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すずかけあおい
2024-06-15 10:57:09
1835文字
Public
読み切り小話
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読み切り小話 裕一×篤
手を繋ぎたいけど素直になれない受け(篤)と、そんな受けを愛でる攻め(裕一)、高校生・幼馴染で恋人です。pixivで『小話まとめ』で投稿済。
「
……
最近、朝寒いくらい」
ぽつりと言うと、隣を歩いている
裕一
ゆういち
がこちらを見る。
「もう秋だし、しょうがないんじゃない?」
「そうだけど
……
」
「寒いのそんなに苦手だったっけ」
「
……
」
そうじゃない。手を伸ばして裕一の手を握ろうとするけれど、すぐにやめる。それは俺らしくない。俺はもっとひねくれていて、素直に手を繋いだりしなくて、裕一が手を繋いできたら「なにすんだ」くらい言っちゃったりするんだ。
……
でも、手を繋ぎたいなと思うときだってある。それを素直に言えない。
見た目が地味なうえにひねくれているって最悪だな、とため息。昔から変わらない。優しくてかっこいい幼馴染の裕一、平凡で素直じゃない俺。「そんな
篤
あつし
がいい」と言ってくれた裕一は、今でもすごいと思う。ちら、とその裕一を見ると、にこにこしながら俺を見ている。
「
……
駅まであとどのくらいだっけ」
「どうしたの、篤。ここからなら、あと五分くらいだよ。毎日通ってるんだからわかるだろ?」
「
……
うん」
そうじゃなくて! 駅までまだあるから、ちょっとくらいなら手を繋げるよって意味だったんだよ、今のは! 気づいてよ!
……
いや、すぐに気づかれても恥ずかしい。面倒くさい奴だな、俺。裕一は、またにこにこして俺を見ている。そのにこにこはなんだ。さっきから、どうしてそんなに機嫌がいいんだ。
「あー、なんか手が冷えるかも」
手をぶらぶらさせてみる。これでどうだ。でも、裕一は更に綺麗な微笑みを見せるだけ。その微笑みは反則だ。美しすぎて目がチカチカする。
そしてそうじゃない。俺は手が空いていて、しかも手が冷たいぞってことをアピールしているんであって、微笑ましく見て欲しかったわけじゃない。
……
だめだ。どうしたら伝わるんだ。はっきり言えばいいんだけど、「手を繋ぎたい」なんて、そんな可愛い言葉がひねくれ者の俺の口からするっと出るわけがない。諦めるしかないのか。
「もう終わり?」
「え?」
「次はどうやって俺を誘うのかなって思って」
「さそっ
……
」
誘ってなんかない!!
叫びそうになったけれど、言葉を呑み込んだ。こんなところで叫んでいい言葉じゃないし、確かに俺は「手を繋ぎたい」と言葉に出さずに誘っていた。でも。
「
……
気づいてたの?」
「気づくよ」
「いつから?」
「『最近、朝寒いくらい』から」
そんな初めから? だったらなんで応えてくれなかったんだ。軽く睨みつけると、髪をくしゃくしゃっと撫でられた。
「だって、最初から手を開いたり閉じたりしながら、どう見ても手を繋ぎたいって顔してたし。あれじゃすぐ気づくって」
「
……
」
そんなことしてたっけ。まさか、だから裕一はずっとにこにこしてた?
……
頬が燃えそうなくらいに熱くなってきた。逃げよう、そうしよう。
と思ったら通学バッグを掴まれて逃げられなかった。
「俺は篤のバッグを掴んで駅まで行けばいいの?」
「
……
」
それは嫌だ。だって俺は
……
。
「手、繋ぐんだろ?」
「
…………
うん」
手を差し出され、そっと手を重ねると、ぎゅっと握ってくれた。温かい。
「まだ寒い?」
「
……
まだ寒い」
ひねくれ者はなかなか素直になれない。そんな自分が気に入らなくて、むっとしてしまう。
「どうしたら、あったかくなるかな」
それでも優しい裕一と手を繋いで歩いて、優しい笑顔を盗み見て
……
バレて。頬が熱い。
「
……
明日もこうしてくれたら
……
あったかい、かも」
小さく小さく呟くように言って、裕一をちらりと見る。目が合った。なんて返って来るだろう、笑われたらどうしよう
……
。思わず俯いてそんなことをぐるぐる考えていたら、繋いだ手がぎゅっと強く握られた。顔を上げて隣を見る。
「それいいな。ずっとこうしていよう」
すごく嬉しそう。俺が素直になると、こんなに幸せそうな表情をするのか。
……
いや、そのこと知ってるよな、俺。知ってて素直になれてない。もっと素直になったほうがいいんじゃないか。ううん、素直になりたい。そうしたら、いつも裕一の幸せな笑顔が見られる。素直じゃない俺にもたくさん笑顔を見せてくれるんだから、素直な俺にはもっともっと溢れるような笑顔を見せてくれる。俺の心臓が止まってしまうくらいの破壊力抜群な、すごい笑顔。
「裕一」
「なに?」
「
……
なんでもない」
明日は俺から手を繋ぐから。
(終)
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