【いずれ】

『B'ASH』現行未通過×

アマヤメの炎

同じ顔を前にしても、不思議と頭は冷えていた。心の内は酷く凪いで、アッサリ「彼はツバタではない」と勝手に結論を出した。そんな筈はない、ツバタ以外に自分と同じ顔をした人間など知らない。彼はツバタで、クイーンという諸悪。そう考えるのが普通なのに。

去り際に名前をアヤメと呼ばれなかった。
たったそれだけで、自分の身体をまた憎悪の炎が焦がした。淡々と燃えていた灼熱は大きく膨れ上がり、アレらを矛先と認識した。


複雑な事情があって、ツバタはこんなことをしているのかもしれない。だとしたら何故、オレに話さなかった? オレたちは双子で、限りなく近しい存在だったのに。
ツバタは生きていた、それは喜ばしい。だが隣の男は誰だ? オマエの隣にはいつもオレが居たのに。オレを捨てたのか? オレはオマエにも矛を向けなければならないのか?
いや、弟に酷いことなどできない。なら誰がこの炎を受け止めてくれるんだ。この怒りは、哀しみは、何に向ければいいんだ。
オレは、何に、復讐すれば────


ごぅごぅ燃えるごぅごぅ燃える
回答を求める求道心すらも、怨讐に焚べられ灰になる。塵芥すらも残さず、オレの身の内は簡単に崩れていく。視界が広がり、聴覚が戻ってくる。

そうだ、彼がツバタであろうとなかろうと・・・・・・・・・・・・・関係ない。
自分は復讐鬼だ。怒りのままに炎を纏い、哀しみのままに火へ飛び込み、憎しみのままに手を振り下ろす。それしか方法はない。菖蒲は片割れの杜若を失った、それだけで菖蒲が枯れて薪になる理由は十分にある。

現状においてまず成すべきことは、他の命を救うこと。傍にいる同僚を支え、民を助けること。経過は重要じゃない。結末だけを変えたくないだけ。ならば今は、消防士としての仕事を成そう。




いずれ菖蒲か杜若。しかし杜若は既に折れた。
ならば遺された菖蒲も、いずれ同じく折れるだろう。

灰になれ、そして復讐を果たせ。
希望すらも焚べ、怨讐の限りを尽くすのだ。