カッパ巻き大車輪
2024-01-27 12:07:06
902文字
Public 小説
 

スネ6♀の小説

食べられちゃう話です。



自室に向かう通路の先、見慣れた小さな人影が壁に背を預けて佇んでいるのが見えた。
先に部屋に向かった筈のレイヴンは、こちらに気付いてぱっと顔を上げると嬉々として走り寄って来て、一度周囲を見回し誰もいないことを確認してから胸元に飛び込んできた。
「部屋で待っていて良かったのですよ」
「早く会いたかったの」
そう言って目を閉じて背伸びする少女に、いつも通り軽く腰を屈めて口付けてやれば、ゆっくりと開かれた瞳には僅かに不満の色が見てとれた。
「そっちじゃなくて、違うのして」
……違うのとは?」
「えっとね……食べられちゃうみたいなキス」
胸元にしがみ付いた少女は、首を傾げてこちらを見上げながらあどけなく笑っている。
そんな少女が眩しいものに、そして厄介なものにも見えて思わず目を細める。
小さな顎を掴み上向かせると、望み通り奪うように真上から口付けてやった。
「ぁ……んぅ
上顎をくすぐり舌を絡めて吸ってやれば、鼻から抜けるような甘え切った声を上げて全身を震わせたレイヴンは、やがて脱力してしなだれかかってきた。
「はぁ、ふふ
どこか満足そうに笑って胸元に頬擦りするレイヴンは可愛らしく、間違いなく好いた相手なのだが、時折「どうしてくれようか」と思わせてくる女でもあった。
〝食べられちゃうキス〟などと幼稚な言い方ではあるが、男にディープキスを求めておいてその後の事は何も考えていないというある種の無神経さが、レイヴンの無垢な魅力と言えるのだろう。
そして同時に、男の加虐心を煽る危うさでもあるのだ。
胸元を緩く掴む小さな手を握り無言で歩き出す。
「スネイル?」
何も言わずに手を引いて歩き出したことに、いつもと違う空気を感じ取ったのかレイヴンは不思議そうに名前を呼んできた。
それでも僅かに振り返って掴んだ手の指先を絡めてやれば、何か言葉を掛けてやらずとも途端に機嫌良く微笑んで手を握り返してくる。
そんなレイヴンにこちらも口元だけで笑って、前を向き直り歩みを進める。
よくよく教育してやる必要があるだろう。
不用意に男を煽る悪い子は〝食べられてしまう〟ことになるのだと。