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mikagami3
2022-03-01 23:13:02
5981文字
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エスコンZERO ピクサイ
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【甘える猫は夢でしか会えない】
夢オチ。猫ちゃんになったサイファーと、戸惑いながらも可愛い可愛いとめろめろになっているピクシー。終盤ちょっとだけえっち。
べろんべろんに酔っぱらって、呆れた相棒に見放されたことまでは、ピクシーも覚えていた。
なんて酷いんだと思わなくもなかったが、家主の帰りを待っていたというのに酔っていては仕方ないことだ。
何とか自力で、あてがわれている部屋まで行き、ベッドに辿り着いた、らしい。
不思議なことに二日酔いの頭痛もない。
あの状態で、よくもまぁ床で寝落ちせずに済んだものだと思いながら寝返りを打つ。
「みゃ」
同じ枕で並ぶように、白い猫が寝そべっていた。
「
……
またサイファーが連れ込んだのか?」
年齢を重ねてお人好しが輪をかけて酷くなった相棒
――
この家の家主でもあるサイファーだが、野良猫野良犬その他動物を見つけては保護するところがある。
たいがいはその日のうちに然るべき施設・機関に届け出るのだが、稀に間に合わない事もあり、そういう時は自室で保護していた。
たまに抜け出して家の中を闊歩することもあるが、だいたいは大人しい。
そして、今回の様にピクシーのベッドに我が物顔で寝そべっているのは、今回が初めての珍事だった。
「にゃん!にゃにゃ!」
「
……
すまんな。何もわからん
……
お前、どこかで会ったことあるか?」
「みゃん!」
ゴロゴロゴロ
…
と喉が鳴る。
ひんやりとした淡い青の目。足を内側に畳んでいるが、体長は長そうに見える。
白だと思った体毛は薄い金色で、長毛種よりは短いが、短毛種よりは毛足が長い。耳はピンと立った三角で、真っ直ぐな長い尻尾がゆらり、ゆらりと優雅に揺れた。
じっと目を見ると、大きな青い目がゆぅっくりと閉じて、またゆっくりと開いた。
そうして笑っているような口元で、笑う様に目が閉じられたあと、ころんと体勢を変えてみせる。
ぐーーっと寝そべったまま伸びをして、前足後ろ足いっぺんに伸ばすと、ピクシーの頭から腰のあたりまで長さがあった。
ひとしきり伸びをして満足をしたのか、またうつぶせになった後に足を畳んで、ピクシーの目を見上げた。
その、小首を傾げるような仕草に妙に色気がある。
その仕草に、見覚えがあった。
「
………
相棒?」
「みゃあん!」
相棒、と呼ばれた猫は元気よく声をあげて、すっと立ち上がると擦り寄ってきた。
自分の頬や額をピクシーのお腹にぐりぐりと擦り付けて、尻尾をピンと立てた。
「か
……
」
(可愛いっ)
動物に触れる機会が多くはないピクシーだが、決して嫌いなわけではない。
まして、人懐っこい猫に甘えられれば多少の疑問は溶けて消えてしまうと言うもの。
これがあの相棒だと思えば愛しさも10倍に膨れるようだった。
若い頃の相棒は美形のくせに周りの感情には全くの無頓着だったが、今や百戦錬磨という雰囲気を醸し出す酒場の店主。ピクシーはいつだって気が気ではなかった。
サイファーの浮気を疑うわけはないが、不安になるのは人の性だろう。
愛しているなら、尚のことだ。
たまに甘えてほしい等と言えば「いい年したおっさんが?」等と言う始末。
照れ隠しならまだ付け入る隙があるのだが、サイファーは本気でそう思っている。
ピクシーと違い、サイファーは「生きていてくれればそれでいい」と、まるで聖母のような顔で言う。
