ぽふむん
2024-06-15 22:35:02
1960文字
Public ワンドロ
 

一人相撲


#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「祠」「雨雲」「帰り道」をお借りしました
無限城潜入失敗 囚われif

日頃説明が上手な人が語彙喪失する瞬間から得られる栄養!
もう少し何言ってんのあなた感があってもよ
かったかもw
このあと鬼化され、ネタバレしたら

エロいおしおきされちゃうかなあwww

いつ降り出してもおかしくない、そんな雨雲が垂れ込めている。
ひとけはない
ただ稲荷神社であることを示す、石造りの一対の狐。赤い鳥居。小さな祠がある。
そして傍らには地蔵。

その前に一面の藤の柄の中振袖の美女。
この世のものとは思えぬ美女が、一本の傘を大事そうに抱え佇む
琵琶鬼に頼み込み、懐かしい場所に飛ばしてもらった。
日が暮れた。
もうすぐあいつが追ってくる。

周りは真っ暗だ


───────────────

あれはいつだった

まだ女は人だった。
まだ五歳

姉は学校に行き、両親は仕事で

構ってくれる人もおらず
退屈で

草むらでひとりシロツメクサの花かんむりを作って遊んでいた

姉のように上手に出来ず
悔しくて

何度も編み直した

やっと上手に出来たと満足気に微笑んで
姉に見せてやろうと家路を急いだ


幼子のすること

道を間違えた
家とは逆にずんずん進み、知らない場所に

帰り道を見失い、幼子は途方にくれ、たちすくみ……

────────────

「はぁ…………降ってきますね」
女は独りごちた

その時だ

「しーのーぶちゃん、一人でお出かけしちゃ……めっ……じゃない」
軽薄にも聞こえる、穏やかなアルトの声。

来た

ツンとそっぽをむく。
そして……
「愛しいあの方と初めて会った場所です。
来るか分からりませんけどね。」

「へぇ……当てもないのに?」

童磨は知らない。
しのぶの待ち人は女の目の前にいる。
来るとわかっていて
妬いて欲しくて
焦がれて欲しくて

自分がかつてそうだったように
身を焦がして欲しい。

やられたんですもの……やり返します。

計画通り

案の定、童磨は唇を噛む

未知の感覚に戸惑う。
戸惑いながらも瞳を暗く煌めかせる。
「ソイツ……さがしてあげる」

(サガシダシテヤツザキニシテクッテヤル)

これが嫉妬という感情。

(アア、アタマガオカシクナリソウダ)


嫉妬という感情に苛まれている、恋い焦がれた愛しの君を見て、しのぶはほくそ笑んだ。


(ざまぁ見ろ……よくも私の心を盗みましたね。その報いですよ……)

「探してくださるんですか❤わぁ」

わざとらしく軽く喜んだように飛び跳ね、抱きついてみる。
ぽぉっと鬼の頬が染まる。
染まったが……すぐに真顔になった。

妬いている。
人の感情を散々観察し、読みといて来たはずの鬼が小娘の嘘に翻弄されている。

愉快だ。
滑稽だ。

「じゃあ、特徴ですが……
しばし言い淀む。
そして

「大きかった……ぶわぁーっと大きくて、冷たくて……でもあたたかいの。そして髪は白くてピカピカふわふわして、目はピカピカして」

そこまで言って、目の前の童磨がぽかんとしていることに気づき、首まで赤くなる

「あらヤダ……私としたことが……

愛しの君のことを語ろうとしたら、日頃説明上手と評された娘が、語彙を失った。
いや違う

血を被ったような豊かな白橡の髪
虹色の瞳
鬼だから
血鬼術の特性上もあり、冷たい体

でも

あたたかい身体

その情報を言わないように、愛しの君のことを表現しようとしたら、人間時代の友人が降臨した。

ああ、恋ってこんなふうになるんだ。言葉や理性を失って……

目の前の君は……しばしぽかんとしていたが

「つまり……大きな山猫かふくろう……かな……人型を保てないということは弱いね」

日頃ヘラヘラした鬼の大まじめな顔
「それとも変化できるのかな?変化した姿でしのぶちゃんをたぶらかし……女の子は大体その手の動物が……尚更……許せない」

嫉妬で歪む

ぽつり
ぽつり

雨が降ってきた

童磨はしのぶの抱えていた傘を奪い、しのぶを恭しく抱えあげ、さした。

相合傘と言うには少し違う

幼女のように抱き抱えられた
さぁ寺に帰ろう

「しのぶちゃん……俺にしとけよ……確実に俺の方が強い」

「強いか弱いかではありません」
ぷい
そっぽを向いてみせると 、ぎりりと鬼の歯ぎしりが聞こえた。
(目の前で食ってやる……その前に散々痛めつける……そんなことしたら、しのぶちゃん泣くかな……嫌われ……これ以上嫌われ……ても構わない。食ってやる)

美しい鬼は暗い嫉妬に囚われた

(捉えられはしましたが……本音はまだ見せません……妬いてください。自分に。一人相撲とか、滑稽ですね。上弦の弐ともあろうお方が)
しのぶは童磨に気取られぬようほくそ笑んだ。

うんと小さな小娘を抱き抱える腕
その胸……
見ず知らずの鬼に嫉妬して、悔しげに眉を寄せた顔。
水タバコと酒の香り


ああ……冷たくて

あたたかい

もっと妬け

滑稽な一人相撲を取り続けろ。