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無窓居室
2024-04-20 20:31:24
5073文字
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昔話
画像一覧に上げている鳥😈とウサギ👹の絵を意外と褒めてもらえたのでお伽話風のストーリーを考えてみました。
もはやYouTuber関係なくてほとんど怪文書みたいな話ですが、何でも許せる方はどうぞ。
産卵・抱卵・授乳シーンがありますがR18ではないかなみたいな変な話です(いつものこと)
昔々、世界が小さな草ばかりに覆われた野原だった頃のお話です。
悪魔のブラックは黒い鳥の姿をして空を飛んでいました。ブラックはこの世界の天地が分かれた時代から生きている悪魔で、強い力と無限の知恵、そして巧みな話術を持っていました。
あるときブラックは夜の空が真っ暗で殺風景だと思いました。そこで自分に気のある太陽を騙し、光を盗んで夜空にばら撒くと、月と星ができました。
またあるとき、ブラックは昼の空が青いばかりで味気ないと思いました。そこで海の水を誘惑して呼び寄せると、水はその姿を雲に変えてブラックと戯れました。こうして雲が生まれ雨が降るようになったので、世界には川や湖ができたのです。
他の誰にも真似のできない発想と、それを実行する勇気を持ったブラックに憧れない者はいませんでした。ブラックの体が黒いのも、この世のありとあらゆる色たちが競ってその羽を染めたがったため、全てが混じって黒くなってしまったせいなのでした。
白ウサギのアカネもブラックに思いを寄せる者達うちの一羽でした。あるよく晴れた日、アカネは思いがけずブラックが野原の草の中にうずくまっているのを見て、驚いて叫びました。
「ブラック!アンタが空を飛ぶのとアタシが土の上を駆けるの、どっちが早いか勝負しろ!!」
「おやおや、アカネさん。一体なぜそんなことしなきゃいけないんです?」
どうしてそんなことを言ったのかアカネにも分かりません。誰かを好きになると、たまにそういうことがあるものです。
ブラックはそんなアカネをからかうように草の中から飛び出して、あっという間に世界を一周して見せました。足の速いアカネでもとても追いつけません。悔しまぎれにブラックを睨みつけたアカネは、その足元に卵があることに気が付きました。
「あれっ、この卵は
……
!?」
「オレちゃんがさっき産んだんですよ」
「なんだって!すぐに暖めてあげなきゃ!!」
「いーんです。オレちゃんこういうの興味ないですし、暖めるとか面倒くさいので。目玉焼きにして食べてしまうか、そのまま捨てていこうと思ってたところです」
「そんな、可哀想だろ!」
「じゃあキミが孵してあげたらどうです?」
咎めるアカネを唆すように、ブラックはその長い耳に囁きました。
「欲しかったらあげますよ」
その日からアカネはブラックの卵を暖めるようになりました。卵など抱いたこともないウサギが雛を孵そうとするのですから苦労続きでしたが、アカネは不器用さを努力でおぎないよく卵の世話をしました。卵が冷えてしまわないように片時も離れず、雛が元気に育つように少しずつ位置を変えて抱き続けました。
アカネの真っ白く柔らかい毛に覆われた手足は、ブラックの翼には敵わなくとも瞬きする間に何里も走れる逞しいもので、蹴られれば狼でも虎でもひとたまりもありません。鷲や蛇もアカネの姿を見れば恐れをなして、卵を狙うことなどできませんでした。
何日か過ぎてブラックが気まぐれに様子を見に行くと、アカネは卵を抱いたまま気を失っていました。むやみに卵を動かして割ってしまわないように、飲まず食わずでその場に座り込んでいたのでしょう。アカネの手の届く範囲の草だけが食べ尽くされていました。
ブラックは笑って、地面を嘴で叩きウサギの好きな甘い草が辺りにいくらでも生えてくるようにしてやりました。草が含んだ朝露が顔に当たってアカネは目を覚まし、瑞々しい草をお腹いっぱい食べました。
「ありがとう、ブラックは食べないのか?」
「オレちゃんは大丈夫。それよりアカネさん、もう懲りたんじゃないですか?このままじゃ命が幾つあっても足りなさそうですが」