隣に座って本を読んだり、数か月に一度顔を合わせる程度で、幸せなのだと微笑む。
その気持ちを有難く思うし、心臓を掴まれたと思うほど愛しくも思うのだが、同時に酷く不安になる。
自分の想いの抱き方は、サイファーにとって酷い重荷なのではないかと。
淡白なサイファーに対して重苦しい感情を持っている自覚があるピクシーは、いつ愛想を尽かされるか、いやとっくに愛想を尽かされているのではないか、不安に苛まれることがあった。
元々がお互いに異性愛者であったし、過去の遺恨は、普通であればこんな風に生活できるような軽いものではない。サイファーだから傍にいるのを許されている。
サイファーの優しさに甘えて、甘え続けているのは、自分だ。
だからサイファーから誘われるのを待つのは最初から切り捨てて、自分から愛を捧げる努力をしてきた。
極々稀にサイファーの方から触れる時もあるが、一瞬で理性が焼き切れるために、事後は良く叱られている。
だから、例え猫でもサイファーの方から甘えに来るのは人生の幸いであり、もう二度とないかもしれない幸運なのだ。
と、そんなことを考えながらピクシーは薄い金色の猫を撫でる。
頭を撫で、顎を擽ってやり、擦り寄せる頬を指で掻くと嬉しそうに身を任せた。
「
……
相棒」
「にゃにゃ?」
「ちょっと、その、寝転がってもらっていいか?」
「んなーん?」
首を傾げつつ、サイファー(猫)はごろんと横になった。
仰向けに転がり、ちょこんと前足を曲げて、首を傾げるようにしてピクシーを見上げている。
「みう?」
「
……
」
ピクシーは無言のまま、静かに顔を近づける。
スゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
……
「
……
みゃ」
サイファー(猫)のふかふかとした腹部に顔を埋めて、ピクシーは深く息を吸い込んだ。
不思議と、ほんのりと甘い香りがした。普段のサイファーと同じ香り。
スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
……
「
…………
」
無言で吸い続けるピクシーの奇行に抵抗することなく、どこか遠くを見つめてサイファー(猫)はじっと耐えていた。ただ時間が過ぎるのを黙って待つ。
「みううー
……
」
非常に困惑しているような声で、軽く前足でピクシーの頭を叩いてみるがやめる気配はない。むしろより強く吸い込んでいる。仕草が琴線に触れたらしい。
スウウウウウウウウっ!
「
…
ヴヴぅぅ
……
」
さすがに嫌気がさしたのか、サイファー(猫)が低い唸り声をあげる。ささやかで控えめではあるが、拒否感は伝わってくる。
が、ピクシーはまだ吸い続けている。それどころか、体毛の感触を確かめるように顔を左右に動かしている。
ふいに、何か突起物に当たった気がして、ピクシーはそれを唇で少し押してみた。
「っフシャアアアアアアアアアアッ!!!!!」
途端にビシビシビシビシッ!と左右の前足でサイファー(猫)に激しく後頭部を殴打され、流石にピクシーも慌てて顔を離した。
その隙に跳び退るようにベッドから降りたサイファー(猫)はあっという間に部屋の隅にぎりぎりまで身体を小さくして蹲り、毛を逆立てて威嚇する。
「ヴヴヴヴ
…
」
「さ、サイファー
……
?」
突然のことに理解が遅れたが、そっと唇に指をあてながら反芻する。
(もしかして
…
さっきの
……
)
「すまん!まさかそんな所にあるとは思わなくて」
「フシャアア!」
「猫になっても迫力がすごい
……
悪かった、悪気は全くなかったんだ!」
「ふぎゃあおううううう
……
」
瞳孔が開かれ、全身の毛が膨らみ、かなり怒髪天を衝いているのが分かる。
ピクシーはなんとか宥めようとベッドから降りて平身低頭して只管謝っている。
「すまない!相棒!この通りです!!ごめんなさい!!!」
