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浮き流し
2024-06-19 20:36:32
7386文字
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イチ松
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イチ松 コ●ダへ行く
・pixivと同じものです
イチ松コ〆ダデートしろ!の思いでできたお話
付き合って始めてのデート
2年生、寮の部屋も学科も別々の2人です
男子高校生の胃袋と普通サイズシロノワールはエアプです。多分もっと食べるよね…
「デートしない?」
一之倉が提案したのはテスト期間、部活がなくなる日の前のこと。
「勉強するための期間なのに、デ、デートとか出歩いてていいのか?」
「松本はそんな心配するような成績じゃないでしょ。
それより部活できないから松本に会えないしバスケできないしでストレスじゃん、せめて一緒に勉強デートしないと気が済まない」
松本の部屋にやってきた一之倉は突然不満を爆発させる。これは我慢の男一之倉の、たまに出てくる構ってちゃん期だ。
勉強をする広さと長時間滞在できる余裕があって、なおかつデートらしく普段行けないし同じ学校の生徒があまり来ない場所。ファミレスやフードコートなんて知り合いだらけだし、かといって立派なレストランや喫茶店は手が出ない。考えた結果、量が多くて安いらしいチェーンの喫茶店へ行くことになった。
ロッジのような外観と広いリビングのような店内。
コメダ珈琲に来たのだ。
店内は天井が高く広々としており、木を基調した内装は温かな印象を受ける。玄関から入り店員に人数を告げるとボックス席へと案内される。
座席は赤い縦縞のソファタイプで、色合いに高級感がある。テーブルと座席、隣との席同士の間も広く取られていて見るからにゆったりできそうな空間となっている。座席の背もたれ自体も高く、背の高い2人が座っても胸の辺りまでしっかり支えてくれる。また2面が壁になっているため半分個室にいる様な感覚にもなる。とどめにゆっくりしてくださいと言わんばかりに各座席にコンセントまで備え付けられている。
「寮よりゆっくり勉強できそう」
「社会人ならパソコンを持ってきて仕事もできるんだろうな」
席に座り早速黒い冊子状のメニューを眺める。
最初の目的は豪華だというモーニングセットだ。
「これかな、モーニングセット。ドリンク頼めば付いてくる
…
コーヒー代だけでパンが付いてくるのか?」
「どれにする?」
「うーん
…
オーソドックスなのを食べてみたい気はするけど、期間限定のジャムも気になるししっかり食べたい気もする」
「ふふ、じゃあオレはこの食パンと玉子とバターにしようかな。で、松本は違うの頼もうよ。そしたら2種類は食べられる」
「じゃあオレは食パンと、んー
…
ジャムも気になるけど、名古屋のお店だからまずはおぐらあんにしようかな。全国展開しても残してあるから、こだわりがありそうだ」
最初の方にあるコーヒーのページに戻り、飲み物を選ぶ。
「俺は普通にブレンドコーヒーかな」
「俺は
…
いつも飲んでるのがとれかよくわからないんだけど、どのコーヒーがいいかな」
「薄いのがいいならアメリカン、寝れなくなるならノンカフェイン、こだわりないならブレンドかな。名前付いてるし多分おすすめだよね。あとはトッピングとか味変えたり、熱い、冷たい、
…
ジュースかな?」
メニューをめくりながら説明をする一之倉の手元を追っているとある項目が目に入る。
「なあイチノ、ちなみにこの普通サイズとたっぷりサイズだったらどっち飲みたい?」
メニューにはゆったりくつろぐ1.5倍と銘打ってある。また金額的にはレギュラーサイズと100円しか変わらないため、とても魅力的に感じる。
「どうせゆったりいるつもりだし、おすすめならこっちにしてみる?」
飲み物は決まった。あとはモーニングセット以外の食べ物だ。こちらも量が話題になるため、確認してみたいものの一つだ。
「食べ物はどうしようか」
「大きいとは聞くから、そんなに量は心配しなくていいのかとは思うけど。サンドイッチだと分けられそうだよね」
「サラダ、カツ、チキン
…
色々あるけど食べるならチキンとかカツとか肉いいよな。あとサラダ系もあった方がいいし
…
でも長居する事を考えたら分けて取った方がいいかな」
飲み物だけで居座るみたいになるのは申し訳ないと気にする松本に、一之倉はちゃんと食べ物も頼んでるんだから気にしなくていいのにとは思う。
「じゃあ先に1人ずつ食べれるもの取って、時間置いて勉強しながら摘めるもの注文しようか」
そうは言ったが所詮は部活尽くしの高校生。普段お金を使わない寮生活でいくらデートとはいえ、何千円も飛んで懐が痛くないほど裕福ではない。できれば安く量を摂りたい。
肉は欲しいけどカツとかチキンだとちゃんと値段上がるしコーヒーともう食事1,2品、デザートと考えると肉減らしても安いのにすべきかはたまた肉を選んでデザートを止めるべきか。かといってサンドイッチ系もイメージ写真が3分割だから、2人で分けると1つ余るし足りない分はまた別のものを取る?
