オレが誰かに嫉妬することになるとは思わなかった。オレはケルト一の英雄であり、ゲイボルグを授かるほど出来の良い弟子。欲しい女を手に入れて幸せに暮らし、戦いにおいて死んでも倒れなかった戦士。
キャスターとして召喚されなければランサーはオレだった。槍を持ってめちゃくちゃかっこよかっただろうし、狂王だって槍を持っていてめちゃくちゃかっこいい。
「だからオレなんかより槍持ちのオレにプロトがなびかないか心配なんだようおおん」
「誰だこいつ深酔いさせたの」
「オレ」
クー・フーリン達の集うテーブルの一角、キャスターに泣き付かれたプロトは彼のグラスを奪い、代わりに水の入ったグラスを押しやった。先程までキャスターに調子良く酒を注いでやっていたランサーはけらけら笑いながら酒をあおる。キャスターのお悩み相談に真面目に乗りつつプロトに意識が向くよう仕向け、酔わせた張本人だ。オルタはその横でたまにツッコミや相槌を打ちながらグラスを空けている。
「プロト〜」
「はいはい、あんたは水飲んで」
プロトは冷めた表情でキャスターに水を勧め、自身はキャスターのグラスを飲み干した。
「なんで酔ってるときだけ甘えてくるかね」
「シラフの時は知的なキャスター気取ってるもんな、杖で敵ぶん殴っといて知的もなにもありゃしねえよ。まだ告られてねえの?」
「保護者ぶるのに忙しいらしいな」
「キャスターは玉無しなのかね、そんじゃプロトから告ればどうだ?」
「オレ? うーん
……キャスターがオレがやりたかったって言いそうだが
……確かにオレからでもいいのか
…」
プロトはしばらく考えてからすっくと立ち上がった。
「よし、オレから告るわ。キャスター、部屋戻るぞ」
「ん〜、まだ飲む」
「オレが一緒に部屋まで行ってやるから立って」
「う〜」
前後左右に揺れるキャスターを引っ張り起こす。
「じゃあ先に戻るわ」
「おう、頑張れよ」
「
……」
二騎の温かい応援を背に、プロトはキャスターを半ば引きずるようにして食堂を後にした。
なあお前がオレに告るの? オレがやりたかったのに〜
聞いてたなら今から告ってこいよ
あーー今、今はなぁ
……心構えがあるし
…槍持ってねぇし
…せめて槍が持てるようになったら
……
槍にアイデンティティ奪われてんじゃねえ、槍がないくらいでなんだよオレらしくねえなあ、オレがビシッと決めてやるから参考にしろ
ええ〜
ぐだぐだと言い合う声が遠のいていく。
「うまくいくといいな」
「ああ」
皆、かなり酔っていた。
了
タイトルはお題配布サイト(
https://nanos.jp/iwantfly/ )より