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ナガレ
2024-01-30 20:40:12
1288文字
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甦った松井と豊前があれこれする話になる予定(ぶぜまつ) ※書きかけ
黄泉の国からアイルビーバックする松井。己のセイヘキに忠実になろうと思うので、途中でR指定になるかと。
これでいい。最後の一雫が尽きた。
暗闇の中、ふとそう思った。血を流し尽くしてすっかり乾いてしまったこの器。許される事はないけれど、楽になる事はできる。囚われ続ける事に変わりはないけれど、その重しは随分と軽くなった。
四肢から力が抜けていき、瞼も下がる。人の子は死の間際に人生の思い出が走馬灯のように巡ると言うけれど、刀剣男士も同じなのかもしれない。
目が覚めて顕世に顕現した瞬間、知らない口上がすらすらと口をついて出た事。初めて刀をこの手で握って振るった時の事。喜びのあまり鼻血を出すなんて、今思えばどうにかしている。
好かない畑仕事は駆り出される度にこのまま埋まってしまいたいと嘆いたし、馬の世話にはなかなか慣れなくてようやく触れられるようになった時には練度の上限が間近だった。
実務が得意だと自己申告したばかりに報告書の添削は僕の仕事になってしまった。適当な報告でお茶を濁す者、改ざんしようとする者、ひな形を無視する者。彼らにはほとほと手を焼いた。電子機器は苦手だからと手で書くのは構わないが、あまりにも流暢な崩し字で書かれて読めない時も多かった。
息抜きは旧知の脇差が主催する歌や踊りの稽古。元の主の関係の顔なじみは今様歌舞に複雑そうな顔をしていたけれど、時々差し入れをくれた。れっすんの成果を披露する前に脱落してしまう事になり申し訳ない。
活動写真のコマ送りみたいに場面場面が切り替わる。些細な出来事もあれば、大事件もあった。顕現の桜から折れる直前の敵刀が振りかぶった白刃まですべて映し終えると、走馬灯は消えて闇が戻ってきた。これで本当に終わりだ。僕は朽ちてどこに行くのだろう。また刀剣男士として生まれ落ちる道もあるのかな。
“
――
俺、両手空いてっからさ”
走馬灯のアンコール。映し出されたのはこの一場面だった。僕はまだ、彼の両手を借りていない。
僕ら江の刀は希少性が高い。もし僕がいなくなれば、主は次の僕
――
松井江を手に入れようとするに違いない。僕と同じように練度を上げていく中で、彼にそう言われる日がきっと来る。どこの馬の骨とも分からぬ僕にその両手を差し出すと言うのか。それは僕のものだ。乾いてしまったはずの体に脈流が走り始めるのを感じた。
見知らぬ僕のために両手を空ける。それを防ぐためにはどうしたらいい?
……
帰ろう。何としてでも本丸に、彼のもとに帰るのだ。そう心を強く決めると、力の抜けていた四肢に張りが戻ってきた。五体も五感もゆっくりと蘇っていき、しばらくすると立ち上がれそうなまでになった。
ゆらり、ふらり。ふらつきながらも立ち上がり、自分の手で自分の体に触れてみた。鏡も水辺も無いので見てくれは分からないが、頭の上から足の先までどこにも異常はない。腰に提げた得物の柄も慣れ親しんだそれだった。刀を抜くと、数度軽く振ってみた。調子は悪くない。
ここは根の国。行き着く先は地獄かそれとも極楽か。どちらでも構わないし、どちらにも用は無い。今の僕がやるべき事はただ一つ。黄泉比良坂を見つけ出す、それだけだ。
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続くといいな!
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