「酷いことされてもいいんだな」
真琴の背中を廊下の壁に押し付け、勢いよくジャージのファスナーを下げてやるとTシャツを乱暴に捲りあげ、露わになった胸に上半身を屈めて吸い付く。
立ちすくんで声も出せない真琴は、その行為を頭で理解するのを拒んでいるようだ。
「ここにたくさん痕つけて、しばらく泳げないようにしてやる」
がじ、と薄い胸の肉に噛みつかれて、真琴はようやく声をあげた。
「や
……
っ、ハルちゃん、やめて
……
っ!」
明確な拒絶の言葉。
額にぱたぱたと落ちてくる液体が、真琴の涙だと気付いて、我に返る。
「っ
……
悪かった
……
」
頼むからもう帰ってくれ、と告げて身体を離し、背を向ける。
真琴の足音が玄関へと遠ざかっていくのを聞いて目を閉じると、玄関の扉越しに声が響いた。
「ハルちゃん、怒らせてごめんなさい」
ずるずると壁にもたれて座り込む。
……
最低だ。
真琴は何も悪くないのに。
決して許されないことをした。
がらんどうの家の中。
結局、今の俺には何もない。
いつも俺は自分の手で
……
。
闇の中でどんなに自分を責めても苦しみが消えることはない。
何一つ解決していない問題からも、いつまでも逃げ続けられるわけがないのに。
翌日、置いていかれたバッグを真琴の家の玄関の前に届けて大学へと向かった。
もう二度と
……
あの微笑みを見ることは叶わないのだろうと思うと目の前が真っ暗になる。
それどころか近いうちに全てを明るみにされて、社会的に抹殺されることになるのかもしれない。
そうなったら、誰も知らない何処か遠い所に逃げて、そこで自由に泳ぐのもいいか。
などと現実逃避に励む遙だったが、どうしても自分の傍に真琴がいない状態を思い描くことが出来なかった。
真琴がSCに来るとは思えないが、念のためしばらくバイトは休むことにしよう。
と、思ったものの大学でロクに泳げない遙は三日ともたずに限界を迎えた。
SCに行って泳ぎたい。
それに保身ばかり考えていたが自分が今するべきことは何があっても真琴に会って謝ることだ。
日が暮れ始め、薄暗くなった家の中で、遙は自らを奮い立たせた。
勢いよく玄関を開けると、夕闇の中に佇む影がある。
「真琴
……
?」
都合のいい幻なんじゃないかと目を疑うが、家の前に立っているのは間違いなく真琴
だ。
黄昏時にその姿をぼんやりと青紫に滲ませた真琴はしょんぼりと肩を落として力なく呟いた。
「僕、もう一回ちゃんと謝りたくて
……
」
すぐにでも抱きしめてやりたい衝動を抑えて、遙は語気を強める。
「真琴は何も悪くない!全部、俺が悪い
……
」
「怖かっただろ
……
俺の事、嫌いになった、よな」
「本当に悪かった。もう二度とあんなことしないから」
矢継ぎ早に捲し立てて、最後に呟く。
「許してくれるか?真琴
……
」
「うん!ハルちゃんはやっぱり優しいね」
夕闇でよく見えないが、いつもの明るいを笑顔を浮かべている、と思いたかった。
駆け寄ってきたその身体を優しく抱きとめる。
真琴は遙の胸に顔を埋めると、大きく息を吸ってから吐き出して、ぽつりと呟いた。
「あのね、ハルちゃんは
……
優しいから」
腕の中で響く穏やかな声。
「ハルちゃんが勝つと、悲しんだり、怒ったりする人がいるのが、嫌なんだよね。きっと」
びし、と心を覆っていた冷たい何かに亀裂が入る音がした。
身動きひとつできない遙に、真琴は優しい声で語りかけ続ける。
「でもね、ハルちゃんの泳ぎを見てるみんなの目は、キラキラしてるんだよ」
「ハルちゃんはとっても綺麗で、自由で、何にでもなれるよ」
「だから、悲しい気持ちに縛られないで、思うがままに
……
泳いでほしいな」
遙の胸に額を押し付けたままの多少くぐもった真琴の言葉。
そのひとつひとつが分厚い氷の塊を溶かす。
溶けだした氷は、美しい水になって心を満たしていく。
真琴は本当にわかっていたんだ。
言語化できなかった感情。
周りの誰もが理解できなかった想い。
自分の弱さと傲慢さ、変化を恐れて前へ進めない現状。
その核心にいともたやすく触れられて、包み込まれたような感覚。
俺はきっと
……
。
一瞬で湧き上がった様々なものを処理できす黙っている遙を、真琴が不安げに覗き込む。
視線を合わせて抱きしめる腕に力をこめた。
水を得た、とはまさにこの事だ。
「俺は
……
また、大会に出ようと思う」
自然と決意が言葉になった。
それを聞いた真琴は興奮したように飛び跳ねて、大喜びする。
「ホント!?あのね!僕もね、いつか大会に出てハルちゃんと泳ぎたい!!」
無邪気な笑顔。
どうして、こんなにも。
見えない振りをしていたもうひとつの想いにやっと気付けた気がした。
性別も、年齢も関係ない。
俺よりも、俺のことを信じてくれている。
いつも側で、想ってくれて、解ろうとしてくれる。
水の中でしか生きられない俺に、地上でも息ができるようにと、
きっと神様が与えてくれたんだ。
「ああ。真琴が大人になったら、隣のレーンで一緒に泳ごう」
約束だ、小指を差し出すと真琴はもうがむしゃらに抱き付いてきて遙を振り回さんばかりだった。
「
……
ハルちゃん、大好き!!」
素直な言葉に癒される。
自覚できているのかわからないが、真琴もきっと
……
。
とにかく許されたことに安心しきっていると、真琴が急に頬を染めて、小さな声をあげた。
「あのね、ハルちゃんと大会に出られるように、もっと速くなりたい」
だから、と上目遣いで遙を見つめて、先程の無邪気な様子とは正反対の妖艶な微笑みを浮かべる。
「もっと、ひみつの特訓、したいな
……
」
グゥと喉の奥から声が出そうになった。
僅かに目じりの垂れた大きな瞳。
下がり眉のおっとりとした少女の様な顔立ち。
未成熟ながらも、遙を必死に受け入れてくれるしなやかな身体。
こんな奇跡のような存在がすでに腕の中にあって、それをいくらでも自由にできるなんて。
俺は前世でどれほど徳をつんだのか、神様のサービスが行き届きすぎてはいないか。
無言のまま真琴の手を引き、家の中へと招く。
心を覆っていたものはすでに消え去って、今はただ蒼く美しい水で満たされている。
充分な酸素が肺を満たし、地上でも深く息ができる様になった気がする。
この先、広大な海原に泳ぎ出す俺が、どれほど遠くに離れようと。
どんなに時が流れようと。
俺の視線の先をきっと照らしてくれる。
――
この小さな、力強い光が。
タイムレス ブルー after
「真琴、よく聞け」
ベッドの上に裸の真琴がちょこんと正座している。
そして不思議そうな顔で見つめてくる、とてつもなく背徳的な光景。
遙は服を脱がす前に話すべきだったと後悔した。
「真琴は、俺のこと好きか?」
「うん!大好きだよ!」
真琴は大はしゃぎで、今にも飛びついてきそうなので早めに釘をさす。
「だったら、今からするのは秘密の特訓じゃなくて
……
セックス、になるんだ」
あ、と気まずそうな顔で美しい瞳を逸らされて、遙は意気消沈だ。
「今まで騙してて悪かった
……
特訓じゃないなら、もう嫌だろ?」
真琴は問いかけに瞳を逸らしたまま、太腿の上においた握り拳に力をこめて、か細い声で訴える。
「嫌じゃない
……
嬉しかった。ハルちゃんに、せっくす、してもらうの」
「特訓じゃないってわかってたのか?」
「
……
噓ついててごめんなさい。でも、好きな人同士ですることなんでしょ?」
「
……
まあ、そうだな」
気まずそうな遙に真琴が追い打ちをかける。
「
……
せっくす、してもらえるから、ハルちゃんも僕のこと好きなのかもって凄く嬉しかった」
頬を赤らめて幸せそうに微笑む裸の真琴は本当に天使の様で、羽根が生えていないのが不思議なくらいだった。
この一点の曇りもない白さの前で、今更何かを取り繕う必要はないだろう。
思わず自分もベッドの上で正座して想いを告げる。
「俺は真琴のことが好きだ。男だとか、年が離れてるとか関係ない」
真琴の頬を染めていた紅色が耳や首筋まで広がっていく。
驚いたような表情で固まってしまっている真琴の反応が欲しくて、再び声をかけた。
「じゃあ、セックス
……
してみるか?」
無言で頷いた真琴の顔は完全に熱に浮かされていて、もはや視点すら曖昧だ。
初めて聞いた遙の愛の言葉は刺激が強すぎたのだろう。
ふにゃりと脱力した人形の様な真琴を引き寄せて、とりあえず向かい合わせで膝の上に乗せた。
いつもは息継ぎの特訓として行われていたキスも、されるがままひたすらに遙の舌を受け入れている。
長いキスの合間、本当の息継ぎが行われる度に真琴の身体はビクビクと震えて、遙の肩を必死に掴んだままやたらに仰け反るので、唇を離してみるとその原因がわかった。
すでに真琴の陰茎から放たれた精液が遙のジャージを濡らしている。
あろうことかキスだけで達してしまった真琴が心配になって声をかける。
「真琴、大丈夫か
……
?」
「はぅ、ちゃ
……
ん、ぼく、キモチよすぎ、て
……
」
呂律の回らない言葉に、ぐにゃりと芯の抜けてしまった身体。
特訓ではなくセックスだと自覚させられてから、行為の全てが真琴にとって今までとは違うものになっていた。
愛する遙に与えられる快感は、今まで感じていた羞恥や躊躇い、罪悪感を消し去り、ただ全身で受け止めるだけで良いものに変わった。
その事実と喜びが真琴の身体の感覚を暴走させてしまっているのだろう。
少し落ち着くのを待ってやったほうが良いかとも思ったが、今までの演出された積極性が無くなって、与えられる快感に心から翻弄される真琴を見て、自分を抑えきれるはずがなかった。
ジャージにたっぷりとついた精液を指で拭い取り、真琴の秘部にネトネトと塗りこんでやる。
「ほら
……
前と後ろ、どっちにするんだ?」
つい、いつもの癖で意地悪く問いかけてしまって、反省しつつ真琴の答えを待つ。
相変わらず放心している真琴はほとんど反射的に虚ろな言葉を口にした。
「後ろ
……
、ハルちゃんのでいっぱい、してくださ
……
い」
込み上げる衝動。
少年の人格までをも完全に支配した様な感覚。
たまらない優越感に奥歯を噛みしめて、自分はやはり危険な性癖の持ち主だったのかもしれないと情けなく思った。
いつもの様に何度も激しく揺さぶられて、真琴は「ハルちゃん」「気持ちいい」「好き」といった、多少頭の足りない台詞を連呼している。
自分を律することなく、浮かんだ感情がそのまま言葉になっているのだろう。
以前の様に、自分が達してしまうことをわざわざ口にすることもない。
快感を拒絶しようと身体を強張らせても、或いは快感を受け入れようと脱力しても、どちらにせよ言葉を発する暇もなく絶頂へと昇りつめてしまうからだ。
遙も遙で、以前は罪悪感とともに一歩引いて冷静になるように努めていたが、今はただ目の前の真琴が愛しくて、その気持ちをぶつけるように夢中になって腰を動かしていた。
「ま、こと
……
っ
……
」
限界が近づいて思わず名前を呼ぶ。
真琴は答える様に遙の首に手を回した。
「
……
はる、か
……
」
思いがけず名前を呼び捨てされてから、恐る恐る口付けられて頭が真っ白になる。
これが何という感情なのか、理解が追いつかない。
胸に何かが一杯にこみあげて、次の瞬間には真琴の奥深くに熱い精をぶちまけていた。
ひとつになってしまうんじゃないかと思うほど身体を押し付けあって、唇を重ね、完全に許されて解放されるのはこんなに心地の良いものなのか。
水の中にいる時とはまた違う、生まれて初めて味わう幸福感に遙はうっとりと瞳を閉じた。
行為の後を綺麗にしてやっても、疲れ果てて眠ってしまった真琴は目覚める気配がない。
これもまた、特訓だった頃との違いだ。
以前は特訓だからと何でもない様に振る舞って、無理をしていたんだろうなと改めて申し訳なく思った。
しかしそれは遙も同じだったようだ。
よくわからない緊張や、名前のつけられない感覚を次々と味わって、いつもの何倍も疲れてしまった。
ベッドに横になると満たされた顔ですやすやと眠っている真琴を腕の中におさめる。
このまま眠りにつくとしよう。
ああ、そういえば。
こんな気持ちで真琴と眠るのも初めてのことかもしれない。
けれど夜が明けて、朝を迎える時。
それもまた初めてのことで、お互いにどんな顔をしたらいいのかわからないんだろうな。
眠りにおちる寸前、遙は小さな声を出して笑ってしまった。
【エヴァーブルー】
真琴はこの春、東京の大学を卒業して地元の企業に就職が決まった。
実家の隣町にある総合体育施設。
その側に借りたアパートで一人暮らしを始める為に、準備を進めている。
高校の水泳部で部長を務めた経験から、大学でもスポーツ医学やコーチングを学び、それを生かせる職業に
……
とは思ったものの田舎町では体育施設の職員が関の山だ。