メニューの種類が豊富なこと、どれも美味しそうなことから悩む。うんうん悩んでデートだし次いつ来るか分からないし、今回は食べたいものを注文することにした。
注文してから品物がくるまで、当初の目的の勉強をする事にする。クラスが違う2人は専門科目も違うが、教養科目は共通だ。
「イチノとだから、専門じゃない方持ってきた。英語の分からないところ教えてもらってもいいか?」
「オレも。家庭科の課題やってからでいいならオーケー」
それぞれ教科書ノート問題集と広げてもまだ余裕のあるテーブルに感動する。
問題を少し解き進めていると、料理を持った店員が席に近付く。
「お待たせしました」
香ばしい香りと共に注文した食べ物が運ばれてきたのだ。
広げていた勉強道具達をとりあえずソファに避難させ、テーブルに空間を作る。モーニングセットのパン、コーヒー、ハンバーガーが所狭しと並べられる。
モーニングセットのセット部分はツタを編み込んだカゴに収められている。
4枚切りを左右に縦半分にした分厚い食パンは、山型の頭を上に立てかける様に並べられており、断面からは柔らかな純白が覗く。表面がこんがりと色付き、既に塗ってあるバターがつやつやと光を放つ。食べやすいようにか二つ切れ込みが入っており、その切れ目に溶けたパターが溜まり染み込む様子が見られる。
一之倉の方にはたまごペーストは白い小皿に黄色の半円状になっていて、所々黄色に収まりきらないゴロゴロと大きく刻まれた白身が主張する。また隣には松本の注文したおぐらあんがあり、全体としては滑らかなあんに柔らかそうな皮のつぶあんとなっている。
「これがコーヒー代に含まれるのか
…
?」
「豪華すぎじゃん」
「「いただきます」」
早速熱々の食パンにかじりつく。
「玉子の白身がゴロゴロしてるけど、固すぎず邪魔にならないしでもちゃんと美味しい」
「こっちのは甘めだな。皮部分もあんこ部分も柔らかくて、パンと馴染んでく。パンのバターとあんバターになったら余計美味い」
「コーヒーにあんこ入ってるのあったし、砂糖代わりに入れてみてもいいかもね」
「あ、その手があったか」
松本の呟きに手元を見るとおぐらあんは残りわずか。最後の塊をパンに塗ろうとしているところだった。
「早」
「いいだろ、美味しかったんだから」
メインのコーヒーは、青い紳士の絵が描かれたマグカップに注がれており、コーヒーの深い香りが漂う。ソーサーにはスプーンとミニチュアのようなピッチャーが乗せられ、ミルクが並々と入れられている。
カップの耳に指を入れずフチを持つものというマナーに従わなくとも、親指と人差し指で掴むだけで持ち上がる。むしろ持ち手に指入れようと思っても指先だって中に入らない。
「小さくてこぼしてしまいそうだ
…
」
「松本が持つと余計ちっちゃく見えるね」
落とさないよう溢さないようおそるおそる持ち上げる松本は、巨人が小人に頼まれた荷物を潰さない様慎重に運ぶみたいだ。松本は無事ミルクを零さずマグカップに入れ、一息ついたのか安堵した様に額を拭っている。
陽の光を浴びブラックコーヒー飲みながら松本に笑みをこぼす一之倉は、とても様になっている。
「松本、砂糖いるでしょ」
一之倉がナプキンの横に刺さっていたスティックシュガーを2本松本に手渡す。松本はそれを1本だけ引き抜きわくわくと嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。でも折角だからコーヒーを楽しんでみたい」
実家は角砂糖タイプでスティックタイプの砂糖が筒を流れ落ちる音が新鮮で好きという松本は、早速サラサラと砂糖を投入する。しっかりしたいつもの様子とは違い、子供っぽいそれに一之倉の表情も緩む。
「そう。でも苦かったら入れてね」
なお、形の良い眉を歪ませながら3口だけ飲んだ松本は、苦味に堪え兼ねもう1本砂糖を追加することになる。
最初の食事はハンバーガー。
それもただのハンバーガーではなく、よく行くお財布に優しいファストフードのバーガーより格段に大きい。メインの具材の厚さが倍ぐらいある。
「こんなお茶請けみたいなお皿に乗ってきたハンバーガー、初めて見たかも」
机にはフィッシュフライバーガーとドミグラスバーガー。メニューには2酒類あったため、どちらも1つずつ注文した。
「イチノ、好きな方選んでいいぞ」
「えっいいの?俺ハンバーグ取っちゃうよ」
