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mikagami3
2022-03-31 23:19:32
1853文字
Public
エスコン6 イリタリ
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我が人生よ、我が薔薇よ
イリタリ吸血鬼パロ。ほんのりゲーム本編時空の匂わせあり。イリヤが吸血鬼で、すでに何度もタリズマン(うち設定でエドワード)と何度も出会って、死別して、探している。
「そろそろ年度末だけれど」
黒髪の偉丈夫はそう切り出した。
「人事異動の辞令は出たのかい?」
「出たけど
……
俺ならともかく、お前が気にするんだ?」
心底不思議そうに首を傾げる。
銀色の髪が、午後の日の光を集めてキラキラと煌めいた。
印象派の画家たちもこれほどの光は描けまい、とひとり胸中で賞賛して、イリヤは珈琲を一口含んだ。
カップを置いて、一呼吸。殊更にっこりと笑みを深めて、目の前の小柄な青年に優しく囁く。
「転勤なら、引っ越しの準備をしないとね」
「
……
俺の異動はないよ。だいじょーぶ」
僅かに目元を朱に染めて、ロイヤルブルーの視線を逸らした。
目の前の吸血鬼に、どうも調子を崩されてしまうのがエドワードの常だった。
陽の光が燦燦と降り注ぐ、海岸沿いのカフェテラス。
向かい合う男の、撫でつけた黒髪の僅かな後れ毛海風に揺れて、ポートレート写真のようだとエドワードは思う。
それなのに、この目の前の男は、自身を吸血鬼なのだと言う。
(こんな太陽の下で堂々と出歩いて何を言ってるんだ、と言いたいところだけどよ)
無意識に、エドワードは首筋を撫でる。
その仕草に気づいたイリヤがふっ、と一瞬だけ嬉しそうに笑った。
しかしすぐに居住まいを正し、真剣な表情でエドワードの瞳を見つめる。
「それならよかった。遠距離恋愛もまた楽しいけれど、やはり寂しさは拭えないから」
「
……
ぐぅ」
「うん?」
「嬉しさと恥ずかしさが混ざった音」
「恥ずかしがらずとも、素直に嬉しがってほしいよ?俺は」
「無理」
「強情だね」
ふるふるっと首を横に振るエドワードに微笑みを返して、テーブルに軽く頬杖をついた。
愛らしい顔を眺めながら、カップを手に取る。
「君が遠くに行ってしまうかと思うと、とても寂しいよ。だから、今年は異動が無くて良かった。まあ、追いかけるけどね」
「
……
お前こそ」
消え入りそうな声を、愛しい恋人の涙を堪えた声を、吸血鬼の耳は聞き逃さない。
すっと笑みを消して、背筋を伸ばした。
真っ直ぐな視線を注がれたエドワードは一瞬たじろいだが、深く息を吸って、今度はきちんと言葉を投げた。
「俺を置いていくんじゃ、ないか?」
「
……
いいや」
まずは否定をして、彼は薄い灰色の目を閉じた。脳裏に過る映像を掻き消すために意識を研ぎ澄ませる。
千切れる鋼の翼。空に舞い上がる鮮血の涙。大地に吸い込まれる身体。
今の《彼》には不要な記憶。しかし、目の前の恋人の濡れたサファイアは、恐らく無意識にこの記憶と繋がっている。
であるなら、彼は笑みを浮かべなければならない。
あの記憶は、恋の始まりでもあるのだから。
「《今の俺》は、何があっても、見送る立場だ。そして、見届けるよ。君を。だから、最後までいる。いさせて、欲しい」
いずれ必ず訪れる自身の最期に思い至ったのだろう。エドワードは痛みを我慢するように表情を歪めた。
それすらも愛おしいとイリヤは笑い、右手の指先で、ふわりとエドワードの握りこぶしに触れる。微かな震えが、止まる。
「
…
髪に触れても?」
「
……
うん」
「ありがとう」
小さく頷く彼に礼を言ってから、イリヤは優しく銀の髪を撫でた。
愛でるように、囁くように、繋ぎとめるように。
「何度でも。君に出会いたい。出会って、見届けて、見送りたい。この身が朽ちるまで何度でも、何百年でも。人の姿をした化け物の特権さ」
「
……
そんなこと、言うなよ」
「何故?」
「化け物って言い方、嫌だ。なんか
……
俺の、大事な人をさ、貶められた気がする。そこら辺の行儀の悪い奴らと一緒くたにされた気がする。だから嫌だ。自虐だとしても嫌だ」
「
………
君、偶にすごい爆弾を落とすね」
「お前に言われたくねえけど!?」
羞恥で顔を真っ赤にして、声を張り上げるエドワードがどうしても、この上なく愛しくて、まだまくし立てる愛らしい唇を塞いだ。
「むっ!? お前、ばかっ、こんなとこで」
「認識阻害の魔術があるから大丈夫」
「そういう問題じゃない!」
「ありがとう」
人差し指を押し付けて、唇を縫い留めるように抑える。
ぱちくりと瞬くサファイアはやはり美しく、身を焦がすほどだ。
「君の大事な人になれて、とても嬉しいよ。エディ」
「
……
ぐう
…
っ
…
」
呻いたきり黙ったエドワードに、イリヤはもう一度口づけを落とした。
「君と何度でも出会うために、俺はこの《
不老不死
生命
》を貰ったんだ」
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