mikagami3
2016-12-04 15:21:58
3196文字
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よろしく頼むよ

ACECOMBAT6のシャムロック+タリズマンの二次創作SSです。
ACE6プレイしてすぐに書いたもの。
だいぶ古いですが、二人の基本はここにあるかもしれない。
初戦後のちょっとした合間の、ガルーダ隊の本当の二番機について話す二人。
タリズマンにオリジナル設定あります。【ピクブラUP済み】


死に往く者と、死を作るもの。

去るものと、残されるもの。




僕がガルーダ2になって、数日たったある日のことだった。



本来の”ガルーダ2”が、あの作戦で撃墜されていたことを聞いた。

ガルーダ隊そのものが、新設部隊であったことも、同時に聞いた。

ゆえに、ガルーダ1・タリズマンが教育係として新たに空の戦士を育てるはずだったらしい。

そして、空に散った”ガルーダ2”は新人パイロットで、比較的リーダー気質だったことからタリズマンの僚機であったらしい。

いずれは彼を隊長の座に座らせるつもりだったらしいことも、僕はタリズマンの同期から聞いた。

そして、彼が育てるはずだった空の戦士は、皆、空に抱かれて死んだのだと。


僕はタリズマンを探した。

もう聞いたかもしれない。でも聞いていないかもしれない、この悲劇を。

伝えるのは、今の彼の僚機であるこの僕だからだ。

タリズマンは、格納庫にいた。

整備兵に、自分好みの整備を注文している。手にはスパナを持っているから、ある程度は自分でもやったのだろう。


「タリズマン! ちょっと、いいか?」

「シャムロック。どうした。あの無愛想な管制に呼ばれたんじゃないのか?」

「ああ。呼ばれたよ。それで、君に伝えなきゃならないことがあるんだ」

悪い知らせか?」

「うん」

「はっきり言うなぁ。お前も。分かった、外で聞く」


苦笑して――しかし不快には思っていないようだ――彼はスパナを整備兵に渡した。

そして歩き始めながら、肩越しに整備兵へ振り向いて念を押していく。

「いいか? 主翼よりもエンジンを重点的にやってくれ。少しガタがキテるみたいだからな」

「了解。だが、ずいぶん無茶をやってるみたいだな。全部とっかえるかもしれんぞ?」

「構わない。アンタなら、俺の好みが分かってるだろ?」

「ちげぇねえ。んじゃ、やっとくよ」



整備兵とタリズマンは長い付き合いであることを、歩きながら聞いた。

そして、彼いわく”無愛想な管制”とは、幼馴染であることも。


「昔はもう少し愛想が良かったんだけどな、ハイスクールの頃にはがり勉の皮肉野郎になっちまってよ。
軍に入ってから、多少は皮肉っぽい性格は直ったみたいだがな。無愛想になっちまったな。面倒見がいいのは、変わらないが」

「そうなのかい? でも、ずいぶん年の離れた幼馴染だな。10くらいは違うんだろう?」

「は? 何言ってんだ。同い年だよ。アイツも俺も、36歳だ」

「えぇ? ははっ。やだな、冗談はきついよタリズマン。君はそんなには見えないし、彼もそんなに若く見えない」

「ほほーう。ずいぶんチャレンジャーだなシャムロック。確かに俺は童顔だしアイツは老け顔だが、事実だ」

……ごめん」

「気にするな。入隊したての頃は、もっとからかわれたもんだ。しかも身長も伸び悩んでてな、危うくそっちの気があるやつらに襲われそうになったこともある」

え”」

「うん。それは冗談だが」

「タリズマン! そうやって真実の中に嘘を混ぜたりするのはやめてくれよ!」

「まーそういうこともあるってことだ。お前は既婚者だし子持ちだ。気にするこたぁねえだろうよ」

……そうであることを、切に願うよ」


格納庫からずいぶん離れた。
今は作戦がひと段落し、次の戦略を参謀たちが練っている頃だろう。訓練もない滑走路は異常に広く感じられた。
タリズマンは立ち止まり、そろそろいいだろう、と僕を促した。