「なんだって!一度助けてくれたくらいで馬鹿にするなよ!この卵はアタシがちゃんと育てるんだから!!」
怒ったアカネに追い返されてブラックは空へ舞い戻りました。
それから何日か暑さの厳しい日が続きました。アカネは自分の影の中に卵を庇い、自分は陽に晒されて倒れそうになっていました。
様子を見に来たブラックが、また地面を嘴で叩いて湧き水を作ってやりました。そして近くの草を掴んで引っ張ると、それは高く伸びて広い葉が涼やかな陰を作る木になりました。こうして世界には樹木が生まれました。
そのまた何日か後、激しい嵐がやってきました。アカネは自分が飛んでくる石や枝で傷つくのも構わず、卵を懐にしっかりと抱えていました。流れる血でアカネの白い毛皮はその髪や瞳と同じ真っ赤に染まりました。
ブラックがやって来て広げた翼の下にアカネと卵を庇いました。夜明けに嵐は収まりましたが、怪我を負い風雨に晒されていたアカネは弱りきっていました。
ブラックはアカネに呼びかけながら自分の羽を一枚抜き、晴れてゆく空へ投げました。すると黒い羽の中からとりどりの色が解き放たれて虹を作りました。空にかかる不思議な輝きを見てアカネは息を吹き返し、卵の無事を喜びました。このときの色は今でも空を漂っていて、雨上がりなどに見えることがあります。
太陽と月が何度入れ替わっても、晴れた日も雨の日も、アカネは卵を暖め続けました。卵の殻はすべすべとして、ひんやりとしているのにどこか温かいような、不思議な触り心地がします。乱暴な言葉遣いや仕草に似合わず弱い者には優しいアカネでしたが、この卵はとりわけ愛おしく感じていました。
野原を自由に駆け回る仲間のウサギ達の姿を見ても、その楽しそうな声が聞こえて来ても、アカネは孤独を感じませんでした。ただ一つ寂しいことはこれがブラックの卵だということでした。
卵を産んだということは、ブラックには既に番の相手がいるということです。番と体を結ぶことで身籠るウサギのアカネにとって、それは動かしがたい事実でした。ブラックの卵を抱けることは幸せなのに、この卵がブラックと他の誰かとの愛の結晶なのだと思うとたまらなく寂しくなりました。アカネのブラックへの好意はただの憧れではなく、この世でたった一人の相手だけに向けられる、特別な意味を含んでいましたから。
そして寂しさで眠れない夜には、卵をより一層愛しく感じました。アカネは卵を抱きしめて泣き、殻を伝った涙が地面に落ちて小さな野の花を咲かせました。世界で最初の花はこうして生まれたのです。
またからかい半分にやって来たブラックは、アカネと卵の周りに咲く名も無い野の花を見て、持ち前の創作意欲を掻き立てられました。そして自分の羽から色を取り出し、バラやヒナゲシ、三色スミレにアネモネなど艶やかなで香りの強い花々を作りました。
作った花をブラックはアカネに贈りました。「ま、まあ、もらっといてやるよ
…
」と強がるアカネが、内心どれほど喜んだか言うまでもないでしょう。
その夜、卵を抱えて眠るアカネをブラックは傍の木の上から眺めていました。どんな夢を見ているのか、卵に頬ずりしながら安らかな寝息を立てているアカネにブラックは忍び笑います。あの卵が孵る日は来ないというのに。
悪魔の卵には命が宿っていません。たまたま鳥の姿を取っているブラックが形だけ産んだ偽物なのです。子を成すこともできますが、それは自分とは関係のないことだとブラックは考えていました。
張りぼての卵をアカネがどうしようと、初めのうちブラックは構いもしませんでした。けれども健気に卵を守る姿には少しずつ心を動かされるようになりました。今ではアカネと卵を見守ることがブラックの心底からの喜びになっていました。
残念なのは、アカネがいつかは卵を孵すことを諦めてどこかへ行ってしまうだろうということです。そうなったら辺りの草を全て毒草に変えてしまおうとブラックは思いました。もがき苦しみながら命を落とすアカネの姿は、どんな美しい踊り子よりもブラックの目を楽しませるでしょう。それに悪魔の毒で死んだ者の魂は天国へ行けず、永遠に悪魔のものになるのです。