「
………
にゃ」
唸り声以外の鳴き声がして、ピクシーはそっと視線を上げてサイファー(猫)を見た。
蹲っていたサイファー(猫)はすっと前足を伸ばして座っており、不機嫌な顔で目を細めて尻尾を強く床に叩きつけているが、少しだけ怒りは収まっているようだった。
「
……
相棒」
「
……
」
タシーンッ、タシーンッ、と尻尾が床を叩く。
ピクシーは改めて座り直し、サイファー(猫)の正面で床に手をつき、頭を下げて土下座の形を取った。
「猫の体の構造を知らなかったとはいえ、セクハラをして申し訳ありませんでした」
「
………
にゃん」
ととと
…
と小さな足音が聞こえ、ピクシーは顔を上げた。
目の前に綺麗な瞳の綺麗な猫が迫っていて、じっと様子を窺うと鼻先を近づけてきた。
そのまま、ちょん、とピクシーの鼻先と合わせて、にゃあ、と一声鳴いた。
「相棒」
「みゃあ、みゃうみゃ?」
サイファー(猫)の長い尻尾は、くるりと身体に沿わされていて、前足の辺りでぴこぴこと動いていた。
どうやら、許してもらえたらしい。
ほっと息を吐くと、サイファーはいつの間にか開いていたドアから廊下へ出ていった。
とととと
…
、と遠ざかる足音を慌てて追っていく。キッチンに辿り着くと、小さなテーブルが置かれていて、その上に水入れが置いてあった。喉が渇いたのかサイファー(猫)はそこで水を飲み始めた。
「かわ
……
」
不思議と、確かにサイファーだと分かるのに、完全に猫の仕草をしているのを見ると、どうしても可愛いとしか言えなくなっているピクシーだった。
じっと観察されているサイファー(猫)のほうは、喉を潤すとまた何処かへ歩き始めた。
追いかけながら、オレンジ色の光が廊下に差しているのに気づいた。
起きた時は昼頃だったはずなのに、すでに陽が傾いていた。
「そんなに俺はサイファーを吸っていたのか」
沈みゆく夕陽を見ながら、サイファーの後ろを追っていく。とことこ歩く後姿はすらりとして、長い脚と尻尾は実に優雅だった。
猫になっても美人だなと頷きつつ、サイファーの視線の先を確認する。
僅かに開いたドアの向こうは、サイファーの寝室だった。
するりと中に入っていくサイファー(猫)を慌てて追いかけてドアを開ける。
すでに猫の姿はなく、ベッドの上に無造作に置かれた毛布がもぞもぞと動いている。
どうやら潜り込んで暖を取っているらしい。
すっかり猫だな、と思いながら声をかける。
「サイファー。もう夕方だぞ~。寝るのはもう少し後にしろ」
軽く笑いながら、ぱさりと毛布を持ち上げて声をかけた。
「にゃあ~」
「
……
サイファー?」
「にゃ?」
見上げてくる晴れた冬空の青。
すらりとした長身に、月色の髪。
見慣れた相棒の姿がそこにあった。
ただ、猫耳と尻尾を付けた状態だった。
「どっち
……
だ
……
?」
「にゃあ?」
「あ。まだ割と猫なんだな」
猫の姿での声とは違い、聞きなれた相棒の柔らかなテノールではあったが、どこかあどけなさが残る声で、にゃあと鳴く。
髪と同じ色の耳と尻尾はチープな模造品ではなく、ぴくぴく動く本物だ。
そっと頬に手を添えると、すりすりと先ほどの様に擦り寄せてきた。
「
……
ぐぅっ」
先ほどまでは【猫としての可愛さ】だったが、今は完全に【甘えてくる恋人の可愛さ】である。
願ってはいたが思わぬ形でサイファーが甘えてきたため、胸を押さえて呻くことになってしまったピクシーである。
きょとん、と首を傾げて見つめていたサイファーだったが、猫の時と同じようなしなやかさでするりと身体を擦り寄せてきた。
「
………
は?」
(天国か?)
ベッドを覗き込む形でいたピクシーの首に腕を絡めて、ほぼ人の喉であるはずなのにごろごろと鳴らして、滑らかな頬がピクシーに頬ずりをしてくる。
(落ち着け
……
落ち着け
……
相手は猫だ
……
猫
…
?