大学での4年間は勉強とバイトに必死で帰省する余裕がなかったが、卒業後は地元に戻ると心に決めていた。
小さな漁港があるだけの田舎町。
けれど、目に映る風景はすべて美しく、人々は優しさに満ちている。
やっぱり帰って来て良かった。
感慨に耽りながら実家の部屋を整理していると、やらなければいけない事を思い出す。
バッグを漁り、小さな紙袋を手にお隣さんである七瀬家へと向かうと、明かりの洩れる玄関のガラス戸を前に懐かしさが込み上げてたまらなくなった。
真琴は高校生だった頃、この隣の家の小学生、「遙」と毎日の様に顔を合わせていた。
遙の両親がよく仕事で家を留守にするため、橘家で預かることが多く、二人は年の離れた兄弟の様な関係だったのだ。
困った時はお互いさま。
このおおらかさも田舎の良い所だよな、と呼び鈴を鳴らす。
―
ハル、驚くだろうな。
はい、と声が聞こえて扉が開く。
蛍光灯に艶めく黒髪、海の様な蒼い瞳はあの頃と変わっていないが、一回り大きくなり、さらには学ランに身を包んで現れた遙の姿に驚きの声を上げる。
「ハル!すっかり大きくなったね!オレのこと覚えてるかな?」
真琴が笑顔で自分の顔を指さすと、遙はその猫の様なアーモンド形の大きな目をぱちくりさせ、小さな顎をくっと引いて何かをこらえているような表情になった。
「
……
真琴。帰ってきたのか?」
「うん!隣町に体育センターがあるでしょ?そこで働くことになったよ!」
中身は昔と変わってないな、と真琴は内心可笑しかった。
―
いつもオレを呼び捨てにして、大人びた態度を崩さなかったっけ。
東京の大学に行くと告げた時、遙は素っ気ない態度だったが、次の日から真琴を避けるようになった。
別れの言葉も告げられず上京してまい、ずっと気がかりだったので真っ先に会いに来たのだ。
「これ、お土産だよ。カニ丸くんの東京限定キーホルダー!」
好きだったよね?と差し出すと、微かに遙の頬が赤く染まった。
「別に、好きじゃない
……
!小学生の頃の話だろ」
言葉とは裏腹に、勢いよく真琴からキーホルダーを奪い取る。
素直になれない所も変わらないようだ。
「入社式までしばらくは暇してるから。またな、ハル」
積もる話もあるが、夕飯時なので感動の再会も程々にしなければ。
手を振って玄関の扉に手をかける。
閉ざされていく空間の隙間から、立ち尽くす遙がキーホルダーをぎゅうと握りしめるのが見えた。
次の日の早朝。
寝起きの悪い真琴の耳に、母親の声が轟いた。
「起きて!遙くんが来たわよ!」
驚いてすぐに部屋を出ると階段を降りる。
またな、とは言ったが昨日の今日で再会とは
……
。
そういえば学校も春休みだったか。
「おはよう、ハル」
「真琴、髪がボサボサだぞ」
開口一番、寝巻のままのだらしない姿を指摘されて素直な気持ちが口に出る。
「ホント、ハルは変わらないなぁ」
「
……
変わってる。背も伸びたし体重も増えた。鯖も前より沢山食べてる」
急にムキになって反論してきた遙の様子が可笑しくて、真琴はくすくすと笑った。
そんなことより、と遙がスマホを手に訴えかけてくる。
「真琴が働く体育センター、プールがあるんだろ。連れてってくれ」
「えぇ!?いいけど
……
イワトビSCがあるのに、わざわざ」
イワトビSCと口にしてから、すぐに懐かしい思い出が甦る。
「そういえば、ハル、泳ぐの凄く速かったもんなぁ。今でも水が大好きなんだね」
「
……
ああ」
「着替えてくるからちょっと待ってて。オレが車出すから!」
誇らしげに告げると、遙が驚愕する。
「運転するのか?真琴が
……
?」
「こっちで買ったんだ。運転には自信あるからまかせて!」
茫然とする遙をよそに準備をすませ、車のある公民館の駐車場へと向かう。
緑色の軽自動車の助手席に乗り込んだ遙は「真琴も大人になったんだな」と呟いた。
子供にそんなことを言われる自分は一体何なんだろうか。
隣町の体育センターまでは車で40分ほど。
電車なら20分もあれば着く。
朝の光に照らされる、懐かしくも見慣れた町並みの中をゆっくりと走る。
県道と呼ぶのかはいまいちわからないが、大きな道路は海沿いへと繋がっていく。
助手席で目を輝かせている遙が可愛くて、やっぱり弟の様な存在がいるのは良いものだと思った。
聞けば、相変わらず遙の両親は不在らしい。
せっかくの春休みなのに、ここに残ったのはやはり毎日泳ぎたいからなのだろう。
「これからはオレがいつでも好きな所に連れていってあげるよ」
「
……
仕事、転勤とかは、ないのか?」
「ないない。オレは地元で働きたくて帰ってきたんだから」
「
……
そうか。なら、良かった」
いきなり転勤の心配とはまた気が早い。
不思議に思いつつ、シートベルトを握りしめる遙をちらりと横目で見てふと気付く。
遙の鞄、中学生らしいスポーツバッグ。
そのファスナーの部分に、まさに昨日あげたカニ丸くんストラップがついている。
「あ、やっぱりまだカニ丸くん好きなんだろ」
「真琴が、くれたものだから」
昨日の様に反論してくるかと思いきや、遙はストラップをそっと手の平に乗せて眺めながら呟いた。
ストレートな表現。
シンプルに愛情を示されて一瞬言葉を失った真琴に、さらに追い打ちかけるように遙は続ける。
「真琴が帰ってきてくれて、本当に嬉しい。ずっと、会いたかった」
あの遙がこんな言葉を口にするなんて、と何故か込み上げる緊張感にごくりと唾を飲んだ。
その後すぐに、これも遙の成長なのかと嬉しくなったが、ここは慎重に言葉を選ばなければいけない場面かもしれない。
茶化したりせず、真っすぐ遙の想いを受け止めて
……
。
時間にすればわずか数秒の間、思考が駆け巡った後、口から出た言葉は直情的なものだった。
「オレも。ハルに会いたかったよ。これからはずっと一緒だね」
言ってから何だか随分と重い言葉を軽口の様に叩いてしまったとあせる。
けれど、そのくらい遙の言葉が嬉しかったし、答えてやりたいと思ってしまったのだから後悔はない。
遙は膝の上で両手を握りしめたまま、みるみるその顔を紅潮させていき、
それを悟られまいと俯いて、消え入りそうな声を出した。
「
……
これからは、ずっと、一緒だ」
それを聞いて真琴は胸が痛んだ。
じわりと涙が込み上げてきてしまう。
……
やっぱり、オレがいなくなって遙は寂しかったんだ。
良かれと思ってのことではあるが、ありったけの愛情を注いでおいて、ある日突然、勝手な理由でいなくなってしまう。
思い出の残る地に置いていかれた者はどれほど悲しいことだろう。
両親が不在がちで、ただでさえ寂しい思いをしている幼い遙に、耐えがたい決定的な喪失を与えてしまったのかもしれない。
そう思うと迂闊にも涙が零れそうになってしまったので、あわてて明るい声を出す。
「うん!そういえば、ハルお腹すいてない?何か食べる?」
「空いてない。それより早く泳ぎたい」
先程までのいじらしい姿はどこへやら、いつものクールな遙に一瞬で戻ってしまった。
体育センターで自分も久しぶりのプールを満喫しつつ、泳ぐ遙を見て驚愕する。
小学生の頃から子供離れした泳ぎだったが、今の遙は大人顔負けといってもいいかしれない。
水の中に切れ目を作って手を滑り込ませる、と独自の理論をよく語っていたが、
乱れのない美しいフォームはまるで本当に水の隙間を擦りぬけているようだ。
……
これは凄い。凄いなんで言葉で片づけられない。
ちょっとその辺の大人が放っておかないんじゃないか。
近くまで泳いできて、顔をあげた遙の肩を掴んで揺さぶると思わず大声を出す。
「凄いよハル!もう県大会の常連だろ!?」
賞状もメダルも家の中にあふれてるんじゃないのか、新聞の取材は来たかと遙に迫る。
「
……
まあな」
ゴーグルを外して、素っ気なく答えた遙の顔が一瞬曇った気がした。
しまった、大げさに騒ぎすぎたか。
遙はそういうのが苦手な子だった。
「それより、ここのプールは良いな。気に入った」
真琴ももっと泳げ、と澄ました顔で再びゴーグルを付け、遙は水の中へと消えていく。
結局、昼の休憩を挟んで夕方近くまで滞在してしまった。
これほど水の中にいられるのはやはり若さゆえなのか、まったく感服する。
「お腹空いたろ?何が食べたい?」
夕焼けに染まる空の下を駐車場まで並んで歩く。
問いかけに遙が「鯖」と即答するのは予想済みだ。
「えっと、お店に入る?それともお弁当でも買ってオレのアパートに行ってみる?」
「アパート?」
「うん。このすぐ近くに借りたんだ。さすがに実家から通うのはちょっとね」
「
……
真琴も大人になったんだな」
「もー、何目線なの?それ」
「真琴の部屋、見てみたい」
「オッケー!じゃあスーパーでお弁当でも買っていこう」
賑やかなスーパーの店内、買い物カゴを持つ手の傍らに寄り添う、一回りも二回りも小さな遙を見て庇護欲がわきあがる。
「何でも好きなのカゴに入れていいよ。たくさん食べなきゃな」
他愛もない会話をして店内をまわっていると、それだけで、心の底から安らぎを感じている自分がいる。
……
東京にいた頃はこんな風に誰かと買い物したり、とか無かったもんな。
食事もほとんど一人だったし。
そんなことを考えながら大量の食料を買いこんで会計を済ませる。
アパートへ着く頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。
「そうだ!ハル、どうせなら今日はこのまま泊まっていかない?」
「
……
ああ、いいぞ」
答える遙は無表情だが、なんだか瞳が輝いているように見える。
「新しく買った布団があるから安心してね」
部屋の中はテーブル、ソファー、ベッドと大型の家具は揃っているが、まだ足りないものだらけだ。
それでも電気ガス水道が通っているので、食事をして寝るくらいはできる。
買って来た弁当や惣菜を食べながら、昔話やお互いの近況を軽く話し合っただけで、今までの空白があっという間に埋まってしまった気がした。
遙は不思議な存在だ。
その気持ちは昔から変わらない。
「真琴、なんか身体つきが大人っぽくなったな。顔は昔のままだけど」
「もー、だからそれ何目線なの?ハルもこれからどんどん大きくなるよ」
じっと見つめてくる遙の視線がなんだかくすぐったい。
見ていないようで見ている、これも昔と変わらない部分かもしれない。
「ところでさ、ハルが出る次の大会はいつ?絶対応援に行くからね!」
その言葉に、遙はハッとした様に呟く。
「なるほど
……
。いいな、それ」
「へ?どういう意味?」
「何でもない。日程が決まったら知らせる」
「楽しみだなぁ。頑張ってお弁当作ろうかな!」
「無理しなくていい。来てくれればそれだけで嬉しいから」
中学生になった遙はとことん不思議だ、と真琴は思った。
こんな風に時折出る素直な言葉は、どうも慣れなくて反応に困る。
いちいち喜んでしまいそうになるのが恥ずかしくて、話題を変えようと大きな声を出す羽目になってしまう。
「それにしても、たくさん泳いだし、お腹一杯でもう眠くなってきたかも」
「俺も久しぶりに泳いだから
……
眠い」
真琴の言葉に、遙はゆったりとしたまばたきで答えた。
「じゃあ、準備するよ。そのソファ、背もたれが倒れるやつだから上にマットレスを敷いて、っと。枕をセット!ハル、横になってみて」
言う通りに、遙が布団にころりと寝転がり身体をもそもそと丸めた。
その姿がまるでネコのようで、真琴は不覚にも胸の高鳴りを感じる。
「じゃ、布団かけまーす」
きゅん、という擬音がふさわしいその高鳴りを笑顔で誤魔化しつつ、そっと布団をかけてやる。
水の中ではイルカだけど、陸だとネコみたい。
猫が大好きな自分には遙が魅力的に見えて当然なのかもしれない。
本当に可愛い弟の様な存在。
遙の為なら何でもしてやりたくなってしまう。
「ハル、寒くない?」
平気だ、と答える声はすでに眠りの淵から発せられているようだ。
「明日は暗くならないうちに帰ろうね」
おやすみ、と頭でも撫でてやりたい衝動を必死にこらえると、テーブルを挟んで向かいのベッドに潜り込む。
手元のスイッチをダウンライトに設定すれば、オレンジ色の小さな明かりがほのかに室内の輪郭を浮かび上がらせるだけだ。
お互いの寝息が聞こえてしまいそうな狭い部屋。
寝返りをうつとぴくりとも動かない遙の頭が見える。
……
今日は久しぶりに楽しかったな。
でも、やっぱりハルって、不思議、だ。
身体が鉛のように重くなって思考が途切れる。
そのまま真琴は深い眠りへと落ちていった。
――
はずだったが。
背中にぬくもりを感じて目が覚める。
横向きの背中に何かがぴったりとくっついている様な。
一瞬恐怖に声が出そうになったものの、向かいのソファーがもぬけの殻になっているのが目に入って、もしやと思った。
ハルが
……
オレのベッドに?
