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せつが
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ともじご。
地槍学パロです。
初めて書く地槍が学パロで、しかも地右衛門出てこない。
青空で公開されている、たる先生の槍ジャンヌイラストに強く触発されて書いた。
そちらをご覧になってからお読みください。
イラストからあれこれ拾って書いたので、これだめでしょ!なら消して個人で楽しみます。
電車の乗り換えや、それにともなう車窓からの景色は捏造だと思いねぇ。
学校が引けたジャンヌは、地下鉄に揺られ帰路についた。
車内はわりと空いていて、席は埋まってはいるものの、立っている乗客の数はまばらである。
ジャンヌはロングシート前の吊り革に掴まり、窓に映り込んだ車内を眺めていた。窓は彼女の姿も映している。
灰色がかった
白銀
しろがね
の髪は肩より上で揃えられ、金の瞳はどこか、物憂げな揺らぎを
湛
たた
えている。
学校指定の制服を、折目正しく着用し、今どき珍しい真面目な着こなしだ。
ひとつ違うのは、セーラー服の下に薄いタートルネックを着込んでいるところだ。校則で許された自由の範囲だが、タイツを着用していることもあり、肌が見えるところはほぼない。修道女もかくやといった風体だ。
伏せ目がちな姿は楚々として、すれ違う人が視線をよこすこともある。
それでも、四姉妹の中では目立たないほうだ。
一番上の姉は明るくたおやかで、二番目の姉は厭世的だが内に炎を燃やすよう。下の妹はまだまだ子どもで可愛らしく、常々二番目の姉のようにはなりたくないと言っている。
姉妹はそれぞれ違った美しさを持ち、どれも目を引く容姿だが、なによりもみな、強い存在感があった。
だが三番目のジャンヌにはそれがない。
人によっては陰鬱ともいわれる目立たなさである。
もっとも、本人は気にしたことはなく、むしろそれでいいとすら思っている。
一歩、後ろで見守ることができればよいのだ。
今日はとくだん用事もなく、まっすぐ帰宅の予定である。ゴーっと音をたてながら、地下鉄は淀みなく進んでいく。
大きな駅に着いたとき、ちょうど目の前の席が空いた。腰を下ろし窓の外に目をやるが、地下鉄ゆえに暗闇が続くばかりだ。トンネル内に等間隔に設置された照明が流れていく。
そのうち眠気がやってきて、次第に瞼が重くなった。昨夜、遅くまで勉強していたツケが回ってきたらしい。
降車駅はまだ遠く、ジャンヌは易く眠りに落ちた。
夢を見た。
喚ばれて添った人なのに、最期は隣にいることができなかった記憶だ。
急ぎ駆けつけようとはしたが途中、己の宝具が引きずり出されてパスが消え、なにもかもが終わったのだと悟った。
せめて隣に添えたならと願った、いつかの記憶。
うとうとしていたところ、スマホが震えだし振動で目が覚める。
覚醒したてのぼんやりした頭で画面を見ると、一番上の姉からのメッセージが表示されている。
〝ちょっと高いプリンを買ったから、みんなで食べましょう〟
このまえ話していたプリンだろうか。
プリンの容器が陶器やガラスで、食べ終わったあともコップとして使えるらしい。
そのぶん量も多いから、下の妹は食べ切れるだろうかと心配してしまう。見た目よりはずっと、たくさん食べる子ではあるのだけれど。
スタンプつきの華やかな連絡画面は、姉の人柄をよく表している。
いま帰り、楽しみにしていると打ち込んで、再び窓外の暗闇に目をやった。
そのうち地下鉄は地上に上がり、窓からは外の景色が見えるようになった。少し進むと橋梁に差し掛かかり、窓からは夕陽がさしこみ顔にあたる。
あまりの眩しさに目をすがめ、手でひさしをつくり西日を遮る。
川の上で遮蔽物がなく見通せるぶん、外からの光も直接入ってくるのだ。
外は雲も少なくよい天気で、夕焼けの色も鮮やかだ。ただ、どういう塩梅か、光の中にひときわ黒い暗赤色があった。
その黒焔のような赤でふと、あの人のことが頭に浮かぶ。
今日はお休みだったけど、今はなにをしているのだろう?
キルケー先輩にもあいつはどうしたと尋ねられた。引きずってても連れてこいだなんて、それができれば苦労はしない。
私もことあるごとに声をかけてはいるのだ。けど、なかなか聞き入れはてもらえないでいる。
先輩は透きとおった虹の目を持つ綺麗な人で、なんでも、先輩の
麦粥
キュケオーン
を食べた人はみな、彼女の豚になるのだとか。
同級生のタケルが「うちのイオリが
麦粥
キュケオーン
をねじ込まれて豚になった!」と騒いでいたのを思い出す。
騒いでいたわりには、豚の姿の宮本先輩を、愛い、かわいい、むしろこっちのほうがと、しきりに
惚気
のろけ
ていたけれど。
なにかと賑やかなキルケー先輩だけど、私が転校してくる前から、あの人のことを気にかけてくれている、数少ない人物だ。
今でもこうして、なにかと世話を焼いてくれている。ありがたいことこの上ないが、少しだけ、ほんの少しだけ胸がチクリと痛むことがある。
絶対に表には出さない、私だけの痛み。
そんな思いを巡らせつつ、あの人にメッセージを送ってみると、意外にもすぐに返事がきた。
いつもはなかなか返事がないし、それどころか既読すらつかないこともある。
返信には「寛永寺」とだけ。
あそこにいるのか。
おそらく池のほとりから、なにをするでもなく景色を眺めているのだろう。
もしかしたらそこからの光景を、悪くはないと思っているのかもしれない。
聞いてもきっと、いつもみたいにパッと手を振り、教えてはくれないのだろうけど。
その姿を思い浮かべ、続くメッセージを入力する。
「ともじご?」
ともじご。
以前、姉妹たちに見られたときに、どういう意味なのか聞かれたことがある。
でも、なんだか教えるのが惜しくなってはぐらかしてしまった。
たぶんみんな、気がついているとは思うのだけど。
二番目の姉はとくに、ひどく呆れた顔をした。けれどそれでも黙っていてくれるあたり、なんだかんだいって優しいのだ。
続く返信には「来なくていい」
いつものそっけない返事。
だけど私はさらに追う。
「ともじご!」
このために作ったオリジナルのスタンプ。
自分でもやりすぎたとは思うものの、興が乗ってやってしまった。
それ以来、思いのほか使っている。
先ほどよりも強い意思表示に、光の速さで返事がくる。
「来るな」
そう言われるのは予想していたから、即、泣きのスタンプで往信はしたけれど
……
この先どうするか、心はすでに決まってしまった。
姉には帰宅が遅れることと、プリンは先に食べていてほしいと連絡を入れた。
停車中のその駅を、慌てて降車し乗り換える。寄り道をして帰るのだ。
行き先は寛永寺。
姉妹の中ではいちばん表情が乏しいといわれるけれど、この時は口元が緩んでいると自覚があった。
はやく、電車が来るといい。
はやく、隣に添えたらいい。
ともじご。
ともに、地獄に。
ふたりの間でだけで使われる〝一緒に行く〟の言い換えだ。
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