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mikagami3
2017-04-16 21:00:06
7688文字
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花と花火と君の夢
お便り箱に頂いたリクエストのアイナナ・つなし夢
主人公の性別が明記されていなかったので、こちらは男性主人公で書きました。
つなし×主人公(男・年上)(デフォルト名設定あり)
二人で花火を見に行く話
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
勇介
『よう。花火見に行かねえか?』
突然、こんな電話がかかってきたら、誰だって面食らうと思う。
「え?」
『だから、花火だって』
「いや、そんな時期じゃないよね?」
『やってるとこあるぞー?暇なら行こうぜ。あ、無理にとは言わないからさ』
笑ってごまかすのが得意な人だ。
ここで行くって言わないと、この人は一人でも行くんだろうな。
それだけならまだしも、俺以外の誰かを誘うかもしれない。それはちょっと嫌だな。
「行くよ。ところで、いつ?」
『今』
「
……
なんだって?」
『だから、今。正確には20時に向こうに着かなきゃいけないから、二時間後には出発したいかなぁ』
「ちょ、ちょっと急すぎるよ!?」
『無理にとは言わないって言ったろー?』
「それにしたって急だよ!行く!行くから!準備するから迎えに来てよ?」
『おー。じゃあそうだな、駐車場探したいから1時間半後に迎えに行くわ。じゃあ後で』
突然かかってきた電話は、同じように突然切られた。
何なの
……
。
本当に、思い付きで行動するんだからなぁ。
まぁ、その思い付きのおかげで知り合えたんだけど。
……
いや、思い付きじゃないのかもしれない。
「ああ見えて、考えたうえで動く人だからなぁ。何か意味があるのかもしれない」
それで助けられたわけだしね。
……
20時、って夜8時か。寒いかな?
そういえば、会うのは久しぶりかも。
ちょっと楽しみになってきたな。
心が浮き立つのを感じながら、とりあえず部屋着を脱いで着替えることにした。
+++++++++++++++++++++++++++++++++
ピーンポーン
「はーい」
「よーっす。久しぶりー」
時間通りにドアの前に立つ彼がいた。
俺より少し低い位置にある目は、新月の夜のような漆黒だ。
髪も黒く、そのせいか上着は明るいカーキ色が多い。今日もそんな色のミリタリージャケットだ。
サバゲーが趣味だから、服にも影響があるみたい。
趣味も服も、顔に似合ってるからずるいなぁと思う。
楽とも天とも違う、どこか好戦的な表情で、荒削りな雰囲気のカッコ良さだ。
「久しぶり。すぐ出れるよ」
「マジか。じゃあ行こうぜ。道、ちょっと混んでたからさ」
「本当? 分かった、行こう」
靴を履いて鍵をかける俺を待ってから、彼が背中を向けて歩き出す。
その背中が風を纏っているようで、俺は出会ったときからその颯爽とした後ろ姿に憧れている。
「急に誘って悪かったな」
「本当だよ。いつも思い付きで動くんだから。たまたま休みだからいいけど」
「急に花火見たくなってさー。スケジュール見たら今日だったから行くしかねえと思って。まだ3月だし、空気が澄んでるからきっと綺麗だぜ」
「へえ?そうなんだ?」
微笑んでハンドルを握る彼の横顔を見る。
人によっては苦手だという夜間の運転も、彼にとってはあまり気にならないらしい。
行き慣れた道なのか、地図を確認することも無くどんどん車は進んでいく。
誰かと行ったことあるのかな・・・?