意識がハッキリとしてくると、腰に細い手が巻き付いているのを感じる。
これはまるで抱き枕のような扱い
……
。
薄暗い部屋の中で笑みがこぼれる。
……
寝ぼけてるのかな。
昔はこうして一緒のベッドで寝たこともあったが、流石に今この状態でいることを本人が知ったら相当ショックを受けるんじゃないだろうか。
そう思うとこれは笑いごとではない。
繊細な遙のことだ。
恥ずかしさで気まずくなって、また距離をとろうとするかもしれない。
……
気付かないふりをして黙っておこう。
朝になって本人が気付いても、オレにばれていなければダメージは少ないだろう。
そう思って再び眠りにつこうとすると、背中のぬくもりが不意に離れる。
次の瞬間、真琴は肩を掴まれて仰向けにされていた。
……
ええと、これは、などと思う間に、その仰向けの体の腹の辺りに跨られる。
寝ぼけている、にしては大胆すぎる行動。
いや。寝ぼけているからこそ、の行動なのか。
何が起きているのか確認したいのはやまやまだが、暗い室内でもこの距離では顔がはっきり見えるだろう。
目を開けたら起きたことがバレてしまうかもしれない。
それはまずい、と考えているうちに、事態はもっとマズいことになっていく。
遙の両手が腹を撫でて、やがてそのまま上へと滑る様にあがってきた。
くすぐったい、だけではない妙な感覚。
両手は胸で止まると、薄いシャツの上から敏感な部分をまさぐるようにわさわさと動き始める。
肉付きの良い、張りのある胸を持ち上げるように揉みしだかれて、真琴は混乱を極めた。
――
どうして、こんなこと。
きっと遙は完全に夢の中で、もしかしたら性的な夢を見ているのかもしれない。
ますます問題がデリケートになってきた。
今、この瞬間のオレの対処の仕方によっては、少年の健やかな成長
……
とりわけ性の発達に悪影響を与えてしまう可能性だってある。
性の衝動を「恥ずかしいこと」「悪いこと」として罰せられると認識に歪みが生じ、
罪悪感や羞恥心から少年が破壊的な行動に向かうのは当然の結果だろう。
それらを回避し、遙の自尊心守るために
……
とにかく。
寝たふりを続ける、その一択だ。
けれど
……
。
刺激を受け続けて硬く勃ちあがってしまった乳首を、布越しに指でぎぅと摘ままれて転がす様に弄ばれると、下腹部に甘い疼きが生まれ始める。
摘まんだまま軽く引っ張られて、急に離されたり、弾くように下から撫で上げられたり。
自分でもロクに触ったことがないソコに、未知の刺激を与えられ続けて、身体がおかしくなりそうだった。
衣擦れの音が響く室内。
一瞬の静寂の後、小さく息を吸う音が聞こえてから、右の胸に温かく湿った感触が纏わりつく。
はぷ、と音を立てて遙が胸に吸い付いてきたのだ。
「
……
っ!?」
これにはたまらず、吐息と共に身体を捩らせる。
しかし遙はそれに構わず、興奮したように唇であむっと乳首を挟みこんで舌先を突き立てた。
片方を舌で、もう片方は指の腹で、ずりずり、ざらざらと布越しに擦られて、身体はのけ反り、腰が浮いていく。
自分の身体に何が起きているのかわからないけれど、熱を持ちはじめた股間が明らかに快感を感じ取っている。
どうして?なんでこんな
……
。
怖くて、恥ずかしくて涙が出そうになるのを何とかこらえた。
そんな気持ちとは裏腹に、遙の指と舌の動きに合わせて陰茎は悦びにヒクヒクと震えている。下腹がひきつるような感覚。
両胸の先端を擦られる度に湧き上がってくる快感は、性器を擦っている時のものとまったく変わらない。
とすると、これがもうしばらく続けば、或いはその速度をあげれば
……
。
何が起こるのか、想像しただけで恐ろしかった。
やめさせないと
……
でも
……
。
拒絶の言葉、それをどうしても口にすることができない。
……
遙を傷つけたくない。
どうにかしてひたすら耐える、そう覚悟を決めた時、不意に行為は止んだ。
真琴、と優しく名前を呼ぶ声がして、唇に柔らかな感触が伝わる。
今のは
……
?
息苦しい快感から解放されて呆けていると、遙が身体から離れていく。
のそのそと布団に戻っていく気配がして、再び静寂が訪れた。
次の日の朝。
全くいつも通りの遙に起こされて、アパートを出ると昼前にはイワトビに到着する。
やることができた、と遙はあっさり家に戻っていき、真琴の方はあれを夢だと思うことにした。
一晩経って記憶も曖昧になっている。
遙は何かあると顔に出るタイプだから本当に覚えていないのだろう。
新生活の為に買わなければいけない物もあるし、遙の健やかな成長のためにも過ぎたことは忘れてまた町に出よう。
数時間後。
町の家電量販店で真琴のスマホが振動する。
着信画面に表示されているのは見知らぬ番号だが、会社の関係者かもしれないと慌てて出ると、こちらが言葉を発する前に大声が響く。
「真琴ぉっ!よくやった!!」
「ええと、どちら様で
……
」
電話の相手は、イワトビSCの笹部コーチだった。
真琴が高校生の頃、遙と一緒によく世話になったものだが、今でも現役らしい。
笹部コーチは、「どうやって遙を説得したのか?」「真琴は昔から遙の扱いが上手かった」などと捲し立てている。
まったく合点のいかない真琴だったが、詳しい説明を聞いて、驚きと共に複雑な心境になってしまった。
いわく、「遙は少し前にイワトビSCで新人のコーチと揉めてから、SCに来なくなってしまった。中学の水泳部には元々入部しておらず、このまま水泳をやめてしまうのではないかと心配していた」と。
「新人コーチと揉めたって、どういうことですか?」
「ああ、遙の泳ぎに度肝を抜かれたそいつが、色々と口を出すようになってな。大会に出して結果を残せば自分の手柄になると思ったんだろう。もっと真剣に練習しろだとか、タイムを上げろだとか詰め寄るようになった。でも全く相手にされず耐えかねたのか、遙に手をあげようとしたんだ。怒鳴り声がしてた時点でまずいと思ったスタッフが寸での所で止めたんだが
……
それから遙はSCに来なくなっちまった」
「そんなの酷すぎる
……
!その人は
……
」
「もちろん辞めてもらったよ。もう安心だからまた来いって言っても聞く耳持たずでな
……
ところがどっこいだ!真琴、お前が遙のコーチになるってんだろ!?そんで遙は次のSC対抗の試合に出るってんだ!皆大喜びだぜ!」
「
……
オレがハルの!?」
「遙のヤツ、真琴は大学でスポーツ医学やコーチングを学んで来たんだって自慢気に話してたぞ。何はともあれ、遙を頼んだ!」
辻褄が合っているのかいないのか、何とかごまかして電話を切る。
今の話を聞いて全てが繋がった気がした。
わざわざ遠い体育センターで泳ぎたがったのも、大会の話をした時の憂鬱な顔も、あの時、久しぶりに泳いだと言った理由も。
昨日の晩の行為も様々なストレスからくる夢遊病のような症状だったのかもしれない。
可哀想に、身近な大人が豹変してどんなに怖かったことだろう。
純粋な水への想いを踏みにじられて、悲しかっただろうな。
遙の才能は、いわば光だ。
引き寄せられて寄ってくる連中のなかには邪な人間や、妬み、悪意を持っている人間もいる。
……
少なくともオレをコーチに仕立て上げれば、ハルを利用して名声を得ようとする様なヤツは近づけない、と踏んでの事か。
こういう賢さはやはり大人顔負けだが、途端に遙のことが心配になってきて、すぐにイワトビへと戻る。
本当に大会に出るつもりなのか、もう一度話をしたほうがいいかもしれない。
仕入れた情報と自分の気持ちを整理しつつ、静まり返った遙の家の前に立ち尽くしていると後ろから足音が聞こえてくる。
「真琴
……
?来てたのか」
振り返るとスイミングバッグを肩にかけた遙がいて、真琴はびくりと固まってしまう。
「ハル、もしかしてSCで泳いでたの?」
「ああ。丁度よかった、昨日のお礼に何か作るから、中入れ」
「え、じゃあ、お言葉に甘えて
……
」
これは良い機会に恵まれたと、遙の後に続く。
「適当にくつろいでてくれ」
エプロンを着けて台所に立つ遙を横目に、居間の畳の上であぐらをかき、考え込む。
あくまでさりげなく、本当の気持ちを吐き出させてやらないと。
「できたぞ」
気が付くと焼き鯖の乗った皿を手に遙が立っていて、ふぇ!?と妙な声をあげてしまう。
「あああ、ありがと
……
っ!」
さらには茶碗にこんもりと盛られた白飯、鯖の和え物(?)などが運ばれてくる。
同じように畳にあぐらをかいて、鯖をもぐもぐと食べつつ遙が切り出す。
「
……
で?俺に何か用だったのか?」
「うん
……
あのね
……
」
真琴の様子がおかしいのは遙でなくとも気付いただろう。
どうやら自分は平静を装ったり、何食わぬ顔で嘘をつくのがとことん苦手らしい。
であれば、取り繕ったりごまかしたりせず、真っすぐに向き合うしかない。
「笹部コーチから聞いたよ。ハル、怖かったよね
……
すっごく嫌だったよね」
「別に
……
殴られたら殴り返すつもりだった」
遙らしい答えが返ってきて、思わず微笑む。
が、すぐに真剣な顔で遙を見つめる。
「ハルの泳ぎは凄いから、これからも嫌な思いをするかもしれない。でもね、例え何があってもオレだけはずっとハルの味方だよ。
……
オレがハルを守るから」
だから、と続けるその声は、自然と慈愛に満ちたものになっていた。
「我慢したり、平気な振りしたりしないで」
遙は少しの間、下唇を噛みしめて黙っていたが、やがてポツポツと話し始める。
「中学に入ってから
……
泳いでると、うっとしいことばっかり起きて嫌になった。でも真琴がいるなら、もう大丈夫だから」
遙の言葉が偽りではないのがわかって、ホッとした。
けれど、もうひとつ、伝えたい大切なことがある。
「
……
自分の泳ぎたいって気持ちを何より大切にしてね。他の誰かに、将来を人質にされないように」
その言葉に遙はまた、ぱちりと猫のまばたきをして蒼い瞳を輝かせた。
「真琴
……
ホントに大人になったんだな」
「もう、だから!何目線なの!?」
一気に緊張が解けて笑い合う。
「
……
今日泊っていくだろ。新しいゲーム買ったからやろう」
「ホント!?やったぁ!」
遙の本心が聞けて、自分の想いを上手く伝えられて、何より遙がまた泳ぐと言ってくれたことが嬉しくて。
年甲斐もなく無邪気にはしゃいだ後、ぴたりと思考が停止する。
泊っていく
……
ということは。
昨晩の出来事がうっすら甦る。
いや、待て、でも、あれは、そもそも。
遙が風呂を沸かしてくる、といなくなったのいいことに思いきり頭を抱える。
どうしよう
……
でももう断るなんて選択肢は残されていない。
一筋の希望があるとすれば
……
。
遙が今まで閉じ込めていたものを解放してやったことで、多少なりともストレスは和らいだはず。
