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かずわや
2015-07-26 21:41:09
1370文字
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【元主と刀ワンライ】いたずらな指先
第7回「好きなもの」結城秀康と御手杵くん。ひでやす×御手杵臭がするかもしれません。主が幸せになってくれればいいな、何か役に立てないかなと思う御手杵くんでした。
一時間越してます、すみません!
ワンライ 好きなもの
ひでやす×御手杵?
いたずらな指先
畦道をふたり並んで歩く。
子ども達が枝切れを振り回し、斬り合いの真似事をして遊んでいる。いつか父のような立派な武士になるのだと言う。
田んぼを見回し、御手杵は「秀康、」と近くに立つ男の名を呼んだ。今は村にある田んぼの視察の真っ最中だ。敷地内なら御手杵は本体から離れ、自由に動くことができたので、城から出るという秀康にひょこひょこついてきたのだった。
「なんだ?」
空中に返事をかえす秀康を、子どもたちが不思議そうな目で見やりながら駆けていく。御手杵は彼と彼の養父である晴朝以外には見えないのである。ちいさな背中を見守るように見送って、「あんたは誰かのような立派な武士になりたいのか」と声の調子を落として尋ねた。
「武士が嫌いか?」
「そーいうわけじゃないけど」
僅かに微笑む秀康を見て、御手杵は眉を寄せあからさまに不機嫌な顔をした。
「あんたの周りにいた武士は、あんたにとってあんまり良い人じゃなかっただろ」
不遇の連続の人生だった。畜生腹--双子として、忌み子として生まれ落ち、双子の兄弟は関ヶ原の合戦の後足を悪くして死去したと聞く。実父からは3歳まで相見えることも認められずにいた。上の兄徳川信康が切腹し、父の後継者として道が開かれるかと思ったが、豊臣秀吉との和解のため人質にされ、徳川家には戻れなくなり。
ここ結城家に身を落ち着けて、やっと「正しい家族」のような生活をしているという状況だった。
「あんたは誰の役にも立てなかった。否、立たせて貰えなかったよなあ」
「この世じゃたくさんある例のひとつだ。嘆いてもどうにもならぬ」
秀康が目を細める。
「あんたには好きなものってあんの」
棒切れを叩き合いきゃあきゃあと笑う子ども達を見ながら、ぼんやりと御手杵が訊いた。あまりにも不躾な問いに、秀康は面食らう。思わず歩きを止めて、まじまじと宙を--御手杵の顔を見た。肌の白い、整った顔立ちの端正な男は、眠そうな目をして秀康を見返す。
「お前は本当に
……
考えが読めん奴だな」
「槍だからなあ。で、あんの? あの子どもみたいにさ。あんたがこんな不遇な人生で見つけた、感じた、好きなもの、みたいな」
人の営みに興味なんてなさそうな顔をしていながら、実のところ、この得体の知れぬ妖怪は自分の主を心配しているのだ。秀康のように生きた子どもは多いに違いない。むしろそれより酷い生き方をした子どものほうが多いはずだ。それでも生き抜き、自分の主となった男を、槍に憑いたつくもがみは何よりも気にかけているのだった。
秀康はふふ、と含み笑う。
「そうだな
……
我が父は、晴朝様は尊敬している。それから武力と、女だな」
「げ」
歯をむいて笑う秀康に「あんたってやつは!」と御手杵は叫んだ。まあ人間だからな!それは仕方ないかもしんねーけど!
「女は俺じゃ用意できないだろぉ
……
」
「ああ、あともうひとつあった」
ずい、と眉間を指しながら。
「お前だ、」と秀康がずる賢く笑う。
一瞬ほうけた御手杵の眉間を、秀康の人差し指がすっと通った。言葉の意味を理解した御手杵の頰がみるみるうちにあかくなる。
「あ、あんたってやつはああぁっ!!」
羞恥に染まった叫び声はその男にしか聞こえない。
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