ジャックの胸の傷の話

X(旧Twitter)にて掲載した内容移植、やや痛い

 フロストは横になった従者の胸に頭を乗せて考えていた。自身と同じような温もり。耳を当てれば、失った鼓動と同じ音が聞こえる。人となんら変わりがない。身体を起こし、大人しい従者の服を捲り上げ胸を露わにする。手のひらを乗せれば、皮膚の下に逞しい筋肉と脂肪を感じた。
 ポーンとは何か。人と同じ姿をしていても性質が異なるらしい。宿営地で自身を導いた女性は漂白の民と自称していたが、フロストにはよく分からなかった。
 これを引き裂いたらどうなるのだろう。フロストは従者を観察しながら疑問に思った。外見は人と同じように見えていても、中身が違うのかもしれない。もしくは、人と同じように血を流し、痛みに呻くのだろうか。

「覚者様?」

 動きの止まったフロストを不思議に思ったのか、従者が呼びかけてくる。その表情は今の状況に羞恥も不安も感じていないように見えた。フロストは好奇心のまま、胸に乗せた手に力を込めた。爪を突き立て、その皮膚を思い切り引き裂く。

「ぐっ!」

 従者が痛みに声を上げた。筋肉に力が入り硬くなったのが指先に伝わってくる。指を滑らせた形に沿って深い傷になり、皮膚が破れ、抉れた肉からは赤い血が溢れた。どうやら反応も中身も人と同じらしい。フロストは安堵した。

「何するんですか……いきなり」

 従者は自身の胸の傷と覚者の顔を交互に見ながら不満を訴えてくるが、それでも抵抗することなく身体を横たえたままだ。

「ポーンも血は出るのかなと思って」
「はぁ……

 従者は呆れたような表情を浮かべたあと、フロストの手に付いた血を丁寧に拭き取り、荷物から癒しの薬を取り出すと傷口に塗り込んだ。一通りの処置を終えると横になり、フロストに手を伸ばしてくる。

「もう休みましょう」

 好奇心を満たせたフロストは大人しくその腕の中で眠りに就いた。