カッパ巻き大車輪
2024-06-11 00:35:56
2211文字
Public 小説
 

スネ6♀の小説

現パロ的スネ6♀。実家を出て閣下と一緒に住んでる621ちゃんと、見守るウォ義父さんと、牙を剥く同担拒否621強火ハウンズの話。

 
 
「「「……」」」
……
妨害は予想通りだったが、門をくぐる前から立ちはだかるとは思わなかった。
ハンドラー・ウォルターの住まい。
そして、その猟犬達の住処。
対峙し、剣呑な視線の応酬をする一人と三匹の男達を、腰にぴったりと抱き着いている小さな恋人は不思議そうに見比べていた。
緩くその頭を撫でながら、溜め息混じりに状況を説明する。
……たまたま近くまで来たものですから、顔を出しておこうと、」
「駄目だ、お前は帰れ」
「そうだそうだぁ!」
「帰ってよ!」
途端にガウガウと喚き立てる三匹に、いよいよ大きな溜め息をつく。
「ハンドラーに挨拶くらいさせてくれても良いでしょう」
「621はな。お前は駄目だ、カタツムリ野郎」
「お前は外で待ってろぉ」
「621、ウォルターが中で待ってるよ」
言われずとも、元より自分はこの家にそこまでの用が無い。
やれやれと思いながら、この家を生家とする恋人だけ残して、どこかで時間を潰してこようかと思ったところで、寄り添う恋人、レイヴンが小さく声を発した。
……みんな、スネイルと仲悪いの?」
それは聞いているだけで身につまされる様な、悲哀に満ちた声だった。
よもや己の恋人と愛する兄弟達が不仲な訳がないと、今の今まで信じていたらしい純粋で鈍感な少女は、瞳に薄っすらと涙を浮かべている。
レイヴ、」
「そんな訳ないだろう、621。俺達は仲良しだ、なぁ?」
「そぅそぅ!」
「仲良しだよ」
どの口が言ってるんだと思わず目を向けると、三匹から黙ってろと一斉に睨まれる。
「ほんと?」
「ああ。仲が良すぎるとな、一周回って仲が悪く見える事がある。俺達はそれなんだ、621」
「そぅそぅ!」
「さ、早く上がってウォルターに会ってきなよ」
「うんっ」
すっかり丸め込まれたレイヴンは表情を明るくする。
「スネイルも、早く行こっ」
……えぇ、そうですね」
少女の小さな手に引かれ、背中に刺すような視線を浴びながらの幾度目かの義実家訪問となったのだった。

「よく来たな、二人とも」
ハンドラーは三匹ほどの敵意もなく、至って普通に出迎えてくれた。
と言うより、実際はハンドラーも私とレイヴンの交際には諸手を挙げて賛成という訳ではないのだが、三匹が過激派すぎて諌める役に回らざるを得ないのだろう。
出された香りの良いフィーカを啜りながら、たっぷりとミルクと砂糖を入れて楽しげに混ぜているレイヴンを見る。
仕事の関係で少し距離のある場所に住まいを移してから、少女をここに連れて来たのは久々だった。
嬉しそうな姿を見れば、連れて来て良かったと思える。
レイヴン過激派の兄弟達には邪魔をされたが。
「でもさぁ、621。こんな仕事人間が相手じゃ寂しいだろぉ」
「いつでも帰ってきて良いんだよ」
「クソカタツムリ野郎より良い男なんざ、掃いて捨てる程いるからな」
ハンドラーの後ろに控えた三匹が畳み掛けるのを心を無にして聞き流していると、甘く香るフィーカを飲んでいたレイヴンは首を振った。
「そんなことないよ。スネイル、優しいもん」
不服そうな三匹を前に、レイヴンは続ける。
「今日もね、私が行きたいなって言ってたケーキ屋さん、覚えててくれて連れて行ってくれたの」
「私がどっちにしようって悩んでたら、片方のケーキを頼んで分けてくれたの。スネイル、甘いのそんなに好きじゃないのに」
「帰りに、ウォルターとみんなに顔を見せに行こうって言ってくれたのもスネイルなんだよ」
「優しいの。だいすき」
レイヴンはにこにことして言うと、こちらを見上げて幸せそうに微笑んだ。
改めて今日の己の行動を言語化されると思いのほか面映いものがあり、適当に相槌を打ってフィーカを流し込む。
ふと向かいを見ると、どこか寂しげながらも安堵した表情を浮かべているハンドラーと、瀕死のダメージを負って床に伏す三匹がいた。


「またいつでも来るといい」
次も二人で。
見送りに立つハンドラーは、背後で幽鬼のように佇む三匹には聞こえない様にそう付け加えて笑った。
小さく会釈して車に乗り込もうとすると、出迎えた時とは打って変わって憔悴した三匹の長兄に当たる男が歩み出た。
……お前を、認めた訳じゃない」
……
「621を、頼む」
それは思いの外に真摯な声色であり、こちらも真っ直ぐに向き合って頷く。
貴方達の気持ちも、分からなくはありません。可愛い妹が連れて来た男など、誰が相手でも気に入らないでしょう」
「お前……

「お前に621の可愛さの何がわかるってんだ!ゲスカタツムリ野郎ッ‼︎」
「そうだそうだぁ!」
「621を返してよ!」
……難儀な生き物ですね、貴方達も」


「ばいばい!またね!」
窓から顔を出し、後方に手を振るレイヴンに合わせて、可能な限り車のスピードを落としてやる。
やがて見送る面々も見えなくなったのか、少女は窓を閉めるとシートに身を沈めた。
……寂しいですか?」
「ん……ちょっとだけ」
俯く頭を撫でてやると、運転の邪魔にならない程度に擦り寄ってくる。
少女の兄達の対応は散々だが、その後にはこうして可愛いく求めてくる恋人を味わうことができるのだから、連れて行ってやるだけの価値はあるだろう。
二人の家への帰路、信号で停まる度に甘えてくるレイヴンをあやしながら、そう思うのだった。