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無窓居室
2024-05-29 10:06:36
1773文字
Public
さとひめ
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ブルーローズに添えて
画像一覧に上げている👦と青薔薇の絵と一緒に「春の薔薇祭り〜ローズフェスティバル2024〜」に展示させていただきました。
高校生👦が女優志望の👸にバラを贈る話です。例によって捏造だらけ。
実は8P折本として無料配布したかったのですが字数がおさまりきらなかったという締まらない裏話があります。
その日、俺は朝から張り切って出かける準備をしていた。なんたって今日は市の文化会館でひめちゃんが主演の劇をやるんだ。ひめちゃん本人から写真と動画の撮影を頼まれて、力が入らないはずがない。高校に入学したとき親戚全員分のお祝いを注ぎ込んで買った一眼レフも念入りにチェックして、気合いは充分だ。
「でも
…
」
財布の中身を確認して肩を落とす。カメラのレンズまで新調したのは張り切り過ぎだったかもしれない。残りのお小遣いで買えたプレゼントはピンクのバラ一輪だけ。本当は楽屋が埋まるくらいの花束を届けたいのに、何度見てもそれっきりだ。
「カカカッ!しまらないですね〜」
いつも通り俺の部屋でノートパソコンを開いていたブラックが口を挟んでくる。
「笑いたきゃ笑え!俺は将来トップYouTuberになってひめちゃんの専属カメラマンになるんだ!!」
「まるで青いバラを探すようなこと言うじゃないですか」
ブラックはたまにこういう気取った言い回しをする。小学生の頃からの付き合いだから何が言いたいのか大体分かるようになってきた。青いバラなんて見たことない。たまに花屋さんにあるのは色水で染めた偽物だ。叶わぬ夢、って意味だろう。
もう相手をせずにカメラの手入れを再開した俺をちょっと面白そうに見てから、ブラックは何もない空中から黒い箱を取り出して、契約書と一緒に俺の前に差し出した。
「ブラックプレゼントボックス。中にプレゼントと送り先を入れると、入力した情報をもとにプレゼントをアップグレードしてくれるデビルツールです。オレちゃんの知り合いの情報は大体入力してありますので
……
」
「勝手なことするなよ!でも、それじゃひめちゃんの情報も入力済みってことだよね?ちょうどいいや」
「まだ試作段階のツールだそうですけど」
付け加えられた説明を聞くのもそこそこに、俺はサインを書き終えて、バラの花を入れた箱を抱え部屋を飛び出した。
楽屋で役の衣装に身を包んだひめちゃんは目が眩みそうなくらいに綺麗だった。お化粧のせいもあるかもしれないけど、役に対する真剣さが元から可愛いひめちゃんを更に輝かせてるんだと思う。
学校に通いながら雑誌の読者モデルやオーディションの他にも歌やダンスのレッスン、こうして人前に立てるチャンスがあれば必ず参加して、練習にもきちんと出て。市民活動の演劇なんか本心では馬鹿にしてるんだろうって陰口を叩く人もいるけど、舞台の上のひめちゃんがいつも本気なこと、俺はよく知ってるよ。
「初主演おめでとう!俺がひめちゃんの夢を応援する気持ち、このプレゼントに込めたんだ。開けてみてくれる?」
「うん、さとしくん。嬉しいわ」
ひめちゃんが微笑んで箱に手をかけた。最高だ。舞い上がりきった気分は、次の瞬間に地面へ激突した。
黒い蓋の内側には、大輪のバラの花がぎっしり詰まっていたんだ。それも、青いバラが。
「ご、ご、ごめん!!何かの間違いだよ!俺、ひめちゃんの夢が叶わないなんて
…
思ってない
……
」
情けなさと申し訳なさで語尾が消えていく。どうしてこんな事になったんだろう。ブラックの説明を聞きもせずに試作段階のツールなんか使ったから、ううん、大切なひめちゃんへのプレゼントをズルで豪華にしようとしたりしたから──。
ひめちゃんは箱の中をじっと覗き込んでいる。その瞳に涙が溜まっていくのを見て俺の方が泣き叫びたくなった。でも、ひめちゃんは目元をぬぐってこう言ったんだ。
「分かってるわ。青いバラは自然には咲かないから花言葉が〝叶わぬ夢〟だったのよね。でも品種改良で本物の青いバラが作れるようになって〝夢は叶う〟に変わったの。どんな難しいことも、信じて努力し続ければきっとできる
……
ありがとう。ひめ、頑張るね」
そしてひめちゃんは青いバラの花の中から、俺が最初に入れたピンクの一輪を掬い上げた。たった一輪だけど、ひめちゃんに一番似合う色だと思って選んだ花。ひめちゃんは何度か黒い箱と見比べるようにしてから、名作映画の大女優みたいなポーズでそのバラを持って笑った。
「ねぇ、ブラックにもちゃんとお礼を言っておいてね。応援してくれる友達がいるって、本当に素敵なことなんだから」
2024/05/26
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