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カッパ巻き大車輪
2024-02-16 19:07:07
2419文字
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小説
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スネ6♀の小説
イヌ科の集いの話です。アイスワーム組良いよね。
企業の垣根を越えた合同任務を控え、関係者が一堂に会したミーティングでの事だった。
アーキバスからはV.Ⅱスネイルと、私
…
V.Ⅳラスティが参加。
ベイラムからは、G5イグアスが参加している。
そして私の戦友、独立傭兵レイヴンも名を連ねており、アイスワーム討伐戦を思い出させる顔触れとなっていた。
「足引っ張んなよ、野良犬」
「野良犬じゃないもん」
ミーティングが終わり、G5は早速戦友に絡んでいる。
膨れっ面で言い返した戦友は、「そもそも
…
」と言葉を続けた。
「野良犬って、なぁに?」
「はぁ?てめぇ、野良犬の意味も知らねぇのかよ」
「意味?」
「
……
戦友、もしかしてあまり犬を見たことがないのか?」
二人の会話がいまいち噛み合っていないような気がして、思わず口を挟んだ。
「一度も見たことない」
「
……
」
確かに、犬や猫などの動物を飼育するだけの環境的余裕がない惑星もある。
しかし、そういった愛玩動物とは親しみの薄い環境で育ったとしても、この歳まで一度も見たことがないというのは驚きだった。
彼女の特殊な生い立ちの一端を見たようで、思わず口を噤む。
流石のG5も、茶化すことなく黙り込んだ。
本人は気にしていないようで、犬がどんな動物なのかが気になるらしい。
気を取り直して、端末を取り出す。
「こういう生き物だよ」
画像を検索して、一番上に表示されたオーソドックスな犬の写真を見せてやると、戦友は表情を明るくした。
「ラスティのエンブレムだ!」
「私のは狼だが、同じイヌ科の動物だな」
「じゃあ、野良犬ってどんな犬?」
どんな、と言われると難しい。
しかし今の戦友に野良犬の概念や飼育環境の違い、犬種といった事を説明したところで、理解は難しいだろう。
「そうだな
…
野良犬っていうのは
…
」
端末で画像を検索し、適当なものを見つけて差し出す。
「こんな感じかな」
「
……
かわいいっ」
画面に表示したのは、泥遊びにでも興じたのだろう、鼻先まで泥まみれにして満足そうにしている子犬の画像だった。
「イグアス、ありがとう」
「なっ
…
ふざけんな!俺は可愛いって意味で、てめぇを野良犬って呼んでたんじゃねぇ‼︎」
G5は声を荒げたが、にこにこと微笑む戦友は、まるで気に留めていないようだ。
「じゃあ、じゃあ狂犬ってどんな犬?」
「ア゛ァ⁉︎」
「そうだな
……
こんな感じかな」
オモチャを咥えて元気良く振り回している犬の画像を表示して、二人に見せる。
「かわいい〜!良かったね、イグアス!」
「てめぇら、ふざけんなよマジで‼︎」
やいのやいのと騒がしい二人を眺めながら、ふと一言も発さないでいる第2隊長殿に気付いた。
「あ、どうしよう。みんな犬なのに、スネイルだけ仲間外れになっちゃう」
心配そうに呟く戦友は、向かい側の席に座るスネイルを見る。
……
実に意外な組み合わせなのだが、この二人は付き合っているのだ。
「木っ葉役人も企業の犬だろ」
「よかったぁ、みんな仲間だね!」
どうやらスネイルは、話題に出されても沈黙を貫く気でいるらしい。
この少女が絡んだ事には何かしら口を出してきそうなものだが、好き放題言って騒いでいる二人を咎める様子もない。
かといって関心がない訳ではないらしく、事の成り行きは気になっているようで、静かにこちらを窺っている。
訝しみながら様子を見ていると、その理由はすぐに判明した。
「それじゃあ、駄犬はどんな犬なの?」
戦友は身を乗り出すと、無邪気に言った。
「それは
……
」
成程、話題的にこれに行き着くのを恐れて気配を消していたのだなと合点がいき、思わずチラと男を見遣る。
無表情でだんまりを決め込んでいるが、この男が戦友とそういう関係になる以前、公然と彼女を駄犬呼ばわりしていたのは、大勢の知るところであった。
戦友の期待に満ちた視線を受けて、もう一度スネイルを窺うと、射抜くような視線と目が合う。
眼鏡越しにこちらを睨みつける目には「貴様、わかっているだろうな?」とありありと浮かんでいる。
二人の経緯を知っているG5も、固唾を飲んで成り行きを見守っているようだ。
「そうだなぁ
……
駄犬っていうのは
……
」
画像を検索し、ちょうどいいものを見つけて思わず笑う。
「こんな感じだな」
「
……
かわいい〜っ」
戦友に見せると嬉しそうに笑ってくれたので、これで良かったのだろう。
「その画像ほしい」
「送るよ」
「ありがとう!」
自身の端末を確認した戦友は、スネイルの元へと駆けて行った。
笑顔で差し出された端末を、警戒しながら確認したスネイルは、目に見えて安堵しているのが分かり、笑ってしまいそうになる。
送ったのは、仰向けに見せたお腹を飼い主に撫でられて嬉しそうに尻尾を振る子犬の画像だった。
なんとか笑うのを堪えていると、スネイルが徐ろにこちらを見た。
(こんなものでいかがです、第2隊長殿)
(悪くない働きです、V.Ⅳ)
といったような意味を含んだアイコンタクトを交わす。
やれやれと溜め息をつくと、今まで黙っていたG5がようやく口を開いた。
「
……
なんか、あれだな。木っ葉役人も野良犬を相手に苦労してんだな」
「
…
そうだなぁ」
完全に身から出た錆とはいえ、あの高慢なスネイルも人並みに恋する男の苦労をしている事が窺えて、溜飲が下がる思いがした。
(もしかしたら戦友は、第2隊長殿のイメージアップに一役買っているのかもしれないな)
もうこちらには少しも向けられず、一心に目の前の男に注がれる少女の眼差しは、ここにいる誰に向けられたものよりも甘い。
まるで眩しいものを見ているようで、ほんの僅か、目を細めた。
アーキバスに帰社してすぐ、スネイルに呼び止められた。
てっきり先程の礼でも言われるのかと思ったが、何故レイヴンの個人的な連絡先を知っているのだと詰め寄られ、イメージアップは早々に撤回されたのだった。
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