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すずかけあおい
2024-06-15 11:42:17
1207文字
Public
読み切り小話
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読み切り小話 岩崎×宮本
発泡酒を買おうとした受け(宮本)と、その受けの持つカゴにビールを入れる攻め(岩崎)、大学生です。
夕方になり肌寒くなってきた。朝晩の気温が低くて秋だなと感じる。昼間も、少し前までの猛暑が嘘のように過ごしやすくなった。
大学帰りにスーパーに寄って買い物をする。今日は簡単なものでいい。と言っても、いつも簡単なものなんだけど。がやがやと賑わう店内を歩き、卵がもうないので卵と、ウインナーが一割引きなのでそれもカゴに入れる。あとはいつもどおり簡単晩御飯用の野菜炒めに使う野菜と豚肉をカゴに入れてから、酒類コーナーへ。発泡酒を手に取り、カゴに入れようとしたら、なぜかカゴにビールが入れられた。
「
……
?」
カゴを間違えているのかと思い、すぐ隣に立つ男性を見ると。
「岩崎先輩
……
?」
「今日はお祝いだから発泡酒じゃなくてビールね」
大学の先輩が。
俺が手に持つ発泡酒を取り、棚に戻して、またビールをカゴに入れる。
「お祝いって、なにかありましたっけ」
「今日、俺の誕生日なんだ。祝ってよ」
ビールをカゴに入れながら、岩崎先輩はそう言う。
誕生日
……
?
「先輩ならお祝いしてくれる人、俺じゃなくてもたくさんいるでしょう?」
「可愛くないね」
「
……
」
確かに今の言葉は可愛くない。でも俺は、もともとがもともとなんだから、どう言おうと可愛くなんてならない。少し俯く。
「宮本に祝って欲しくて追いかけてきたんだけど。ふたりでお祝い、だめ?」
下から顔を覗き込まれ、どきりとする。頬が熱くなってきて慌てて隠すように顔を背ける。
「し、しょうがないですね
……
」
「やった」
誕生日なら、それなりにちゃんとしたものにしないと。今カゴに入っているものでは充分ではない。
「なにか食べたいものはありますか?」
「ウインナー入ってるからそれでいいよ」
誕生日なのに。もっとお祝いっぽくしなくていいのかな。
「ウインナーだけでいいんですか? お寿司とか買いますか?」
「いい。お寿司なんかより、もっと特別なことが他にあるから」
「
……
?」
「買うものもうなければ、レジ行こ」
促されて、ふたりでレジに向かう。店員さんに商品をスキャンしてもらう間、先輩は機嫌よく鼻歌を歌っている。どきどきしながら、気になっていたことを聞いてみる。
「ところで先輩って、誕生日四月じゃありませんでした?」
ぴたっと鼻歌が止まり、先輩が俺の顔をまた覗き込んでくる。
「すごいね。どうして知ってるの?」
「そ、それは
……
」
以前、先輩が友達と話していたのを聞いて、絶対忘れない、と覚えていたから。覚えていた理由は
――
。
「そのことを知ってて、なんで宮本は“ふたりでお祝い”に乗ってくれたの?」
「
……
それ、は
……
」
「十秒以内に答えないと、俺の都合のいいようにとるよ」
そんな
……
そんなの
……
。
……
ピッ
……
ピッ
……
店員さんが商品をスキャンする音が妙に大きく聞こえる。
俺はわざと答えなかった。
(終)
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