カーオーディオからは、音量を落としたロックが流れている。あまり音量を大きくするのは危ないからだと言ってたっけ。
音漏れは人にも音楽にも迷惑だしなぁ、と笑ってたのを覚えてる。
……
やっぱり、この人は音楽が好きなんだな。今も。
無意識にリズムを刻む指は、正確にハンドルを叩いている。
「それにしても、最近忙しそうだなぁ、十。この俺ですらお前を見ない日はないぞ」
「そう?」
「とはいえ、街中の広告ばかりだけどな。恵一や利幸なんかはドラマでも見るとか言ってたっけ」
「本当?うわ、ちょっと恥ずかしくなってきた・・・知ってる人に見られてるってこういう感じかー」
恵一さんも利幸さんも、彼
――
勇介
さんの友達でサバゲーチームのメンバーだ。
明るくてムードメーカーを担う二人は、
勇介
さんと違ってドラマを好むほうらしい。
「売れっ子ってのは大変だな。あれだぞ? 断っても良かったんだぞ? 今日」
「ううん。確かに急だったけど、
勇介
さん、一人でも行っちゃうでしょ?それなら一緒に行きたかったから」
「さん付けはよせよせ。チームの最年少の正博だって呼び捨てなんだからよ。でもまぁ、サンキューな。他の誘った奴らにも断られてさ。
お前もダメなら一人で行こうと思ってたよ。今日を逃すとしばらく無いからな」
「やっぱりね。頑固だよね、そういうところ」
「そうだな。まぁ、そういう人間なんだよ、俺は」
一瞬だけ、悲しそうな顔をした。
しかし本当に一瞬で、すぐにいつもの笑い方で前を向いていた。
「とりあえずここから一番近い駐車場行ってみるから」
「はーい」
高速道路は少し混みあっていたけれど、降りてからは割とスムーズだったためか早めに目的地に到着した。
海岸沿いの町は、静かな夜を纏って眠っているように見える。
夏の花火大会ならお祭り騒ぎなのだろうけれど、この時期だからか人が見当たらない。
「お。空いてる空いてる。余裕だわ」
「良かったね」
嬉しそうにハンドルを切って、信じられないくらいスマートに車庫入れをこなす。やっぱり日常的に乗る人は違うなぁ。
車から降りてみると、そのまま花火見物ができそうなくらい良い眺めだった。
広がる海は暗くて、少し冷たい風も吹いていたけれど、確かに春の匂いがした。
「何か買ってくるからちょっと待って
――
あ、十、酒飲む?」
「んー。それよりお腹すいたなぁ」
「分かった。すぐ戻る」
財布を持って買い出しに行く背中を見送って、一度周囲を見回した。
通り過ぎてきた駐車場や居酒屋には車や人の気配もあったけれど、ここはとても静かだ。
どうやら穴場みたいだ。
そういえば、花火を見に来るなんて、いつぶりだろう?
最近は人込みを避けたりするから、余計に足が遠のいていた。
……
まさか、分かってて誘ったのかな?
「そういうこと、平気でする人だからなぁ
……
」
つい声に出てしまう。
こっちが思いつかないところまで、考えが及ばないところまで考え抜いて、だからこそ突拍子もないことに見える人。
あの人は考えてない、思い付きだよといつも笑う。
こっちに気を使わせないように、いつもそう言うんだ。
ずるいと思う。
そんな風に優しくされたら、困る。
「
……
もっと、好きになっちゃうよ
…
」
塀に寄り掛かって、海を見つめながら、呟きが潮風で消えるのを期待した。
そう簡単に好きになっちゃいけない人だ。そう思うのに、止められなくなる。
ずっと恋人がいないって言ってたのすら思い出してしまう。もしかしたら、と思ってしまう。
……
どんな人がタイプなのかな?