「いいぞ。なら俺はフィッシュバーガーの方貰うな」
ドミグラスバーガーは黄色いチーズにハンバーグ、上には薄くスライスしたオニオン、下にはレタスが敷かれており、ハンバーグより一回り大きなパンズに挟まれている。ハンバーグは柔らかく弾力があり、噛むたびに肉汁が溢れ出す。デミグラスソースは濃厚で、チーズと一緒になるとすごいおいしい。コーヒー屋だというのにファミレスで食べるのと遜色ない美味しさがある。
バーガー自体が大きいだけあって、バーガー全体を口に入れるのに苦労する。できるだけ口を開けて入らない分は不恰好だけど上下から潰して口に詰める。
「イチノは口が小さいもんな」
背も口も小さい一之倉が一生懸命大きなものを口に詰める、その様子がリスとかハムスターみたいな小動物みたいで微笑ましい。一方凝視されて食べ辛い一之倉は、愛しくて仕方ないですって顔の松本の視線を逸らさせたくて催促する。
「なに見てんの。熱いうちに松本も食べなよ」
どこから食べようか一瞬戸惑った松本ではあるが、流石に一口サイズには千切れないためそのままかじりつく。
パンズの間にはよく揚げられた大きなフィッシュフライが陣取り、クッションに細切りキャベツが敷き詰められている。食べてみると衣がアツアツ中の白身魚がホクホク、フライの上にはチーズ下にはタルタルソースがあり美味しさの相乗効果がある。
松本は気難しそうに見えて以外と大口開けて笑う。
さらに体が大きいから相対的に口だって大きい。
おっ美味しいなと難なく頬張る姿に、一之倉はなんとなく敗北感を味わう。
朝食を終えた2人はしばらく勉強を進める。
ブツブツと呟きながらシャーペンを走らせる音、快適な空調と広く暖かな空間、香ばしいコーヒーの香りに向かいには愛しい人。心地の良い、ゆったりとした時間が流れる。ここに住めたら、とはどちらの心境だろうか。
お昼に差し掛かる前、気分転換を兼ねてカツサンドを追加注文する。
注文の際店員から4分割を提案されたので喜んでお願いする。
「写真が3分割だったから残りジャンケンしようとしてたのにね」
「そんなことして貰えるなんて有難いな」
火と油を使う料理だからか今までより時間をかけてカツサンドが運ばれてきた。
大きなコッペパンに衣に包まれたカツ敷かれたキャベツ。美味しそうな見た目もさることながら、当然の様にこれ一品で軽食になりそうな大きさをしている。
カツが外カリッカリの中ジューシー。
切られてるのに揚げたてだからかとても熱い。
美味しいはすごく美味しい。だけど溢れるキャベツとカツの熱さと格闘しながら食べ進める。
ハンバーガーとは違い紙に包まれていないため向かいの様子がよくわかる。松本がカツに気を取られていると持っているパンズに力を入れすぎてずり下がり、カツと一緒に引き抜かれたらしいキャベツが横から落ちてくる。
「松本、おしり垂れてる。えっち」
「ブッ!!??」
「違う、サンドイッチの方」
真っ赤になりあまりにも慌てるものだから、食べていたものを気管に詰まらせかける。ゴホゴホと咳き込んだものを落ち着かせ、物申すために口の中に頬張っていたサンドイッチを慌てて咀嚼する。
言われなくたってサンドイッチを持つ手が濡れてるし、ドレッシングも具材も溢れているのは分かってる。
「紛らわしい言い方はやめてくれ!!」
拗ねた松本は食べてる途中のものでバリケードの様に境界線を作った。自陣の勉強道具を一之倉とは違う方向に位置を調整して並べ、一之倉の謝罪には耳を貸さずしばらく無言で勉強を続けた。
次に静寂が破られたのは何度も伝えた一之倉の「ごめんって」ではなく、怒っている事実を忘れた松本の「この問題なんだけど」という質問だ。
しっかり飲食をしながらも長居したため、これが最後とデザートを選ぶ。
「普通のケーキとシロノワール、クロネージュどれがいい?」
「シロノワール、かな。なんかここの有名なデザートなんだろ?」
「じゃあシロノワールで、普通のとミニがあるけど別に小さくなくていいよね」
「値段結構するしミニじゃないなら多分分けても量はあるだろ」
そう思ってたのは商品が運ばれてくるまで。
「
…
意外と大きいな?」
「そうだね、いいお値段してたもんね。分けるには少ないかもだけど、丁度いいサイズじゃない?」