あるいは鋭い棘を生やした蔓を一面に生い茂らせようかとも考えました。逃れようとすればするほど食い込む棘には、丈夫なアカネの体もバラバラになるでしょう。その肉をついばみ、毛皮は繋いで襟巻きにでもしようと思いました。
これを酷いとか残酷だと感じるのは悪魔以外の生き物の考え方です。悪魔が誰かを好きになるというのはこういうことなのです。
いずれにせよ、そのときが来るのが待ち遠しくてブラックは思わず嘴の端から涎を溢しました。それは地面に染み込み、今ではムスカリと呼ばれている花に変わりました。悪魔が咲かせた花と、他の生き物が叶わぬ恋に流す涙との間に、どれほどの違いがあったでしょう。
ある日いつものようにブラックがアカネを訪ねると、アカネは相変わらず飽きもせずに卵を抱いていました。
ブラックは言葉巧みに遠く離れた海の白い砂浜の話や、登れば雲を掴める山の話をアカネに聞かせました。そうすれば興味を惹かれたアカネが近いうちに卵を置いてこの場を離れると思ったのです。しかしアカネは満足そうにブラックの話に耳を傾けながら卵を撫でるばかりでした。
「ブラックが色んな話を聞かせてくれるから退屈せずに済むよ。この子もきっと嬉しいんじゃないかな」
そのとき不思議なことが起こりました。卵の殻に皹が走り、割れて中から何か動くものが現れたのです。アカネだけでなくブラックまでが目を見張り、出てくる雛を見つめました。
卵の中から現れたのは小さなウサギの赤ん坊でした。生まれたてのウサギは次々と、5羽も殻の中から転がり出てブラックとアカネに甘えて擦り寄ります。ブラックが口を開けて喉の奥から乳を出し、仔ウサギ達に与えました。
呆然とその様子を見ながら、乳を飲み終わった仔ウサギを腕の中へ迎え入れたアカネは、仔ウサギ達がみんな眠ってしまうのを待って口を開きました。
「おめでとうブラック
…
いや、興味ないんだったか
……
。それにしても驚いたな、この子達の片親がアタシと同じウサギだったなんて。多分、草を食べられる大きさになればアタシにも育てられると思う。でもアタシにはお乳が出せないから、お願い。もう少しの間だけ手伝ってくれないか
…
?」
幸せと寂しさの混じり合った表情で、仔ウサギ達の寝息を確かめるように順に鼻先を当てていくアカネに、ブラックは静かに語り出しました。
「アナタを騙していたことをお詫びしなければいけません。その卵に雛は入っていないはずだったんです。悪魔は番を作っての繁殖をしないんですよ
……
ごく稀に、心から愛する人ができたときだけ、卵の中にその相手との子が宿ります。そして相手も悪魔を愛していれば、卵は孵ることができるんです。オレちゃんにそんなことが起こるなんて、アカネさんと出会う前には考えもしませんでしたけど
…
」
不思議そうに話を聞いていたアカネは、ブラックと仔ウサギ達とを交互に見て、しばらくしからようやく意味を理解したように小さく叫び声を上げました。仔ウサギ達の白い綿のような、あるいは黒曜石のような色の毛は、そっくりアカネの毛皮とブラックの翼の色を譲り受けたようでした。ルビーや黒玉のような目の色もです。
やがて、青く群れ咲くムスカリの花の中で二羽の鳥とウサギは身を寄せ合い、嘴と鼻先とを擦り合わせました。懐にお互いの子を抱えたままで。
それから二羽はどうなったでしょう。幸せに暮らしたのかもしれないし、そうではないのかもしれません。
ただ、今でもウサギ達の中で赤い目を持つのは、毛皮が白か黒のものだけだと言われています。
2024/04/20
解説
ムスカリの花言葉には「明るい未来」「寛大な愛」「通じ合う心」などポジティブなものと、埋葬花のイメージから「絶望」「悲嘆」「憂鬱」というネガティブなものがあるそうです。民話や伝説の少し怖いところを再現したくてメインの花に据えました。
ウサギの雌は雄と交尾した際に排卵しほぼ100%妊娠するのに対して、鳥は交尾をしなくても無精卵を産むものがいます。
ウサギのうち生まれつき目の赤い個体はアルビノか一部のヒマラヤン種だけで、それぞれ白か白に黒いポイントの毛の色をしているらしいです。
聞きかじりの知識を使ってみたかっただけのネタなので間違えていたら済みません。
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