溶けかけ。
2024-06-11 00:40:19
2189文字
Public ほぼ日刊
 

ハッピーエンドのその日まで、

カゲ◯ロパロディのヌフです。
ヌフ要素もカ◯プロ要素も薄めです。

 ああ、これで何度目なんだろう?

 パンッという軽い音と共に辺り一面が真っ赤に染まる。

 赤。緋。朱。

 あかは嫌いだ。
 いつだって、僕の大切なものを奪っていくから。

「フォカロルス……ヌヴィレット……ナヴィア……クロリンデ……

 パンッと足を撃たれて倒れ込む。今回は何が駄目だった……?考えながら、彼らの元へ匍匐前進で進む。黒いブーツが僕の手を踏みつけた。

「っがあ…………っあ……!」

 顔を上げる。銃口越しには醜く笑うリオセスリがいた。

「今度は、リオセスリ……なんだね……

「久しぶりだなぁ……『焼き付ける』」

 こいつは確か、『冴える』だったかな。何度も何度も宿主を変えてはこうやって僕たちを殺しにやってくる。

 ――――その目的は『カゲロウデイズ』を起こすため。

「ふふっ……はははっ……

「気持ち悪いな」

 ごっ、という音に合わせて体が宙を舞った。

「まだ生きてるのか」

 銃口が頭に突きつけられる。いいだろう……どうせまた、ループはするんだ。

「僕は絶対にキミを赦さない……いつか必ず、キミを殺してやるっ……

「ああそうかよ……じゃあな」

 パンッと銃声が鳴る。そこで意識が途絶えた。





「はっ……!はっ……はっ……ははっ……また、か……

 見慣れた天井に、いつもの日付。

 ああ、また戻ったんだ、とすぐに理解した。
 いつもの癖で時計に目をやれば、まだ午前2時を少し回ったばかりだった。

 (水でも飲もう……)

 起き上がれば、寝巻きがじっとりと湿り気を帯びて重くなっているのが分かる。

「ああ……着替えなきゃ……いや、シャワーを浴びようかな……

 タンスから着替え一式を取り出して、部屋を出る。
 誰もいない共有スペースを常夜灯の灯りを頼りに進む。
 
「?」

 ふと、何かの物音が聞こえて耳を澄ませる。えっ、おばけとかだったらやめて欲しい。僕、怖いの苦手なんだから。でも、泥棒だったら――――

 フリーナは近くにあったバットを掴むと忍び足で音のする方――――キッチンへと進む。もし、みんなに害を加える人間だとしたら、僕が守らなくては。
 なけなしの勇気を振り絞り、バットを持つ手に力を込める。

「おりゃーーーー!」

 意を決して、薄暗いキッチンの床に屈んでいる人影に殴りかかる。

……!?」

 人影が半歩避けた。
 外してしまった!追撃をしなくては!フリーナが二撃目を用意しようとしたその時、人影がフリーナに襲いかかった。

「離せ!この泥棒め!」

 ジタバタと暴れて、拘束を抜けようとするフリーナの耳に聞き覚えのある声が届いた。

「フリーナ!落ち着け!私だ!」

 ぎゅっと抱き締められて、平静を取り戻す。聞き慣れた低音ボイスは幼馴染のヌヴィレットの声だ。

……ヌヴィレット…………?」

「そうだ……?私が分かるか……?」

「良かったぁ……

 パチン、と音がして電気が点く。

「全然良くないよ……こんな夜中に大声を出したり、抱き合っていたり……説明してもらえるかな?ヌヴィレット、フリーナ」

 二人が壊れたマシナリーのように声のする方へと顔を向ければ、仁王立ちをするフォカロルスがいた。

「フォカロルス……

 ヌヴィレットとフリーナ、二人の声がハーモニーを奏でた。








「ぷっ……あはははは!」

「わ、笑わないでくれよ……!」

 一連の話を聞いたフォカロルスはソファの上で笑い転げた。

「ふふ……ごめん、ごめん。まさか、泥棒と間違えられたなんて……ぷっ……だめだ、まだ面白い……

 けらけらと笑うフォカロルスにフリーナは頬を染める。ループ初日で気が立っていたとは言え、ヌヴィレットに殴りかかったのは事実である以上、言い逃れはできない。

「だからいつも行っているだろう?電気をつけろと」

 ヌヴィレットが呆れた顔をしながらフリーナに言った。キミがつけていなかったのが悪いんじゃないか!と内心思ったが口には出さなかった。

「はぁ、面白かった……まだ朝じゃないし、寝なおして来ようかな?」

「では、私も寝るとしよう……

 フォカロルスの言葉にヌヴィレットも頷くと二人同時に立ち上がり部屋へと向かう。

……フリーナは寝ないの?」

 部屋に入る前に二人が僕に振り返る。

「ううん。寝るよ。水を飲んだらね」

 二人に見えるように、四分の一ほど残っているグラスの水を揺らす。もう、シャワーは諦めて起きてからにしよう。

「そう?じゃあ……お休み、フリーナ、ヌヴィレット」

 フォカロルスが欠伸を噛み殺しながら挨拶をした。

「ああ、お休み。フォカロルス、フリーナ」

 二人の挨拶に僕も、お休み、と返して、扉が閉まるのを見守った。
 
 緊張が解けた途端に眠気と疲労が同時にやってきて、ソファに凭れかかる。

 目の上に腕を置き、目を閉じたら幾度となく繰り返した光景を再生する。――――あんな悲劇、もう見たくない。

「僕、頑張るよ……今度こそ、みんなを守るから……

 
 じわじわと重くなる体。
 
 迫りくる眠気に逆らえず、フリーナはゆっくりと意識を手放した。