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溶けかけ。
2024-06-24 21:59:47
1685文字
Public
ほぼ日刊
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龍の習性
宝物を仕舞い込みたいヌヴィレットと宝物のフリーナのお話。
「ヌヴィレットの宝物は何?」
旅人の言葉で頭に浮かんだのは一人の女性の姿。海を切り取ったようなオッドアイに、空に浮かぶ雲のような髪色を持つ
――
フリーナ殿の姿。
何を馬鹿なことを、と頭を振ってその考えを追い出す。
彼女は物ではない。失礼にも程がある。
――
それが数日前のことだ。
ヌヴィレットの腕の中には今、フリーナがいる。
気を失い、いつもきっちり着こなしている服はボロボロだ。本人も服装同様ボロボロであちらこちらに怪我をしている。
「くそっ
……
ついてねぇ
……
」
ヌヴィレットの背後で気絶していたはずの宝盗団の男が立ち上がる。
「どうせ、捕まるんなら皆殺しだ!!」
襲いかかってきた男の攻撃を体を少しずらして躱す。そのまま足をかけてバランスを崩させたら、蹴りを入れる。怪我をしない、無力化出来る程度の力を込めて。
「さて、次はどなたかな?」
気絶したフリをしてこちらの様子を伺っていた者たちを睨みつければ、何人かが雄叫びを上げながら襲いかかってきた。
「両手が塞がっているからと容赦するとでも?」
攻撃を躱しては、蹴りを入れて気絶させていく。こちらは丸腰とはいえ、随分と舐められたものだ。
「フリーナ殿」
ヌヴィレットが僕にフォークに刺さったりんごを差し出す。所謂、あーんというやつだ。
「
……
ん。美味しい、よ
……
」
「それはなによりだ」
咀嚼して、飲み込む。食べながらヌヴィレットの様子をそっと窺う。
「
……
私の顔に何か?」
どうやらすぐに気づかれてしまったようだ。意を決して。口を開く。
「い、いやぁ
……
その
……
キミが過保護だなあ
……
と」
「ふむ」
ヌヴィレットがフリーナの言葉に考えこむ仕草をした。室内が俄に静まりかえる。外から聞こえる鳥の声が心地良い。
「それは気のせいではないな」
ヌヴィレットが顎に手を当てながら言った。
「実は
……
」
ヌヴィレットは自身がフリーナのことを宝物だと思ったこと、龍の習性としてフリーナを人目に触れないところにしまいこんでしまいたい衝動に駆られていることを語った。
「君がもし、私を受け入れるようなことがあれば、私は君を手放せなくなる」
ヌヴィレットの頭がフリーナの肩にのる。傷が痛まないように触れるか触れないかの力で。
「私は君に自由なままでいてほしい。しかし、同時に君を誰の目にも触れないところへ仕舞い込んで、私だけを見ていて欲しいと願ってしまっている」
ヌヴィレットの独白をフリーナは黙って聞いていた。剥き出しの独占欲を晒したことに後悔はない。しかし、彼女に嫌われたら、もう二度と顔もみたくないと言われたら、そんな負の感情が心を支配する。
「しょうがないなぁ、ヌヴィレットは」
たっぷりの時間をかけて、フリーナがため息混じりに言葉を紡ぐ。温かな指先がヌヴィレットの頬を撫ぜた。
「いいよ。キミの好きにするといい」
ゆっくりとフリーナの腕が広げられる。ヌヴィレットはその様子を信じられない、とでも言うかのような顔で眺めていた。
「監禁でも何でもするといい。
……
ああでも、それだと僕もキミも困ってしまうかな」
「お互い、仕事もあるし」とフリーナが冗談交じりに言いながらヌヴィレットを優しく抱きしめた。
「キミはきっと、僕を監禁したことに罪悪感を抱いてしまうだろう?僕は別にいいけど、辛そうなキミの顔を見るのは嫌かなぁ」
ぽん、ぽん、と一定のリズムで背中を叩かれる。痛くはない。寧ろ、子どもをあやすような優しく、泣きたくなるようなものだ。
「いいのか
……
?私は君を手放せなくなるぞ
……
」
「ふふっ
……
キミとふたりぼっちでも悪くないんじゃない
……
?ああ、でも、浮気は嫌かな。僕にはキミしかいないんだから」
フリーナの両手がヌヴィレットの頬を包み込む。ちゅ、ちゅ、と軽いリップ音と共にヌヴィレットの顔にフリーナの唇が触れる。
「僕はなかなか、我儘だよ?覚悟してよね!」
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