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カッパ巻き大車輪
2023-10-23 00:00:05
2799文字
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小説
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スネ6♀の小説
平和時空でこっそり付き合ってたのがバレるスネ6
「お二人はいつから交際されてたんですか?」
V.Ⅷペイターが平素と変わらぬ調子で放った言葉はその場にいた凡そ全ての人間の時を止め硬直させた。
事の発端は丸一日ほど遡る。
「621、俺は明日アーキバスに所用があってここを留守にする。お前は待機して体を休めておけ」
任務を滞りなく完遂しACの整備も済んだ一日の終わり、ウォルターは621にそんなことを告げた。
ACから離れ歩み寄って来た少女
…
621はいつもならすぐに了解した旨を口にするところ黙り込んでいる。
珍しく何か言い淀んだ様子に気が付いたウォルターは改めて向き直りその先を促す。
「今回は私も行っていい
…
?」
思いがけない申し出にウォルターは僅かに目を見開いた。
621がアーキバスへの訪問に同行したことは過去にもある。
感情の起伏に乏しい第四世代の621に何か良い刺激になればと連れ出していたのだが
…
正直なところ今のウォルターにはあまり気が進まないものがあった。
端的に言えば621は人目を引くのである。
色素の抜けた白い髪にコーラルの影響を受けた緋色の瞳。
顔立ちは表情に乏しいながらも少女らしい愛らしさがあり、雇主の贔屓目を抜いても可愛らしいと言えるだろう。
ACに乗れば無類の強さを見せる621だが生身は至って普通の少女
…
むしろ旧世代型の無茶な強化手術の影響で不自由を抱えている身体機能もあり、余計な衆目に晒して任務外で要らぬ危険を招く真似は避けたいというのが本音だった。
「今回は少々煩雑な手続きが多い。時間も取られるだろうから
…
」
改めて待機を申し付けようと口を開いて、621からこのような意思表示がなされたのは初めてであることにウォルターは気付いてしまった。
気付いてしまえば、断るという選択肢はもうなかった。
翌日アーキバスへ訪れた621は手続きで席を外したウォルターに残されロビーにいた。
この時間ロビーは閑散としており、たまに足早に進む職員が通り過ぎるのみである。
621を一人残すことに難色を示したウォルターだったが色々見てみたいと621が求めれば頭ごなしに否とは言えずあまり遠くには行かないようにと親のように諭す他なかった。
周囲を見回しながら歩みを進める621は一見して部外者であるとわかる様子であり、今や名を知らぬ者はいないであろう売れっ子傭兵のその名からは想像し難い姿に良からぬ接触を謀る者がいた。
「うちの社員じゃないよな?こんなところで何してるの」
小柄な621の目前に男性職員2名が笑みを浮かべながら立ち塞がった。
621は瞬きののち避けて通ろうと歩を進めるが男2人に回り込むように進路を阻まれてしまい立ち竦む。
その場を通りがかったのはV.Vホーキンスと彼の補佐官V.Ⅷペイターである。
ヴェスパー隊長格の2人は少女が独立傭兵レイヴンその人であることを知っていた。
相手は仕事を斡旋している傭兵というだけの関係上、レイヴンを庇い立てする義務は感じなかったが少女1人に大の男2人が詰め寄る様に思わず足を止めたのだ。
反応の薄い少女に焦れた男の一人がその細い腕を掴もうとしたその時、流石にと眉を寄せたホーキンスが声を掛けようとして、それより先に響く音があった。
「何をしているのです」
視線を向けなくても声の主がわかる。
それは少女に絡んでいた男達も同じだったようで、その背筋は電撃を受けたように伸び顔色は見る見る悪くなっていった。
「ス、スネイル第2隊長閣下
…
」
向き直り言い訳にならない言い訳を始める職員らを早々に散らし、スネイルは少女に対峙した。
「より面倒なことになる相手が出てきてしまったのでは?」
「そうかもしれないねぇ
…
」
次から次へと厄介事が降り掛かるレイヴンを不憫に感じながらも、スネイルに見つかる前に退散しようとした二人は強化された聴力により予想外のやり取りを聴いた。
「
…
だからすぐに私の執務室に来るようにと場所を教えておいたでしょう」
そして再び思わず足を止める事となった。
「ウォルターが離れて、ちょっとしてからの方が良いのかなって思ったの」
「まあ、それはそうですが
…
貴女は人目を引く。何かあってからでは遅いのですよ」
密やかな声量で交わされる会話の内容と、まるで気の置けない相手に接するようなレイヴンの語り口と、どこか険が取れ相手を労わるような雰囲気の滲む第2隊長殿の声音と、そこから導き出されるのは
…
冒頭に繋がる。
621とスネイルは今気付いたとばかりにホーキンスとペイターを見た。
実際、自身に絡む不届な輩にすら無反応であった少女も恐らくは少女の元に駆けつけたであろう男も離れた場所から窺う2人に気付いていなかったのだろう。
所用を終えて戻り、後方で立ち尽くすハンドラー・ウォルターにも。
「ごめんなさい
…
?」
「
…
いや
…
謝ることではない、621」
「私は貴方が知らなかったという事の方が驚きなのですが
…
」
レイヴンの代理人なのに通信のやり取りを把握していないのですか?
それは二人が日常的に通常の通信でやり取りをしていただろうことが伺える言葉であった。
しかしスネイルからウォルターへのその問いは嘲りや煽りといったものを一切含んでおらず、純粋に驚きからのものだとわかる。
彼も企業で人材を管理する立場上、常時内容の監視とまではいかずとも通常の通信で繋がっている相手くらい把握して然るべきと考えているのだろう。
「知ってて黙っているものと思っていましたよ
…
それで連れてこなくなったのだと」
「
…
プライベートにまで口を挟むような真似はしない」
「その結果思わぬとこでくっついちゃってたんですねぇ」
「ペイターくん、しっ!」
渋面を浮かべるウォルターの脳裏には昨日の621とのやり取りが思い出される。
アーキバスへ赴くなら今回は自分も同行したいとはこういう事だったのだ。
今日赴くことは通信で予めスネイルに伝えられていたのだろう
…
そう思い当たり眩暈がしてきた。
「一体いつの間にそんなことに
…
いや
…
」
プライベートに口は挟まないと言った手前詮索するのは憚られる。
621をここに連れてきたのは初めてではない。
出会う機会はいくらでもあったのだろう。
心が通う瞬間も、あったのだろう。
あったのだろうが
…
理解ある雇主でいたいが苦虫を噛み潰した顔を隠せない男と、彼にしては非常に稀有であろう相手を気の毒に思う表情を見せる男と、あまり状況を理解していなさそうな少女と
…
静かな波乱を呼んだ一件ではあったが、以降もアーキバス訪問時の621の身柄の預け先にスネイルの執務室が利用されていることは報告にそこを訪れたV.Ⅳラスティの驚愕の声で判明している。
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