よつもり
2024-06-16 12:52:06
3415文字
Public 映画・本のはなし
 

映画 『パーフェクト・ドライバー』 感想

2024年6月11日に観た映画の感想です。

先日けいじさん、あられさんと映画のお話をさせていただく機会があり、その際にあられさんに「おすすめ映画はありますか?」とお尋ねしたところ、
「韓国映画なら『パーフェクト・ドライバー』が面白かったです」ということで教えて頂き、それならぜひ観てみたいな〜ということで鑑賞。
面白かったです。やっぱりおすすめしていただいた作品って外れないですね。最高でした。


☆ ☆ ☆


「運び屋」の従業員ウナは、その飛び抜けた運転技術により、依頼のあった荷物を必ず送り届ける実績を持っている。
ある日野球賭博で手配がかかり、韓国を密かに脱出したいという依頼人を迎えに行ったところ、依頼人は賭博の後処理に巻き込まれ、幼い息子のソウォンだけがウナのもとに転がり込んでくる。

依頼人は死亡し、ウナはソウォンを持て余すものの、情が移り、彼を自分の会社に連れて帰ることにする。
野球賭博の黒幕である刑事のギョンピルが探している銀行の貸し金庫の鍵を持っていたソウォンは、そのため追われる事となる。

ウナとソウォンは無事にウナの会社に帰り着き、ソウォンは密出国の準備を進められる。
しかしその直前にギョンピルとその手下がウナの会社を襲撃。応戦するものの、社長は殺され、同僚は痛めつけられる。

ウナとギョンピルは海に沈み、ソウォンだけが助かる。

ソウォンは孤児院に送られ親切な環境で暮らすことができるものの、ウナのことが忘れられない。
そんなソウォンのもとに颯爽とウナが現れる。二人は車に乗り込む。かつてのように「運び屋」として働くウナがそこにはいた。


☆ ☆ ☆


この映画で面白いな、と思ったのが「運び屋」という仕事の存在なんですよ。
この映画の舞台は韓国で、韓国というのは北朝鮮と同一民族でありながら国を二分した国家で、
そのため北朝鮮から韓国へ「脱北」して逃れてくる人々が大勢いるという事情がある。

この物語の中では、その「脱北」の案内人であったのが、ウナの会社の社長であり、
ウナ自身も家族とともに北朝鮮から逃れてきて、家族全員が亡くなる中一人だけ生き延びて、
社長に拾われ、彼がもつ運転技術を教え込まれ、社長のもとで働いているという、
そういう事情を持つ女性であることがだんだん分かってくる。

だからこそ、親を殺され、ひとりきりになった少年ソウォンを、持て余しながらも無碍にする事はできずにウナは彼を引き受けてなんとか落とし所を見つけようとする。
それはウナがソウォンにかつての自分の姿を見出していたからだろうと思うし、
社長とは仕事の取り分でバチバチに火花を散らして駆け引きをしながらも、社長の健康を心配している。社長が殺されたときは本当にショックを受けていて、
それは社長がウナにとって韓国での親のような存在でもあったからなのだろうと思います。

会社の仲間との食事に付き合わずに一人さっさと家に帰ってしまうウナの家はとても快適に整えられていて、
そして猫が彼女の生活のパートナーとしてその家で待っていて、ウナは猫をまるで子どものように可愛がっている。
ウナが大切にしている生活というものは、彼女が家族を失って身ひとつで韓国にやってきてから必死に積み上げて作り上げてきたもので、
ウナにとって猫はかけがえのない家族だということが、彼女の来歴を知ることでようやくはっきりと分かるようになっている。

韓国という国ならではの事情を前提として、
「運び屋」というアンダーグラウンドな仕事が非常に説得力をもって描かれており、
そしてその運び屋として仕事をするウナという一人の女性のあり様や行動にも説得力が生まれるという。
あくまでフィクションではあるものの、その世界観と、設定と、キャラクターが、現実の要素を取り込みながら本当に上手く噛み合って説得力を生み出しているところに、
この映画の面白さはあるような気がします。