もしかしたらもうあの問題行動は起きないかもしれない。
さらに念には念を入れて。
「ハル、家から着替え取ってくるね~!」
廊下の奥に呼びかけて、返事を聞いてから自宅へ向かう。
母親に小言を言われながら、冷蔵庫を開けて父親の缶ビールを持ち出し、棚のお菓子を漁る。
それらを着替えとともに持って、颯爽と舞い戻った。
本当はビールなんて苦くて飲めないのだが、酒に酔ってしまえば夜中に目覚めることはないだろうとの作戦だ。
「お菓子持ってきたよ!いい気分だからお酒も飲みたくなっちゃった」
「
……
先に風呂入ってからにしろよ」
風呂を済ませ居間に戻ると遙が甲斐甲斐しくビールを用意してくれている。
こうなればヤケだ、とそれを一気に喉に流し込む。
……
苦いし、全然おいしくない。
心の中で「うぇぇ」と泣き叫びながら何とか飲み干した。
その後も、途中になっていた晩飯で、鯖の塩気に助けられながら一本。
ゲームをしながらお菓子の甘さでごまかしつつ一本。
これだけ飲めば、朝までぐっすりだろう。
「そろそろ寝るか」
時計の針が23時を指す。
遙がベッドの横に布団を敷いてくれたので、夢心地で潜り込んだ。
「はぁ
……
ハル、今日はホントにありがと
……
」
「別に。昨日の礼だからな」
「オレ
……
ホント、うれしい
……
」
作戦は成功だ。
身体はもうほとんど動かないし、瞼が異様に重い。
すぐに何も聞こえなくなって、そのまま意識が途切れる。
――
闇の中で、声が響いている。
女性の
……
悲鳴のような
……
これは。
「や
……
っ、うぁ
……
っ!」
駄目だ。身体が重い。何も考えられない。
「んっ、ん
……
ぁ!
……
うっ
……
」
――
何が、起こって
……
。
得体の知れない恐怖が湧き上がって一気に意識が鮮明になると、部屋に響くそれが自分の嬌声だと気付く。
同時に、両胸を昨晩のあの感覚が這いずりまわっているのがわかった。
もしかして、また
……
。
鈍くなっていた身体の感覚が徐々に戻ってくる。
前回よりさらに事態は悪化している様に思えた。
遙は、真琴のシャツを捲り上げて、直接その胸にしゃぶりつくように唇を這わせている。
曝け出された素肌にひんやりと外気が触れて、限界まで硬くなった乳首を指先で何度もピン、と弾かれる。
両胸の先端はたまらなく熱く、じんじんと疼いて下腹部に快感を送り続けていた。
もうどのくらいの時間こうして弄ばれていたのだろう。
液体に濡れているのは胸だけではなかった。
下着の中にじっとりと嫌な感覚を感じて、血の気が引く。
さらには上に跨る遙の股間が明らかに硬くなっていて、それをぐいぐいと下腹に押し付けられる。
真琴は必死に悲鳴をこらえた。
――
こんなのは、絶対に、駄目
……
だ。
でも
……
。
やはり目を開けて、行為を止めるという選択肢は浮かばなかった。
せっかく遙が決意を新たにしたのに、水を差すような真似はできない。
迷っている間にも、遙は両胸を嬲り続ける。
さっきから声は出ていたけれど、遙は気にしていないようだった。
それならば、無理に声を抑えるより少しでも快感を逃すために呼吸を続けよう。
目さえ開けなければ、眠っていることになるはずだ。
「ふ
……
っ、ぅ
……
」
瞼をぎゅうっと閉じて、身体が仰け反りそうになるのを堪える。
主張し続ける両方の乳首を引っ搔くペースが徐々に速く、強くなっていく。
前回と同じ、性器を愛撫されているような感覚。
しかし今回はそれが途中で止むことはなく、やがて許容範囲を超えた快感が真琴を絶頂へと導く。
「
……
っ!ふ、あぅ
……
っ、あ、うぅ
……
っ!」
腹の奥がドクドクと波打って、じわりと温かい液体が再び下着の中で広がる。
いやだ
……
こんなの、おかしい。
もう、おかしくなりたくない、気持ち良く
……
なりたくない。
アルコールの影響で思うようにならない身体がもどかしい。
せめて本当に目覚めることがなければ良かったのに。
やがて茫然とする真琴の股間に手が這わされて、下着の中の液体と布が擦れ合う感触に身体が強張る。
それだけは
………
絶対に、駄目だ
……
!
けれど、咄嗟の時にすら拒絶の言葉は出てこない。
代わりに「ハル」と、辛うじて細い声をあげると、遙の手が止まる。
「真琴」と返されて、夢の中の様に遙の言葉が響く。
「今してることが、真琴に気付かれたら、俺はショックで全部投げ出すかもしれない」
愉悦を含んだその声に、真琴は全てを悟った。
――
何もかも、わかってて
……
?
でもどうして。
「俺は小さい頃からよくこうして寝てるお前に悪戯してた。あの頃は自分でもよくわからなかったけど
……
今はその理由がわかる。真琴のことが好きだから」
心の中を読んだように遙は続ける。
「こんなに近くに無防備なお前がいて、我慢できるわけない」
答え、理由、意味、全てが明らかになって、ぐちゃぐちゃの頭の中で、再び真琴は悟る。
最初から、選択肢なんてなかった。
きっと、遙と出会った時から。
「
……
真琴、寝てるんだよな?」
こんな確認には何の意味もない。
もはや真琴は捕食者の前に瀕死で横たわる獲物だ。
わきあがる感情を何と表現していいのかわからない。
諦め、絶望、後悔、憤り、悔しさ
……
。
けれど、次第に苦悩から解放された喜びにも似た清々しさがわき上がってくる。
遙から伝えられた想いに何もかもがどうでもよくなってしまって、最後の理性の糸がふつ、と切れるのを感じた。
真琴は、ほとんど無意識にゆっくりと目を開ける。
そして目にした遙の顔を一生忘れないだろうと思った。
大人を組み敷いて勝ち誇ったその瞳。
底の見えない、奥深くで揺らめく蒼。
きっと、この先もずっと
……
逃れられない。
「
……
おれ、ねてる、から
……
ハルの好きにして、いいよ」
恍惚に涙を浮かべ、はしたない台詞を吐いた自分がどんな顔をしているのか、考えたくもなかったけれど、再び目を閉じてしまえば何も見えなくなる。
そうだ、自分は何も気付かずに眠っている。
それで全てがまるく納まるのだから。
酷く興奮した遙の一方的な行為を全身で受け止めながら、どうか、次こそは本当に目が覚めませんようにと祈る。
それがこの先もこの責め苦を受け続けるであろう真琴にできる、ただひとつのことだった
――
。
エヴァ
―
ブルー after
あれから時は流れ、高校の卒業式が間近に迫っている。
そして大学に入学すればすぐに選抜試合がある。
そんなことは遙にとってどうでもいいことなのだが、「大学生になるまでは最後までしない」という地獄の制約からやっと解放されると思うと、目の前の真琴を愛撫する手にも力がこもる。
下着姿で、上半身は何も身に着けていないその豊かな、という表現が正しいかはさておき、むっちりと肉付きの良い胸にピンク色の卑猥な乳首。
蹂躙されるためにある様なこのカラダを前に、何年もお預けを食らっているのだから残酷なものだ。
とはいっても、まあ
……
ほとんど、疑似的には、最後までしていると言っても過言ではないか。
もちろん幼かった以前の様に寝ている真琴を、なんて無粋な真似は卒業した。
あれはあれで、されるがままで必死に耐える姿が最高だったのだが。
今はお互いの愛を確かめ合うために、しっかりと向きあって性行為に励んでいる。
「真琴のここ、柔らかくなってきてないか?」
勃起した乳首の先端は硬いものの、その周縁は押してやると指先が沈み込む柔らかさだ。
「ん
……
っ、そんなの、わかんない
……
」
その行為だけでも充分に感じているようだったので、遙は面白がって、両胸に人差し指を突き立ててみる。
「や
……
っ、乱暴にしないで、よぉ
……
っ」
ソコにずぶ、と指先が飲み込まれていく。
第一関節くらいまでは入っているだろうか。
「凄いな
……
こういうのニプルファックっていうんだったか」
「
……
そ、そういうのドコで覚えて、きっ
……
!」
ぐりぐりと中を穿るように指先を動かされて、奥で硬くなっている乳首をいじられる。
「あっ、う
……
っ
……
」
真琴は唇を噛みしめて耐える様に目を閉じ、顔をふいっと横にそらす。
昔の悪しき行為の影響からか、耐えられないほどの快感を与えられた時、真琴はこんな仕草を見せる。
「気持ちいいのか、これ」
遙はいよいよ楽しくなって、一度指を離すと、たっぷりと唾液を含ませた舌で真琴の乳首を片方ずつねぶる様に舐めてやった。
そしてぬらりと濡れて光るソコに再び指を突き入れる。
「ひ、ぃ
……
っ
……
」
親指と中指で乳首の周縁の肉をむに、と摘まんで、盛り上がったその部分に人差し指を抜き差しすると、唾液で濡れたそこはぷちゅぷちゅと淫猥な音をたてた。
「やだぁ
……
っ!それ、やめて
……
っ」
真琴は胸を犯される感覚にビクビクと仰け反って、恐怖からかうっすらと涙を浮かべている。
が、遙の方は自分の指が真琴の豊満な胸の先に出入りする、その淫らな光景にたまらない興奮を覚えた。
「真琴が後ろ使わせてくれないから、代わりにこっちに挿れてるんだろ」
指の動きはさらに激しくなって、ぶちゅぶちゅと深くへ沈み込む。
奥の芯にゴツゴツと指先が当たるとその度に真琴は情けない声をあげた。
「ゆっ、ゆび、おっぱい
……
っ、挿れないで
……
ぇ
……
っ!」
絶頂が近いのか頭の足りない台詞を喚き散らす。
或いは今なら
……
。
胸への乱暴な愛撫を止めると、真琴の下着に手をかける。
「勃ったから
……
いつものするぞ。後ろ向け」
突然、快感から解放されて放心状態の真琴は、それでも言われた通り背を向けて四つん這いになる。
いやらしく尻をこちらへ突き出しておきながら、「挿れるのはナシだからね」と保護者の顔に戻る真琴にイラつきつつも「わかってる」と答えた。
さっきまで馬鹿みたいな喘ぎ声出してたくせに。
下着を太腿まで引きずり降ろすと、カウパーでどろどろになっている陰茎に指の輪を通し、その液体を絞り取る。
それを双丘の間に塗りこみ、勃起した自らをこすりつける。
これは形式的には自慰と変わりないのだが、真琴の方も尻の間に熱い陰茎をこすりつけられる度に秘部をヒクつかせて悦んでいるようだし、さらには遙の腰の動きに合わせて、手で前を弄られ射精に至るわけだからほとんどセックスのようなもの、といっていいだろう。
尻の肉を両手で寄せて陰茎を挟むようにしてから、充血してぷっくりと盛り上がった秘部でぬるぬると裏筋を扱く。
そのまま射精して真琴の背中に精液をかけるのも気分が良いが、今日は別のコースにしよう。
不意に陰茎の先端を入り口に押し付ける。
真琴は一瞬で身体を強張らせてこちらを振り返った。
「ハル
……
っ!?」
「先っぽ擦りつけるだけだ」
「なら、いいけど
……
」
