カッパ巻き大車輪
2024-03-22 21:36:54
996文字
Public 小説
 

スネ6♀の小説

くっついてるのが当たり前な621ちゃんと、くっつかれてるのが当たり前になってる閣下の話です。
企業に求められるもの、それは胆力。



作業音と微かな振動が絶えない格納庫。
次の任務に関わる者達が集められ、最終確認をしていた時のことだった。
傍らには、未だ市場には出回っていないパーツでアセンブルされたACが佇んでいる。
今回の任務は試用パーツのデータ採集を兼ねており、今はアーキバス先進開発局の職員が説明を担当していた。
各々に用意されたタブレット端末を手に、映し出される資料と照らし合わせながら耳を傾けていたのだが、ふと顔を上げると数名の視線が端末ではなく、こちらに集まっている事に気付いた。
私を見ているのかと思ったが、どうにも視線が合わない。
では隣に立つレイヴンを見ているのかとも思ったが、それも違った。
ちょうど、二人の間あたり
そうして視線を追って辿り着いたのは、こちらの上着の裾を掴む少女の小さな手だった。
……いつもの事なので気にしていなかったし、気付いてもいなかった。
今回のレイヴンの参加は、高い任務達成率とアーキバスへの貢献から、ある意味パーツのお試し会的な案件に特別に招かれた形だった。
真剣に端末を見つめている少女は、緩く裾を掴む手を放そうとはしない。
流石に公衆の面前では控えさせようと、小さく声を掛ける。
……レイヴン」
「?」
こちらを見上げたレイヴンは、返事の代わりに首を傾げた。
視線を彼女の手元に向け、それから顔を見て手を放すように目で促す。
こちらの視線を追って下を向いた少女は、しばらく手元を見つめてから、不思議そうに見上げてきた。
そして何が問題なのか分からないといった様子で、もう一度首を傾げてみせる。
……
今度は先程よりもはっきりと首を動かし、手元を見つめてから顔を見る。
同様に視線を落とし再度手元を見つめたレイヴンは、やがて困惑した顔で見上げてきた。
意図は伝わらなかったらしく、不安気に眉を下げ、上着を掴む指先にはますます力が込められる。
こうなるともう、放せとは言い難かった。
…………
軽く咳払いをし、何でもないと首を振る。
安心したように表情を和らげたレイヴンは、上着の裾を掴む手をそのままに、僅かに距離を詰め身を寄せてきた。
事の成り行きを見守っていた者達に向き直り、それから何事もなかったかの様に手元の端末に視線を戻す。
ビジネスにおいて、ある程度の開き直りは必要である。
それに、この程度のことで狼狽えていては、企業は務まらないのだ。