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kaede
2024-06-14 12:15:09
2645文字
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コ⚪︎ドー⚪︎を買ってきた一彩くんにギョッとなるニキのはなし
ニキひい
⚠️えっちなことはしてませんが品があるかと言ったらないです
「いつ行っても何でも買えるなんて、コンビニはすごいね」
「ないものもありますけどね
……
あの、弟さん」
「二十四時間営業する意味はよくわからないけど
……
商品は逃げないのだから、開店時間まで待てばいいのに」
「いや、夜中に急におでんが食べたくなった時とかは、便利じゃないすか?
……
というか弟さん」
「おでんは売っていなかったよ」
「まだ時期じゃないっすからね。じゃなくて、ちょっといいすか? 弟さん」
「ウム?」
「これ、弟さんが買ってきたんすか?」
「ウム!」
小さな子供に初めて一人でお使いさせるやつよろしく、見事ミッションをこなした弟さんが、褒めてほしいと言わんばかりに、にこにこ笑う。
いや、僕はこんな買い物頼んでないですけどっていうか頼むわけないじゃないですか。こんなこと燐音くんに知られたら褒めるどころの話じゃなくて殺されかねないっすよ
……
僕が
……
。
「えーっと
……
」
うん、僕の見間違い、早合点かもしれない。最近はシンプルなパッケージのお菓子も見かけたりしますし
……
。
「って、どこからどう見てもコンドームっすよね!?」
「そうだよ。椎名さんの好きなやつだよね」
買い物に行ったら僕の好物を見つけたのでついでに買ってきました、みたいなノリで言わないでほしい。だいたい別に好きとかそういうのは特になくて、使い心地に不満はないし君も問題ないようだしいちいち吟味して選ぶほどのものでもないから、最初に買ったものを惰性で買い続けているだけで
……
。
「
……
もしかして間違っていたかな」
あー
……
。そんな不安そうな顔しないでほしいっす。僕はその顔にめっぽう弱いんすから。
「間違ってないっすよ」
ほら、本当なら苦言なり何なり呈するところなのに、君の頭を撫でちゃってるじゃないすか。
褒められてすっかりご満悦になった弟さんが僕の腕の中に飛び込んできて、それで僕はもう気分的にはすっかり負けてしまっていたわけだけれど。
でも、言うべきことはちゃんと言わないといけない。それが年長者として、そして彼を大事に思っている恋人としての責任だ。
「でもね、君はアイドルなんすから、人目につきやすい場所で不用意にこういうものを買っちゃダメっすよ」
「不用意? どうして?」
そんなあどけない顔で僕を見つめてもダメっすよ。もう僕は負けませんから。
「恋人がいるとか、性にだらしがないとか、変な噂を立てられた挙句にないことないことを週刊誌にでっち上げられたらどうするんすか」
「恋人はいるし、これはマナーを守るための道具だから、椎名さんの言い分は道理が通らないよ」
「アイドルに恋とかセックスは御法度なんすよ」
「でも僕も椎名さんもアイドルだけど、どちらもしているよね」
「だから
……
」
普段は頭の回転が早い弟さんに感心することばかりだけれど、せっかくの美点も、こんな時には厄介でしかない。というか、弟さんに理屈で訴えようとしたのが間違いだった。
「もしも弟さんに変な噂が立って、アイドルでいられなくなる、なんてことになったら、僕が嫌なんす。普段の君も、アイドルの君も、僕にとってはどちらも大切だし、愛してるんすから」
「椎名さん
……
」
僕の名前をしっとりとした声で口にして、それきり弟さんが押し黙る。
最初から、こうするべきだったんす。
情緒に疎いところのある弟さんでも、僕の心情を盾に訴えれば聞き入れてくれる。
僕と彼は、それが成立する間柄なのだから。
「だから、リスクを冒してまで弟さんが用意する必要はないんすよ。こういうのは僕が買ってきますから」
「でも、椎名さんだってアイドルだよ?」
しまった。
弟さんに聞き入れてもらえたと思ってすっかり油断していた。こんな言い方じゃまた、言いくるめられてしまう。仕方ないっすよ。僕は学校のお勉強もろくにできなかった馬鹿なんすから。
いやいや、開き直ってる場合じゃないっす。
「僕はいいんすよ。外を歩いてても気づかれたことなんてほとんどありませんし。オーラがないんすよね」
「そんなことないよ!」
そんなことを言わないで、と言いたげな、必死な顔をして、弟さんが言う。僕が自分を卑下していると思ったのかもしれない。
事実なんすけどね
……
。
「いや、別に気にしてないんで大丈夫っすよ。自分でも地味な顔立ちだってのはわかってますし、燐音くんたちみたいにリアルとかSNSとかで騒がれてもあとが面倒なだけですし、むしろプライベートを邪魔される方が困るんで」
「そうじゃなくて」
僕を必死に見つめる弟さんの眼差しはいつしか、熱っぽく揺れていた。
「僕を含めて椎名さんのことを応援しているファンはたくさんいるし、椎名さんがアイドルを続けられなくなるようなことになったら、ファンの人も、僕も、とても悲しいよ。見てくれている全員を笑顔でおもてなしして、最高のパフォーマンスでお腹いっぱいにして、幸せな気持ちにしてくれる椎名さんのことが、僕は大好きだから」
「
……
そ、そうすか」
簡単な相槌を打つのに、少し、覚悟が必要だった。
アイドルとしての僕について、面と向かって語られる経験はなかったから、びっくりというか
……
少し、いや、とても、照れくさい。
でも。
「
……
ありがとうございます。弟さんにファンでいてもらえるなんて、アイドル冥利に尽きるっす」
「ウム! もちろん恋人としても愛してるよ!」
「なはは
……
ありがとうございます」
相手への好意をまっすぐ口にできる弟さんが眩しくて、たまに目が眩んでしまうけれど。
でも、君のそういう、飾らないからこそ嘘のない言葉を伝えてくれるところが、僕はとても好きですよ。
「でもそうなると、僕も椎名さんもコンドームを買えなくなってしまったね
……
これからどうしよう」
「あ、その話、まだ続いてたんすね」
「僕としては、なくても構わないのだけれど」
「いやいやそれはダメっすよ! 最後の砦なんで!」
「砦?」
そんなわけで。
うやむやのうちに話を終わらせることを許してくれなかった弟さんと、その後どうしたかというと。
「へぇ、いろんな色があるんだね
……
これはどうして味がついてるんだろう。こっちはつぶつぶしてる
……
どうして? 椎名さん」
「なはは
……
なんででしょうねぇ
……
」
いい考えだと思ったんすけど。
ネット通販で一緒に買おう、という提案は軽率だったかもしれないっす。
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