「つーなしー」
「!? あ、
勇介
さん・・・」
「わりぃわりぃ。待たせたなっ」
「何そのキメポーズ」
「メタルギア風」
「?」
「ゲームだよ。今度うちでやろうぜ。次はゲームか戦隊ヒーローのコスプレで大会出ようって話が出てるからさ」
「そういえばコスプレサバゲーチームだったっけ」
「そうだぞー。お前をゲスト参戦させた時もやってたろ?SS風コス。あれは動きやすさ重視でデフォルメしたヤツだけどな」
「俺だけなんか形が違ってたけど」
「あれは現場で一番偉い人のに似せて作ったからだよ。似合ってたぞ」
「あ、ありがとう
…
」
こう、さらっと褒めるのやめてほしいな。
ドキッとして、ちょっと落ち込んじゃうから。
「やっぱ背が高くて足が長いと、ああいうの映えるよな!羨ましい」
「
勇介
さんだって、背は高いほうじゃないか」
「足が短くてよー。ちょっと寸詰まりに見えるのがな。ほい。そこに出店でてたから、たこ焼き買ってきた」
「わ。ありがとう! いただきます」
俺がたこ焼きを頬張る横で、
勇介
さんがコーヒーのボトル缶を開ける。
一口飲んで、海を見つめている。遠く、遠くのどこかを見るように少し目が細められる。
何だろう。大人って感じがする。俺より年上というだけでなく、何かが、俺とは違う。
ちらりと腕時計を見て、こっちを向いてニッと笑った。
「もうすぐだ。あそこに咲くぞ」
そう指さしたほうを見た瞬間、低い破裂音と共に弾けるように花火が上がった。
春の花火。
どんなものかと思ったけれど、会場に咲き誇る大輪の火の花は、夏のそれと変わらず綺麗だった。
次々と間断なく打ちあがる花火に圧倒される。
周囲に人がいないこともあって、ただただ花火を見つめていられる。
ふと、隣にいるはずの
勇介
さんが気になってちらりと横目に見る。
さっきと変わらずそこにいた
勇介
さんの目は、花火を見つめて、キラキラしていた。
俺が横にいるのを忘れてしまったかのように。
胸が締め付けられる。振り払うように花火に視線を戻せば、クライマックスの大花火だ。
ありったけの火薬を詰め込んだみたいに、華々しい音と光で夜空を煌々と照らしていく。
こんなすごい花火を、まるで独り占めしてるみたいだ。
その花火で最後だったらしく、辺りは火薬の匂いと静けさに満ちていった。
「どうだー? すごいだろココの花火」
「うん。すごかった!」
「だろ? さっきはああ言ったけどさ、一度は十にも見てほしかったんだ」
どういう、ことだろう?
勇介
さんは寄り掛かっていた塀に今度は背中を預けて、空を見上げながら続けた。
「俺は、夢を捨てて歩いてきた人間だからさ。あんまり偉そうなことを言えないけど。お前は頑張ってるって思う」
「えっ・・・」
「俺は背中を向けた。だから前を向いているお前はすごいと思うし、尊敬する。だから、たまには休んでも罰は当たらねえと思うぜ」
「
……
」
「分かんねえけどさ、あの花火みたいに、誰かの心に残ることができれば、お前の勝ちだし、お前の価値なんだと思う。
ずーっとできる仕事でもねえだろうが、一瞬でも最高の美しさを咲かせることができれば、いいんじゃねえの?」
……
どうしよう。
何でだろう。
すごく、嬉しい。
「まあ、あれだよ。お前が時々疲れた顔してたからさ、仕事で悩んでるなら気にすんなって言いたかったんだ。それだけ」
「
勇介
さん
……
」
「お節介なおっさんで悪いな。まーあれだ。気晴らしぐらいは付き合ってやれるからさ。今度は花見でも行こうぜ」
そう言うと、にんまり笑って山のほうを指さす。不思議に思って振り返って見上げると、白い塊が見えた。
目を凝らすと、一本だけ、山桜が咲いている。
「桜
…
?」
「ここら辺はあったかいからな。気の早い奴はもう咲いてる」
「知ってて、ここにしたの?」
「知ってたんじゃなくて、思い出したんだよ。ついさっきな。桜と花火が同時に見れる場所は贅沢だろ?」
