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かずわや
2016-07-12 00:24:19
1461文字
Public
刀剣乱舞
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【蜻蛉杵7days】火の粉痕
3つのお題のうちから【首筋】をお借りしました。リハビリのつもり
「こんなので、どうにか、なるもんかよ
…
」
「なる」
蝿を叩き落とすように言い放った蜻蛉切に御手杵はうええ、と情けなく眉を下げた。
陽射しが照りつける夏の日。内番に赴く者は全員麦わら帽子の着用を義務付けられていたが、御手杵の麦わら帽子は玄関に掛けっぱなしになっていた。どうせ槍のやることではないのだから、鶯丸の受け売りではないが休み休みやろうとしたものの、思った以上に雑草の数が多くて抜くのに時間がかかったのだ。ぶつぶつと言う割にきちんとやりたい性格が災いした。
「おてぎねがたおれています!」
麦わら帽子を被った今剣がぴょんこぴょんこと跳ね回り、その事態に手合わせ中だった蜻蛉切が気づいたのは御手杵が部屋に運び込まれてからのことだった。
「大袈裟なんだよ、槍が熱中症になるわけないだろ」
「あなたが槍ならば熱ければ溶ける。覚えがあるだろう」
「
…………
あんた、言うようになったな」
憮然として睨めつける御手杵に、口元だけで笑みを返す。そのうなじに氷を包んだ布を当てながら。伝わる冷気が気持ちよかったのかしかめっ面を続けていた御手杵はゆるりと表情を崩し、だが次の瞬間にはあわてて目を見開いた。
「絆されるところだった」
「ほだされればよいものを」
「こんなので、どうにかなるのかよ」
「なると言っているだろう。手合わせの後よく陸奥守殿に当ててもらっていたが、しばらくすれば確かに熱が引いた。あなたにも是非試してもらおうと」
「ばっっ
……
」
振り向いた御手杵が、蜻蛉切の端正な顔立ちと長い髪に隠された首の後ろを交互に見やる。そして拗ねた顔をするので、蜻蛉切はいよいよ愉しくなる。
「どうされた」
「どうもしてない」
「大人しく前を向いてくれ。氷が落ちる」
逆らいたいような顔をする癖に、大人しく前を向くのが可愛らしいのだ。首筋に広がるキーンと冷えたつめたさが思ったより心地よかったのだろう。
縁側にあぐらをかき、陽の落ちる庭を眺める御手杵の、頬から耳、首までがほんのりと赤く染まっている。薄い色素の柔い髪が蜻蛉切の指先をくすぐった。愛おしい槍だ。こんな熱い日に外に出すなんてまっぴらな。麦わら帽子では盾にもならない。厚みのある蔵の天井でも彼を守れはしなかったのだから。
酷く無防備な首筋を、やわく食んだ。冷えた首に熱い舌を塗りつけると、温度差に痛みすら感じた。
「あつっ」
御手杵が身震いする。抗おうとする腰を掴んで、腕の中に引き寄せた。やわらかな髪の海に鼻が沈む。じっとりと汗ばんだ中に、穏やかでほんのすこし甘い香りを嗅ぎ取って口元がゆるむ。敏感になっているのだろう。二、三度舌を這わすと「っひ、ん
…
」と御手杵が呻いた。
「な、なにやってるんだよ熱いんだけど」
「動かないでくだされ。氷が落ちる」
「氷なんてうそつけ
……
っうぁっ」
やめろってばあ、と泣きそうになる声を抑え、狼藉を繰り返してみる。陽射しが縁側まで迫っているのを見て、御手杵の大きな身体を片手ひとつで部屋の中へ引きずり込んだ。触れさせるわけにはいかないのだ。
昼間からあ? とわめく御手杵に覆いかぶさる、が。
「やらない」
「え、
……
しないのか」
「だが、首だけは貰っておこう」
「うぇっ、あー、なんだあんたそれが目的かよ
……
」
「盾になりはしないが、無いよりましだ」
「わかったよ
……
今度はちゃんと被るから
……
あーこんな暑いのに」
髪に隠れるほどの高さのところに、火の粉のような痕。満足そうに夕焼けの目を細める蜻蛉切に、御手杵はばか、と囁いた。
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