「で? 悪い知らせってなぁ、なんだ。シャムロック」

うん。君の、本来の2番機のことなんだけど……

「アミュレットが、見つかったか?」

「初戦の、グレースメリア防衛で撃墜されていたらしい」

遺体は?」

「見つかったそうだよ。機体も。機関砲が胸を貫き、機体は運良く爆発しなかった。胸の穴以外、綺麗な姿だったそうだ」

「そうか。それは、良かった。俺たちは、肉片すら見つからないこともあるからな」


タリズマンはそう言って、僕に背を向けた。そのまま空を見上げる。

世間話のような口調だ。

僕は、ソレが少し悔しかった。もっと、感情を表してやればいいのに。

じゃないと、<アミュレット>という名であるらしい彼が、浮かばれないじゃないか。


「アイツは母子家庭でな。弟と妹がいるんだ。生活のために軍に入ったと言っていたな。長男らしい苦労性な男だったよ」

「タリズマン?」

「最近は、空を飛ぶのが楽しいと。いつか部隊を率いてみせると。言っていたんだがな

「そうか

「遺体は、家族の元に帰っているのか? シャムロック」

「そこまでは聞かなかったよ。グレースメリアは今、エストバキアの領地だから、難しいと思う」

「そうかそうだよな。だが、エストバキアも人間だろうから、遺体の保管、もしくは埋葬ぐらいは簡単にしてくれるだろう。
 そうすればいずれは……家族の元に帰れる」

……

「ぐちゃみそな身体でなくてよかった。アミュレットも安心して、母親と対面できるだろう。俺も、安心して頭を下げることが出来る」

「タリズマン……。君の責任じゃないよ」

「俺は隊長だ。部下の死は俺の責任だ。だから、お前の死も、俺はお前の家族に報告しなきゃならん」

「僕はまだ死んでないよ」

「もしもの話だよ。俺は、無責任な馬鹿鳥野郎じゃないってことだ」


タリズマンは、僕に向き直る。

口元を歪め、感情を閉じ込めるための笑顔で僕に言った。


「さて。これでお前は正真正銘の”ガルーダ2”だな、シャムロック。まさか、二機編成になるとは思わなかったがな」


そうだ。

もともとは4機編成なのだ。

そして今は、彼と僕だけ。


「お前は死ぬなよ。おしゃべり野郎は、いつ落とされるかと冷や冷やする」

「君が無口すぎるんだよ。空に上がったとたんにね。普段はそうでもないのに」

「男ってのはな、仕事してるときは無口なのが丁度いいんだよ」

「無口すぎると仲間から怖がられるよ?」

「おしゃべりが過ぎると頼りないと噂されるぞ?」


軽口を言い合えるのは、戦争だからか。

人が死んだのに。殺されたのに。

戦争とは、命が軽くなるのだと、僕は今実感している。


「シャムロック」

「何?」

「お前には家族がいる。愛し愛される家族がいる。だから……決して死ぬな」

「タリズマン。君にもいるだろう?」

「俺は気楽な独身貴族だ。職業軍人としての道を選ぶときに、恋人とは縁を切った。不安にさせない自信がなかったからな。弱い男だったんだよ。俺は」

……弱くなんかないさ」

「ん?」

「それでも、兄弟や両親はいるんだろう? 一緒に住んでいなくても」

「ああ。兄貴がな。それと、その息子と同居してたんだ。グレースメリアの大学に行くってんでな。下宿させてたよ。多分、今は逃げているかさて。どうだろうな」

「希望的観測は、持ち続けるべきだと思うよ、タリズマン」

「さてね。首都を守り切れなかった男だ。楽観視は出来ない性分だしな」

「君は、僕の自慢の一番機だよ。タリズマン。僕は、君についていくよ」

「はっ。責任重大だ。身震いするぜ」

「よろしく頼むよ。隊長」


そう言うと、タリズマンは声を上げて笑った。

彼は、いずれこの国の英雄になるだろう。救国の英雄に。

そのとき、僕は彼の傍にいるのだろうか。

いや、いなければいけない。

彼に、もう十字架を背負わせないためにも。

彼が、笑顔で凱旋するためにも。

彼を待っているであろう、彼を思っている人のためにも。


僕は、落ちない。