…
いや、まだ猫だ。普段のサイファーならこんなことしない
……
)
月色の髪からふわりと漂う甘い香りと、滑らかな肌の感触、体温、全てにくらくらと眩暈がする。ごくりと生唾を飲み込んで、下腹部に集まる熱を鎮めようと意識を集中させる。
ふと、視界に細長いものが映りこんだ。サイファーの尻尾が、ゆらりと尾骶骨のあたりから伸びている。デニムを履いてはいるが、尻尾を動かせるように普段より浅く履いているようだ。背中と腰の傷跡がちらりと見えた。
好奇心に駆られて手を伸ばす。するりと根元から先へと手を滑らせればさらりとした手触りの毛並みだ。
するりするりと何度も撫でると、ゆるく手に巻き付いてきた。仕方ないので根元だけをすりすりと撫でる。
「んにゃ
……
」
サイファーが小さく声をあげる。撫でられるのが気持ちいいのか、と一人納得してピクシーは自分の興奮を抑えるようにサイファーを撫でることに集中していった。
「みぅぅ
……
」
サイファーが体をくねらせ、さらに密着する。
(待て待て待て! そんなに近づいてくれるな
…
!)
ピクシーが頭で素数を数え始めた時、さらにサイファーが身じろぎする。
ピクシーの手から逃げるように、しかし尻尾は手に絡ませたまま、自身の太腿をもぞもぞと擦り合わせている。
(
……
あれ?)
「サイ、ファー?」
熱を孕んだ呼びかけに答えて、サイファーが顔をあげる。
潤んだ冬空の青が、上気した頬が、悩まし気に歪む眉が、ぞくりとするほど妖艶だった。
「あ
……
」
気づけば、ベッドに押し倒していた。
貪るように口付ける。くらくらするような甘い香りが鼻腔を擽る。
人の肌の匂いに、こんなにも狂おしく乱されるとは。
「サイファー
……
ランス
……
」
デニムとシャツの間から覗く、細い腰を掴む。
きゅっ、と尻尾が強く巻き付いた。
「愛してる」
はっ、と目覚めたときには朝だった。
頭はガンガンと金づちで叩かれるように痛く、喉が渇いていた。
腕の中に、暖かい何かを抱きながらピクシーはベッドの上で覚醒した。
「
……
人を抱き枕にするとは、いい度胸だ相棒」
「さ、サイファー!?」
ひどく不機嫌な声が耳に届いた。
どういうわけかピクシーはサイファーを後ろから羽交い絞めにするように抱きしめていた。
混乱した頭でするりと腰を撫でる。
「っなにするんだこの馬鹿!!!」
「ぎゃっ!」
尻尾は無かった。代償に激しい頭痛を起こしている頭を思い切り殴られる羽目になった。
「
……
夢?」
「酔っぱらい過ぎだ。人のベッドに潜り込むだけじゃ飽き足らず、抱き枕にするなんてな」
「す、すまない
……
」
「おかげで体中が痛い。
……
放してくれ、着替えたい」
「分かった」
慌てて腕を離して体を起こす。身体が痛むと言うのは本当のようで、サイファーはのっそりと起きてベッドから降りた。
耳も、尻尾も、どこにもない。
そのままクローゼットに近づいて着替えを掴む。
「俺はシャワー浴びて寝直す。ピクシーは二日酔いだろうから、ちゃんと水飲んでおけよ」
「
……
そうする」
夢だったのかとがっくりしながら、ベッドでうなだれる。すぐに動くと頭が破裂しそうだ。
じっとシーツの皺を見つめていると、相棒の足音が遠ざかっていく。
「
……
にゃー」
「!」
鳴き声に気づいた時にはサイファーの姿はなく、シャワールームのドアが閉じる音だけが響いた。
「
……
寝言でも言っていたのか
……
?いやそもそも幻聴か
……
?」
問いただすわけにもいかないピクシーは、とりあえず猫耳プレイの提案を検討した。
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