真琴は耳まで赤くして前へ向き直る。
言葉の通り指で自らの先端を支え、柔らかなソコに押し当てて、ちゅくちゅくと動かす。
精液が上がってくる感覚に、思わず吐息をもらした。
「っ
……
、真琴
……
」
それが恥ずかしかったので名前を呼んでごまかすと、答えるように真琴が背中を震わせる。
そろそろ限界が近い。
自身をシゴきながら、もう片方の手で真琴の秘部をぐい、と押し拡げた。
「っ
……
!それ、ダメだって
……
ば
……
!」
その言葉を無視して秘部を思いきり指で拡げてから、肉壁で埋もれた中の浅い所に先端を当てる。
と、それを拒む真琴がソコを収縮させるので、結果的に少しだけ先端が締め付けられ、あまりの快感にたまらず射精する。
勢いよく出た精液のほとんどは壁に阻まれ跳ね返るが、確実に中で飛び散っている。
「もう
……
、中にかけちゃダメって言ってる
……
のに」
真琴は「中に出す」とは言わない。
これは確かに「中にかける」程度だなと遙は思った。
何だか子供扱いされたようで腹がたった遙は、己の精液が僅かに沁み込んだ入り口に、ぬぷ、と指を差し込む。
「っ
……
!?何す
……
っ」
猛烈な抗議に、笑って指を抜いてやる。
その代わり、とばかりに溢れ出る欲望を口にした。
「早く真琴のココに、俺のぶち込んで
……
ザーメン泡立つくらい、嵌めまくりたい」
「なっ
……
、な
……
!?」
だからそういうの、ドコで覚えてくるの?と先程と同じ台詞を口にする真琴が、いったいいつまで俺をガキ扱いできるか見ものだ。
こうしてもう何年も真琴のカラダを思いのままにしている。
もちろんこの先だってずっとそうするつもりだ。
俺にはその権利がある。
……
幼い頃から、真琴を前にすると喉が渇いてたまらなかった。
それこそ、喉から手が出るほどに、その全部が欲しかった。
あの時の真琴の台詞。
『将来を人質にとられないように』
あの頃とは違って、もうお互いにすっかりわかっているだろう。
人質になっていたのは俺の将来なんかじゃない。
記録、メダル、賞状。
そんなものは、自由に泳いだあとに申し訳程度についてくるただの結果だ。
それを必死に追い求める、欠伸が出るほど退屈な未来が、俺の将来だとするなら。
そのつまらない将来と引き換えに。
……
俺はお前を手に入れたんだ。
【ever blue remix】♡続き。成長したナナハルと初めてのセックス。結婚する♡
朝の白い光がカーテンを透過して部屋の隅々まで行き渡ると、真琴は眩しさにベットの上でのっそり身を起こした。
欠伸をひとつしてから寝ぼけまなこで辺りを見回すが、ソファベッドで眠っていたはずの遙の姿はない。
その代わり、とばかりにテーブルの上には鯖の乗せられたトーストと牛乳が用意されている。
日曜日の朝の見慣れた光景。
二人の関係が決定的に変わってしまったあの日から、週末になると遙がアパートに泊りに来るようになった。
休みの日曜日は昼近くまで眠っていることが多い真琴の為に、遙が朝食を用意してから体育センターのプールへと先に出ていくのが恒例となっている。
自分の食べる分を作るついでだからと言われているものの、中学生に朝食を用意してもらうというのは我ながらどうなのだろう。
ぼんやりした頭のまま、しばらくの間ベッドの上で停止してみても昨日の夜の記憶が甦って来ないことに心から安堵した。
……
昨日は眠ったまま、目を覚まさなかったんだ。
けれどきっと、遙のあの行為は続けられていたのだろう。
遙の輝かしい将来というカードと引き換えに己の体を差し出すことになってしまった真琴は、眠っている間
……
例え本当は起きていても好き勝手に悪戯されている。
最初のうちは身構えて眠ることができず寝たふりをしたまま行為を受け止めるしかなかったが、新入社員として慣れない仕事をこなす日々の疲れからか眠りが深くなり、何をされてもほとんど目覚めることが無い日も経験するようになった。
昨夜もそれに成功した様だ。
例え何をされても、覚えていなければ無かったことと同じ。
そう言い聞かせてはみるが、やはり体に残る痕跡を完全に消すことはできない。
シャワーを浴びようと脱衣所で恐る恐るシャツを脱ぐ。
赤く勃ちあがってむずむずと主張する両胸の先端の感覚は何度味わっても慣れることはできない。
次は、と下半身に視線を落とす。
ここを見るのはいつも勇気が必要だ。
下着に手をかけ、隙間を作ってそっと中を覗くと、自身の先端が当たる部分にわずかな染みができているようだ。
もしかしたら昨日はそれほど
……
とは思っても、後処理されていればそれは見当違いになるのだろう。
身に着けていたものを全て洗濯機に放り込んでから浴室に入り、温かなシャワーを頭から浴びると、ふぅっと全身から力が抜けていくのを感じた。
……
それにしても。
長い溜息が排水口へと流れていく。
遙の悪癖はいつまで続くのだろう。
いったいこの体のどこに遙をそうさせてしまう要素があるのか全くわからない。
遙がいつも執拗に責めてくる胸の先だって、と自らの体をちらりと見る。
女性のものとは大きさも形も違うし
……
膨らんでもいないし柔らかさもない。
こうしてツンと勃ちあがっている所を見ると、多少は、いや、心なしか、
性的に見える気がしないでもないような
……
。
遙が口にした「ずっと真琴が好きだった」という言葉。
好き、という感情が性欲に結びつくのであれば、ある程度理解はできるのかもしれないが。
意識すると途端にそこの感覚が再び主張しだして、シャワーの水圧が刺激になってしまう。
思わず水流を逸らして、真琴は唇を噛みしめる。
……
こんなトコにシャワーが当たっただけで気持ち良くなるなんて、おかしいのに。
遙の悪戯で真琴の胸はすっかり敏感になって、僅かな刺激でも性感を得てしまうようになった。
特に散々弄られたであろう次の日には、ほとんど一日中、熱と芯を持った状態が続いて苦労させられている。
体育センターで使う水着は上半身を覆うウェットスーツタイプのものなので見た目には支障がないが、向けられる遙の視線がそれを見透かしているようで
……
。
されたことを思い出しては、至る所で発情しているような自分が嫌だったし、
あんなことをされた翌日に何でもない顔で遙の側にいなければいけないのは辛い。
とはいえ、今は早く体育センターへ向かわなければ。
頭を洗うシャンプーの泡がぬるりと背中や尻の間を伝うと、それだけで微かに体が震えてしまう。
やはり、遙の行為を受け止めた後は全身の感覚がおかしくなってしまっているようだ。
さらにはボディソープを自らの手で体に滑らせているだけで妙な気持ちになってきて、あわててシャワーで洗い流すが、やはりお湯の水圧を胸に受ける度に性器が疼く。
しかし勃起までは至らず、先走りが滲むこともない。
ということは、きっと昨日の晩、何度も
……
。
全身が一気に熱くなる。
下着の様子から、遙の行為で達することはなかったのかもしれないとの期待を打ち砕かれてしまった。
それこそ下半身を露わにされて、もう精液が出なくなるほどイかされたのだと思うと恥ずかしくて情けなくて泣きたくなる。
されたことを覚えていなくても、結局はこうして思い知らされてしまうのだ。
たとえそれでも、とにかく。
昨日は目が覚めなくて良かったと思い直し、急いで着替えると、鯖トーストと牛乳を胃に流し込み部屋を出た。
体育センターのプールで、一際目立つレーンを見つけて声をかける。
「ハル、そろそろ水分取って休んで!」
呼びかけに反応して上がってきた遙をプールサイドのベンチに座らせて、タオルと飲み物を渡してやると、遙は濡れた髪を拭きながらチラリとこちらを見た。
「飯、ちゃんと食べてきたか」
「うん!美味しかったよ。ホント、いつもハルに甘えっぱなしでごめんね」
「別に、いい。ついでだから」
「そういえば、ハルの高校のスポーツ推薦の話
……
御子柴館長に教えてあげてもいい?」
「ああ、いいぞ。あの人には感謝してる」
珍しく遙が真琴以外の大人に敬意を向けているのには理由がある。
試合に出場するようになった遙はことごとく大会の記録を塗り替えてしまい、にわかに注目を集めていた。
この施設の館長である御子柴は、よく体育センターに泳ぎに来ている少年がその七瀬遙だと知ってから密かに色々と調べたらしい。
イワトビSCまで足を運んで笹部に話を聞き、遙の性質、真琴の献身に心を打たれ(?)色々とサポートしてくれる様になった。
日曜日の休みを多めにしてくれたり、遙がセンターに来ている時は仕事は後回しで面倒を見てやれとまで言われている。
挙句の果てには早番のシフトを組まれ、仕事が終わったらイワトビSCに行って遙のコーチをするように、との命令だ。
元日本代表の競泳選手だったという御子柴が、熱く語った言葉を真琴は嬉しく思っていた。
『七瀬くんは将来必ず日本代表になる。橘くんはとても重要な存在だぞ』
ただし、メディアの取材があった際には必ずこのセンターと館長の功績を語る様に、とのことだ。
そのおかげで働きながらも、長く遙の側にいてやれるようになった。
――
だが。
仕事終わりにイワトビSCに通うようになってからは新たな問題が真琴を悩ませている。
「真琴!オレのタイムも計ってよ!」
最近イワトビSCにやってきた松岡凛は遙と同じ学年で遙のライバルを自称している。
明朗快活な美少年だが、遙とは反りが合わないらしくいつも最後にはケンカになってしまう。
「だから、何度も言ってるだろ。真琴を名前で呼ぶな」
真琴の元に駆け寄ってきた松岡に遙が割って入った。
「はぁ?七瀬は真琴って呼んでるじゃん」
「俺はいいんだ。それに真琴はお前のタイムなんか計らない」
「なんで七瀬が決めんだよ。いいよな?真琴!」
「あはは
……
。えっとじゃあ二人で同時に泳いでみたらどうかな?」
真琴の提案に松岡が大声をあげる。
「よっしゃあ!七瀬!勝負だ!」
遙は溜息をついて、真琴をじぃっと睨みつけた。
真琴は引き攣った笑顔を返してから、しれっとストップウォッチを構える。
「それじゃあ、位置について!」
松岡が真琴を慕ってくるのは、本当は遙に近づきたいからなのだとすぐにわかりそうなものだが、真琴を独り占めするのに必死な遙はそれに気付くことができないでいる。
真琴は松岡の存在が、遙にとって良い刺激になっていると大いに期待していた。
お互いに認め合えるライバルと一緒に成長していければ、遙にとってこれほど良いことはない。
勝負の結果はいつも僅差で遙の勝利ではあるが
……
。
「松岡くん!記録更新だよ!」
「マジで!?やったぁ!」
松岡は水から上がると大喜びで真琴に抱き付く。
それを見た遙が水の中から声を張り上げた。
「お前のタイムはどうか知らないけど、また俺の勝ちだ」
「うるせー!