悪戯が成功した子供みたいに笑う。なんて無邪気なんだろう。
眩しい。
ああ、ダメだ。
このまま、何も言わず、何も伝えずにいたら、きっとダメだ。
好き。
この人が、どうしようもなく好きになってしまったんだ。
初めて会った時から、ずっと、俺を助けてくれた。何も得することなんてないのに、それが当たり前だって言って。
きっとこれからも、そうやって当たり前って言いながら優しくするんだ。
そんなの、苦しすぎる。
それなら、今、言ってしまおう。
そして、拒絶されよう。
じゃないと、俺、どこかで壊れてしまいそうだ。
もしかしたら、この人を壊してしまうかもしれない。それだけは、ダメだ。
「
勇介
さん」
「んー? どうした?」
覚悟を決めて、名前を呼んだ。
笑って振り返った
勇介
さんは、ハッとして俺を見つめる。
真っ直ぐで、なんて静かな目なんだろう。
その目に映る俺は、今、どんな顔してるんだろう。変な顔じゃないと良いな。
「俺、ずっと黙ってたことがあるんだ」
「そうか」
「言っちゃいけないと思ってた。迷惑かけるし、嫌われると思ったから。でも、もう、いい。それでもいい。言わないといけない」
「無理は、するな。お前はすぐに無理をするからな」
優しい。穏やかに低く響く声が、涙を誘う。
まだ、まだ泣いちゃだめだ。
俺は首を横に振って、無理はしてないから、と続けた。
「言わないと、ダメなんだ。いつまでも黙っていたら、貴方を騙すことになる」
「分かった。
……
言ってくれ。十。俺は、ちゃんと聞く。逃げない」
「
……
本当に、貴方って人は
……
」
滲んでしまった涙を拭って、笑う。
せめて、笑顔を覚えてほしかった。仕事用じゃない、この人の為だけの笑顔を、見てほしかった。
「俺、貴方が好き。好きに、なっちゃった
……
ごめんなさい」
「十
……
」
「最初はただの良い人だった。優しくて、行動力があって、頼れる人だって。貴方の良いところを俺も見習おうって。
それだけだったのに
……
いつの間にか、貴方を、好きになってたんだ」
「十、それって」
「そうだよ。男として、男の貴方を好きになったんだ。だから、黙ってようと思った。嫌われるくらいならって。
でも、気持ちがどんどん大きくなって強くなって、もしかしたら、貴方を壊してしまうかもしれない」
「そんなにヤワじゃないぞ」
「だって、だって
……
」
だんだん、何が言いたいのか混乱してきた。
だって、こんなにはっきり”好き”って言ってるのに、何も変わらないんだ。
この人は、分かって聞いてるの?
分かっててこんなに、穏やかな顔で俺を見るの?
急に怖くなって、涙が溢れてくる。止まらない。
やっぱり、嫌われたくない。怖い。離れたくない。
ぼろぼろ零れる涙を見られたくなくて、でも足が動かなくて、ただ俯いた。
――
ジャリッ
足元の砂利を踏む音がする。
勇介
さんが近づいてくる。そんなに離れてないはずなのに、ひどくゆっくり歩いてくる気がする。
靴のつま先が触れ合うほど近づいてきたことに気づいて、俺は思わず目をつぶった。
「泣くなよぅ、十。男前が台無しだぞ」
「うぇ・・・?」
あったかい・・・?
俺は、
勇介
さんに抱き締められている・・・?
どうして?
低くて優しい声が、耳元で聞こえてくる。
「俺は、お前が思ってるほど優しい人間でもないし、お行儀の良い人間でもないぞ?」
「嘘・・・だ・・・」
「男も女もイケる、節操なしだぞー?」
「・・・え?」
「ちなみに最近は、恋人はいないがベッドを共にする友達はいる」
「ええ???」
「ついでに言うと男だ。あ、サバゲーチームの中にいるやつじゃないから。そこは安心しろ」
「そ、そうじゃなくて・・・え???」
この人は何を言っているんだろう?
本当に?
勇介
さんが、バイセクシュアルってこと???
