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トウヤくん🫐学園外部講師ネタ

タイトルが全て
外部講師トウヤと学校の先生

名前「終われそう?そろそろ帰りなさいね」

 段ボールや画用紙で賑やかに飾り付けられた教室へと声をかけつつ廊下を進む。
 ホラーテイストな装飾はお化け屋敷だろうか。隣の教室は可愛らしいポケモンたちのイラストがポップにまとめられていた。確か、2-3は縁日だったかな。先日配られた職員用のプログラムを思い浮かべた。
 明日から学園祭が始まる。最後の準備を行っている生徒たちへ、帰り支度を促しながら校内を巡回する役目も今日で最後だ。
 ブルーベリー学園の学園祭は毎年、六月の二週目までに三日間の日程を組まれ催される。初日が文化祭で二日目は体育祭。そして三日目には学園名物で全校生徒職員入り乱れのバトルトーナメント、通称ブルーベリー杯が行われる。恒例のスケジュールだ。
 新学期が始まり早三ヶ月。新しいクラスにも慣れてきた頃の学園行事に、校内は一気に活気づいた。それは生徒が連日遅くまで残り、作り上げてきた製作物にも色濃く反映されている。
 文化祭で行う模擬店の備品や出し物の大道具。それから、体育祭で飾る応援パネルや団旗、小道具等。日を追う事に増えていったそれらは、三日ほど前から廊下へと進出し始めていた。
 二週間という短い準備期間だったけど、生徒達が主体となり作り上げた雰囲気はとてもいいものになったと思う。
 大勢の集団の中で何かひとつの事をやり遂げる。大人になった今、なかなか体験が出来ない事だ。この時期でしか出来ない事。見れない光景や感じることの出来ない空気感。それらを、生徒達には少しでも多く脳裏に焼き付けて欲しい。そうと思ってしまうのは教師のエゴだろうか。
 ――みんな頑張ってきたから成功するといいなあ。
 こちら側も仕事は盛り沢山になるので忙しい時期ではあるのだが、それでも明日からの学園祭は心が浮き足立つように楽しみだった。

「見回り終わった?」
……あれ?来てたんだトウヤ先生。お疲れ様です」
 
 生徒を見送り戸締りのチェックをしているところへ、聞き覚えのある声が私を呼び止めた。振り返れば、廊下の先からにこやかに歩いてくる茶髪の男の姿が見える。
 トウヤ先生。たまに学園へ来る外部講師で、イッシュリーグの現チャンピオン。本業が忙しいようで校内にいることの方が珍しいが、それでもごく稀に受け持った彼の授業は生徒たちからとても人気が高い。
 お疲れと返しながら近付いてくる彼の両手には、大量のキズぐすりやボールの入った紙袋が三つほど下げられている。それを指で示せば、頼まれてさとへらりと笑った。

「そっか、協賛にリーグ協会って書いてあった気がする。いつもありがとうございます」
「いーえ、毎年の事ですから。……それより先生とかやめてよ」

 別にオレ先生じゃないし。微妙そうな顔で呟かれた言葉に、学校だからとNOの意志を示す。

「もう誰もいないだろ」
「仕事とプライベート混ぜたくないもん、我慢して」

 なお食さがる目の前の男に勘弁してと言い放つと、しぶしぶといった様子だが諦めたようだった。
 今でこそ同僚のような関係だが、彼とはそこそこ年季の入った古い付き合いだ。私たちの出会いは彼がまだチャンピオンになるずっと前の事。電気石の洞穴で迷っていたトウヤに私から声をかけたのがきっかけだった。
 話を聞くと三日も前から迷っていたらしい。そんなに複雑じゃないから着いておいでと彼を連れ洞穴を抜けた時は、一生出れないかと思っていたと感謝されたのを覚えている。
 同世代で同じ旅仲間として仲良くなり、道中顔を見かければ何度もバトルをした。当時からトウヤはとても強いトレーナーで勝てた事は二割程度なものだけど、彼とのバトルはいつも楽しかった。
 こんな本土から離れた人工島で、昔馴染みと久々の再開をするだなんてお互い思っていなかっただろう。
 彼のいう変な感じは私も身をもって感じているし、言いたいことはよく分かるつもりだ。だけど正職員である手前、変に馴れ馴れしくすることが出来ないのも事実。ここではお互い先生として接してくれと、トウヤが初めて来た日に釘を差したのが懐かしい。
 あちらは未だに違和感が拭えないようだけど、校内で会うことがそう多いわけじゃない。たまにすれ違う時や鉢合わせた時くらい、頑張ってくれなきゃ困るというものだ。

「先生、それどこ持っていくの?」
「リーグ部。多分明後日の参加賞にするんじゃないかな」
「私引き継ぎますよ?管理棟の見回りこれからだし」
「やめとけ重いから。あ、でも……案内頼めると助かるんだけど」

 たまにしか来ないから未だによく分かんなくてな、なんて眉尻を下げながらトウヤが呟く。当時と変わらず、地図を読むのは相変わらず苦手らしかった。
 そういう事ならと二つ返事で了承し、早速静かな廊下を並んで歩く。生徒たちはみんな帰ってしまったようで、こつんこつんと響いているのは私たちの足音だけだ。

「明日からだろ?随分賑やかになったよなぁ」

 飾り付けられた廊下や教室を見て、トウヤが楽しげな表情を溢した。確か毎年この時期は本業で忙しくしているから、彼がこの状態の校内を見るのは初めてだということに思い至る。

「みんな頑張ってたからね。今年は見に来るんですか?トウヤ"先生"は」
「ああ、今年は行くよ。シキミさんに無理言って予定調整したから三日間こっちにいるつもり」
「えっすごいね?シキミさん頑張ったなぁ……

 俺も先週は馬車馬の如く働いてきたけど、なんて苦い顔のトウヤがそう続ける。それに付き合わされた四天王の方々も大変だっだろう。私は心の中でイッシュ本土へと手を合わせた。
 という事は、だ。最終日のブルーベリー杯、もしかしてこの男も出るのではないのか。これまでもリーグ部から度々ラブコールをかけていたようだけど、毎年都合が合わずにいたそうで。
 期待と願望を込め、出るのかと一言聞けば勿論!と威勢のいい返事が返ってきた。私も今初めて知ったくらいだし、恐らく生徒達には周知せずに学園祭が始まるのだろう。
 今年はかなり盛り上がるに違いない。なんたって現役チャンピオンと戦えるかもしれないトーナメントになるのだから。当日が楽しみだ。

「当然出るんでしょ?名前先生も」
「勿論!当たったら覚悟しておいてくださいね」

 確率は低いが、もし当たればトウヤとバトルするのは何年ぶりになるのだろう。この男程では無いがあれから私も少しは強くなった。
 当たるといいな。そんな気持ちで告げた宣戦布告に、トウヤは何も言わずにやりと笑うだけだった。