すずかけあおい
2024-06-15 11:00:56
1747文字
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読み切り小話 肉まん①健吾×時也

ふたりでひとつの肉まんを食べる高校生カップルの小話、攻めが健吾、受けが時也です。pixivに『小話まとめ』で投稿済。

健吾 けんごと一緒の学校帰り、コンビニに寄る。少しお腹が空いた。

「肉まん食べたい」
「俺も」

レジに並ぶと、俺のうしろに健吾も並んだ。肉まんのケースにはちょうどふたつの肉まんが並んでいる。でも、俺の前の人が肉まんをひとつ買ってしまった。ケース内には肉まんがひとつしかなくて健吾と顔を見合わせる。

時也 ときやが買って」
「ううん。健吾が」
「じゃあ、ひとつ買ってふたりで食べよう」
「そうしよっか」

健吾が買って、半分の代金を渡す。コンビニを出て、公園で食べようということになり、近くの公園に行くと誰もいない。一番近いベンチに並んで座り、健吾が持つほかほかの肉まんをふたりで見つめる。

「おいしそう」
「うん」
「時也から食べて」
「ううん。健吾から」

ふたりで譲り合うけど、これじゃ肉まんが冷めてしまう。もう一度肉まんを見つめる。

「せーので食べようか」
「そうしよう」

健吾の言葉に乗っかる。

「せーの」

健吾の掛け声に合わせてふたりで同時に肉まんに顔を寄せる。

コツン

おでことおでこがぶつかった。
健吾と顔を見合わせる。ちょっと恥ずかしい。頬が熱くなってきて、視線をうろうろさせてしまう。

「や、やっぱり健吾から食べて……
「いや、時也から……

目が合わせられない。でも、このままじゃ本当に肉まんが冷めてしまう。どうしよう。

「じゃ、じゃあ、ゆっくり顔を近づける?」
「そうだね。そうしようか」

俺の言葉に、健吾が頷いてくれる。それで肉まんにゆっくり顔を近づけていくけれど、健吾の端正な顔がどんどん近づいてきて……なんだかこれって、キスをするときみたいですごく恥ずかしい……

……時也」
「な、なに?」
「これ、恥ずかしくない?」
「めちゃくちゃ恥ずかしい」

顔から火が出そうなくらいだ。

……目、閉じようか」

健吾が瞼を下ろす。完全にキス顔。

「それ、もっと恥ずかしい……!」

顔を離して頬を手で押さえると、ぽっぽしている。健吾も同じように頬を染めて俺を見ている。

「どうしようか」
「うん……やっぱり健吾が食べて」
「いや、時也が食べてよ」
「そんなことできないよ」
「でも」
「おい、バカップル!」

突然会話を遮る声が。
声のしたほうを見ると、少し離れたところで友人の伊達 だて江藤 えとうが呆れ顔で俺たちを見ている。

「ふたつに分けて食べろよ」
「あ……
「そうか。時也、そうすればよかったんだよ」

そっか、ふたつに分けるのか……全然思いつかなかった。江藤の言葉のとおりに健吾が肉まんをふたつに分けて、半分を俺に差し出すので受け取る。

「いつ気がつくかと思って江藤と見てたけど、いつまで経ってもイチャイチャイチャイチャ。我慢できなくて声かけちまったじゃねえか」

伊達がそう言ってため息を吐く。見られてたんだ……恥ずかしい。健吾を見ると、健吾も頬を赤くしている。

「だったら早く教えてよ……

肉まんを食べながら文句を言うと、伊達が江藤を見る。

「だってさ、江藤」
「なんだよ」

俺たちのことバカップルとか言いながら、自分たちだってイチャついてるし。まあ、仲よくしているのはいいことだけど。

「いつからそこにいたの?」

先に肉まんを食べ終えた健吾が聞くと、伊達と江藤が口角を少し上げて顔を見合わせる。

「いつだっけ?」
「ふたりがコンビニから出てきたところを伊達が見つけて、後をつけたんじゃなかった?」

なんだそれ……最初から全部見てたんじゃん。めちゃくちゃ恥ずかしい……。更に頬が熱くなる。

「ま、とりあえず一件落着?」

伊達が、健吾と俺の肩をぽんぽんと叩く。

「おいしかったね、時也」
「うん」

微笑みかけられてどきりとする。健吾の笑顔はいつでも優しくて、心が温かくなる。

「じゃあ解散」

なんで伊達が仕切ってるんだろう。わからないけど、まあいいや。健吾と俺、伊達と江藤に分かれて公園を後にする。少し風が出てきた。

「時也、手繋ごうか」
「うん」

人通りがないから、指を絡めて手を繋ぐ。
色々恥ずかしかったけど、ひとつの肉まんがおいしかった。



(終)