白夜
2024-06-20 02:35:37
3320文字
Public TF
 

勘違いしている彼との話

Pスタ音 付き合ってない
メガ様がおねんねしてる間の話

「いい加減に諦めちまえよ。メガトロンはもう目を覚まさねぇんだよ」

静かに立ち尽くして主人を見つめているサウンドウェーブにそう言ってやれば、違う、そんなことないと否定するように小さく首を振った。意識がなく眠ったままで目覚める見込みもないメガトロンを未だに諦めようとしないサウンドウェーブにスタースクリームは苛立ちを感じずにはいられない。
しかし、それきりいつものように誰かの音声を使って話すこともなく沈黙を貫き、スタースクリームの言葉に反応を示さないままメガトロンのことを見つめている。

実のところ、ノックアウトからサウンドウェーブが自分の仕事をしている時以外ずっとメガトロンのそばから離れようとしないせいで仕事がやりにくいからどうしかしてくださいという苦情が入っていた。
その苦情を聞いた時、てめぇ助手に仕事押し付けてレースに出掛けている身で仕事がやりにくいだとか何言ってやがる、と暗にサボってんじゃねぇぞと釘を刺しておいたのだが――それはともかく、スタースクリームもサウンドウェーブの動きはかなり気になっており、ビーコンからも何日もメガトロンのそばに居続けているということを聞いていたため、今に至る。

「おい、聞いてんのか」
しかし、話し掛けても先程小さく首を振ったきり一向に反応しないサウンドウェーブに苛立ちを隠せなくなり、腕を掴んで無理矢理こちらへと振り向かせた。
フェイスマスクのせいで表情を見ることはできないが何も言わずこちらを見ているのだろうことは分かる。ようやくこちらを見たのだが、サウンドウェーブから向けられる視線はメガトロンがこうなってしまった原因の一端を担っている身であるが故に、まるでこちらが咎められているような気分になってしまう。
そして、スタースクリーム自身がこちらへと顔を向けさせたというのに理不尽にもその視線に対して、なんだよ!と苛立ちのままに声を荒げようとした時だった。

「え? は? サウンドウェーブ!?」
いきなり機体が傾いて倒れてきたサウンドウェーブを反射的に受け止める。
いくら細身の機体であると言えど、それなりの体格であり、思わぬ重みにスタースクリームもバランスを崩してサウンドウェーブを抱き留めたまま尻もちをついてしまう。
その衝撃に痛みを感じるがそれよりも今の状況に動揺を隠せない。
「ちょっ、どうしたんだよ――って、お前、まさか……
ふと、もしやビーコンの言っていた“居続けている”というのは誇張表現ではなかったのではないかと思い至る。
「一体、どのくらいまともにエネルギー補充してねぇんだよ」
そう言うと、案の定本当にエネルギー補給もせずにいたようで気まずそうに俯くサウンドウェーブに大きな溜息を吐いた。そして、いつも常備しているエネルギー補給用のエネルゴンをサウンドウェーブに差し出す。
「ほら、これやる」
サウンドウェーブは差し出されたそれを見て、少しの間ためらっている様子で手を彷徨わせていたがその手に押し付けるように渡せば素直に受け取った。そして、そのまま大人しく腕の中に納まってエネルゴンを補給し始めるサウンドウェーブを見つめる。
サウンドウェーブがメガトロンのことを想って目を覚ますのを待ち続けていることはネメシスにいるディセプティコンの間では周知の事実。そして、俺の方がこんなにもそばにおるのにサウンドウェーブは目を覚まさない奴のこと想っているなんてふざけていると、その事実に対してスタースクリームは思っていた。

おそらく、それが苛立ちの原因の大半を占めているということも分かっている。

なぜこんなにも独占欲のような感情をサウンドウェーブに対して抱いているのか疑問に思わないわけではないが、おそらくは未だにスタースクリームのことをディセプティコンの新たなリーダーだと認めないことへの腹立たしさなのだろうと推察している。
「ばーか、お前が無理してぶっ倒れたらどうすんだよ」
…………
苛立ち半分呆れ半分でそう言うが相変わらずサウンドウェーブは黙ったまま。何を考えて、何を思っているのか分からずもどかしく、腹立たしい。