……
真琴、サンキュ。レッスン戻るから、またな!」
手を振って走っていく松岡を見送った真琴は、すぐに遙の機嫌を取らねばと向き直った。
何でもない風を装って水の中に入り、遙の恨めしい視線を受け止めながら場の流れを変えようと必死に続ける。
「この前の続きだけどね、ハルのスピードにターンが追いついてないからもっと体の軸を意識して
……
」
ムスっとむくれているが、言う事を聞いてくれる遙が愛らしく見えて真琴は顔を綻ばせた。
「脚力トレーニングの為に明日の休みは近くの山で走ってみようか」
「
……
ああ」
休日を差し出す約束に、遙の機嫌はほんの少し良くなった様だ。
しばらくすると、遙は珍しく早めに練習を切り上げると言い出した。
そして例のごとく、両親が不在だから家に泊っていけと告げる。
真琴は笑顔で了承しつつも、困ったことになったと内心焦ってしまう。
こんな風に嫉妬心を煽られた日の遙の行為は一段と執拗で激しいものになるのがわかっているからだ。
そんな日はさすがに途中で目覚めてしまい、意識を保ったまま責め苦に耐える羽目になる。さらに真琴が起きていることがわかると遙は途端に意地悪くなって、知りたくもない目覚めなかった日の状態まで独り言を装って伝えてくるのでたまったものではない。
ふと、遙に言われた言葉が次々と甦ってきて頭の中を一杯にする。
「この前の真琴、腰ビクビク浮かしてガニ股のまま何回もイってたな」
「情けない声出して必死に腰押し付けてくるから可愛かった」
「寝てるときはあんなに素直なのにな」
真琴はそれを聞くと激しい責めも相まってすぐに泣いてしまって、途中で目を開き「もうやめてほしい」と哀願するしかなかった。
もちろんその願いが聞き入れられることはなく、興奮した遙の口付けを受け入れながらあらゆる手段でイかされることになる。
今夜もそんなことが繰り広げられると思うと体が熱で強張って、逃げ出したい気持ちで一杯になるが、気が付けば遙の家の食卓で鯖を前に座っている、というパターンだ。
ところが、今日の遙はいつもと違って見えた。
自らの手で用意した大好物である鯖を前に、箸が進んでいない。
これは一大事と真琴は顔を覗き込む。
「ハル?もしかして具合でも悪いの?」
遙は首を横にゆっくり振ってぽつりと呟く。
「松岡
……
、速くなってきてるな」
今日の勝負のことが気になっていたのか、と真琴は胸を撫でおろした。
「うん、良いライバルができたね!でも
……
」
言葉の続きは遙に遮られる。
「真琴は
……
俺が、松岡に負けたら」
遙は俯いて微かに震えているように見える。
「俺のこと、見捨てるのか
……
?」
その言葉に真琴は思わず遙の元へ詰め寄った。
「そんなワケない!どうしてそんなこと
……
!」
「真琴は俺が速いから一緒にいてくれるんだろ
……
負けたらもう、俺に価値なんてない」
生気を失った遙の顔を見て、突き刺された様に胸が痛む。
そんな風に思わせてしまっていたのか。
忙しさにかまけて、遙の心の変化を見逃してしまったのだと猛省した。
「それは違うよ。速いからとかじゃなくて、ハルがハルだから」
しっかりと噛み砕いて丁寧に伝えなければ。
まっすぐに遙の瞳を見つめて、その肩にそっと手をかける。
「ハルはオレの大切な存在だから、勝ち負けなんて関係ないよ」
遙はすぐに視線を逸らすと、俯いて不満気に吐き捨てる。
「
……
他の奴より速いから、大切なんだろ」
「ハル
……
違うよ
……
」
あまりの苦しさに顔が歪む。
そんな気持ちでいることが、どんなに辛いことか自分にだってわかる。
真琴は涙をこらえて、遙をそっと抱きしめた。
「ねぇ、ハル。あの時言ってくれたよね?オレの事、好きだって」
先の言葉を続けるのには迷いがあった。
遙の大切な将来に少なからず影響を与えてしまうかもしれない。
けれど、たった今。
こうして目の前で打ちひしがれている少年の心をほんの少しでも癒すことができるなら、それを口にしない訳にはいかなかった。
「きっと、オレもハルのことが好きなんだと思う
……
ずっと一緒だって約束しただろ?」
それを聞いた遙が腕の中でどんな顔をしたか知る由もなく、真琴は躊躇いがちに言葉を続けた。
「それにさ
……
好きじゃなきゃ、あんなこと
……
」
真琴が言い終わる前に遙は真琴の胸を押し退け、一旦体を離してから立ち上がるとすぐにまたその腕を引き寄せる。
「部屋に来てくれ」
「ちょ
……
っ、ハル!?」
先程の落ち込んだ様子からは考えられない強引さで真琴の手を引き階段を駆け上り、自分の部屋になだれ込んだ遙は、すぐさま机の引き出しを漁る。
ベッドに座れ、と言われてその急な変わりように真琴は何が何だかわからず従うしかない。
やがて何やら手に握りしめて真琴の隣に腰掛けた遙は、その手の平を開いて見せつけると、躊躇いと焦りを滲ませて言い放つ。
「授業でもらった
……
ちゃんとこれ使うから、真琴とセックスしたい」
「そっ、それは
……
!」
遙が持ってきたのはコンドームで、真琴は卒倒しそうになった。
まさかこういう展開になるなんて。
遙の中では真琴から答えをもらえたので、いよいよ本番、といった方程式が成り立った様だ。
或いは、その答えを引き出す為にひと芝居うったのかもしれない。
どうしよう、どうする、どうすれば
……
。
目の前がぐるぐると回って倒れそうになるのを堪える真琴をよそに、
遙は熱っぽい瞳で、今にも覆いかぶさってきそうだ。
「ハルのこと好きなのは本当だけど、
……
っ!?」
真琴の言葉を聞いて、予想通りすぐに遙がのし掛かってくる。
「ま、待って、ハル
……
っ!」
熱い口付けを受けて、頭の中に靄がかかった。
自覚は無くとも真琴の体はもうすっかり遙に躾けられてしまっているのだろう。
喉元にがぶ、と軽く噛みつかれてから、鎖骨に舌が這う。
次にその舌が濡らす場所がわかって、それだけで全身に甘い痺れが伝う。
期待に震える胸の先が、ぢぅと音をたててシャツ越しにゆっくり吸い上げられる。
「ひっ
……
ぃ、い
……
っ!」
見悶えするようなたまらない快感。
最初の頃はそれこそ悪戯の延長のようだった遙の舌や指の動きは、今では的確に快感を引き出すための動作になっている。
服の上から指の腹でぐにゅ、と突起を押しつぶされ、上へ下へとせわしなく弾かれて、真琴は内腿をもじもじと擦り合わせては身を捩らせた。
「んっ、んん
……
っ!」
そんな自分が情けなくて、一瞬、何もかも諦めてしまいそうになる。
もうどうだっていい。
このまま最後までさせてやれば、きっと全てから解放される。
これで遙が満足して、また自由に泳げるならそれでいい。
でも
……
。
真琴は蕩けてしまいそうな頭と体の最後の力をふり絞って、遙を制止した。
「ハル、お願い、待って
……
」
その涙声に、遙の動きがぴたりと止まると、隙を見て体を起こす。
張り詰めた股間を持て余し荒い息を整える遙の姿に、もはや少年の面影は無い。
真琴は少しの恐怖と、何と表現して良いかわからない感情に戸惑いつつも、努めて優しくきりだした。
「あのね、未成年と、せっ
……
性行為をするのは犯罪なんだよ」
セックス、と言えずに性行為と言い換えたことで更に遙を興奮させているとも知らずに、子供に言って聞かせるように語りかける。
「ハルとしてることが誰かに知られたら、二度とハルに会えなくなっちゃうかも
……
」
「
……
バレるわけない。それに、大人がセックスされるほうならいいんじゃないか」
「そ、そういう問題じゃなくてね
……
例えばオレがハルの、性器に触ったりするのも犯罪なんだよ」
「
……
真琴は俺の触ったことないだろ」
「そう、だから!そのくらい厳しいってこと!ハルが大人になるまではしちゃいけないことなんだよ
……
わかってくれるよね?」
にこりと微笑む真琴の顔からはすっかり劣情が消え去っているように見えて、遙は唇を噛みしめた。
ここで無理矢理行為に及んで、お互いの大切な初めての時を滅茶苦茶にするのはさすがに忍びない。
実際の所、うまくできるのか不安もあったので真琴の協力は不可欠だったのだ。
「
……
わかった。挿れるのは駄目なんだろ。真琴が俺に触るのも」
「うん
……
。ちゃんと聞いてくれてありがとう。ハルがオレのこと大切にしてくれてるのがわかって嬉しい」
頬を赤く染め少女の様に微笑む真琴を見て、遙はうなだれる。
どうにもこの笑顔には弱い。
「
……
今までしてたことなら、いいんだろ」
「う、うん
……
挿れないなら、せっくす、じゃないと思う」
問いかけに、その整った童顔には似つかわしくない大胆な言葉を返されて遙は喉を上下させた。
真琴からすれば、遙の機嫌をこれ以上損ねない為の最大限の譲歩だ。
「念の為聞くけど
……
向こうで誰かとしたことないよな?」
「なっ、ないよ!勉強が大変で女の子と付き合う暇なんて
……
」
「キスも初めてか?」
「う
……
、いいだろ別に!もう聞くなよぉ!」
「
……
調べたほうがいいな」
目の前の大人が自分の言葉ひとつで慌てふためくのは愉快だったが、不意に不安に駆られた遙は再び真琴を押し倒し、ズボンを引き剥がすと下着まで剝ぎ取ってしまう。
「なっ、あ
……
!?」
あっという間の出来事に真琴は為す術がなかった。
そのまま股を割って間に体を入れられ、遙の部屋の蛍光灯の下で普段は人目に触れることのない部分の全てを露わにされて、真琴はわなわなと震えた。
「ここも、誰かに使わせたことないよな?」
興奮した様子の遙が指で秘部を撫でる。
「ない
……
っ!ないから
……
!」
遙の視線がじっとりと絡みつく、あまりの羞恥に陰茎がヒクヒクと震えている。
触られてもいないのに、次第に熱を持って勃ちあがり始めるその一部始終を観察するように見られて、真琴の自我は崩壊寸前だ。
「お、お願い
……
、見ない
……
で」
その言葉は耳には届いていないらしく、遙は目の前の卑猥な光景に釘付けのまま下着から勃ちあがりかけた自身を引き出す。
と、その様子に怯えて目を逸らす真琴の姿に欲情したのか必死になって自身を扱き始めた。
真琴は真琴で自分の股の間で初めて遙の自慰を見ることになってしまい、もうどうしていいかわからなかった。
まだあどけなさの残る少年が、所謂『見抜き』に夢中な姿は何とも言えず居たたまれないが、遙の切なげな表情や荒い息遣いに妙な感覚がこみ上げてきてたまらず目を瞑る。
一刻も早くこの時間が終わることを祈っていると、突如、熱い粘液が勢いよく秘部をびちゃりと濡らした。
