mikagami3
2018-03-23 17:28:42
1714文字
Public エスコンZERO ピクサイ
 

さよならの約束

エースコンバットZERO二次創作。擬人化ものです。
片羽の妖精とその愛機が、それぞれの別れを覚悟する短い話。
片羽の妖精のF-15Cは12歳くらいの少女で、名前をイングリッドとしています。

イングリッド」
「なに?」

片羽が神妙な顔で私を呼んだ。
珍しいな、と思って駆け寄る。何だか焦ってるように見えたから、少し急いだ。

「どうしたの?」
「内緒話。お前、どこまで離れられる?」

私の《機体》を見ながら、妙なことを聞いてきた。
内緒話、なんて、気持ち悪いなぁ
普段の彼なら絶対に使わない言い回しに、肌が粟立つ。嫌な予感がする。
それは顔に出さずに、私はだいたいの距離を感覚で伝えた。

「格納庫を出て、ちょっと先までなら平気よ。今の位置で格納庫から出るなら大体10メートル、歩ける」
「十分だな。ちょっと来てくれ」
うん」

そう言うと、片羽はスタスタと先を行く。
私のパイロット。凄腕の傭兵。現実主義者でシニカルで自信家。それでいて、理想をいつまでも捨てられない。
隠してるつもりみたいだけど、バレバレなのよね。
そんな片羽の背中が、ひどく小さく見えた。
困るのよね。
この最強、とは言わないけど、実績十分な私のパイロットがそんな調子じゃ、困るのよ。
……なにを話すつもりなんだろう……

「イングリッド」
「ここよ。居るわ。ちゃんと、居る。私は貴方のイーグルだもの」
「そう、だな。あいつと同じイーグルの筈なのに、違う機体だ。俺の癖を誰よりも知ってるのが、お前だ」
「戦闘機乗りとしての貴方なら、そうね。でも、個人としての貴方はどうかしら?」

そう言うと、押し黙ってしまった。
私は格納庫から、自分自身から、そう遠くは離れられない。
だから、格納庫にいない間のことは、分からない。知らなくてもいいと思う。
私は戦闘機。イーグルの愛称で知られるF-15Cの、一個体。
私は私の仕事をすればいい。そう思うのだけど。
今の片羽の顔を見ていると、そうもいかない気がする。
ヒトは思い詰めると、こういう顔をするのね。
結構、世話が焼ける人だわ。

「何か、やりたい事があるの?片羽」
……ああ」
「分かった。手伝うわ」
「何?」
「私は、貴方の戦闘機。貴方の指示に、操縦に従って飛ぶモノ。だから手伝うわ。そうでしょ?」

何をやろうとしてるのかは知らないけど。
私のパイロットが望むなら、応えてやるのが戦闘機である《私》の務めだわ。
あの鬼神ではなく、敢えて私に声を掛けたのなら、尚更。
ようやく踏ん切りがついた顔をして、片羽は口を開いた。

「イングリッド」
「うん」
「俺は、ここを離れる」

片羽の目は真っ直ぐにこちらを見た。
私にとっては、予想もしなかったことだ。

「何で?って、聞いてもいい?」
うまく、言えないが。敢えて言うなら……悲しいからだ」
「うん。よく分からない!」
「そ、そうか。いや、そうだな。しかしそんなにハッキリ言わなくても
「でも、貴方がそれを望むなら、私は出来るだけのことをするだけよ。安心して」

にっこり笑う。
うまく笑えたかしら人間を安心させるには笑顔が一番だと覚えたからやったのだけど。
それを教わったのは、鬼と呼ばれる人だけど。

そうか」
「ええ、だから、しっかりしてもらわないと困るわ。貴方は【私のパイロット】(イーグルドライバー)でしょう?」

わざとらしく腕を組んで、呆れたような顔を作る。
私はイーグルよりはうまく喋れるけど、表情までは自信が無い。
微かに笑った片羽を見て、上手くいったのだと確信した。

「ああ。そうだな。操縦する俺が、しっかりしないとな」
「そうよ。ぼんやり飛んでたら、貴方の相棒に落とされてしまうわ。私、イーグルに撃たれるの……嫌よ」
……分かった。やらせない。だから、そんな顔するな」

どんな顔、してたのかしら。
きっと、情けない顔だったのね。
片羽が言うくらいだもの。
この朴念仁。
でも、優しい人。

「ねえ、片羽」
「何だ?」
……お別れを言ってもいいかな。イーグルに」
……好きにしろ」
「うん。ありがとう」

優しい人。
私のわがままが、計画を破綻させるかもしれないのに。
ごめんなさい。
私も、気をつけるから。
私なりの、別れのけじめをつけるから。
ありがとう。
私の《相棒》……