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溶けかけ。
2024-06-19 23:37:37
1801文字
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ほぼ日刊
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恋が芽吹くその日まで
卵生ヌと刷り込みしちゃったフとそれを見守るフォカのお話です。
なんやこれ、カオス。とは書いてて思いました。
「フォカロルス!これ見て!」
とたぱたと軽い足音を響かせながらやって来る妹の声にフォカロルスは目を覚ます。
「ん
……
なんだい?」
息を弾ませ嬉しそうなフリーナの姿にフォカロルスも自然と笑顔になるのが分かる。
「これを見てくれ!」
勢いよく差し出されたのは、小柄なフリーナが抱えるほど大きく、僅かに青みを帯びたそれは
――
「卵
……
?」
「そうなんだ!偶然拾ったんだけど、美味しそうだと思わないかい?
……
何を作ろうか?」
幸せそうなフリーナにフォカロルスは卵の正体を教えることをやめた。
だってそっちの方が面白そうだろう?
「うーん
……
僕は甘いものがいいな」
「ケーキも良いし、プリンも出来るね!」
卵を抱き締めて、何にしようかなぁと歌うフリーナは愛くるしい。少しばかり、悪戯をしてみようか?
「知ってるかい、フリーナ。卵は温めるともっと美味しくなるんだよ」
フォカロルスの嘘にフリーナはぽかんと口を開けた
……
流石にバレちゃうかな?
「そうなんだね
……
じゃあ、これから毎晩一緒に寝ることにするよ」
キミ、僕のこと信用しすぎじゃないかい?という言葉を飲み込む。真剣な顔をするフリーナはきっと、自分を喜ばせるために卵を温めてくれるのだろうと知っているから。
「フフフ
……
うん、是非ともそうしてくれ」
嬉しそうな彼女が数日後、どんな顔をするのか楽しみだ。
「よーし!フォカロルスから言われた日数は温めたし、今日は料理だ
……
上手に出来るといいな」
レシピはしっかり読み込んだし、練習も十分にしてきた。調理道具も揃えたし、計量もバッチリだ。
「後は割るだけ
……
」
金槌を片手に唾を飲み込む。メレンゲを泡立てるなら黄身を割らないようにするのは鉄則だ。
「
……
って、え?」
金槌を振り上げたその時、卵に亀裂が入った。亀裂はどんどん大きくなり、パカッと軽い音がして卵が割れた。出てきたのは白身でも黄身でもなく、人型。
銀の髪に不思議な色合いの瞳がよく映える
――――
「
…………………………
へくちっ
……
!」
「う、産湯ーー!」
――――
どうやら有精卵だったらしい。
「ただいまー
……
って生まれたんだね」
大きなタライに気持ちよさそうに浮かぶ、ちびっ子を見てフォカロルスはそう言った。
「知っていたんなら教えてくれたってよかったじゃないか
……
」
「ごめんね。フリーナがどんな顔をするのか見てみたくて」
「もう!すっごく驚いたんだからな!」
頬を膨らませて怒る姿も可愛いね、と言ったら流石に怒るだろうなと思い口を噤む。そうしている間にもちびっ子はフリーナの足元に来て彼女の服の裾を引っ張った。
「ふりーなどの」
「うん?どうしたんだい、ヌヴィレット」
ぎゅう、とフリーナの裾を掴んだまま彼女の背後へ隠れるヌヴィレット(仮)。怯えているのかと思ったが、よく見ればその目には敵意が滲む。
ふむ、なるほどね。
「怖くないよ。彼女はフォカロルス。僕のお姉ちゃんだよ」
「ふぉかろるす
……
」
「そうさ。ほら、フリーナとそっくりだろう?」
両手を広げて、おいで、と言ってみても彼は興味を示さない。おやおや、これは本格的に刷り込まれてしまっているね。
「
……
」
「ごめん、フォカロルス
……
」
「ううん。仕方ないさ、すり込みだからね」
「フリーナどの」
眠そうなヌヴィレットがフリーナの服の裾を引く。フリーナは心得た、とばかりに彼を抱き上げた。
「ふふ、寝る時間だね」
彼が生まれて一ヶ月。始めは辿々しかった言葉も今では大分聞き取りやすくなった。流石は龍の子、といったところだろう。
「おやすみ、フォカロルス」
「おやすみ。フリーナ、ヌヴィレット」
「おやすみ
……
フォカロルスどの」
二人が手を振って、部屋を出ていく。
「はあ
……
フリーナは知らないんだろうなぁ
……
」
きっと、フリーナも、そして当事者であるヌヴィレットも知らないのだろう。
「龍が自分の巣に招くのは求愛行動なんだよね〜
……
」
そのうちどちらかが気づいてしまうだろうが
……
まあ、いいか。
「君たちの幸せが僕にとっての幸せでもあるからね」
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