2024-06-18 20:38:05
772文字
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そうして彼は本を焼く

はじまり、さわり。

たくさんの物語を内に持つ者は、その物語に登場をする人物が自分と同姓同名……いや、それどころか自分とおなじ『    』だったから。


『その本』は年若くして刀たちを励起させ率いている青年、主人のよく居るたたみのへや、小ぢんまりとした卓袱台に置いてあった。
放り出してあった、というのが正しいかもしれない。
無造作にひらいて置かれている。たしか今しがた、ときの政府から審神者たちへと急な呼び出し、招集があったことを思い起こす。
栞を挟む手間を惜しみでもしたのか?ひらいたページは、まるい形の素朴な文鎮でアバウトに押さえられている。
読んでいる途中も途中の一冊。
主人がなにを読んでいるのか?どんな本なのか、興味がないと言ってしまえば嘘になる。とはいえプライバシーというものもある。
以前からたびたび読んでいる本だと知っている。読み終わり、満足そうに息をついて機嫌よく置くすがたをたびたび見かけていた。
本の薄さも思えば、何度か最初から最後まで読んでは幾度も読み返している、いわゆる気に入りの本、らしい。
読むとき表紙を見せたがらないだとかは無かった。とくに隠しだてしていたようすもなかったと鑑みた結果『チラリと目線を向けてみる』という行動に繋がった。
その判断は正しくなかったかもしれない。
運が良かったのか悪かったのか目線を向けた先には偶々、登場人物の名まえがあり、その名まえは己にとってあまりにも身近すぎた。
……『俺』?」

あまりに不躾だと、我がことながら思いはした。自分の物でない本を手にとり。ページを捲り。許可もなく読んでしまうなど。
だが本に『    』が登場をしている。
どんな役柄で、なにをしているのだろう、と深く興味を惹かれてしまうのは物語を持って顕現をした側面も大きい己にとって さがのようなものか。