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るいざき
2024-06-09 02:25:30
1567文字
Public
AC6_ラス6
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そらにねがいを ラス6♀
レイヴンがドレス繕ってるのを眺めてるラスティの話
濃紺の天鵞絨が切り裂かれる。夜闇の様に深い青には滑らかな光沢があり、それは銀河や星雲を思い起こさせた。
独立傭兵レイヴンは今日の暇に遺品整理をしていた。これまではそうする隙もなくルビコンの守護を請け負う彼女は、相続したAC輸送ヘリはおろか主人の部屋ひとつとして向き合える時間が無かった。
……
向き合う勇気が無かったとも、彼女は独白している。
シャキ、シャキ、と裁断されているのは、そんな遺留品のトランクから見つかった一着のドレスだ。男の手持ちから女物、かつてのハンドラー・ウォルターには想い人でも居たか。しかしその丈や造りは成人女性の平均身長には及ばない、少女向けのロングワンピースであった。
レイヴンは服が好きだ。勝手に私の服をクローゼットから見繕っては着ていく。特に文句を言うつもりは無いし、むしろほっそりとして長身な彼女が男物(それも私の)を纏う姿は格好良かったので、喜んで衣服提供につとめている。デニムパンツに男物、あるいは機能性重視のパイロットスーツやプロトスーツを身につける彼女は美しかったが、そのワンピースを試着した彼女は、そう、あまりにも──。
「かわいかったなぁ
……
」
『つまんなくないですか? 繕ってるとこ見るなんて』
「全くつまらなくないなぁ」
ふぅん、と手元から一切視線を外さないレイヴンの鼻梁からその先の天鵞絨までを眺める。ACのアセンブルや整備と変わらぬほど繊細な作業だ、それを天下一品の手腕が手ずから鋏と針糸を取り一着の衣装をリビルドしている。
端切れは無駄にせずリボンとなるように整えられ、フロントデザインは新たに手を加えられ彼女のボディラインを映えさせるような誂えとなる。令嬢向けサイズのスカートは彼女のふくらはぎ丈程だったので、そのままの姿だ。
ミシンが心地よいリズムを刻む。ガレージにある彼女の自室にあったよく分からないものはこうして使うのだな、とその手元にまた見蕩れていると、すっと糸を引き出して小さな鋏で切り取られた。
『すこし手伝ってください』
さっさと躊躇いもなく上着からブラまで外し下着一枚となった彼女は、二枚重ね程のアンダースカートを履く(パニエと言ったか)。そうして星闇のドレスに脚を入れると、その背に垂れ下がるリボンを委ねられた。
「あんまり綺麗には結べないぞ」
『え、ダメです。ちゃんと綺麗に結んでください』
これはまた難儀な依頼だ。しかしあのレイヴンから直々の依頼なのだから。「了解した」と意気込み、彼女ほど繊細な造りではない手指の全身全霊を込めて手触りの良いリボンを手に取る。私のセンスと彼女の感性が噛み合うかは知らないが、今回は縦結びにもならずに綺麗な蝶々結びが私の指から生まれる。
「
……
おお」
少しばかりこちらを振り向く美人。脊椎端子の銀色の並びが全て見えるバックショット、雪の肌を包む濃紺のコントラスト。全てが調和した姿がそこに顕現した。
『どうでしょう』
「いや、すごい
……
わあ
……
」
口許を手で覆い、少し脚を引いて全景を見る。くるりとターンするとスカートの裾からパニエのレースが覗き、ふわりと揺れる様に釘付けとなる。正面はガラ空きの背中とは相対して胸元までを覆っているが、むしろそれが秘められた肌の想像を掻き立てるようで美しかった。
『気に入っていただけたようで良かったです』
ふんわりと微笑むレイヴンはあまり見たことが無い。そのままでは袖を通せない遺品が息を吹き返したのだ、それはきっと無上の歓びだろう。
「では、お嬢様。お手をどうぞ」
『ふっ、ほんとに気に入ったんですね』
裸足のワルツ、音楽もなく互いの気のままに身を委ねる。
このつま先とドレスに見合う靴は私が誂えよう、それまでは。
父よどうか、この娘を連れ去るな。
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