しばらくするとエネルギー補給が終わったのか大人しく腕の中にいたサウンドウェーブがもぞりと動いて立ち上がろうとする。しかし、スタースクリームは彼の細い手首を掴んでそれを阻止し、再び腕の中へと連れ戻した。
「おいおい、サウンドウェーブちゃん。まさかまた同じ真似するつもりじゃねぇだろうなァ? こちとらただでさえ仕事をしねぇ軍医からてめぇが居座り続けるせいで仕事がやりにくいってクレームが入ってんだ」
腕の中から逃げようと抵抗を見せるサウンドウェーブであったが、スタースクリームの言葉が図星であったのか動きを止めて再び気まずそうに俯いた。
いつも凛としておりどんなことがあっても黙々と仕事を熟して弱みなど見せない奴であるのに不安な様子を全く隠せていない。その原因は明らかにメガトロンであるという事実に無性に腹が立ち、思わず「どっちにしろてめぇの想いはぜってぇ叶わねぇだろ」と口に出してしまっていた。
やばい、余計なことを口に出してしまったと思い、口を噤んでチラリと様子を伺えば何故か不思議そな様子でこちらを見ていた。もちろんフェイスマスクで表情が隠れているためはっきりとそうであるという確証がないのだが、少し首を傾げている仕草をしたので、おそらく間違いではない。
もしかしてきちんと聞こえていなかったのか?それなら良かったと胸を撫でおろせば、カツンと音を立ててスタースクリームに寄りかかって来た。

「サウンドウェーブ……?」
「《ばーか》」
「ああ?!」
すると、つい先程スタースクリームが言った言葉を使って話してきた。
ようやく話したかと思えば、馬鹿と言ってくるサウンドウェーブに思わず顔をしかめれば、細い指がスタースクリームの装甲をカツンカツンと叩いた。何か言いたそうな視線を感じて、何だよと聞いてみるが何も言わない。
少しの間、何だよ言いたいことがあるなら言えよ、と言葉を促してみるが再び黙ったままとなる。
(ほーんと、何を考えてんのか分からない奴だよな)
メガトロンやショックウェーブ程ではないにせよ、それなりに付き合いの長さはあるのだが、サウンドウェーブがあまり感情を見せようとしないため、唯一分かりやすいメガトロンに対して抱いている特別な感情くらいしかはっきりと分からない。
もちろんその事実はスタースクリームが苛立つ要因の一つでもある。
ただ今こうして機体を預けて少しだけだが機体を触れ合わせてくる様子に僅かに溜飲が下がるのを感じる。
冷静に考えてみて、何とも奇妙な光景だと大人しくスタースクリームの足の間におさまり座り込んでいるサウンドウェーブを見ていて思う。それだけ本調子ではないというかもしれないが、如何せん何を考えているのか未だに分からない。
はぁ、とあからさまに溜息を吐けば再び《ばーか》と言われてしまう。だから一体何でなんだ、と聞いても同じことしか返してこないので、いい加減にしろと小突けば笑っているのか肩が震えている。
「おい、何笑ってんだ……?」
「《ありがとう》」
「いや、何の礼だよ」
……、《心配》《してくれた》」
「はぁ!? してねぇよ!」
不意に見せられた感情に思わず戸惑っているところに更に何故か礼を言われて困惑する。そして、何をどう受け取ったら心配していたと思えるのだろうか。否定をすれば、またサウンドウェーブは肩を揺らした。
そんなサウンドウェーブの様子を見ていると、独占欲や苛立ちを感じているのが馬鹿馬鹿しく思えてきてしまう。はぁ、と再び溜息を吐いて、俺が心配してると思うなら大人しく自分の部屋に戻って休めよと言えば、サウンドウェーブは予想外にも素直にコクリと頷いた。





ぽん→メガだと思っている無自覚にぽんぱちゃんのことが好きなPスタと実はPスタのことが好きだけど勘違いされていると気付きながらも気持ちを伝えられないぽんぱちゃんの話

気が向いたらぽんぱちゃん視点書きます。