そしてまた、派手なカーチェイスも魅力ですね。
韓国の細い路地が入り組む町並みの中や立体駐車場で行われるカーアクションは本当に見応えがありました。
ドリンクをストローでチューチュー飲みながらという余裕の仕草で車を運転するウナの格好良さですよ。


☆ ☆ ☆


この映画はウナ陣営のキャラクターが魅力的に描かれていましたが、この映画は敵役もまたかなり存在感を放っていたように思います。
悪徳警察官、ギョンピルがもう、やばいんですよ。一見まともそうな風貌や物腰でいるのに、目がギラギラしていて、それであっこいつはやばいやつだ、というのが分かる。
画面の中での存在感がもうすごい。ぐっと惹きつけられます。

私は彼の演技を見たときに、『レオン』の敵役、スタンフィールド(演:ゲイリー・オールドマン)を思い出しました。
キャラクターとしては全く違うものではありますが、画面に写ったときの「あっこの人はヤバい人だ」と観客に直感させるような映り方というものがなんだか共通しているように思います。
そういう「ヤバい人」というものを、セリフだけではなく、全身から醸し出せるというのは、やっぱり役者さんというものはすごいなということを思いますよね。

ギョンピルを演じていたのはソン・セビョクという役者さんだそうです。覚えておこうっと。


☆ ☆ ☆


というわけで、本当に楽しむことができました。
とてもいい映画をおすすめしていただいて、あられさんに感謝です。
またおすすめがあったら、もしよければ教えていただきたいです。


☆ ☆ ☆

追記

この映画のラストシーンについて書くのを忘れていたので追記です。
ラストは、児童養護施設に引き取られたソウォンのもとに、車に乗ったウナがさっそうとやってきて、
ウナは以前と変わらず運び屋をしており、二人は再会して以前のように車に乗って走り去るという場面で終幕でしたが、
その前のクライマックスシーンは、ウナが悪徳警官・ギョンピルに海に引きずり込まれた場面で終わりだったので、
これはどういうこと?と思われた方が多かったんじゃないかと思います。私も思いました。

ビョンピルはウナの足に手錠をかけて、自身を錘にしてウナをも引きずり込んでいきましたので、
もしこの状況から助かるとしたら一体全体どうやって?というのがかなり謎です。

それでも、ラストシーンでウナは元気で出てきたのだから、きっとあの時はなんとかして脱出して、
戦いでボロボロになった体も回復して、そりゃもう健康に元のとおりに元気に活躍しているのでは

と思わなくもないですが、ウナが登場する少し前のソウォンの独白によって、
ウナの会社にいたインド人の整備士がウナの猫の世話をしているという描写が挟まるんですよね。
ということはウナは、あれだけ可愛がっていた自分の家族の猫を迎えに行っていないということがわかる。

そして二人で車に乗り込み、ウナはスマホに送られてきた運び屋の仕事に取り掛かりますが、
ここでも疑問が。
ウナに仕事を斡旋しているのは一体誰なんでしょう?

先の戦いで社長は死んでいる。
となるとウナはまた別の運び屋の会社に所属して仕事を再開している?
もしくは、ウナが自分でスタッフを雇ってオペレーションをさせている?
でも、ウナの性格を考えれば、一匹狼で仕事をしている様子は思い浮かびますが、
社長以外の誰かの下につくような性格でもないように思いますし、
自分で会社を立ち上げるような人かなあという疑問も出てくる。

というわけで、爽やかなラストシーンは、爽やかではありますがその描写に様々な疑問が付随してきます。
これらの情報を色々考えると、ウナはやっぱり死んでいるのではないかと。

じゃあこのラストシーンの意味とは?と考えますと、それは、
少年ソウォン、そして観客の私達が見たいものを見せてくれて、
この映画をただ凄惨なだけに終わらせないという、
そういった優しさ、または計算によるシーンだったんじゃないかなということを思います。

色々と疑問があるラストシーンですが、この場面があるかないかで映画全体の印象は大きく変わると思っていて、
こうしてウナがやってきて華麗に走り去るという姿を見ることができたのは、私は、救いだし、良い演出だったんじゃないかなと、そんな風に思います。