目の前にはパン屋の菓子パンの土台みたいなパン。それが手のひらを広げたぐらいのサイズの平皿ギリギリまで乗っていて、広さも厚さも十分ボリュームがある。その上に売店やラーメン屋で普通に出てきそうなソフトクリームが乗せられており、その横には妙に小さいさくらんぼがちょこんと添えられている。
「多分、このさくらんぼが標準サイズなんだよな」
一之倉がまじまじと通常サイズのシロノワール観察する。隣の年配女性2人組も同じくシロノワールを頼んだのか、似たようなビジュアルのものがテーブルに乗せられている。向こうはミニシロノワールをそれぞれ頼んだのか全体的に小ぶりではあるが、さくらんぼの大きさは変わらない。多分、こっちのさくらんぼ以外がでかいだけだ。
「このミルク入ってたやつまた来たな
…
」
一方松本はげんなりとした様子でメープルシロップを見つめる。メープルシロップはミニチュアサイズのピッチャーに入れられて添えられており、各自好きな量をお好みでかける様だ。ただ、コーヒーに付いてきたミルク入りのこの小さな食器に強いられた苦労を思い出し、苦虫を噛み潰す。
そんな松本を見て一之倉は声を上げて笑う。笑いながら目尻に流れる涙を拭い、松本に取り皿を一枚渡す。
「あはは、じゃあオレ代わりにかけてあげるよ。食べたい分取り分けて。ストップって言ったら止めるから」
「お願いする
…
」
まず一切れを皿に取り分け、一之倉に渡す。大きな体を縮こまらせてお願いする松本に、ほんの少しだけ引っ込んだ笑いが込み上げる。
「んふふ、笑わせないで
…
」
シロノワールの感想としては、下のパンそれだけを食べるとケーキというよりちょっとパサついたパン。そしてケーキと思って油断したら想像以上に熱々。でもそれがソフトクリームと一緒に食べると冷たさとしっとりさが加わって凄く美味しさが倍増する。全体的にあっさりはしているので、メープルシロップをかけるとさらに甘くて美味しい。
でもたもたしてると上のソフトクリームがその熱で溶けてしまうので少し忙しい。溶けて染み染みになったパンも美味しいけど、パンの底だけに染み込まれるとソフトクリームの味がそこ以外でしなくなってしまうのが勿体無く感じる。
デザートを食べ終えた2人は、持参した勉強道具を片付け会計の準備をする。
「そろそろ行こっか」
「まだ居たい気もするけど、長居したもんな」
「「ごちそうさまでした」」
2人で分けたからお会計も2人で分ける。
一人頭は額面より半額になるからまだお財布的には大丈夫だ。それにモーニングを食べてしっかり夕方近くまでいたし、勉強だって捗ったし知り合いのいないところでのデートもした。今日の目的は全て果たせてホクホクだ。
手を繋ぎ近くのバス停に向かいながら余韻を楽しむ。
「美味しかった」
「噂通り大きかったね」
「食べ応えがあってよかったな。どうせなら色んなの食べたいしまた来たいな」
「今度はみんな連れてくる?」
そしたら制覇できるよ。そう続ける一之倉に、松本はちょっと困った顔をして言う。
「うーん
…
今みたいに2人でじゃダメか?あの空間で長居するならイチノとがいい」
一之倉の挙動が固まると同時に心臓が飛び上がる。デートって単語ひとつで照れるくせに、たまにド直球クリティカルを繰り出すから心臓に悪いんだ。びっくりさせられたお礼に手を握る力を強くして、精一杯いつもの声を絞り出す。
「
…
ん、そっか。寮から遠いし、またテスト勉強とかご褒美とかで行くの良いかもね」
バス停に着くもバスはまだ来ない
普段とは違う方向のバスにバス停の時刻表と寮までの経路を確認する。ちょっとずつ食べながらとは言え高校生、食べ盛りの胃袋にはまだ空きがある。
「今日の夕食何だっけ?」
一之倉に言われて言われて寮の献立を思い出す。丼はあった様な気はする。
「ちまちま間食してたからそんなにはいらないかな」
「でも食べ出したら食べたくなるんだよな」
お腹いっぱいじゃないからかな、不思議だよな。
でも今週はいつもと違うことがある。
「バスケットできないからそんな減らないかもな」
思ったことを口に出した瞬間後悔した。折角忘れ去っていたはずのバスケットができない辛さが蘇る。
「あー思い出させんなよ
…
ボール触りたくなる」
「すまん、口が滑った」
「せめてボールがあればな
…
」
日々の大半を満たすバスケ欲を逸らすため、
恋人の戯れをし出すのはいつか。
多分そう遠くないお話
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