「
……
っ!?」
それが遙の精液だとわかると、途端に体中をざわざわとした快感が駆け巡る。
陰茎どころか、遙の精液で濡れた秘部までがヒクヒクと小刻みに震え、自分の身に何が起きているのか理解が追いつかない。
「真琴
……
、俺のかけられてイきそうになってる」
射精したばかりの遙の、色気のある掠れた声で今の自分の状態を告げられて、頭の奥底でそれが真実なのだと理解してしまった。
「ち、ちが
……
」
お決まりの否定の言葉を涙目で弱々しく吐いてはみたものの。
自分の中の自尊心とでも言うべきものが少しずつ音をたてて崩れてくのを感じて、全身から力が抜けていく。
ここぞとばかりに、遙は自身の精液で濡らした真琴の秘部を再び撫でる。
ぬるり、と指に吸い付く様な感触。
脱力した真琴のソコは先程の言葉とは裏腹にもの欲しそうにヒクついて、今にも遙の指を飲み込んでしまいそうだった。
くちくちと音をたてて擦ってやると悲鳴にも似た声が響く。
「だめ
……
っ!そこ、駄目
……
!」
真琴は自らの陰茎を両手で押さえて悶えている。
せめてそこだけは触られない様に、なのか、単純に射精するのを堪えたいのか、いまいち遙には理解できなかったが、握るのではなく、女の子の様に押さえているだけなのが可愛くて笑みがこぼれる。
指の動きが激しくなってくると真琴は体を仰け反らせて、喚きちらした。
「や
……
っ、変
…
、へんだよぉ
……
!」
遙は実質、中指をひたすら動かしているだけなので余裕の静観を続ける。
「変って、何が」
「おしり、熱くて
……
、きもちぃ
……
の
……
っ」
「気持ち良いならいいだろ」
蕩けた表情の真琴が舌足らずの甘い声で卑猥な台詞を吐くのが堪らなくて、再び股間に熱が集まるのを感じた。
快感に腰を突き出す度に、陰茎を押さえつけている自らの手の平と摩擦が生じるらしく、それに戸惑って両手を離してみては、羞恥からすぐに再び両手で覆い隠す。
そんな真琴の滑稽さに遙はくすくすと笑って、そろそろ決定的な刺激を与えてやろうと考える。
さて、どこにするか。
どこを触ってやってもすぐに達してしまうには違いないが。
そんなことを考えていると、心の中のわだかまりが晴れていくのを感じた。
たとえセックスできなくても、こうやって真琴は俺のものなのだとわからせてやることはできる。
これからやれることもまだまだある。
とりあえずは今は
……
と、目の前の真琴に意識を戻してみるが、すでにだらしなく両足を広げきって、隠されていた陰茎を露わにぐったりと、達してしまった後の様な状態だった。
声も出せずに達したのか、もしくは延々と秘部を擦られ続けて甘イキを繰り返し力尽きてしまったのか。
或いはその両方かもしれない。
「真琴のココが誰かに使われてないか、これから毎日調べるから」
ふぅふぅと弱々しい呼吸を繰り返す真琴に覆いかぶさって口付けてやる。
舌を絡めるとそれに答えるように、力なく垂れ下がった真琴の陰茎からどろりと精液が溢れた。
「俺が大人になるまで
……
真琴も我慢できるといいけどな」
エヴァーブルー after remix
――
卒業式が終わって。
クラスの仲間と別れを惜しむささやかな集まりを、家族とはお祝いの食事会を滞りなく済ませてから。
二度と袖を通すことのない制服を丁寧に畳んでしまって、遙は家を出た。
小さなバッグの中に忍ばせた大切な物、その重みを感じながら夜の電車に乗り込む。
後は真琴が住む隣町まで、席に座っていればいいだけ。
外は塗りつぶした様な黒で、向かいの窓ガラスに映る自分の顔は相変わらずの無表情。
けれど内心は揺れていた。
別に「今夜、最後までする為に行く」と告げたわけではないが、わざわざ卒業式の夜に部屋を訪ねる約束をしたわけだから意味は伝わっているだろう、と思う。
『初めてする場所』はどこが良いものかと本当は悩んだのだが、調べによるとお互いがリラックスできる場所が一番なのだそうだ。
ならば、と真琴の部屋ですることにした。
何度もお預けをくらう度に告げられた「高校を卒業したら」という言葉。
それが今日はもう使えないと、わかっているはずだ。
思い返せば。
遙の体に触れることすら犯罪なのだと、真琴はキスのひとつも自分からはしてくれなかった
……
ので、いつも真琴を好き勝手にいじくりまわしては、その体のあらゆる場所を使って自慰をしているようなものだったけれど。
もはや真琴の体に、遙の精液がかかっていない場所の方が少ないかもしれない。
それなのに、真琴の中では明確な線引きがあるらしく、性器に遙が口をつけることは禁止で、もちろん遙の性器にも絶対に触れようとしなかった。
何度「口でしてくれ」と頼んでも言語道断と相手にされず、何度か真琴の唇に無理矢理に陰茎を押し付けたことがある。
当然、真琴は抗議の声を上げようと口を開く、とそれが中に侵入してしまうので、必死に遙の体を押し退けるが、その後はもう口を開けなくなって「んう」とか「むぅ」といった声にならない声を鼻と喉で響かせ、その唇の上を遙の陰茎が這いずりまわるのを許すしかない。
せめて再びの侵入を拒もうと歯を食いしばり唇を固く閉じるが、鼻をつままれて呼吸ができなくなり口を開けたところにまた捻じ込まれる、の繰り返し。
それでも、無意識なのか、気遣ってなのか、歯が当たらないように舌を出してくれていたことを思い出して、遙は下腹の辺りがじわりと熱くなるのを感じた。
真琴の唇も舌も、歯だって当たると気持ちが良かった。
羞恥と罪悪感に塗れてぐちゃぐちゃの泣き顔で、どんなことも必死に受け入れてくれる。
そうせざるを得ない状況に追い込んだのだという自覚は少なからずあるが
……
。
過去の行為に思いを馳せていると電車は目的の駅に到着する。
春とはいえ、夜風は冷たい。
遙は自分の薄着を悔やんで、体を震わせながら真琴のアパートまで急いだ。
チャイムを鳴らすとドアが開いて、冷えた顔にふわりと触れる暖かい空気と、柔らかな光を背にした見慣れた笑顔に心から安らぎを感じる。
こんなに美しいものを収めておくには、いつ見てもこのアパートはあまりに質素なパッケージだ。
けれど、ここに真琴がいることは俺しか知らないし、一種のカモフラージュの様なものか。
部屋の中に招き入れられて高揚感に浸っている遙をよそに、真琴は早々とキッチンへ引っ込む。
「ハル、もう何か食べてきたよね?お祝いに一応ご飯用意したんだけど
……
」
有名店のものをお持ち帰りしたのだと、真琴は野菜で彩られた鯖を運んできた。
もはや自分が空腹なのか満腹なのかの感覚もない遙だったが、食べると告げると真琴は喜んだ。
「魚には白ワインなんだけど、ハルにはノンアルコールのやつ。お祝いだからいいよね」
自分のグラスには白ワインを、遙のグラスにはつまりマスカットのジュースを注いで、準備万端と真琴は声をあげた。
「じゃあ、あらためて。ハル、卒業おめでとう!」
グラスを高く掲げて、あっという間に飲み干す真琴に、遙は一抹の不安を感じて牽制する。
「
……
飲みすぎるなよ」
「ふふ、ハルの方が大人みたいだね」
空になったグラスにワインを注ぎながら、真琴が上機嫌で話し続ける。
「次は大学の入学式かぁ
……
ハルのスーツ姿、かっこ良いだろうなあ」
それでね、と真琴は何やらテーブルの下を漁ると持ち手のついた小さな紙袋を取り出した。
「これ、卒業のお祝いと、入学のお祝い。開けてみて!」
紙袋を覗いて取り出すと若干の重さを感じるそれは、箱からして皮の様な素材でできた重厚な造りだ。
開いてみると、光沢のある白い布で覆われた台座にきらりと光る腕時計が収まっていた。
一目で高級なものだとわかる。
「これね、設定すればすぐ他の国の時間にできて
……
」
「もらっていいのか
……
高いものだろ」
「ちょっと奮発しちゃった。ハルのことお祝いしたかったんだもん」
それに、と真琴は懐かしむような表情を見せる。
「本当に嬉しいんだ。あんなに小さかったハルがさ
……
これからは世界を舞台に泳ぐんだから」
「気が早いし、大げさだ。
……
でも、ありがとう」
礼を告げてから自分のバッグをちらりと見て気まずさが込み上げた。
真琴からの予想外のプレゼントをそっと閉まって、グラスの中身を飲み干し、洒落た姿の鯖を口いっぱいに頬張りながら、さてどうするかと迷う。
「効率的な単位の取り方、オレが組み立ててあげるからね!あと、大学生活で一番大事なのは
……
」
遙の心中を知る由もなく、先輩風をふかせて真琴が延々と語り始めるが、目の前の相手からの反応は薄い。
やがて沈黙が訪れ、たまらず遙がきりだした。
「
……
真琴。そんなことより、忘れてないよな?」
真琴はうっすらと赤い頬をさらに赤くして、こくりと頷いた後、グラスにワインを注いで飲み干す。
遙は真琴がその勢いにまかせて何か言おうとしているのがわかって、大人になるとこうでもしないと本音を語れないのかと『大人の真琴』を少しだけ哀れに思いつつ、告げられる言葉を待つ。
「
……
ハル、もう一度ちゃんと考えてみてほしいんだ」
大体、想像していた通りの台詞。
それでもその続きを聞いてやろうと遙は黙っていた。
「この先、色んなことがあって、たくさんの人と出会って
……
ハルには約束された将来があるんだよ」
「
……
それで?」
「ハルに後悔してほしくない。それに、ずっと小さい頃からハルを見てきて
……
やっぱりオレにとっては
……
」
「
……
まだ子供だっていうのか」
失望の滲んだ遙の声。
真琴は胸の痛みをこらえて続ける。
「
……
ハルは大切な宝物だよ。あんなことして良い相手じゃない」
目の前の遙の顔がみるみる歪んでいく。
「いい加減にしろよ
……
今更、逃げられるとでも思ってるのか」
身を乗り出してきた遙に手首を掴まれる。
痛いくらいに力を込められて、真琴は次の言葉が出ない。
代わりに遙が続ける。
「散々、餌で釣っておいて
……
俺を何だと
……
」
自分の思惑が伝わっていない、と真琴は焦った。
けれど怒りと悲しみを滲ませた遙を前に、その思惑が本当の気持ちではないことも痛いほど思い知ってしまう。
「オレは、ハルの為を思って
……
!」
「
……
本当のこと言えよ。俺を都合よく操って、最後には怖くなったから逃げるんだろ」
その言葉に真琴の瞳から涙がとめどなく溢れてきて、遙は思わず掴んだ手を離した。
「怖いよ
……
だって、オレはとっくにハルの物なのに
……
!
