「びっっくりしたぁ
……」
キャスターがプロトを見上げてそう呟いたが、驚いたのはプロトの方だった。一瞬思考が停止しかけたもののすぐさま切り替えて開き直ることにした。獣は逃げるものを追う習性がある。オレは悪くないから逃げる必要はない。キャスターが悪い。
何しろプロトが自室に帰ってくると周回に出ているはずのキャスターが居て、プロトのベッド下の段ボールを勝手に空け、隠してあった秘蔵のディルドを手にしていたからだ。
「なんで居るんだ?」
「昼休憩」
「昼休憩に何でオレの部屋に来るんだよ」
「恋人の顔見に来たんだよ、それよりコレどういうことだ?」
「
……」
少ない時間を割いて来てくれただろうことに少し揺らぐ。いや、それがなんだ。じゃあ毎日来い。今まで恋人をほったらかしにしていたのが悪い。
「プーロートー」
「
……近頃アンタが忙しくしてオレと会うヒマもないようだったから代用だ」
「代用ぅ?」
「オルタの型を取ってだな」
「待て待てオルタの型?」
「そう、あいつが暇そうにしてたから」
「ま」
「頼み込んで」
「っ」
「勃たせたのを型取りして」
「て!」
キャスターはディルドを放り投げると詰め寄ってきた。閉じたドアがプロトの背中にぶつかるが、プロトの視線は床にごろりと転がったそれを眺めている。
「おい、こっち向けって。自分で何言ってるか分かってんのか?」
顎を掴まれてキャスターに視線をやる。怒っているというより嗜めるような物言いが引っかかった。
「オレなんだから問題ないだろ」
「大アリだわ。オレが作ったのをやるから〜じゃなくてなんでオルタも受けるかね。それに玩具は嫌いだって言ってただろ。オレがどんだけお前を大事にしてるか少しは」
「そんじゃ、今からここで抱いてくれ」
「は?」
「こんなもんよりアンタにヤられるのが好きだから抱いてくれ。大事だなんだって距離を取られるのは気に入らねぇ。多少手荒に抱かれたからって死にゃあしねえし別れねえよ」
「っ」
顔色を変えたキャスターが口を開きかけた時、廊下に響き渡るアナウンスがドアを隔てて聞こえてきた。クー・フーリンのキャスターを呼び出している。
「ああクソッ、もう時間か」
キャスターはプロトに触れるだけのキスをよこした。
「仕事だ。英霊はマスターの頼みを聞くもんだ。
終わったらお望み通り抱いてやるからあれは捨てろ」
あれ、と大袈裟に指を差したキャスターはばたばたと部屋を出ていった。
プロトは部屋から出なかったが、追いかけていってキャスターの顔が赤かったかもう一度確かめてみたいと思った。
自身の唇に触れて反芻する。
「はぁ
…マスターも間が悪い
……」
クー・フーリンは認めたマスターの頼みを聞くものだ。プロトは仕方なく身を屈めて床のディルドを拾い、ゴミ箱に投げ入れようとして止まる。
「
……ちょっともったいないな」
実はランサーから作ったものもあり、他にも玩具の類いを持っている。あれらもバレたらヤバかった。プロトはゴミ箱行きを免れたディルド(オルタ製)と引き出しの奥から取り出したディルド(ランサー製)とあれそれを小さめの段ボールに詰めた。
ランサーの部屋にこっそり隠そう。
了
タイトルはお題配布サイト(
https://nanos.jp/iwantfly/ )より