「軽蔑したろ? 俺はお前みたいな良い子ちゃんに好かれるような人間じゃないよ」
「そんなことない!」
思わず大声が出た。
さっきとは違う涙が出てきて、悲しくて、やっぱりこの人は分かってないと思った。
そうじゃないんだ。
俺は、貴方が知りたい。
「俺、貴方の眼鏡に適う男かな?」
「そこはお前、自信持てよ。お前は良い男だ。外見も中身もすこぶる良い男だ。だからそんな商売やってるんだろう?」
「それなら、貴方のものにしてくれる?」
「お前、それはだめだろ。言っただろ? 俺は悪い子だからな」
「
……
それを聞いて、興奮したって言ったら、どうする?」
「おお?」
顔を上げると、
勇介
さんは変な顔してた。
驚いたような、笑ってるような、困ってるような、照れてるような。
…
なんか、可愛い。
「俺だって、ただの良い子ちゃんじゃないよ
…
?」
「十?」
「俺だって、人間だし、男だし、好きな人には触りたいって思うよ?」
「んん?」
「貴方が、他の誰かと寝てるっていうなら、俺だけになるように頑張る。貴方が手に入るなら、俺、頑張る。
男ってだけでダメだと思ってた。でもそうじゃないなら、俺にだってチャンスはある。そうでしょう?」
「つ、なし・・・」
この人の目が穏やかなのは、大事な部分に鍵をかけているからだ。
心の奥の、絶対に見せないところに、頑丈な蓋をして鍵をかけているから、滅多なことじゃ揺れない。
その目が、少し揺らいでいる。
「俺、確かにエッチとか苦手、だけど
……
でも、頑張るよ。好きなんだ。好きだから
……
やっぱり愛したい。
貴方が拒絶しないっていうなら俺頑張る。貴方に好きになってもらえるように頑張る。
だから、俺に、貴方を教えて?」
「
……
参ったな。お前、どこでそんな色仕掛け覚えてきた?」
困ったな、と笑うこの人のほうが、よっぽど色仕掛けが上手いと思う。
ぞくぞくする。
目が、唇が、途端に艶を帯びて甘く光る。
ああ、わるい人、だ。
「貴方を教えて、か。今のは中々グッときたぞ。声とニュアンスと、表情と相まって」
「何その監督みたいな言い方」
「できるだけ他人事みたいにしないとなぁ、引きずり込まれそうだ」
泣きはらした俺の目尻を、
勇介
さんは親指で拭う。
その指をぺろりと舐めて、上目遣いに俺を見た。
うあ・・・それ・・・
「それは俺のセリフだよ・・・。そんな顔、今しなくてもいいじゃないか」
「嫌いか?」
「好きだよぅ・・・」
「あっはっは。泣くな泣くな。いや、別にいいか。泣いても男前だなぁお前」
「ずるいぃ~」
肩にぐりぐりと額を押し付けても、この人は笑うばっかりだ。ずるい人。
わしわしと頭を撫でられる。子ども扱いされてる気がするけれど、触れられることが嬉しい。
「さて、帰るか。お前明日は仕事か?」
「ううん。少しスケジュール空いたから、休ませてもらった」
「そうか。じゃあ泊まってくか?」
「えっ」
そんな、急に?
本当、この人突然すぎる・・・!!
どうしよう、どうしよう。頭がぐるぐるする。
助手席に座っても悶々と考え込んでいる俺の肩を、
勇介
さんが叩く。
何?と返事をしようとして顔を上げると、唇に柔らかいものが触れた。
何されたのか分からずに固まってると、目の前の黒い目が細められる。愉快そうに。
ぬるり、と湿ったものが唇をなぞった頃にようやく我に返る。
俺、キスされた上に舐められた・・・!
「期待してるぞ? 龍之介?」
「
……
本当に悪い人、だ」
「だから言っただろ? 俺は悪い子だからなぁ」
助手席に崩れ落ちる俺を、エンジンをかけながら笑う。
好き。
絶対に、好きになってもらおう。
俺は、諦めないよ。
夢も、貴方も。
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