ハルはもう大人になって
……
いつかオレが必要なくなる日が来る、って」
泣きじゃくりながら語る真琴を固唾を飲んで見守る。
「そんなの耐えられないから
……
今ならまだ全部なかったことにして忘れられるんじゃないかって
……
オレ、大人なのに自分のことしか考えられなくて
……
」
ごめんね、と真琴は何度も謝った。
アルコールの力を借りて初めて本当の気持ちを言葉にできたのかもしれない、と『大人の真琴』をやっぱり可哀想に思う。
遙は大きな溜息をついてからバッグの中を漁ると、真琴に渡すと決めていたものを取り出した。
「真琴が高価な時計なんてくれるから
……
恥ずかしくなって、出せなかった」
簡素な箱に入った、安物の指輪。
高校生だった遙にはこれが限界だ。
驚いて声も出せず、指輪を見つめる真琴の手を取る。
「薬指のサイズだから
……
意味、わかるだろ」
真琴は茫然としたまま、かろうじて小さな声を出す。
「
……
ハル」
「最初からちゃんと責任取るつもりだった。何言われても、諦めるつもりない」
再び真琴の瞳から涙が溢れ出す。
けれど先程とは違い、その顔は幸福な笑みで満たされている。
「ハル、本当にオレより大人みたい
……
」
ぴたりと指輪の嵌った薬指をうっとり見つめて真琴が呟いた。
「すごく嬉しい。
……
ハル、大好きだよ」
ほとんど初めて、はっきりと好意を伝えられ、それだけで遙は危うく満足してしまいそうになって仕切り直しとばかりに真琴に体を寄せる。
「真琴
……
いいんだよな」
真琴は耳まで赤くして頷いてから、その大きな瞳でこちらを窺がう。
「その前に
……
キス、してもいい?」
「いちいち聞かなくていい
……
」
あまりの愛らしさと、ついに真琴からしてもらえるのかという驚きに遙は一瞬で参ってしまう。
体格差で半ば伸し掛かる様に口付けられて、幸福に押しつぶされるとはこういうことかと思った。
しかし柔らかな唇はすぐに離れる。
「初めてハルにキスしちゃった」
いたずらっぽく笑って、照れている真琴を前に完全に理性が消え失せるのを感じる。
だが、真琴の追撃は終わらない。
「服、脱ぐから
……
ハルも脱いで」
完全な合意に至っていなかった今までは、嫌がる真琴の必要な部分を無理矢理に曝け出してほとんど着衣状態で事に及んでいた。
遙に至っては局部を出すだけで済んでいたので、こうしてお互いが裸で向き合うのは初めてといえるだろう。
案外あっさりと脱ぎ終わった真琴が熱に浮かされた様な顔で遙の体を見つめてくる。
真琴に見られながら服を脱ぐなんてあり得ないことだと内心興奮しつつ、何でもない顔で裸になるが、それなりに恥ずかしさが込みあげてきた。
真琴は羨望ともとれる眼差しをこちらに向けて呟く。
「
……
ハルの体、逞しくなったね」
成長して男らしくなった体を見て少しは欲情してくれているのだろうかと、良い気分でベッドの上の真琴の隣に座った。
遙の方も昔から成長していく真琴の体を見続けているが、年齢を経て少し肉付きが良くなり、線が柔らかくなったように思う。
その分、肌は吸い付くような
……
とその感触を思い出しながら何となく真琴の胸の辺りを見ると、ピンク色の先端が誘う様に勃ちあがっている。
思わず目を逸らした視線の先に、指輪の光る薬指が飛び込んできて、遙はもう心臓が持たないと思った。
……
何年この時を待ちわびたことか。
本当の純潔を失う前にすでにその体を淫らに造りかえられて。
挙句の果てには安物の指輪で心を拘束され
……
。
今、目の前に一糸まとわぬ姿で大人しくしている真琴。
これから一回り年下の、一回り小さな自分が、最後の尊厳までも蹂躙するのだと思うと、その興奮に眩暈を覚える。
体がたまらなく熱くなって、耳鳴りと一緒にごうごうと血の流れる音まで聞こえる気がする。
……
可哀想な真琴。
これは一種の加虐心のようなものだろうかと自覚して、やはり長年の間に色んなものを拗らせてしまったのだと思った。
もう真琴が痛がっても嫌がっても止めてやれる自信がない。
泣いても、叫んでも、滅茶苦茶に
……
と沸騰寸前の瞬間。
不意に真琴に抱きしめられる。
素肌が触れあう、しっとりとした温かな感触。
「
……
ハルは、オレの宝物だよ。何があっても、ずっと」
優しい声。
伝わってくる心からの親愛。
先程まで乳首を勃起させて欲情した顔を見せておきながらの、この仕打ちには遙でなくとも情緒を破壊されてしまうかもしれない。
遙はもう自分が泣けばいいのか喜べばいいのかもわからず、瞳を閉じる。
一瞬で冷静さを取り戻し
……
つまり、萎えた遙はその場を離れ、バッグの中からコンドームとローションを持ってきた。
この僅かな間の目まぐるしい感情の浮き沈みを想像できるはずもない真琴は、終始無言の遙が一杯一杯になってしまっているのでは、と思ったようだ。
「大丈夫だからね。ちゃんとオレも勉強したから」
勉強でどうにかなるのか、と吹き出しそうになる。
これでは真琴に喜怒哀楽の全てを支配されているようなものだ。
「えっと、まず、ちゃんと硬くして
……
」
ローションをこれでもかと塗りたくった真琴の手が恐る恐る股間へと伸びてくる。
加減をというものを知らないのか、ただでさえローションの冷たさに慄いているのに雑に性器を掴まれて遙は肩を震わせた。
「
……
真琴。もう少し優しく扱え」
「え、あああ
……
っ!ごめん!」
真琴は掴んだ性器をロクに見ることもせず、遙の抗議に思わず力を込めてしまう。
「い
……
っ!もう、いい
……
離せ」
この馬鹿力、と睨みつけては見たものの、結果的に遙の陰茎は硬く勃ちあがってしまった。
乱暴ながらも初めて真琴に触られたのだから、この程度で反応してしまうのも仕方のないことかもしれない。
そそり立った遙の陰茎をローションがぬるりと伝って落ちていくのを見て、真琴は露骨に顔を赤らめ、目を逸らす。
「ご、ごめん!次はこっち準備するから、ハルは
……
」
それ、と真琴はコンドームを指さした。
口に出すのすら恥ずかしがっているのが可愛くて、ついその前の言葉を聞き逃してしまった遙だったが、言われた通りにそれを装着している横で、自らの秘部をローションのついた指を使って慣らしている真琴の姿が目に入って卒倒しそうになる。
「待っててね。こうやって
……
、柔らかく、するんだって」
苦痛なのか羞恥からなのか顔を歪め、時折吐息をもらしながら懸命に指を秘部に捻じ込んでいる姿を見て、遙はこれが夢ではないことを願った。
同時に抑えきれない衝動に身をまかせて真琴の腕を掴む。
「
……
ここ、俺がよく弄ってたし。もう相当、柔らかいだろ」
言葉の後で、先程まで真琴が懸命に慣らしていた場所にぬるりと中指を納める。
「
……
ほらな」
突然のことに口を開けたまま動けなくなってしまっている真琴に構わず、すでに限界を迎えていた遙は先へと行為を進める。
「痛くないだろ。
……
もう挿れるぞ」
指を抜かれてからすぐに秘部に切っ先を押し付けられて、真琴はやっとのことで声をあげた。
「
……
っ、ハルの、入っちゃ
……
う」
腰を進めると、真琴の言葉通り先端がじゅぷ、と侵入していく。
知られたらただでは済まないだろうが、真琴が寝ている間に何度も指を挿れてはその感覚を確かめていたので、思った以上にソコは簡単に遙を受け入れてくれた。
念願の、という言葉ではまだまだ足りない。
コンドーム越しに伝わってくる途方もない熱。
肉壁を押し割って奥へとゆっくり入っていくと、やがて根元が入り口の一番キツい所で、ぎゅうと締め付けられる。
最奥まで己を突き挿した達成感の様なものが胸に湧きあがり大きく息を吐いた。
真琴の様子を窺うと、陰茎を咥え込んだ自分の秘部を見つめ、未だに事態が飲み込めていないといった顔で遙の両腕をしっかりと掴んでいる。
或いは隙をみて、遙を制止するか突き放すか迷っているのかもしれない。
ゆっくりと腰を引くと、肉壁は収縮して先端を追ってくる。
じりじりと快感を生む摩擦に、遙も真琴も思わず吐息をもらした。
「っ、は
……
あ
……
」
抜けそうになった所で止めると、再びの侵入を予測して真琴が無意識に力を入れる。
それが筋肉の収縮となり、結果的には遙を奥へと招き入れてしまうことになる。
「あっ、え
……
ぁ
……
っ!?」
「
……
離したくないみたいだな」
遙はくすりと笑ってその収縮に従う。
腰の動きを速めても、真琴の中は従順に遙を受け入れては送り出し、を繰り返す。
「なん、で
……
?やだ
……
ぁ
……
っ」
快感に仰け反る真琴の胸の突起がとがって主張している姿は健気ながらも卑猥だが、それを触ってやる余裕は今の遙にはない。
ゴムを付けた状態でこれほどの快感なら、もしこの薄い隔たりを剥ぎ取ってしまえば一体どうなってしまうのだろう。
腰を動かす度に徹底的に中で扱かれて正常な意識が保てなくなってくる。
一刻も早く、と射精を促す懸命な律動。
真琴の中はそれほどまでに俺の精液を欲しがっているのか、と都合の良い解釈が浮んできて、すぐに実行に移す。
「悪い、真琴
……
ナマで、する
……
」
にゅぽ、と音をたてて性器を引き抜き、一瞬でコンドームを外すと、入り口が閉じきる前に剝き出しの陰茎を再び捻じ込む。
先程よりも熱い、皮膚が擦れる圧倒的な感覚に真琴はひたすらに混乱している。
「はじめて、なのに
……
ぃ
……
っ!」
怯えた声とは対照的に、真琴は全身で悦びを伝えているように思えた。
厭らしくうねる中の、入り口から少し先。
腹側の内壁が僅かに硬く盛り上がってきている。
そこを遙の熱い塊が通る度に、むくむくと真琴の陰茎が勃ちあがりはじめた。
「あ、
……
っう
……
!?」
「ここ、気持ちいいんだな」
それが前立腺だとわかって、遙は嬉々としてそこを責め立てた。
突いてやる度に、真琴の中は愛おしそうに遙を締め付けてくる。
中だけではない。
真琴の陰茎も、両胸の先端も、蕩けた顔も、甘い声も。
その全てが必死に精液を欲しがって、淫らに誘っている。
遙はぞくぞくと背筋に何かが走るのを感じて身震いした。
激しく繰り返されるピストンに、真琴の中は悦んで遙を奥へ引きずりこむ。
もっと奥へ、決して逃さないとでもいうような動きに、もはや思考は停止し無意識に言葉が溢れ出る。
「真琴もずっと
……
俺のが欲しかったんだろ」
「大人だからって、何年も我慢して偉いな」
「いま、すぐ、真琴の、なか
……
」
そこまでしか言えずに絶頂が訪れ、激しく射精する痛いくらいの快感に遙は何度も瞬きをして声をこらえた。
真琴の中は精液を受け止めると波打つように収縮を続けて、何度も射精しているような感覚に陥る。
信じられないくらいに気持ちが良くて、このままずっとこうしていたかった。
が、真琴が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で何やら訴えているので、呼吸を整えて意識を現実に戻そうと努める。
「ハル
……
っ、ぬい
…
っ、抜いて
……
っ!熱いよぉ
…
っ!」
言われて、自身を引き抜き様子を窺うと、中で射精された時に真琴も達してしまったのか、強烈な余韻に全身をビクビクと震わせている。
胸の辺りで両手をぎゅうっと握って耐えている姿が何とも言えず可愛くて、自然と遙の頬が緩む。
真琴の陰茎が勃ちあがったままな所を見ると、射精せずに中の感覚で達したのだろう。
そう簡単に絶頂が終わってくれるはずもない。
「ふっ、ぅ
……
きもちいいの
……
止まんな、い
……
よぉ」
真琴は八の字の眉毛で目を薄く閉じ、腹の底から波の様に襲ってくる快感を受け止めるのに必死で、時折大きく仰け反っては小さく喘ぎ、秘部から遙の精液を零した。
本当は欲しいのにずっと我慢していたのだから、体がはしゃぐ様に悦んでいるのだろうと遙はそれを温かく見守った。
ずっとイキ続けている所を遙に見られて、真琴の心が決壊の手前なのも知らずに
……
。
しばらくして落ち着いた真琴がぐったりと項垂れた所に、いそいそと覆いかぶさる。
「ま
……
、また、するの
……
?」
「当たり前だろ。何年待ったと思ってる」
朦朧としている真琴に毅然と言い放つ。
「それに、何歳だと思ってるんだ?ついさっきまで高校生だったんだぞ」
それを聞いて全てを諦めた真琴は、「うぅ」と呻き声を洩らした。
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