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かずわや
2015-06-27 23:11:14
1778文字
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【元主と刀ワンライ】追いたいのは「誰か」の夢ではない
今回は遅れずに参加できてよかったです!メッチャ強い主が誰かの家臣でいることに耐えられなかった蜻蛉さんのお話。捏造満載です。徳川四天王、徳川三傑、戦国最強と数々の名誉ある肩書きを持つ本多忠勝かっこよくてほんと好きです……
我が主、本多忠勝殿は勇猛果敢で武力に長け、誠に豪放な武士である。「徳川四天王」に数えられる豪傑で最強と名高く、自慢の主なのだが、少々頭が固かった。
「蜻蛉切」という名を与えられ、自我を得て忠勝殿のお目に見えるようになってから、己と忠勝殿はたびたび衝突をした。今思えば、主に仕えるのが武器だと言うのに、無礼なことをいろいろ言ったとすまなく思う。「口煩い武器だ」としきりに言いながら、忠勝殿は睨むように自分を見たものだった。それでも、老いても自分を離さないでいてくれたのだ。そのご恩を自分は決して忘れないし、かの人以上に本体を預けたいと思う人間はこの世にいないだろうと確信している。
さて、忠勝殿はその武勇を全国に轟かせていながら、本人は徳川家康という武将の家来の位置に甘んじていた。かつての自分はそれが面白くなかったのだ。
「それだけの力がありますならば、貴方も天下を取れるでしょうに。何故人の子に従うのです」
戦のない束の間のある日、自分は彼ににそう尋ねた。忠勝殿は丁寧に「蜻蛉切」の手入れをしていた。自分はそのすぐ側に控え、薄い紙を持って己を撫でる彼の浅黒く大きな手のひらを見つめていた。そのときにぽろりと口からこぼれた質問である。
常々思っていたことだ。忠勝殿のために振るわれんと、この身に命を与えられたときから。
己の不躾な質問に、彼は一瞬手を止める。そして、口元を笑みに歪めて「傲慢な槍だ」と呟いた。
穂先に吐息が触れてはいけない。忠勝殿は本体を優しく横たえ、己に振り返った。
「お前は、自分の主が誰かの家臣だと言うのが気に入らないのか?」
「
……
」
「誰もが誰かの家臣だ。家康様でさえ、織田に仕えていた身だった」
声を潜めて彼が言う。誰かに聞こえたら自分の正気が疑われてしまうと、かつて彼が笑いながら言ったのを思い出した。この蜻蛉切の姿は、忠勝殿以外の誰かの目には映らないのだ。
「ならば、尚更何故。幼少の頃より家康様に仕えているというのは存じております。だから逆らえぬと言うのですか? 貴方はご自分の手で天下を取りたいとは思わないのですか!」
膝に置いた拳に思わず力が入った。しかし、神力をあげて声を荒げたにも関わらず、彼は眉ひとつ動かさない。それどころか、神気を帯びた何かが彼から漏れ出て、自分の肌を焼いているような気さえした。
恐ろしいほどの悠然さ。そこがまた「最強」と言われる所以なのだろう。武器の付喪神とはいえ自分も神の一端だ。その存在に真正面から向かい合い、それでも狼狽えぬ姿に、自分は感動すら覚えてひしひし感じ入った。
だからこそ。
私は主の前に重々しく頭を垂れる。
「自分は貴方の夢を共に追いたいのです--貴方の『主』が見る夢ではなく」
他の誰でもない、本多忠勝の夢のために、蜻蛉切は振るわれたかった。
沈黙を経て、彼が同じことを繰り返し言う。先ほどよりも随分柔らかい声で。
「
……
お前は本当に傲慢な槍だ」
浅黒い手が真紅の髪をするりと撫でる。それだけで心の臓が跳ねる心地がするのは、基本的に人に愛されたいと思う「物」故の本能だろう。
目の前の主はただ呆れたように微笑んで、まるで年端もいかぬ幼子を見ているような顔をしていた。
「簡単なことだ。俺があの方に仕えるのは、俺の夢があの方の見る夢と同じだからに決まっている」
天下などいらない。戦のない太平の世を。
望んでいるのはそれだけだと、彼はそう厳かに言葉を紡ぐのだった。
「口を慎め、蜻蛉切。そして誇れ。我らが仕える主は、『戦国最強』と同じ夢を見ているのだと。それで満足できんか?」
「
……
いいえ。しかと、承りました」
「ははは、それならよい。それならよいのだ。まあ時には傲慢であれ、蜻蛉切。主の間違いを正し、導いていくのも家臣の大事な役目だからな」
赤子をあやすような口調で言われ、途端に自分が今犯した行動が恥ずかしくなる。体も顔も一気に火照った。それを見て、愛すべき主は今度こそ大口を開けて豪快に笑うのだった。
それから幾度も戦いに明け暮れた。自分はちいさなことでも彼に苦言を呈したが、彼も負けじと何度も注文をつけてきたからお互い様だ。そうしながら生きて、主と共に太平の世の夢を見ていたあの頃は、己にとって遥かに、何よりも幸せな時間だったと記しておく。
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